3歳|「服や靴下がきつい!」着替えを嫌がる理由と対策を解説
この記事を書いた人
中川さくら
- 保育士
- 児童指導員
学生時代に障害児福祉を学び、小学校の特別支援教育支援員や療育施設の保育士、学童保育、小学校などで、子どもたちやそのご家族と関わる仕事を約10年ほど経験しました。
今は、保育園に通う1歳の息子がいます。
昔バックパッカーだったので、いつか家族で世界を旅することが夢です。
お子さんの着替えがなかなかスムーズにいかず、悩んだ経験はありませんか。
「靴下履きたくない!」「この服は嫌!」「半ズボンは履かない!」 そんなお子さんの思いと向き合っている、たくさんのママ・パパから、着替えに関するこだわりや癇癪に悩む声が聞こえてきます。
CONOBASにも、3歳の女の子のパパから「靴や靴下、服を『きつい』と言って嫌がるので、毎朝の支度が大変」というお悩みをお寄せいただきました。
靴や靴下、服を『きつい』と言って嫌がる…
3歳女の子 パパからのご相談
服や靴、靴下を身につけるのを嫌がります。
朝の支度の際、Tシャツ・ズボンを着た直後、「キツイ!」と言って嫌がります。また、靴も同様に履いた直後、「キツイ!」と言って嫌がります。
別の服に変えて大丈夫になる時もあれば、何度も着て脱いでを繰り返すこともありますし、日によっては、着てしばらく経ってから「キツイ!」と言い出すこともあります。保育園の時間も迫る中、いつも焦りやストレスを感じています。
毎朝、同じような状況になるので毎朝が憂鬱です。どのように対応すれば良いでしょうか。また、この状態はいつまで続くのでしょうか。
何度も着ては脱いでを繰り返すお子さんに、試行錯誤しながら着替えを促しているパパの姿が思い浮かびます。出発の時間が迫る中、どうしても焦ってしまいますよね。
もしかしたら、幼いお子さんが伝える「きつい」という短い言葉の中には、いろいろな気持ちが詰まっているのかもしれません。
服や靴を嫌がる本当の理由を想像して、それぞれの理由ごとの対応について解説していきます。
目次
1.「きつい」という言葉に隠れた本当の気持ち
服や靴を嫌がる理由があっても、それを幼いお子さんが明確な言葉にするのは、まだまだ難しいですよね。
「きつい」という言葉を使って、本当はどんな気持ちを伝えたいのか、まずはお子さんの気持ちを想像してみましょう。
1-1.サイズや生地が合わない
お子さんが「きつい」と言っていても、本当に「サイズが小さい」わけではないかもしれません。なぜなら、「きつい」と言われたママやパパは、おそらくゆったりとした大きめの服も試しているからです。だからこそ、「きつくないはずなのに…。」と悩んでいるのでしょう。
きついのは全体のサイズではなく、一部のゴムの締め付けが不快で言っている場合もあります。また、サイズについての不快感を伝える言葉が「きつい」しかわからないために、真逆の「ゆるい」という意味で使っているかもしれません。
その他にも、サイズに対しての不快感ではなく、生地へのなんらかの不快感を「きつい」と表現している可能性も考えられます。タグや特定の生地がチクチクしたり、肌着なしで服を直接着ると痒くなったり、おそらくお子さんが何かしらの不快感、嫌悪感を伝えるために見つけた言葉なのでしょう。
「きつい」という言葉をそのまま受け取らず、お子さんが感じている「不快感」の原因を探す必要があります。
1-2.感覚過敏による不快感がある
感覚過敏があるお子さんは、着る物や身につける物に特に苦手な物がある場合があります。
感覚過敏についてはこのあと解説しますが、特定の場所の縫い目が肌に触れることにストレスを感じたり、スカートの裾やゆったりとしたズボンの生地が、時々肌に触れる感覚が耐え難かったり、人によってさまざまな過敏さを抱えています。
そのため、一般的には肌触りの良い服やタグがない洋服であっても、不快に感じることがあるのです。
本人の好みや意志とは関係なく、体が過度に不快に感じてしまうため、その感覚が他者には想像しにくいという難しさもあります。
1-3.特定の服や靴へのこだわりがある
ある服や靴を嫌がる一方で、「同じ服しか着ない」または「自分で選んだ服しか着ない」というこだわりを持つお子さんもいます。この場合、お子さんは「きつい」と言うことで今着ている服を別の服に変えてもらうことを望んでいると考えられます。
2〜3歳の頃は、ちょうどイヤイヤ期と言われる時期のピークで、自我が強くなり、それによって身につけるものへのこだわりも強くなる場合があります。
毎日同じ服を着たがるのには、お気に入りの理由やそれぞれのこだわりがあるのでしょうし「自分で選びたい」と思うのは、この年頃ですと正常な発達過程といえますね。
しかし、お子さんが選ぶ服がその日の気候や行く場所に適していないなど、大人から見ると困ってしまうこともあります。また、何より一度で服を決められないと毎日の着替えや洗濯が大変ですよね。
1-4.着替え以外に嫌なことがある
保育園や幼稚園に登園したあとのお子さんの様子はいかがでしょうか? 気にせず遊ぶことができているのか、園内での着替えの際は嫌がることがあるのか、先生と共有してみるとヒントが見つかるかもしれません。
