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単身赴任で親と子どもの関係が険悪に…。子どもと父親への接し方のポイントとは

この記事を書いた人

ももこ ももこ

ももこ

  • 認定心理士

大学では心理学を専攻し、認定心理士、民間資格の上級心理カウンセラー・チャイルドカウンセラーの資格所持しています。

児童相談所で児童心理司として勤務し、児童の心理検査やアセスメント、発達障害関係の相談、知的障害、愛着障害など、児童心理にかかわる業務を担当しました。

直近では、発達障害児に関する相談支援事業所で児童の見立てなどを行っていました。

6歳と0歳の子どもがおり、子どもと一緒の目線で関わることを心掛けて子育てしています。

子どもとお父さんの対立に悩んでいませんか?

仕事で帰りが遅かったり、単身赴任で自宅に帰る機会が少なかったり、お父さんが子どもと過ごす時間が短いご家庭では、「お父さんとの接し方がわからない」「お父さんを嫌がる」というお子さんも少なくないようです。

CONOBASのお悩み相談フォームに「単身赴任中のお父さんと、子どもとの関係性に悩んでいる」という30代のお母さんからお悩みをお寄せいただきました。

今回は認定心理士の資格を持ち、児童相談所で児童心理司としても活躍されていた、ももこさんにお話を伺います。

(CONOBAS 編集部)

 

単身赴任中のお父さんが帰宅すると子どもと衝突する…。子どもとお父さんにはどのように対応したらいいの?

小学校1年生男の子 お母さんからのご相談

 

子どもとお父さんそれぞれへの接し方のポイントをお伝えします

 

お父さんが単身赴任中や仕事が忙しくて家で過ごす時間が少ないご家庭では、お父さんが子どもとのかかわりを持つことが難しくなりますよね。

お母さんが一人で子どものことを考えながら一日の流れがスムーズにいくように家事をこなしたり、子どものしつけや甘えへの対応をしたりすることは、とても大変なことです。

さらにお母さんが困ったときにも、すぐに夫婦で相談ができない…といったストレスもあるかもしれません。

お母さんはいつもいないお父さんが家にいるときには、お父さんの存在に安心し家族で過ごせることを嬉しく感じることもあると思います。

しかし、ふだん関わりが少ない子どもとお父さんがギクシャクしたり、いつもと異なる環境が家族の負担に感じたり…といったトラブルが起こることもあります。

そうなると家庭内もどことなく緊張した雰囲気になってしまいますよね。 今回は、そんなお悩みをお持ちのお母さんに向けてお父さんと子どもへの関わり方についてのポイントをお伝えしていきます。

 

目次

 

1.単身赴任は子どもとの距離ができやすい?~お父さんと子どもの関係性から考える~

そもそも子どもにとってお母さん、お父さんとはどのような存在なのでしょうか。

親の関わりが子どもにもたらす影響を押さえたうえで、不在がちなお父さんとお子さんが互いに感じる気持ちについてひも解いていきます。

 

1-1.子どもと保護者の関係性や役割とは

子どもは産まれてから多くの時間をお母さんと一緒に過ごします。

お母さんとの二者関係のなかで、お母さんを心理的な安全基地として愛着形成をしていきます

安定したお母さんとの関係にお父さんが加わることで、三者関係となり、新たな対人関係を学びます。

お父さんとの関わりによって、社会へのつながりを持つための人間関係の基盤を構築していくのです。

また、お父さんの存在は社会で働く姿を見せることを通じて、どのように社会のなかに出ていくかを示す役割も担っています。

お父さんが家庭外にいるからこそ得られる安心感を、子どもは無意識に感じているのです。

 

1-2.子どもが幼い頃の単身赴任は距離感ができやすい場合が多い

単身赴任でなかなか家庭にいない場合、久しぶりにお父さんに会った子どもは、お母さんとお父さんとの三者関係を改めて始めることとなります。

数時間過ごすと、あっという間にお父さんとの関係を取り戻すことができる場合もありますが、それまでの時間はいわば人見知りのようなよそよしさがうまれてしまいます。

よそよそしい子どもの様子に対して、お父さんもどのように関わってよいか分からなくなってしまうのです。

お父さんも人間ですから、ときには機嫌が悪かったり、しつけをする口調が強かったりすることもありますよね。

少し距離感があるところに加えて、子どもがお父さんを怖いと感じてしまえば一気に心理的な壁を作ってしまうことになります。

その結果さらにどのように関われば良いか分からなくなったり、お父さんからの言葉に敏感になり反抗的な態度で表現したりする子どももいます。

壁ができてしまった状態でふたたびお父さんが不在になると、どうなるでしょうか。
心理的な距離と実際の距離が合わさって、さらに二人の距離感が遠く広がってしまいます。

 

