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どうして騒ぐの!?じっとしていられない…お行儀の悪い子どもへの対処法!

この記事を書いた人

遠藤さおり 遠藤さおり

遠藤さおり

  • 社会福祉士

大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。

知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。

自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!

福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。

電車の中、病院、スーパー、レストランで、

「子どもが騒ぐ・じっとしていられない」という経験はありませんか?

「お行儀がいい・悪い」といった言葉をよく耳にしますが、悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか。

時には、「お行儀がいい」ことを、子どもらしさを否定する「親の都合のよい子ども」としてネガティブに感じることもあるかもしれません。

しかし、本来「お行儀」とは、社会の中で多様な人々と生きていくために、小さいうちから身につけておきたい社会的スキルの1つと捉えることができます。

今回は、子どもが「お行儀が悪い」状態になってしまう原因と、その対応策について深堀りしていきましょう。

注意するのがなかなか難しい”子どもの友達” への対応ポイントも合わせてご紹介します。

 

目次

1. 親子で「お行儀」について考えよう

「お行儀」と聞いて、どのようなイメージを持たれますか?

「いいに越したことはないから、いずれ身に付けさせたいと思っている」

「お行儀のいい子に育てたいけど、どうしたらいいのかわからない」

「そもそも、子どもにお行儀のよさって必要なの?」などなど。

抽象的な言葉ゆえに、様々な回答があるのではないでしょうか。

そもそも「お行儀」とは何でしょう?まずは「お行儀」について考えてみましょう。

 

1-1.「お行儀がいい・悪い」ってどういうこと?

『デジタル大辞泉』によると、「行儀」は「礼儀の面からみた立ち居振る舞い」とあります。

さらに「礼儀」を調べてみると、「人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式。特に、敬意を表す作法」と説明されています。

行儀」はとりわけ人間関係や社会の秩序を守るために、周りの人へ”敬意を表す振る舞い” であることがわかりますね。

つまり「お行儀が悪い」ということは、”周囲への敬意を欠いた振る舞い・社会の秩序を乱す行動” と言い換えることもできます。

マナーや秩序を守る習慣は、社会の一員として生涯をとおして必要な社会的スキルです。

「お行儀よりも子どもらしさを大事にしたい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、「お行儀のよさ」は決して子どもらしさを否定したり、大人にとって都合のよい子どもを意味したりするものではありません。

子どもの頃から親子で「お行儀」について考える機会をもうけ、子どもの「生き抜く力」を最大限伸ばしてあげましょう。

 

1-2.「お行儀が悪い」ってどんな時?

では、ここからは周囲に迷惑がかかる「お行儀が悪い」の”あるあるシーン” を見てみましょう。

マナー違反だけでなく危険が伴うこともあり、注意が必要です。

 

【やっていないかな?こんなお行儀は「NG」チェックシート】

<電車・バスの中で>




  など

<スーパーで>



  など

<飲食店で>


  など

<病院・図書館で>



  など

<公園で>


  など

<よそのお宅で>


  など

 

2.子どもの「お行儀が悪い」はなぜ起こる?

では、上記のような子どもの「お行儀が悪い」行動はなぜ起こるのでしょうか?

原因にフォーカスし、解決の糸口を見つけましょう。

 

2-1.解決のためには「原因」の分析が大切

今回は子どもの「お行儀が悪い」行動をいい方向に変化させるために、心理療法の1つである「認知行動療法」で使われる行動分析「ABCモデル」を取り入れた考え方をご紹介します。

「ABCモデル」を使い、問題行動を改善するアプローチとして、「行動Bを起こす原因となる先行事象A」に注目します。

このモデルに、よくあるお悩みシーンに当てはめてみましょう。

 

【例:電車の中で大騒ぎする】

A(原因):退屈になった ➡ B(行動):電車の中で騒ぐ ➡ C(結果):お母さんに叱られる

 

このように考えると、「行動」が起こったあとに「結果」を変えるのは大変です。

まずはその「行動」が起こらないよう、きっかけとなる「原因」にフォーカスして先回りで対処しましょう。

この場合は「退屈になった」が起こらないよう、絵本などを渡しておくのが有効だと考えられますね。

「認知行動療法」はうつ病や不安障害といった精神疾患の治療として使われていますが、子育てのお悩みにも有効です。先手、先手の対処を心がけて応用してみましょう。

 

2-2.「お行儀が悪い」が起こる原因とは?

