【3歳児(年少)の転園後の登園しぶり】原因と対応策を現役保育士が解説
この記事を書いた人
宮先惟之
- 保育士
保育所や子ども園にて15年間勤務。
主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。
2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。
「保育園(幼稚園)に行きたくない」と、登園しぶりをするお子さんにお悩みの保護者の方は多いのではないでしょうか。
中でも、お子さんの年齢やご家庭の事情による「転園」を機に子どもが登園しぶりをするようになった。というお悩みも少なくないようです。
CONOBASのお悩み相談フォームにも、「転園後に子どもが登園しぶりをするようになった」というお母さんからお悩みをお寄せいただきました。
今回は、2人のお子さんを育てるお父さんでもあり、15年のキャリアを持つベテラン現役保育士、宮先惟之さんに「転園による登園しぶりの原因や対応のコツ」「行くのを嫌がったら休ませてもいいの?」など、保育士目線でひとつひとつ丁寧にお話していただきました。
小規模園から保育園に転園してから行き渋りが続いている…。どのように対応したらいいの?
3歳男の子 ママからのご相談
保育士とお父さん、両方の立場からお話させていただきます
目次
1.転園による登園しぶりの原因は?
はじめに、登園をしぶる原因を一緒に見ていきましょう。理由がはっきり分かることで、子どもに合った援助をしていけますよ。
筆者は主に、4つあると感じました。
1-1.小規模園との違いに戸惑うため
はじめに考えたのは、前の園との違いに慣れないためです。
以前通っていた小規模園と今では、子どもや先生の数も増え、園の雰囲気は全く違うでしょう。たくさんの人がいると緊張し、不安を感じることもあります。お子さんが慣れるまでに時間がかかるのも無理はありません。
筆者は大規模、中規模、小規模のいずれの園でも勤務した経験がありますが、子どもにとってどの園が良いかは一長一短で、はっきり言えません。
小規模園の子どもは、人が少ない環境により自分を表現しやすいためか、個性が豊かと感じました。しかし、小規模園から小学校に入学し、人の多さに戸惑うといった話はよく耳にします。
一方、中規模園や大規模園では集団にも慣れ、幼児期からいろいろな人と関われる良さがありますよ。
1-2.親と一緒にいたいため
親と一緒にいたい気持ちが強いことも考えられます。
お子さんの年齢である3、4歳児は、自分の感情を言葉や態度で表現する時期です。これまでと比べ、様々な場面で自分の気持ちを主張することが増えていませんか?
お子さんが「ママがいい」と話すのは、お母さんを信頼しているからでおかしなことではありません。きっと他の家庭でもよくある姿でしょう。
成長の証でもあるのですが、気持ちが強すぎるのも困りますよね。
また、お母さんからは
月に1回のお弁当の日は泣かずに登園できています
といったお話も伺いました。
もしかすると、お弁当の日はおうちの人を側に感じられるから安心するのかもしれませんね。
1-3.親の不安を察知するため
子どもの近くで、「園で楽しく遊べているかな」、「ずっとこんな様子だったら・・・」などと考え、不安な表情をしたことはありませんか?
子どもは敏感で、普段から親のささいな変化を感じとっています。
保育現場で子どもと接していると、「ママがこんなこと言ってたよ」と教えてくれたり、「今日、忙しそうだった」とつぶやく姿を目にします。
そんなとき子どもは、ポジティブな話や笑える話は明るく話しますし、少しネガティブな話は暗く話すんですね。何となくですが、子ども自身が感じたものが、表情に影響するのでしょう。
話を聞きながら、子ども達は本当によく親を見ていると感じます。
1-4.活動の見通しがはっきり持てないため
今日の活動が楽しいか分からないことも、登園に前向きになれない理由の1つでしょう。
お母さんからはこのようなお話もありました。
月に1回の体操教室の日は泣かずに登園できているので、体を動かすのが好きそうです。
体操教室がある日に登園しぶりがない理由は、楽しみな活動があるからではないでしょうか?
3歳児(年少)の発達は、はっきりと見通しを持つのは難しく、これからできるようになっていく段階です。成長と共に園の活動の楽しさや1日の流れが分かると、安心して園に通う日が増えるでしょう。
年少児の一般的な登園しぶりはこちらをチェック!
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3歳・4歳・5歳の転園によるストレスはこちらをチェック!