2.単身赴任中の子どもとお父さんの気持ち

仕事などの都合でお父さんと過ごす時間が少ないとき、子どもはどのような気持ちになるのでしょうか。なかなか聞くことができないお父さんの気持ちはどのようなものなのでしょうか。

子どもの気持ちは成長過程において異なります。今回は幼児期~小学校低学年期に限ってお話します。

 

2-1.子どもは様々な感情を抱えている

まず子どもの心のなかに芽生えるのは「寂しい」という気持ちです。

お父さんと遊びたくて寂しくなる・お父さんと離れるのが悲しい、ということだけではなく、お母さんが忙しいため、じゅうぶんに構ってもらえずに寂しいということもあるかもしれません。

そして、お父さんが不在の時には、さらにお母さんとの二者関係が強固なものになります。

お母さんへ強く甘えたり、きょうだいへ意地悪をしてお母さんの気を引こうとすることもあります。

また、お父さんに代わってお母さんを守ろうという使命感のような感情を抱きます。
お友達や学校の先生などに対して攻撃的になるときには、子どもなりに外の世界と戦っているのです。

なかには、伸び伸びと過ごす子もいるでしょう。

お父さんが不在の環境が子どもにとって「日常」になると、反対にお父さんがいる時はいつもと異なる環境になるため子どもは緊張します。

すると、子どもにとってはお父さんがいないときのほうが気を張ることがないため、お母さんから見ると穏やかに感じることがあるのです。

 

2-2.お父さんは育児への関わり方がわからなくなってしまう

一方でお父さんは子どものことをどのように感じているのでしょうか。

お母さんと同様に、愛情をもって大切に感じていることには変わりはないでしょう。
しかし単身赴任で実際にお子さんと会えない時間を多く過ごしていると、考え事の中心は仕事や目の前の事象が中心になってしまうことがあります。

その結果お母さんに育児を任せているという気持ちが強くなり、子どもへの接し方に戸惑ってしまうのです。

つまり、育児における自分の立場や関わり方がわからなくなってしまっている場合があります。

そんなお父さんへの接し方については、後ほど詳しく解説していきます。

 

3.お父さんが不在時の過ごし方のヒント

単身赴任でお父さんが不在の場合、お母さんはふだんからお父さんの分まで子育てを頑張っていますよね。

すでに、お父さんと子どもの間の距離感を少しでも縮めるなど、家族の関係性を良いものにしようとさまざまな工夫をしていると思います。

ここではお父さんが不在時のお子さんとの過ごし方のヒントをお伝えします。既に実践していることに加えて、ちょっとしたポイントを押さえてみましょう。

 

3-1.お父さんを意識させる

毎日の会話の中に、お父さんを登場させてみましょう

「パパは、仕事に行ったかな」「今日はパパの好きな肉じゃがだよ」など、なんでも良いです。

「どっちの洋服がパパに似合うかな」「パパならどうするかな」とお父さんの意見を反映させてみたり、たまには冗談交じりで「パパには内緒ね」と美味しいアイスを食べたりするのも良いでしょう。

子どもの一日の生活サイクルのなかでお父さんを想像できるようになり、心理的な距離を縮めることに繋がります。

 

3-2.お父さんの気持ちを伝える

お父さんの気持ちを代弁してみましょう。

「パパが○○君のこと、頑張ったって言ってたよ」など、実際の夫婦の会話を切り取ったものや、「こんなに暑い日だから、パパも仕事で疲れたね」「家族に会えないから、寂しいだろうね」など、憶測した気持ちを伝えても良いでしょう

ふだん近くにいないお父さんの感情に触れさせることにより、実際に会った時にもお父さんのさまざまな感情を理解できるようになります。

 

4.タイミング別、子どもへの寄り添い方

実際に単身赴任先からお父さんが帰宅する前後ではどのような寄り添い方ができるのでしょうか。

ここでは帰宅前の声掛けと、お父さんとトラブルが起きてしまった場合の対処法をお伝えします。

 

4-1.お父さんが帰ってくる前の声掛け

久しぶりにお父さんが帰宅するとき、子どもは嬉しさ、恥ずかしさ、戸惑い、緊張など様々な入り交ざっていることでしょう。

その気持ちを、お母さんが言葉に出してあげてください。「会えるの楽しみだね、何をして遊ぼうか」「ドキドキするよね」などです。

もし、お父さんと過ごすことが苦手だと感じている場合には、「いつもいないパパがいると、少し緊張するよね。ママは○○君の味方だから大丈夫だよ」と子どもの気持ちに理解を示したうえで安心させる声掛けをしてみてください。