もしかしたら「行きたくない」という気持ちがあって、朝の支度を渋っているのかもしれません。
他にも兄弟が生まれたなど家庭環境の変化があって、パパやママに甘えたい気持ちの現れである可能性も考えられます。
洋服や靴が直接の原因ではない可能性も含め、園や周囲の人の力も借りながら、お子さんの様子を観察してみると良いですね。
次は、1つ1つの理由について詳しく解説しながら、それぞれに合った対応方法を解説します。取り入れられそうな方法があれば、試してみてください。
2.サイズや生地が合わない場合
2-1.お子さんの好みの傾向を知る
まずはお子さんがどのような服なら受け入れられるのか、知ることが解決への近道になります。
しかしながら、まだ言葉で正確に説明できないお子さんに、何が嫌か教えてもらうことは困難です。
たくさんの服や靴下を買いながら、お子さんの好みのものを探すのは、時間的にも経済的にも大変なことですよね。
服にこだわるお子さんは、ジーンズのような硬い生地が苦手で、綿100%やガーゼ生地など柔らかい物を好む子が、比較的多い傾向があります。
生地以外にも、フィットする服が良い子や、ゆるい靴下が下がるのを嫌い、きつめのサイズや短い靴下を好む子もいます。また、冬場の冷えた洋服を嫌うお子さんもいます。
好みがわかれば洋服選びがずいぶん楽になりますし、避けるべき物もわかりますよね。「この服が好き」というよりは、「服を気にせず遊べている」などの日常の何気ない瞬間をヒントに、お子さんを観察してみましょう。
2-2.正しい足のサイズを測定する
靴に関しては、専門のお店でサイズを計測してもらったり、幅の広さや甲の高さなど足の特徴を教えてもらったりして、お子さんの足について理解することも大切です。
靴の中は見えないので、お子さんの靴選びはとても難しいですよね。育ち盛りのお子さんの足はどんどん大きくなるため、合う靴も日々変化していくでしょう。
靴メーカーによると、3〜4ヶ月を目安にサイズを測り直すのがおすすめだそうです。
今はインターネットで靴も簡単に買えるので、実店舗で買わない方も増えているかもしれません。
できれば、成長期のお子さんは靴屋さんに相談したり、実際に試着したりすると、「合わなかった」という失敗を減らすことができるでしょう。
2-3.敏感肌のケアをする
お子さんの肌の状態はいかがでしょうか?敏感肌やアトピーなど繊細な肌のお子さんにとっては、洋服が刺激になって、荒れたり痒くなったりしてしまうことがあります。
特別敏感肌でなくても、10歳以下のお子さんは皮脂が少なく繊細だと言われています。季節に合わせた保湿剤を使うなど、肌の状態を整えるのも1つの解決法になり得ます。
また、洋服の刺激を和らげるために、夏でも通気性の良い肌着を着せるのも対策になるでしょう。
敏感肌の子ども用肌着もありますので、いつも清潔な状態に保てるよう心がけたいですね。
年齢が上がって肌が強くなると良くなることもあるので、敏感な時期には極力無理をさせないようにしましょう。
3.感覚過敏(触覚過敏)の場合
ここでは、感覚過敏の中でも「触覚過敏」について解説します。
3-1.感覚過敏とは
感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のいずれか、もしくは複数の感覚が過敏になり、ほとんどの人が気にならない物に対しても強い嫌悪感を感じ、日常生活が困難になる状態のことを言います。
症状の度合いは個人差が大きく、過敏に感じる五感も人それぞれです。感覚過敏は病気ではなく、あくまでも症状のことで、薬を使って治療をするものではありません。
感覚過敏については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
感覚過敏とは?子どもが過ごしやすくなる対応法や現場での事例を紹介《チェックリスト付》
感覚過敏の中でも、触覚に過敏さを持つ人は、服や靴など身につける物に困難を抱える傾向があります。
3-2.子どもの触覚過敏について知る
触覚過敏のあるお子さんは、服だけでなく、砂や泥、水滴がつくことを非常に不快に感じることが多いです。
保育園などで行うプールや砂場遊び、絵の具などの活動への参加はとても辛く困難でしょう。
また、無理に参加するとより一層拒否が強くなってしまう危険性があります。
服装で言うと、靴下のつま先部分にある縫い目や、その端にある結び目を気持ち悪く感じるお子さんが比較的多くいます。とはいえ裸足で靴を履くのも苦手で、履ける靴下を探すのに苦労しているパパママもいるでしょう。
着ていた服を途中から嫌がる場合は、汗で濡れた感覚が気持ち悪く感じるのかもしれません。
少しでも汚れたら着ていられない子や、襟付きの体操服が着られない子、ズボンのポケットが腿に触れるのが耐えられない子など、その苦悩はさまざまです。
自分以外の人の感覚を理解することは難しいですが、まずは「そう感じるんだね」と否定せず受け止めてあげることが、対応方法を考える一歩になるでしょう。