・【3歳・4歳・5歳の転園によるストレス】年齢別ケア方法を徹底解説
2.転園後の登園しぶりに対する対応のポイント
続いては、転園後に見られる登園しぶりに対する関わり方を紹介します。
いろいろな角度から子どもにアプローチしていきますよ。
2-1.気持ちを受け止め、明るいトーンで接する
転園後は特に子どもの不安が大きくなります。親の明るい雰囲気で、子どもの不安を前向きな気持ちに変えていきましょう。
では、「大丈夫!大丈夫!!」と明るく励ませばいいのか?というとそうではありません。
「行きたくない」と訴える子どもの気持ちには、「そうだね。緊張するよね」と気持ちを受け止めましょう。子どもは、気持ちを受け止めてもらえるとホッとします。
話を聞くときには、表情や声のトーンに気を配ってみましょう。親が深刻な表情をしたり、低い声で、「そうか・・・」と言っては子どもの気持ちは落ち込みます。
あえて淡々と返してみたり、「そうだね!でも、楽しいことあるかもよ」と笑顔で明るく話すと、子どもも気持ちが変わるきっかけになりますよ。
最初は難しいかもしれませんが、続けていると効果が出てくるでしょう。
2-2.朝は、好きな活動やその日の楽しみを伝える
転園後の朝、登園しぶりが見られる場合には、子どもが新しい園で楽しみにしている活動や好きなことを伝えてみましょう。
お母さんによると、
保育園では園庭で遊んだり、粘土やブロック、お絵描きをするのが好きなようです。保育園で何をして遊んだのか聞いても、8割は「わからん」と言われますが、たまに「○○くんと虫探しした!□□して遊んだ!」と教えてくれます。
とのことですので、
「今日は○○くんと遊べるね!○○くんも遊びたいと思っているかもしれないよ」
「外では□□できるかな?」
「粘土やブロックもできるね」
と伝えると、園に行く気持ちになるかもしれません。
体を動かす遊びが好きだと、鬼ごっこなどの運動になる遊びができると思えたら、さらに良いでしょう。
その日の楽しみでいいますと、食事のメニューも子どもの励みになるかもしれません。
筆者が関わった子どもの中には、パンの日を楽しみにする子やハンバーグの日は喜んで登園する子がいました。
お子さんの好きなメニューが出る日は、楽しみの1つとして伝えてみてください。
2-3.新しい園での活動を楽しいと実感できるようにする
登園しぶりへの関わりは、朝に子どもを励ますことが多いと感じませんか?
朝の関わりも大事ですが、子どもが園のことを考えていないときの関わりが意外と効果的なこともあります。
ふとした家族の会話で新しい園のイメージを良くしていきましょう。
例えば、園からの帰り道や夕食を食べているときに、「今日の体操教室楽しかった?」や「○○くんと遊ぶの楽しそうだね」、「△△の活動、おもしろそう!」など園のおたよりや先生との会話などから得た情報を話題にしながら話してみるのは、いかがでしょうか?
子どもは当たり前にやっていることですが、改めて言われると、楽しさに気づけることがあります。
また、家で積み木やブロックをして遊んでいる様子をみて、以前と比べて作るものが変わってきたら、「上手に作るね!◎◎園で遊んでいて上手になったのかな」と親がつぶやくだけでも効果はありますよ。
1-3でお伝えしたように、子どもは反応が薄くても、親の話は聞いています。
新しい園に良いイメージができたり、活動を楽しみにできたりすると、転園後の不安が和らぎ、園に行きたい気持ちが増えるでしょう。
2-4.子どもの成長や遊びを褒める
転園後は新しい環境に適応するのが難しいことが多いため、子どもが少しずつ新しい環境に慣れてきたことを褒めることで自信をつけさせましょう。
例えば、新しい友達と話せたことや、新しい遊びに挑戦したことなど、小さな成長を見逃さずに褒めてあげてください。「新しい園でもすぐに友達ができたね!」や「今日は新しい遊びに挑戦できてすごいね!」といった具体的な褒め言葉が効果的です。
また、転園後の環境変化に対して頑張っている姿を認めることも大切です。「新しい園に行くのは大変だけど、毎日頑張っているね」というように、努力を認めることで子どもは安心し、自信を持てるようになります。
自信は、母親や父親、祖父、地域の人などいろいろな人に褒めてもらえると、育みやすいので試してみてください。
泣いて登園した日に、気持ちを切りかえて頑張ったことを褒めることも効果がありますよ。
3.園で過ごす子どもの様子を知る方法
親が登園しぶりを心配するのは、新しい園での子どもの姿が分からないことも理由の1つではありませんか?ここでは、保育士でもあり親でもある筆者が、園の様子を知るおすすめの方法をお伝えしますね。
すぐに試せる方法ですよ。
3-1.園の帰りやお風呂タイムで子どもとまったり話す
園の様子を子どもから聞けたら、嬉しいですよね。
しかし、園での出来事を自分から話す子は少ないようで、保育現場で個人懇談をおこなったときに、「お子さんは家で保育所の話をしますか?」と尋ねると、多くの方から「あまり話しません」と返ってきました。
では反対に、話をする子どもはどんなタイミングで教えてくれるのでしょう?
