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間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもの心理と対処法

この記事を書いた人

たなかれいこ たなかれいこ

たなかれいこ

  • 心理カウンセラー
  • ペアレントトレーナー
  • カラーセラピスト
  • 保育士

子どもと関わる仕事がしたいと、保育士資格を取得しました。

障害児者福祉に5年ほど関わる中で、保護者さんの大変さを実感し、現在はペアレントトレーニングをはじめとする子育て支援の事業を行っています。

プライベートでは小2の娘と暮らすシングルマザーです。

娘と一緒にいろいろな体験やお出かけをするのが楽しみです。

間違いを指摘されることを嫌がる、親や先生に注意されると、ものすごく凹むなど、失敗や間違いを極端に恐れるお子さんに悩んでいませんか?

CONOBASのお悩み相談フォームにも、「間違えたら怒られるかも…と嫌なことばかりを想像してしまう」という保護者の声をお寄せいただいています。

間違えることを嫌がる、怒られることに敏感な子どもの姿を見ていると、家庭でどんなサポートをすればいいのか迷ってしまう親御さんも多いですよね。

今回は、ペアレントトレーナーのたなかれいこさんに「間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもの心理や親の適切な接し方」について伺いました。

(編集部)

「間違えたら怒られるかも…」と嫌なことばかりを想像してしまう

6歳女の子 ママからのご相談

嫌なことばかり想像してしまうお子さんの姿と日々向き合っていると、ママも心配になってきますよね

相談者様は、「完璧じゃないといけない…と思っているようで苦しくないか心配」とお悩みを打ち明けてくださいました。

間違いを嫌がる・怒られることに敏感なお子さんには、どのように接するのが適切なのでしょうか。子どもの気持ちを読み解きながら、どのように対応すればいいか一緒に考えていきましょう。

 

目次

 

1.間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもの要因

子どもが間違いを嫌がる・怒られることに敏感になるのは、さまざまな要因が絡み合っていることが多いです。

ここでは、考えられる主な要因を4つ挙げます。

 

1-1.子どもの気質

人の性格は一人ひとり異なります。それぞれの性格の基本となるものが「気質」だと考えられています。

アメリカの心理学者であるトーマス博士らが「ニューヨーク縦断研究」を行い、「9つの気質(※1)」を見出しました。

1. 活動レベル:常に動き回っている子もいれば、大人しく座っていられる子もいます。
2. 生理的リズム:毎日同じくらいの時間におなかがすいたり、眠くなるなど、生活リズムが分かりやすい子もいれば日によって違う子もいます。
3. 接近・回避(新しい環境への反応):はじめての人に会うと恥ずかしくて親の後ろに隠れる子もいれば、物おじせずに話しかける子もいます。
4. 順応性:新しい環境や人に対して順応する力です。環境が変わってもすぐに慣れる子もいれば、慣れるのに時間がかかる子もいます。
5. 反応の強さ:物事に対してどれくらい強く感情を表すかを示します。喜んだり怒ったりするときに大きな反応を見せる子もいれば、静かに反応する子もいます。
6. 気分の質:普段の気分がどんな感じかを表します。いつも機嫌が良くてにこにこしている子もいれば、少し機嫌が悪そうに見える子もいます。
7. 集中と持続性:ひとつの物事に対して、長時間集中することができる子もいれば、すぐに他のことに気を取られてしまう子もいます。
8. 刺激への敏感さ:小さな音でもびっくりする子もいれば、大きな音でも平気な子もいます。
9. 気が散りやすさ:周りの音や動きを気にしすぎる子もいれば、周りの音や動きを気にしない子もいます。

誰もがこれらの9つの気質を異なる形で持ち合わせています。これらの気質が複雑に組み合わさることで、「間違えるのが嫌」「怒られることに敏感」といった性格が形成されていきます。

 

1-2.失敗や間違いを怒られた経験

過去に何度も怒られた経験があると、その記憶がトラウマとなり、同じような状況で不安を感じることがあります。

例えば、飲み物をこぼして親に怒られた経験があると、何か失敗したときにまた怒られるのではないかとビクビクしてしまうのです。

また、自分が直接怒られていなくても、他の子どもが怒られているのを見て「自分も失敗すると怒られる」と怖いと感じる子もいます。

このように怒られた経験から「間違えてはダメ」「怒られるのが怖い」と感じることで、間違いや怒られることに敏感になることもあります。

 

1-3.失敗や間違いへの親や周りの大人の反応

間違いや失敗したときの、親や周りの大人の反応も子どもの感情に影響します。

間違いや失敗したときに直接怒られていなくても、「ちょっと顔を曇らせる」「ため息をつく」などの大人の態度や反応を敏感に察知する子どももいます。

また、子どもは普段から大人の会話をよく聴いています。大人が「失敗して自分はダメだ」などの発言をしていると「失敗はダメなもの」と受け止めやすいです。

失敗した時だけでなく、成功した時はすごく褒められるのに失敗すると何も反応してくれないと「失敗はダメなこと」と認識しやすくなります。

 