3-3.触覚過敏のお子さんの着替え対策
靴下の縫い目や結び目が気になる場合、感覚過敏の人のために開発された「シームレス靴下」という物があります。
生地が肌に触れたり離れたりするのが気持ち悪い場合は、スパッツのようなフィットする物を選んだり、幼稚園の体操服の襟が不快なら、園の先生と相談してTシャツで参加する方法もあります。
慣れさせようとするよりも、極力不快なものを取り除く方法を考える方が良いでしょう。
汚れたり汗や水で濡れたり、本人がとても不快に感じる場合は、頻度が多くて大変かもしれませんが、無理をさせず着替えた方が安定した気持ちで過ごすことができます。
3-4.不安やストレスを取り除く
気をつけたいのが、「これくらい平気でしょう」と無理をさせてしまうことです。感覚過敏は、不安やストレスがあるとより過敏さが増しやすいからです。
感覚過敏は本人のワガママではなく、努力や辛抱で何とかなるものではありません。
それを無理強いされてしまうのは本当に恐怖で、拒否がさらに強くなってしまうのです。
筆者が療育施設で出会った触覚過敏の男の子は、保育園にいた頃に苦手なプール遊びに参加させられたことが原因で、洗面所で足元に跳ねた水滴を踏んだだけでも、パニックのように泣き叫んでしまうお子さんでした。
療育施設に転園後は、プールの中に入らず、タライに水を入れて水鉄砲で遊んだりと、楽しい経験の中で「水に触れても大丈夫」という幅を広げていき、1年後にはみんなと同じプールの中で遊べるようになりました。
感覚の辛さは本人にしかわからないので、「これくらいで…」と思ってしまうかもしれません。
しかし人に理解されにくいからこそ、感覚過敏のある人たちは苦しんでいます。「どうしたら辛さを軽減できるか」を一緒に考えてくれる味方がいることは、お子さんの救いになるでしょう。
パパママだけでは難しい場合は専門家に相談してみてくださいね。
4. 特定の服や靴へのこだわりがある場合
4-1.「自分で選びたい」発達過程を見守る
2〜3歳頃のお子さんは、自我が芽生え、自己主張をするようになってこだわりが出やすい時期なので、手を焼いているママやパパが多いことでしょう。実は筆者もその1人です。
お子さんが納得いくまで待ってあげるには大変な忍耐力が必要ですよね。忙しい朝の支度時間だとなおさらイライラして強く当たってしまうこともあるでしょう。
こだわり方は子どもそれぞれで、「この服じゃないと嫌」と決まった物にこだわるお子さんもいれば、「自分で服を選びたい」というお子さんもいます。
こういう経験を通してお子さんは「自分で考える力・決定する力」を身につけていきます。
目の前の「イヤイヤ」だけを見ると、大人を悩ます困った行動に見えますが、自立への最初の一歩となる大きな成長の証です。大変な現実はありつつも、まずは嬉しい成長の姿だということ、この時期があって良かったということを、心の隅では忘れずにいたいですね。
4-2.こだわりが強いお子さんの着替え対策
好きな色や柄で選ぶ子もいれば、着心地で選ぶお子さんもいて、そのこだわりはそれぞれです。
「ボロボロになってもその服を選び続ける」、そんな行動の裏には子どもなりの着続けたい理由が何かあるんですよね。
3歳以上のお子さんなら、「お気に入りのこの服、どこが好き?」と質問してみると、つたないながらに答えてくれるかもしれません。
服に描いてあるキャラクターになりきって聞いてみるなど、楽しい雰囲気だと本音が引き出しやすいでしょう。
「自分で選びたい」という思いでお子さん自身が選んだ服が、大人から見ると躊躇してしまう格好だったとしても、頭ごなしに否定しないようにしましょう。
お子さんに芽生えた「自分で決めたい」という自立心を否定せず、まずは「自分で選べたこと」を受け止めて、できる限りお子さんの選択を尊重してあげたいですね。
真冬なのに薄着の格好を選んでしまった時などは「選んだ服、素敵だね。寒いからその上にこれかこれを着ようか。◯◯ちゃんが自分で選んでね」と選択肢を提示し、決定権をお子さんに委ねるのも1つの方法です。
5.服のこだわりとうまく付き合う方法を見つけよう
悩みの渦中にいるママパパにとっては、「我が子が着られる洋服探しの日々は、いつ終わるの?」と途方にくれたり、毎朝のお子さんとの着替えバトルにうんざりしていたり、靴や服がどうして嫌なのかわからない日々に、疲弊していることと思います。
今は本当に大変ですが、年齢が上がるにつれて嫌な理由を言語化できるようになり、対策をお子さんと一緒に考えられるので、今の状態がずっと続くわけではありません。
こだわりの強いお子さんは、自分の好みの素材や形、柄などがわかるようになれば、自分で選べるようになっていきます。
その他にも、こだわり自体が緩やかになったり、感覚過敏が経験と共に少しずつ軽減する可能性もあります。
過敏さやこだわりの強さを「治す」というより、「うまく付き合っていく方法」を探しながら、少しでも着替えがスムーズになる解決策が見つかるよう応援しています。
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