子どもの性教育は5歳頃からがチャンス!家庭でできる教え方や内容とは?
この記事を書いた人
haru*(はる)
- 養護教諭
- 心理カウンセラー
養護教諭として小・中学校に7年間勤務し、妊娠を機に退職。
現在は4歳の子どもを育てながら、フェルト生地を使った知育玩具のハンドメイド作品販売「sewing_haru*」の運営と、子育てメディアなどで記事の執筆をおこなっています。
子どもの「好き」をたくさん見つけて増やしていく子育てを目指しています!
自分の体や親御さんの体についてお子さまから、「なんでママには、おちんちんがないの?」「ママのおっぱいは、パパのより大きいよね」などと聞かれたことはありませんか?
幼児期は特に、「なぜ」「なに」がさかんな時期。 たくさんのことに疑問をもちます。
しかし、「性教育はまだ早いかもしれない」と考えたり、きちんと答えることに抵抗を感じたりする親御さんもいるのではないでしょうか。
性教育は、自分自身はもちろん自分以外の人への思いやりの気持ちを育て、命をつなぐためにも大切なものです。
そして、家庭で性教育を始めるのにも、じつはベストなタイミングがあります。
・なぜ幼児期に性教育が必要なの?
・なぜ、5歳ごろが適しているの?
・性教育を学ぶとなにが身につくの?
という視点に加えて、家庭でできる「性教育の伝えかた」についてもまとめていきます。
お子さまへの「具体的な声かけのしかた」も紹介しているので、ぜひ、家庭で性教育をする際の参考にしてください。
目次
1.幼児期の性教育とは?
幼児期の性教育とは、「男女の性差」や「プライベートゾーンの存在」などの「性」に関して興味を示し始めたときに教えることです。
幼児期のうちに「性」について学ぶことで、「自分の体は大切なんだね」「命ってすごいね」のように、身体の大切さや「命」の存在を考えることにつながります。
では、具体的に「幼児期に性教育をする意義」や「何歳頃から始めればいいのか」について説明します。
1-1.幼児期に性教育が必要なのはなぜ?
海外では、5~18歳以上の子どもと若者を対象に「包括的性教育(包括的セクシュアリティ教育)」がおこなわれています。
これは「幸福」「健康」など一部にかたよった考えや知識を伝えるのではなく、「肉体的」「精神的」「社会的」といったすべてのバランスが満たされた状態になることを目指しておこなわれている教育です。
国連教育科学文化機関(UNESCO)が5つの機関と協力して作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』は、“性教育のグローバル・スタンダード”とされています。
幼児期から正しい性教育をおこなうことで、「幸福」「健康」「肉体的」「精神的」「社会的」これらのすべてを満たし、ウェルビーイング(満足した生活が送れている状態)の実現につなげていくことを目指しています。
早い段階から、“人権を基盤に、性についてのポジティブなイメージを育てて欲しい”というのが、このガイダンスの狙いであり願いなのです。
1-2.性教育スタートのチャンスは5歳頃
5歳頃は、ものごとの仕組みをきちんと理解しようとする意識が芽生える時期のため、自分から関心をもったものに対しては、学習意欲が高まる傾向にあります。
たとえば「2つに切りわけたものをまたくっつければ、もとの形に戻る!」のように、ものごとの科学的な仕組みを理解することができます。
また、「猫と犬はなにがちがうかな?」と異なる2つを比較させると、「鳴き声がちがうよ」「べろ(舌)がちがうよ」のようにちがいに気づき、説明ができます。
5歳頃の子どもは、知識を身につけた状態の固定概念がなく、教えられたことを素直に受け入れることができます。
このように性に対して先入観なく理解ができるという点も、性教育スタートに適しているといえるでしょう。
また、前述の『包括的性教育(包括的セクシュアリティ教育)』でも「セクシュアリティ教育は5歳から始まる」とされているため、幼児期の5歳頃が性教育をスタートするチャンスといえるのです。
2.性教育を学ぶとなにが身につくの?