1-4.ほかに考えられる要因

子どもが間違いを嫌がったり、怒られることに敏感になったりする要因は他にも考えられます。

例えば、小学校に入学すると幼稚園や保育園とは異なる環境に直面します。

新しい環境に適応しようと頑張る子どもは、その分疲れが溜まりやすく、ちょっとしたことでネガティブに反応してしまうこともあるでしょう。

学校の環境や友人関係も影響を与える要因です。学校での競争が激しい場合や、友達との関係がうまくいっていない場合、子どもは不安を感じやすくなります。

さらに、何らかのストレスを抱えている場合、そのストレスが不安感を増幅させることもあります。

子どもの持つ気質はみんな違うため、すべてのお子さんがこの時期に不安になりやすいというわけではありません。しかし、環境の変化に馴染めなかったりストレスを抱えていたりすると、不安になりやすくなることはあるでしょう。

 

2.間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもに必要なこと

ここでは、間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもに必要なことを2つ解説します。

 

2-1.思考のクセを見直す

思考のクセとは、物事を偏った見方でみてしまうことで、「認知のゆがみ」とも呼ばれます。例えば、「怒られることは悪いこと」「間違いや失敗をしたらダメ」などと思い込むことです。

間違いや怒られることを嫌がる子どもの場合、この思考のクセが影響しているのかもしれません。

思考のクセは誰にでもあり、必ずしも悪いことではありません。しかし、思考のクセによって子どもが苦しんでいるなら、それを見直す必要があるでしょう。

思考のクセを見直すことで、子どもの不安を和らげて自信を持てるよう手助けができます。

「テストも一つ間違えただけで落ち込む…完璧じゃないといけないと思っているようで」という文面から、相談者様のお子さんは完璧主義なところもあるようですね。

筆者は子どもが間違えて落ち込むと、「間違えたらラッキー」と伝えています。間違えたところは自分が覚えていなかったり、理解していなかったりするところだからです。

子どもはすぐに受け入れられないかもしれませんが、違った方向から物事を見られるようにヒントを与えられたらいいですね。

 

2-2.徐々に慣れていく

間違いを嫌がり、怒られることに敏感な子どもの気持ちを和らげるためには、徐々に慣れていくことも大切になります。

脳科学の研究によると、何度も経験を重ねることで脳が新しい状況に慣れやすくなることがわかっています。

また、恐怖や不安を感じる脳の部分(扁桃体)は、繰り返しの経験や、褒められてうれしいなどのポジティブな影響によって反応が弱まることもわかっています。

つまり、徐々に慣れていくことで、脳が「この状況は安全だ」と認識して不安を感じにくくなるのです。この適応力を利用して、子どもが少しずつ困難を乗り越えられるようにサポートしましょう。

最初は不安でいっぱいでも、少しずつ慣れていくことで、子どもは自分の力で困難を乗り越えられるようになります。

 

3.間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもへの具体的な接し方

間違いを嫌がる・怒られることに敏感な子どもへの接し方を具体的に紹介します。できそうなところから生活に取り入れてみてください。

 

3-1.子ども自身を認める

どんな状況でも、子ども自身の存在を認めましょう。

子どもは「自分は受け入れられている」と感じることで、安心し、挑戦する勇気が湧いてきます。

「あなたは大切な存在だよ」と日常的に伝えましょう。

何かを達成したときだけでなく、「あなたがいてくれて嬉しい」と普段から声を掛けることで、無条件の愛情を感じ自分に自信が持てるようになります。

相談者様はお子さまを認める声かけをされていますね。

ひとつだけ助言をするなら、「テストも0点でもママは学校へ行ってくれるだけでいいんだよ」ではなく、「テストで0点でも●●ちゃんは、ママの大好きな●●ちゃんに変わりないんだよ。どんな●●ちゃんでも大好きだよ」などと存在自体を認めてあげられる声掛けをしていただけたらと思います。

もし学校へ行けなくても、大事な子どもであることには変わりませんよね。

 

3-2.失敗しても反応しない

子どもが間違えたり失敗したりしたときに、親が大げさに反応しないようにしましょう。親が動揺していると、子どもは何か大変なことをしてしまったのかと余計に不安になってしまいます。

子どもの失敗に対して、叱ることもやめましょう。子どもは親の反応を見て、「失敗=怒られる、ダメなこと」と認識するようになってしまいます。

テストで間違えたときにあえて間違いには触れずにいます。「頑張ったね」と子どもが努力した過程を認めてあげましょう。

子どもが間違いを気にしているようであれば、「どこが違ったのかな?」と一緒に考えて観るのもおすすめです。間違っても、直せば大丈夫と伝えてあげましょう。

 

