園で友達に手が出る3歳児…どうしたらいい?現役保育士が考える原因と改善策とは
この記事を書いた人
宮先惟之
- 保育士
保育所や子ども園にて15年間勤務。
主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。
2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。
「園でお友達を叩いたりつねったりしてしまう」と、お友達に手が出るお子さんにお悩みの保護者の方は多いのではないでしょうか。
中でも、家では家族を叩いたりしないのにどうして園でだけ?という疑問をお持ちの方も少なくないようです。
CONOBASのお悩み相談フォームにも、「3歳の子どもが園で友達を叩いたと先生から毎日注意を受けるが、どうしたらいいかわからない…」というお母さんからお悩みをお寄せいただきました。
今回は、2人のお子さんを育てるお父さんでもあり、15年のキャリアを持つベテラン現役保育士、宮先惟之さんに、「3歳児が友達に手が出る原因や対応」「愛情を伝える方法」など、保育士目線でひとつひとつ丁寧にお話していただきました。
こども園に通う次男が、お友達を叩いた、つねったと毎日注意を受けている…。家ではしないのにどうして?
3歳男の子 ママからのご相談
保育士とお父さん、両方の立場からお話させていただきます
目次
1.園で3歳児が友達に手が出る原因は?
そもそも、家庭では人を押したり叩いたりしないのに、どうして園では手が出るのでしょう?環境の違いに関係があるのでしょうか?
3歳児は、手が出やすい時期でもあります。
発達の面からも原因を探っていきましょう。
1-1.家庭と園では、周りの人の接し方が違うため
はじめに、子どもの姿は家庭と園で変わることをお伝えします。
家庭と園において、人と関わって遊んだり過ごしたりすることは同じですが、相手が自分のことを知っているかといった点では違います。
兄弟の場合、ケンカをすることはありますが、相手のことや相手がしようとすることが何となく分かるため、避けられているトラブルもあるでしょう。次男であれば、お兄ちゃんが優しく関わってくれるときもありますよね。
しかし園の場合だと、お互いをよく知っている訳ではありません。発達も自分と同じような子ども達が周りにいます。当然、やりたいことや使いたいものが重なるとトラブルになることもあるでしょう。
友達や先生とやりとりを重ねる中で関係はできますが、家庭とは違いますね。
1-2.気持ちを言葉にすることが難しいため
続いては、子どもの発達に目を向けていきましょう。
3歳児は、自分の思いや考えを言葉にするのが難しい時期です。
保育現場では、相手に言葉で伝えられないもどかしさから、手が出ることはよくありますよ。
嫌な気持ちを言葉で伝えるより、相手を押したり叩いたりする方が、早く思いを発散したり解決したりできることから、とっさに体が動くのでしょう。
保育士は、トラブルの際には「何が嫌だったか」、「どうしたいか」を尋ねて言葉を引き出しますが、気持ちが落ち着くまではなかなか言葉が出ません。
大人の「○○が嫌だったの?」といった問いに、yesかnoで答える子もいるほどです。
自分から思いを友達に伝えるのは難しいことですね。
1-3.言葉で解決できた経験が少ないため
子どもは言葉で解決できた経験がないと、言葉で伝えようとはしません。
反対に、相手を叩いて自分の思い通りになる経験が増えると、その方法が有効だと感じ、困ったときに手を出すようになるでしょう。
言葉を使って思うようにできたり解決できたりといった経験を重ねることが大切ですね。
成功体験が増えると、自然と話し合いで解決しようとしますよ。
1-4.周りの人やテレビ・動画の影響を受けているため
お子さんは、テレビやスマホなどで動画を見ることはありますか?