では、その「原因」とはどのようなことが考えられるでしょうか?

原因を明らかにすることが「お行儀が悪い」を止めさせる手がかりとなるので、詳しく見てみましょう。

 

①大きな声で騒ぐのはコミュニケーションの1つ

大きな声を出したり騒いだりするのは、子どものコミュニケーション方法の1つとしてよくあることです。

本人に悪気はありませんが、だからといってそのままにしてよいわけでもありません。「小さな声で話そうね」と伝えていきましょう。

 

②適切な声量が分からない

子どもに「静かに!」と言っても、どのくらいの声で喋ればいいのか、まだ掴めていないこともあります。

これに関しては根気強く伝えていくことが必要です。ボリュームの調節もまだ難しい年齢なので、気長に向き合っていきましょう。

 

③興奮して感情が高ぶっている

5歳くらいの子どもは脳の前頭前野が未発達です。

自分の感情や行動を制御する力が未熟なので、楽しい出来事などがきっかけとなり、感情が高ぶって騒ぐ・大きな声を出すといった行動に繋がってしまうのです。注意するときは声のトーンを下げ、子どもが落ち着くように対処していきたいですね。

 

④周りの人の存在を認識できていない

5歳くらいの子どもでは、まだまだ周りの存在に対して意識が向けられないことがあります。

自分→お母さん→きょうだい→友だちというように、徐々に外の世界へ認識の範囲が広がっていく過渡期の子どもにとっては、不特定多数の「知らない人」は「背景」でしかありません。

親子の会話を通して「周りにはたくさんの人がいる」と理解できるよう、少しずつ促していきましょう。

 

⑤身体の発達が未熟

5歳くらいの子どもは、モゾモゾと落ち着きがなかったり、椅子にしっかり座らず、ダラッとだらしなくしているように見えることがあります。これは身体の発達が未熟ゆえに、長く同じ姿勢を保つのが難しいことが原因です。

脳の発達と同じように身体の発達に対しても、子ども目線で成長を見守りましょう。

 

⑥疲れや眠気、不安などのストレスを感じている

子どもは疲れや眠気、不安などのストレスがかかると、それらを和らげるために大きな声を出して騒いだり、じっとしていなかったりします。

いずれも脳が発達途中で、”自己抑制” が未熟であることが原因です。

 

⑦周りの注意を引きたい

子どもは「いけない」とわかっているのにも関わらず、あえて「お行儀が悪い」行動をとることがあります。

これは「自分を見て欲しい」という欲求が関係していることがあり、退屈なときだけでなく、疲れたとき・甘えたい気持ちがあるときにも見られます。

一言で「お行儀が悪い」と言っても、子どもの困った行動の裏には何かしらの原因があります。

 

いつも事後の対処になるようであれば、まずは原因を探り、先回りで対処しましょう。

子どもの行動を理解することが、親子の負担軽減につながります。

 

3.「お行儀がいい」行動に導く!対応のポイント

ここからは、子どもの行動を「お行儀がいい」方向に変えていく対応のポイントを見てみましょう。

今回は、とくに教育や療育現場で用いられている「プロンプト(行動を促すきっかけとなる刺激)」を有効活用した方法をご紹介します。

最初は「プロンプト」をたくさん与えて望ましい行動に誘導し、徐々に減らしていくことで自律を促しましょう。

どれも難しいテクニックは必要ありませんので、今日からチャレンジしてみてください。

 