そして、お父さんが帰宅した際に起こりうることも、あらかじめ伝えておきましょう。

お父さんも親ですから、子どもの行動に対して叱ったり、しつけをしたりすることもあると思います。

久しぶりにあうお父さんに強い口調で言われると、子どもは気持ちは閉ざしてしまったり、反対に攻撃的な態度になったりする場合もあるでしょう。

声掛けの内容の例は、「パパは疲れているから、ちょっとイライラしちゃうこともあるかもしれない」「パパも、○○君のことが大切だから、きちんとして欲しいことは伝えると思うよ」などです。

 

4-2.お父さんから叱られた時の対処方法

お父さんと過ごしているときに、しつけなどで叱られることで、子どもとお父さんが感情的にぶつかるときにはどのようにすればよいでしょうか。

お母さんの対処としては主に2つ方法があります。

①その場で間に入るとき

お父さんの叱り方が、ヒートアップしているときや、子どもが泣いたり癇癪を起した時には、すぐに間に入ってください。

この時大切なのはどちらの味方にもつかないということです。

お母さんもエネルギーをとられてしまいますし、なだめてもすぐには解決をしないことがほとんどです。

お父さんと子どものそれぞれの言い分をお母さんがまとめる程度で大丈夫です。

 

②あとから声掛けをするとき

お父さんが叱られたときに子どもが納得していない様子のときは、子どもの気持ちが落ち着いてから声掛けをしましょう。

お父さんがなぜ叱ったのかなどの説明をするだけではなく、どうして納得できないのかという気持ちを優先して聞くようにしましょう。

そのうえで、お父さんはどんな思いだったのかを伝えてあげましょう。

思い出すことで、気持ちがたかぶりそうな場合は、お父さんが単身赴任先に戻ってからでも良いでしょう。

 

5.「聞く耳を持たないお父さん」関わり方のポイント

久しぶりに会うお父さんと子どもが距離感を持たないためには、お父さんの意識も大切になってきます。

しかし、子どもへの接し方について強く言いにくい場合や、言い方によっては夫婦関係が悪くなってしまう場合もあるでしょう。

なにより、忙しい毎日の中で、細かに打ち合わせることは負担になってしまいますよね。

ここでは押さえておきたいポイント3つと、「聞く耳を持たないお父さん」への伝え方のポイントをご紹介します。

 

5-1.普段の子どもの様子をこまめに伝える

今は、メッセージアプリなどで簡単にお互いの近況を送り合えたり、写真の共有ができたりしますよね。

たわいのない出来事を伝えたり、描いた絵と一緒に子どもの写真を共有したり、子どもが好きなものやことを写真付きで教えてみてください。

楽しいことだけではなく、ケガや病気をしたときや、子どもが悲しいことがあったときも伝えてください。

そうすると、お父さんの日常の中で、お母さんと子どもがどのように過ごしているかを想像できるようになります。

夫婦で子どもの悲しみや喜びを共有することで、家族の心理的距離を縮めることができます。

 

5-2.ほめる材料を提供する

ふだん子どものそばにいるお母さんと異なり、お父さんは子どもがどのようなことで喜ぶのかわからないことがあります。的外れなことで、子どもをほめても、子どもはあまり嬉しくないものです。

帰宅したときに、これだけはほめて欲しい、ということはあらかじめ共有していると良いでしょう。

学校で賞状をもらったなどの他人からの良い評価だけでなく、お手伝いができるようになった、好きなアニメのキャラクターを全部覚えている、など、子どもがほめられて嬉しい内容を伝えてみてください。

 

5-3.子どもへの接し方を共有する

子育てにおいて、お父さんとお母さんが同じ方針を持つことはとても大切です。

たとえば、お父さんは好き嫌いせず食べてしまえと怒り、お母さんは嫌いなものは残して良いよと許す場合、お父さんの前では頑張って食べようとするが、お母さんの前では努力をしなくなってしまいます。

また、両親そろって同じことを厳しくいつまでも叱り続けるなんてことをすると、両親の前では本音を話してくれなくなる、なんてことも起こります。

夫婦で、子どもを叱るときのルールや基準を決めておきましょう。

過度な叱り方は避けることや、ほめたいことがあればどのようなタイミングで話しかけようかなど、子どもの感情に働きかける方法は夫婦で共有しましょう。

伝える時には、子どもがいない場所で、テレビなどをの雑音を消してなるべく話に集中する環境をつくることが大切です。

 