子どもは映像を通じて、様々な影響を受けます。
アニメでは、キャラクター同士が戦うシーンって盛り上がりますよね。かっこいいと感じ、キャラクターの真似をすることもあるでしょう。
大人も一緒に見るバラエティー番組でも相手を叩き、周囲が笑っている場面ってありませんか?格闘技を見る場合もあるでしょう。
手を出すシーンは意外と日常で見かけるため、肯定的な印象を受けているのかもしれませんね。
1-5.情緒が安定しないため
保育をしていると、心が落ち着かない子はちょっとしたことで気持ちが乱れ、友達に手を出す姿を見かけます。
相手を受け入れる余裕がないのでしょう。
子どもの情緒は、生活リズムが整っていることや、親からの愛情を受けることで安定しますが、どちらか1つでも欠けると不安定になります。
機嫌が悪く落ち着かない様子やかまってほしくて甘える姿をよく見かける場合には、子どもの生活や親の関わりを振り返ってみましょう。
2.手が出ないようにする対応のポイント
続いては、園で手が出る子どもにとって効果的な関わり方を紹介します。
様々な角度からアプローチしていきますよ。
2-1.気持ちを尋ね、伝える方法を知らせる
まずは、子どもの言葉で伝える力を伸ばしていきましょう。
園で子どもがどんな場面で手を出したかを聞けたら、家庭で似た状況が起こった場合に言葉で伝える経験を積んでいくことができます。
兄弟の関わりで、おもちゃのとり合いや順番を決めるなどでトラブルになることってありますよね。そのときに、
お子さんから言葉が出ているかをチェックしましょう。
伝えていた場合は、相手に伝わりやすい言葉を知らせると良いですよ。
「○○って言うと相手も分かってくれるよ」、「○○って言ってみたら?」と知らせると、言い方を覚えていきます。
伝えていなかった場合は、子どもの気持ちを尋ねつつ、「○○って言ってみようか?」と話せるように関わったり、
親と一緒に相手に伝える経験を重ねていきましょう。
親の関わり方については、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
・叩く、つねる、押す…3歳児の「手が出る行動」への適切な対処法!
2-2.言葉で伝えて解決できた経験を重ねる
相手とのやりとりで先ほど伝えた「伝える経験」も大切ですが、「解決できた経験」も大事ですよ。
言葉で解決できた経験があると、次に同じようなトラブルがあったときに前の経験が生きるため、子どもは言葉で解決しようとします。
反対に、手を出すことで思い通りになった経験が多いと、子どもは暴力的な方法に頼るでしょう。
子どもと関わる上でのポイントは、言葉で解決できたときに「ちゃんと言えたね」「言えたから解決できたね」と褒めてあげることです。
身近な大人に褒めてもらうことで、子どもは上手くいったことを意識できますよ。
少しずつ、成功体験を積んでいきましょう。
2-3.真似をしたものが正しいかを一緒に考える
「1-4.周りの人やテレビ・動画の影響を受けているため」に対する対策です。
子どもが自然と影響を受けるテレビや動画ですが、悪影響になるので一切見せないのは、正しいとは言えません。
子どもに見せるものは判断したうえで、子どもの様子を見ながら、おかしいことをしている場合には、一緒に考えていきましょう。
例えば、戦隊ものやアニメのキャラクターを見てパンチやキックを人や物にした場合はどうでしょう。
やられた方の気持ちや、相手を傷つけることを考える機会を持つことができますね。
意味を分からず、相手を不快にする言葉を話すこともあります。
真似したものが正しいかは、そのときに振り返りましょう。
2-4.心が安定するように、気持ちを満たす
気持ちに余裕が持てると、相手を受け入れられたり、思うようにならなかったときに我慢できたりしますよね。
子どもの気持ちを満たす方法は、たくさんありますよ。
今回お悩みをお寄せいただいたママのように、絵本を一緒に読んだりギューッとふれ合ったり、子どもが安心するような言葉をかけることは大切なことです。
お子さんが3人いる中で、
きちんと一人一人に意識をもって関わっていることもステキですね。
積極的に子どもと関わろうとする気持ちは、必ず伝わります。
子どもは親の表情をよく見ていますので、親が笑顔で落ち着いて関わることもポイントですよ。
記事の後半では、子どもが愛情を感じられる4つの意外な方法を紹介しますので、参考にしてみてください。
3.先生が感じる愛情不足のサインとは?
担任の先生から「ママの愛情が足りてない・・・」と言われると、ショックですよね。しかし、なぜ先生がそう感じたのかと気になったことはありませんか?