3-1.肯定的な言い方で理想の行動を伝える

子ども自身の力で行動を変えていくためには、「レストランでは椅子に座っていようね」「図書館では静かに話そうね」といった声掛けが有効です。

このように理想の行動を言葉で伝える方法は「言語的プロンプト」といい、取り入れやすいのも魅力です。

一方「レストランでは走り回っちゃダメ」「図書館では大きな声を出しちゃダメ」のように「〇〇してはいけない」と禁止する伝え方もありますが、こちらはあまり効果がありません。

というのも、「〇〇しない」という否定的な表現は行動分析学の「死人テスト」で「死人にもできることは行動ではない」と位置づけられており、”変化をもたらす要素がない” とされているからです。

「図書館では大きな声を出さない」も「図書館では静かに話す」も状態としては同じですが、変化をもたらす「行動」の定義に当てはまる形で伝えていくことが子どもを自律に導く助けになります。肯定的な言い方で行動を示しましょう。

 

3-2.行動のお手本を見せる

静かにしなければならない場所では、親御さんが率先して「静かにする」お手本を見せるのも重要です。

これは「視覚的プロンプト」であり、子どもが自ら「どうしたらよいのか」気付くきっかけになります。

はじめのうちはなかなか真似してはくれませんが、「こうしていようね」と声をかけてから行動を見せるのを続けることで、徐々に身についていきます。

 

3-3.子どもに考えさせる声掛けをする

「プロンプト」によってある程度子どもの行動を理想の形に導くことができたら、徐々に「プロンプト」を減らしていきましょう。

これは「プロンプトフェイディング」といい、子ども自ら行動に移す「自律」のためのステップになります。

最初はスムーズにいかないことも多いので、例えば図書館に入る前に「ここではどうするべきかな?」と声を掛けて考えさせるのが有効です。

徐々に声を掛けられなくても自分で判断できるようになっていくので、子どもの成長を見られるのも親として嬉しいポイントです。

 

3-4.ここぞ、というときにだけ叱る

日頃から「コラ!ダメでしょ」と口先だけの注意を浴び続けていると、子どもにも”慣れ” が出てきてしまいます。

肝心な時に注意の声が耳に届かなくなるので、ここぞ、というときに効果を発揮するよう「必要・不必要」を意識して声掛けするのが重要です。

料理や掃除など、何かをしながらの”ながら叱り” も効果が見込めませんので、一旦手を止めて目を合わせながら伝えましょう。

伝えるときは「必要なときだけ・真剣に」を意識するのがポイントです。

 

3-5.「お行儀が悪い」が起こらないよう予防する

親も子どもも、注意する・されるが起こらないのがベストです。

「お行儀よくしていてほしい」と思うシーンでは、本やシールといった周りの迷惑にならないおもちゃを持って行くなど、あらかじめ準備しておきましょう。

疲れや眠さが引き金になることもあるので、子どもの体調や疲れ具合などに対応するのも重要ですね。

まだまだ幼い年齢なので、大人が思う「お行儀のよさ」を完璧に行うのには無理があります。

大人が先回りして対処することで防げることもたくさんあるので、工夫してみましょう。

 

4.【シーン別】「お行儀の悪い子ども」への対処法

では実際に「お行儀が悪い」行動をがあったときの声掛けパターンを見てみましょう。

よくあるシーンを危険なとき・ルールがあるとき・配慮が必要なときの3つに分け、それぞれの対処法をご紹介します。

声掛けに「プロンプト」の要素を入れているので、取り入れられるシーンでは活用してみてくださいね。

 

4-1.危険なときはどうする?

「お行儀が悪い」と言われる行動の中には、危険を伴うものが数多くあります。

これは行儀の良し悪しに限らず、迷わず叱りましょう。

例:

「道に飛び出したら危ない!車が突然きてぶつかったら、大きなけがをしてしまうよ。

お母さんと手をつないで渡ろうね」

「滑り台の上で友だちを押したらいけない。落ちて怪我をしてしまうよ」

 

4-2.ルールがあるところではどうする?