3-3.間違えた問題に×をつけない

子どもの中には「バツ(✕)」に敏感な子もいます。そんな子には、勉強の丸つけをするときに、間違っていた所は✕をつけずにそのままにしておきましょう。分かりにくかったら、星マークなどの違う印を付けてもいいですね。

間違えたところを訂正したら「マル(○)」を付けましょう。マル(○)が増えれば子ども自身も「できた!」と感じて達成感を得られます。

さらに、たとえ間違えたとしても、その間違いを正せば大丈夫と学ぶこともできます。

 

3-4.よいところに注目する

子どもがなにか失敗するときは、何かに挑戦しているときと考えてみましょう。

何かに挑戦しているからこそ、上手くいくこともあるし上手くいかないこともあります。

「計算ミスしちゃったけど、考え方はあってるね。すごいね。」など、結果だけを見るのではなく、頑張っている姿そのものを認めてあげましょう。

また、普段から子どものできているところに注目してみましょう。できていないところに目が行きがちですが、普段の生活の中でできているところは沢山あります。

「何も言わずに自分でお菓子のごみを捨ててくれた」「靴をそろえてくれた」「お友達と楽しく遊べた」など、日常の中のできていることに注目し、褒めたり、感謝を伝えたりすることで、子どもは「自分もできることがあるんだ!」と自信を持つことができます。

 

3-5.親の失敗談を話す

身近な大人である親自身が失敗談を話すことで、子どもは大人でも失敗することはあるんだと安心することができます。

子どもがテストで間違えたときには、「ママもここ苦手だったなぁ。よく間違えてたよ。」と共感しながら自分の経験も伝えます。

「買い物に行ったのに、買い物メモ忘れて行っちゃったよ。でも、お買い得品があってラッキーだったよ。」など、失敗したけどいいこともあったと伝えることも大事です。

身近な親が失敗をしても動じない親を見ていれば、子どもも「間違いや失敗をしてもなんとかなる」「失敗は悪いことではない」と感じられるようになります。

 

3-6.絵本を通して思考のクセを見直す

絵本を使って子ども自身が思考のクセに気づいて、気持ちをコントロールする方法を学ぶこともできます。

1.しんぱいザウルスくん だいじょうぶ だいじょうぶ(著/レイチェル・ブライト、絵/クリス・チャタートン、訳/前田 まゆみ)

しんぱいザウルスくんは、考えすぎてしまう心配性な性格です。しんぱいザウルスくんと一緒に自分の気持ちをコントロールする方法を学びましょう。

>>「しんぱいザウルスくん だいじょうぶ だいじょうぶ」Amazon販売ページ

 

2.かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった-かいじゅうとドクターと取り組む1 不安・こわい気持ち- (かいじゅうとドクターと取り組む 1)(著/新井 洋行、監修/森野 百合子)

不安な気持ちや怖い気持ちのことを子どもに分かりやすく書かれています。その不安な気持ちや怖い気持ちをどうすればいいか、子どもと一緒に考えましょう。

>>「かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった-かいじゅうとドクターと取り組む1 不安・こわい気持ち- (かいじゅうとドクターと取り組む 1)」Amazon販売ページ

 

子どもが気持ちをコントロールするための方法を学べる絵本は他にもあります。子どもだけでなく、大人も自分の気持ちをコントロールする方法を学べますよ。

ぜひ、お子さんとお気に入りの本を探してみてください。

 

4.お子さんが安心できる声がけやサポートをしていきましょう

見守る親子

筆者の娘も失敗することに敏感なタイプで、小学一年生の時は、漢字を訂正されたり、×をもらったりするのが嫌で仕方ありませんでした。

漢字の書き取りの宿題があると、一文字書くたびに「これで〇もらえる?」と聞かれ、夕方の忙しさと重なり、イライラしたこともよくありました。

しかし「娘は不安で仕方がないのだな、その気持ちを抑えろと言っても無理なことだな」と反省しました。まだまだ一年生、書き取りの宿題も毎日あるわけではないと腹をくくって、娘の隣に座って一文字一文字対応していました。

現在は娘も三年生になりましたが、書き取りの宿題で「これで〇もらえる?」と聞いてくることはほとんどなくなりました。

一番大事なのはお子さんが安心できる気持ちを持つことです。お子さんへの対応は大変かと思いますが、成長とともに子どもの不安も減ってきます。

心も体も成長途中のお子さんの力を信じて、今まで通り前向きな声かけをしていただけたらと思います。

 

参考文献
※1:庄司順一,『子どもの気質に関する研究(3) 一:NYLSにおける「気質」概念の検討一』,日本子ども家庭総合研究所紀要 第34集
※2:内田 舞,『REAPPRAISAL(リアプレイザル) 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』,実業之日本社

 

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