ここでは、15年ほど保育士をする筆者が、保育現場で感じる子どもの愛情不足のサインをお伝えします。
3-1.過度に先生に甘える
先生にずっと甘えている子どもは、「家庭では甘えられているのかな?」と心配になりますね。
先生に甘えることは誰にでもあることですし、安心して過ごすうえでは大切なことです。
特に3歳児は十分に気持ちを出す時期なので、甘えることに問題はありませんが、愛情不足のサインは甘え方に現れますよ。
わざとわがままを言う姿や何でも手伝ってもらおうとする姿が常に見られると、家庭の様子が気になります。
3-2.落ち着きがない
気持ちに余裕がないことから、周りの様子が気になって落ち着かない子どもも大丈夫かな?と感じます。
愛情が不足している子の多くは、自分を見てほしい思いを行動で表します。
例えば、食事や遊びのときに集中できず周りをウロウロと歩き、注意されても改善できなかったり、あえて大きな声を出して先生に注目してもらおうとする姿はよく見かけますね。
かまってほしい心情の表れですので、気持ちを受け止めることを大事に関わっています。
3-3.友達にいじわるをする
友達にいじわるを繰り返す場合も、親子の関わりが気になります。
寂しさをまぎらわせるために、友達が嫌がることをする心情は、心が安定しているとは言えません。
保育現場で、愛情が不足気味の子は、用もないのに友達に触れたり、嫌な気持ちにさせる言葉を言ったりする姿が目立ちます。
子どもは、親や周りの人に優しく接してもらうことで、友達にも優しく関われます。
心が安定すると、自分のしたいことに集中するようになるため、あえて友達に嫌がることはしません。
4.子どもが愛情を感じられる4つの意外な方法
最後に、子どもが親の愛情を感じられる意外な方法を紹介しますね。今の関わり方にプラスできると、さらに子どもに愛情を伝えることができるでしょう。
愛情が子どもの心を育て、手が出る姿が減るかもしれませんよ。
4-1.子どもの話を最後まで聞く
子どもの話を、最後まで聞いていますか?
子どもの話って途中で話がそれて長くなることもありますよね。
急いでいる場合、話の途中で「分かった」と言いたくなることもありますが、
最後まで聞いてくれると子どもは安心します。
手が離せないときには、「あとでまた教えて」と伝え、落ち着いたら「さっきの話、聞かせて」と伝えるのも1つですよ。
保育の現場でも同じように関わりますが、後から尋ねると子ども達は嬉しそうです。
4-2.スマホはあまり触らない
ついつい触ってしまうスマホですが、
子どもの前では触る時間を減らしましょう。
スマホは、こちらがアクセスしなくても情報がたくさん入ってくるため、いろいろなことが気になりますよね。
スマホを触っていると、知らず知らずのうちに、子どもとの関わりの時間が少なくなったり、関わりが薄くなったりします。
意識的に触らないように心がけたり、手元から遠い場所に置くなど工夫しましょう。
4-3.子どもがしたいことを一緒にする
子どもの話を聞いて、したいことを一緒にするのも
心の距離が縮まる良い方法ですよ。
筆者の家庭では、子どもの誘いに応じてブロックやお絵描き、カードゲームなどをしますが、子ども自身が好きなことをしているとあって、嬉しそうな表情が見られます。
外で鬼ごっこをするなど、一緒に体を動かすこともおすすめですよ。
遊びを通して会話も生まれるため、十分に親子の関わりを持つことができるでしょう。
4-4.いろいろな人に関わってもらう
子どもの周りには、たくさんの人がいますね。
いろいろな人から優しく関わってもらうことでも、子どもは愛情を感じられます。
母親だけでなく、父親や祖父母にも積極的に育児に参加してもらうことができるといいでしょう。
育児って直接子どもと関わる以外にも、掃除や洗濯、食事を作るなどすることがたくさんあって大変ですよね。
周りの人の協力を得ながら進めていきましょう。
5.成長とともに、優しい心を育もう!
園で子どもが手を出す場合は、いろいろな対応の仕方がありましたね。
原因は1つではない場合もありますが、子どもの様子に合わせて対応を積み重ねていきましょう。
また、先生から愛情が足りてないと言われると心配になりますよね。
おうちの人の子どもへの愛情はきっと届いています。
今の関わりを続けつつ、可能であれば先ほど紹介した方法も試してみてくださいね。
さらに愛情を感じられ、優しい心を育めますよ。
相手への関わり方を学び、成長していくお子さんの姿を見守っていきましょう。
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