「お行儀が悪い」と言われるときは、ルールを守らなかったときも多くあります。スーパーやよそのお宅などには、それぞれルールがあることを教えましょう。

望ましくない行動が出たときは、電車を降りる・お店を出るなど、その場から離れることも有効です。手間はかかりますが、繰り返し行って身に付けていきましょう。

例:

「お店のものはお金を払って買うルールがあるんだよ。

今日は買わないから棚に戻そうね or レジでお会計を済ませてから渡すね」

「友だちのお宅は自分のお家ではないから、まずはお家の人に聞いてみようね」

 

4-3.周囲への気遣いが必要なところではどうする?

明確なルールがあるわけでない場所だったとしても、周りの迷惑となる行動をとったときは「お行儀が悪い」と表現されます。

電車や図書館、病院などで周囲への配慮ができたら、子どものうちに身に付けておきたい「お行儀のよさ」はひとまず達成できたと言えるでしょう。ここを目指していきたいですね。

例:
「病院に来ている人は具合が悪いから大きな声を辛く感じるよね?静かに話そうね」

「図書館では静かに本を読みたいよね?お話するときは外に出ようね」

 

5.叱る?叱らない?「行儀の悪い」子どもの友だちへの対処法

最後は、多くの親御さんが悩まれる子どもの友だちの「お行儀の悪さ」への対処法について見てみましょう。

子どもの交友関係が広がるにつれ、このようなお悩みは増えがちです。

叱っていいのか・悪いのか、もし叱ることになったときは何に注意したらよいのか、順番に見てみましょう。

 

5-1.「叱っちゃダメ」ではない

子どもの友だちともなると、我が子ではないだけに「叱っていいの?叱らない方がいいの?」と迷いますよね。

結論から言うと、「危険が及ぶ場合」や「必要と判断した場合」は叱ってOKです。

ただしこれは個人の価値観に基づくものなので、様々な意見があることを認識して行うのが重要です。

注意する親・見てない親・見てはいるがヨシとする親…… それぞれのやり方があるので、できるだけ相手方の親御さんの方針を尊重するのがベストです。

 

5-2.叱るときの注意点

では、いざ叱ることになったときはどのような点に注意したらよいでしょうか?

以下のポイントを見てみましょう。

  • 言葉を選ぶ
  • 穏やかな口調で伝える
  • 叱るのではなく”注意” で伝える
  • 子ども自身が気づくような声掛けをする

自分の親以外からの注意は、子どもに予想以上のショックを与えることがあります。

ときには改善をゴールとするよりも気をそらす方が得策の場合もあるので、慎重に行いましょう。

 

5-3.根拠や理由を明確にしておくのが大切

よそのお宅の子どもを注意するときは、相手方の親御さんとトラブルになる可能性もゼロではありません。

そんなトラブルを防止するためにも、自分がなぜそのような行動を取ったのか、言葉で明確に伝える準備をしておきましょう。

よそのお宅の子は「叱ってはいけない」というわけではありません。子どもと一緒にいる大人として必要に応じて対処しなければならない場合もあるので、心の準備をしておきましょう。

 

6.親子で「お行儀のいい・悪い」について考えてみましょう

「お行儀がいい子ども」は、時に「子どもらしくない」「親のいいなりで可哀想」といったネガティブなイメージを持たれることも少なくありません。

しかし本来の「行儀のよさ」とは、周囲に思いやりの心をもって振る舞うことです。

お行儀のよさは一朝一夕には身に付きません。将来子どもたちが他人の立場や気持ちを慮れる人になれるよう、今のうちから「お行儀のよさ」について一緒に考え、生き抜く力をサポートしていきましょう。

 

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主な参考文献
・認知行動療法:大月 友,行動変容技法の基礎,放送大学教材,2020
小関 俊祐,認知行動療法に基づく教育・特別支援分野における事例の見立てと支援,桜美林大学 リベラルアーツ学群,発行年不明

 

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