5-4.聞く耳を持たないお父さんへ伝え方のコツ

今回のお悩みのように、お母さんのアドバイスを聞き入れてもらえずに、子どもへの言葉がきつい場合には、夫婦の関係を険悪なものにせずに、子どもへの接し方を変えて欲しいと伝えたいですよね。

お父さんへの伝え方のポイントは2つあります。

①理論的に伝える

お父さんに物事を伝えるときは「感情」だけでなく「理論」的に伝えることが大切です。

暴言が子どもに及ぼす影響は、脳内の視覚野が委縮することが確認されており、言葉の理解力などが低下すると言われています。※1

また、言葉の暴力は、心理的虐待に該当する場合もあります。

そういった根拠をもとに、子どもにとって恐怖に感じるような言動にどのような影響があるのかを具体的に伝えてみましょう。

例)「きつい言葉は子どもの言葉の理解力に悪影響を与えるよ」
「厳しい言葉で子どもの心が傷ついているよ」

②思考パターンに合わせて伝える

相手を説得する時には「解決策」「メリット」「デメリット」の説明が必要ですが、何を重視するかは人によって異なります。

ここでは実践心理学の中の2つの思考パターンを紹介します。

お父さんはどちらのタイプでしょうか?

問題回避型の場合は、今の接し方を続けることで起きうるデメリットを重点的に伝えるとよいでしょう。

例えば、「このまま~続けると…になってしまうよ」などです。

目的志向型の場合は、行動を変化させることで起きうるメリットを重点的に伝えてみましょう。

「~というふうに変えてみると、子どもも喜ぶし、あなたのストレスも減ると思うよ」などです。

お父さん自身も接し方に悩んでいたり、やろうと思っていても子どもを目の前にするとうまくいかない、といった葛藤を抱えているかもしれません。

言葉を伝える時には「充分に子どものことを考えてくれているよね。もうすこしだけ優しい言葉遣いにしてくれると、もっと子どもは嬉しいみたいだよ」と、自尊心を損なわないような言葉がけを意識することも大切です。

 

6.お母さんが気持ちを穏やかに過ごすためのヒント

お父さんが不在の間、一人で頑張っているお母さんは、いつも気持ちが張り詰めた状態ですよね。

家族で楽しく過ごせるように頭を悩ませたり、日常的な疲れがある中でこなさないといけないことが多すぎてイライラしたり…たくさんのことを抱え込んでしまう前に、すこしだけ視点を変えて肩の力を抜いてみてはどうでしょうか。

最後に2つのポイントをお伝えします。

 

6-1.お父さんと子どもの板ばさみになるときは一旦仲介をやめてみる

単身赴任などで不在にするお父さんと、久しぶりに会う子どもの心理的な距離感を埋めようとしても、どうしてもお父さんと子どもがぶつかってしまったり、折り合いが良くないことがあります。

お父さんと子どもそれぞれの気持ちをなだめたり、間を取り持つことは、お母さんにもストレスが生じますよね。

お父さんと子どもが激しい言い争いをしていない限りは、二人の間を取り持つのをいったん辞めてしまいましょう

そして、「ママはいま疲れているので、なにもしません」と言ってみてください。案外、お父さんと子どもが冷静になり、お母さんを困らせないように仲良くなることもありますよ。

 

6-2.子どもとの時間を楽しむ

お父さんが不在だからこそ、子どもとだけ向き合うことができます。やらないといけない家事に追われて、子どもと過ごす時間が減ってしまうのは勿体ないことです。

たまには家事をサボって、子どもとお弁当を買いに行ったり、一緒に遊びに出かけてみても大丈夫。

お父さんが帰ってこないからこそ、家のことが後回しでも誰も気づきません。

子どもと楽しんで、一緒にたくさん笑ってください。

お母さんが笑っていると、子どもの顔も笑顔になります。

笑顔で過ごすと、不安や葛藤もいつのまにかごまかされて薄れていってくれますよ。

 

今回は、仕事の都合で不在が多いご家庭を中心とした視点で、お父さんと子どもの関わり方をメインにお伝えしました。

一人で家事育児をこなすお母さんの努力があるからこそ、多くの悩みが出てきますよね。

ふだん行っている工夫にプラスして、気持ちがすこしでも軽くなるようなヒントがあればぜひ取り入れてくださいね。


 

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参考文献
※1:友田朋美(2019)子どもの脳をキズつけないために~親の不適切な関りで、脳は変形する~福井大学 子どものこころの発達研究センター 相談室だより No.104

 

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