話を聞くタイミングは、園からの帰り道やお風呂タイムがおすすめです。帰り道は、園で遊んだ記憶が新しく、印象に残っていることを話しやすいですよ。
「今日、1番楽しかったことは何?」と尋ねると、教えてくれることもあるでしょう。お風呂タイムは心がリラックスしているため、子どもからその日の出来事を話すことがあります。
聞くコツは、「誰と?」や「それでどうなったの?」など、子どもの言葉を引き出すように、短い質問を入れていくことですよ。
会話を楽しみがら聞いてくださいね。
3-2.園だよりを子どもと一緒に見る
園からのお手紙を子どもと見ることで、新しい園の様子をより詳しく知ることができます。
特に、活動写真が載ったものは、子どもにとって分かりやすく親子で楽しんで見られますよ。
筆者はよく園だよりを子どもと一緒に見るのですが、子どもが自然とそのときのことを思い出して話してくれます。
また、行事予定が書かれた字が多めのお知らせも、話題作りには十分です。
「今度○○があるんだね」や「今、□□をして遊んでいるんだね」と話を始めることができます。
園での活動を聞く中では、子どもを褒めることもできますね。
「□□をしているんだね。すごい!」と言葉をかけることで、子どもが自信をつける場合もありますよ。
3-3.園の先生に聞いてみる
園の先生に子どもの様子を聞いてみるのも1つですね。
朝以外で、先生とゆっくり話せる機会はありますか?話をする場合は、先生も少し気持ちに余裕が出る週末(木曜日か金曜日)がおすすめですよ。
朝の様子や遊びの様子、食事の様子などを聞くと話が広がり、園での様子が分かるでしょう。
直接話す機会が持ちにくい場合は、帳面や連絡帳に相談したいことや聞きたいことを書いたり、紙に書いて貼ったりする方法もありますよ。
例えば、子どもの様子を書く場所がある場合は、「家では○○をしてよく遊びます。園ではどんな遊びを楽しんでいますか?」と記入すると、自然な形で聞くことができます。
3-4.友達の親と園の話をする
同じクラスの保護者に話をしやすい方はいますか?
保護者同士でコミュニケーションをとることでも園の様子を知ることができますよ。
筆者の場合、我が子の登園やお迎えの時間が重なる保護者と話す機会があり、子どもの意外な姿や園での様子などを知ることがあります。
話の進め方のポイントは、「子どもから園の話を聞くことってありますか?」や「○○ちゃんは、朝に園に行くの嫌がることってありませんか?」などと尋ねると、自然と会話が広がり園の様子が分かったり、心配が少し減ったりするかもしれませんよ。
話を聞く場合は、2人以上の方と話せると良いですね。
話をできる人の数は多ければその分だけ、いろいろなことを知るきっかけになるでしょう。
4.登園しぶりをする子どもを休ませるのは?
たまに子どもを休ませるのって良いのかな?と悩むことってありますよね。
保育士の視点からお答えします。
4-1.今は、休ませてOK!
親の仕事が休みの場合は、子どもも休ませて大丈夫ですよ。
子どもって親が休みの日はよく分かっているんです。朝の準備や様子が違うからでしょうね。
保育をしていると、子どもが「今日、ママ仕事休み!」とつぶやく子もいるくらいです。
子どもは、おうちの人から愛情を受けて育ち、心が安定します。
正直なところ、愛情が不足していると、園ではかまってほしくて先生にべったりひっつく時間が長かったり、大声で人の目を引く行動をとる子もいます。
その様子を見ると、おうちの人が休みだったら一緒にいてあげることが望ましいと感じるんですね。
3歳児(年少)はまだまだ甘えたい時期ですので、今は、親が休みの日は休ませてOKです。
仕事の日は、「ママも仕事行くから、園にいこうね!」と伝えることで気持ちを切りかえられるようにしていきましょう。
5.先生が伝えたことで筆者が感じること
最後に、園の先生が話された言葉から、保育士だからこそ感じたことをお話しますね。
5-1.お子さんは、きっと園で遊べている
先生からの言葉で筆者が感じたことは、お子さんは、園で気持ちの切りかえができ、落ち着いて生活しているんだと思います。
立派ですね。
もし、朝の登園しぶりの様子が園でもずっと続いていた場合は、先生から相談されるでしょう。
3歳児(年少)で「○○くんと虫探して遊んだ!」と子どもから友達の名前が出ることも、園で遊べていることが分かります。
好きな友達がいることもステキなことですね。
5-1.保育士の対応が気になる場合は・・・
先生からの言葉ってすごく心に残りますよね。
筆者も親になって初めて気づいたことで、担任の先生から言われた言葉の意味をよく考えたことがあります。
「早く行ってください」と言われて、モヤモヤするお気持ちもお察しします。
日常的に強い言い方があって他の保護者の方からも似たような声がある場合は、園長先生に相談してみるのも1つですよ。
保育士は自分のふるまいに気づけないこともあるため、外からの意見や声はとても貴重です。
6.明るく子どもを励まし、成長につなげましょう!
登園しぶりは、子どもの様子をみていると心配になりますよね。
ついつい自分の気持ちも揺らいでしまいますが、解決するためには前向きな親の姿勢が大事ですよ。
泣いて訴える時間も、子どもが成長するためには必要な時間、過程でもあります。
気持ちを受け止めつつ励ましたり、子どもの頑張りを褒めたりなど日々の関わりを1つ1つ重ねていきましょう。
お子さんの成長を願っています。
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