性教育というと、「生殖器」や「性行為」について学ぶものだと考えるかたも多いかもしれません。
しかし、性教育で真に伝えたいのは、もっと広い範囲におよびます。
たとえば「自分の性を理解すること」「男女のちがいを理解すること」「相手の性を理解し、思いやりの気持ちを持つこと」のような内容も、性教育に含まれているのです。
ここでは、性教育を学ぶことで育つ力を3つ紹介します。
2-1.自分を大切にする「自尊感情」が育つ
性教育は、自分の体について科学的に学ぶことでもあります。
「性」を科学的に学び正しく理解することで、自分のからだに興味を示すきっかけづくりになるのです。
自分の体の神秘に気づくことで、「自分の体は自分のもの」「自分の体は大切なもの」とのように、ありのままの自分を受け入れるようになります。
ひいては、自分を大切に思える「自尊感情」が育ちます。
また、自分の体を大切に思う気持ちは「自分の命を大切にすること」につながり、「自分は他にはない、かけがえのない存在なのだ」と理解していきます。
お子さま自身が自分の命を大切にして守るためにも、自尊感情を育てる性教育は重要な役割を担うといえるでしょう。
2-2.他者を思いやる心が育つ
この世でたった1人の「自分」を大切に思う「自尊感情」が育ったうえで他者とコミュニケーションをとると、「自分の命」と「他者の命」の存在について考え始めます。
「自分の命」と「他者の命」の存在に気づくことで、「自分の命と同じように、相手の命も大切なもの」という認識をもつようになり、相手の気持ちやからだを思いやる心につながります。
人間関係の中心にはいつも「大切な自分がいる」という気持ちがあるからこそ、他者の存在を意識し大切にすることができるのです。
命の尊さを知ることで、「自分と他者は違っていても、誰もがみんな、敬われるべき存在なんだ」ということを、なんとなくでも理解することができるでしょう。
2-3.子ども自身が自分を守れるようになる
幼児期の性教育では、「他の人に触られてはいけない場所がある」「イヤなことはイヤだと言う」などのメッセージも伝えていきます。
子どもが自分の身を自分で守ることにつなげるためです。
『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、世界の標準的な「性教育スタート時期は5歳から」としています。
しかしその目標とは裏腹に、日本だけをみても、18歳未満の「子どもの性被害」の検挙件数は増加傾向にあります*。これには、低年齢児童(未就学児など)の被害報告も含まれます。
未就学児も性犯罪に巻き込まれるリスクはあります。
子どもが自分で「これはいけないこと」と気づいて身を守るためにも、幼児期からの性教育は大切といえます。
*)『【児童ポルノ事犯】被害児童の学職別・被害態様別の割合』 警察庁 関係統計 統計データ
性差を学ぶことで、「男女の性差があっても男女は平等である」と知ることも大切です。
「男だからこう」「女だからこう」のように固執するのではなく、「男女は平等である」という認識をもつことで、自分や他者の「ありのままの姿」を受け入れることにつながります。
ありのままの自分を大切にできるようになり、相手を尊重して思いやりの行動がとれるように、正しい性教育をしていきましょう。
3.おうちで性教育|子どもに何を伝える?
幼児期に家庭でできる性教育について考えるまえに、学校でおこなわれる性教育について確認しましょう。
日本の学校での性教育は、文部科学省が定める学習指導要領に基づいておこなわれています。 学ぶ内容は大きく分けて3つあります。
・小学校4年生の保健体育では「月経」「精通」について
・小学校5年生の保健体育では「生殖器」について
・中学校の保健体育では「受精~妊娠」について
現在、小中学校では「妊娠にいたる過程・経過」については取り扱わないため、妊娠する行為や正しい避妊の知識を学校では学べません。
そのため、理解が不十分なまま性行為をおこなったり、性感染症へのリスクを高める行為をしたりする可能性があります。
このように、学校で学べる領域は限られているため、家庭でも「性」についての知識を補っていくことが大切です。
それでは、具体的にどのように「性」について伝えていけばよいのでしょう。
5歳児への「伝えるタイミング」や「具体的な伝えかた」について、内容別に3つ紹介していきます。
3-1.性教育の伝えかた①|子ども自身の「性」について
「性の話題=恥ずかしいもの」と捉えると、お子さまが性に関する悩みや疑問に思ったことを隠してしまい、誰にも話せなくなる可能性があります。
子ども自身の「性」についての悩みや疑問に親身になって答えられるのは、親御さんです。
おうちで気兼ねなく「性の話題」ができるような雰囲気づくりをし、お子さまの悩みや思いにすぐに気がつけるようにしましょう。
では、「性のことが話せるような雰囲気づくり」はどのようにすればよいのでしょう。
【伝えるタイミング&伝えかた】
お風呂やトイレなどがきっかけで、子どもが自分自身の体に興味を示すことがあります。
興味を示したときが、性教育のチャンス!
「これは、『おちんちん』っていうんだよ。男の子についているんだよ」「これは、『おっぱい』っていうんだよ。女の子が大きくなると、ママみたいに膨らんでいくんだよ」のように、お子さまでもわかりやすい名称を入れて説明をしましょう。
興味を示したときに、親御さんが恥ずかしがらず隠さず説明をすることで、自分の体についての「性」の理解へスムーズにつながります。
3-2.性教育の伝えかた②|性差について
子ども自身が自分の「性」について理解すると、「ぼくには『おちんちん』があるから男の子だ!」「わたしには『おちんちん』がないから女の子!」のように、性差に気がつくことにつながります。
性差を認識することは、学校の授業で学ぶ「性の知識」を身につけるための土台づくりになりますよ。
【伝えるタイミング&伝えかた】
お風呂やトイレなどの日常生活のなかで、ママやパパの体のつくりのちがいを説明しましょう。
「お子さまの体とおなじつくり」「お子さまの体とちがうつくり」を説明することで、「ぼくはパパとおなじ体だ!」「ぼくとママの体は、ちがうところがあるね」のように性差を認識することができし、子どもは正しい知識を得られます。
また、トイレのときに「トイレのしかた」にも男女のちがいがあると説明することで、「わたしは女の子だから、座ってトイレをするの」「立ってトイレをする男の人が多いのね!」と性差を理解し、より理解を深められるでしょう。
3-3.性教育の伝えかた③|まずは、プライベートゾーンについて
日常生活をしていくなかで、緊急のとき以外で相手の同意もなく体に触れることはありません。
たとえばスポーツでも、他の人に触れるときにはかならずルールがあるように、日常生活でも他の人に触れるときにはルールが存在します。
相手の体に触れるときには、いつも相手の同意が必要なのです。
お子さま自身がその認識をもち、「自分の体は、他の人が触れたり、みせたりしてはいけないもの」と理解することが大切です。
そのためにも、まずは『プライベートゾーン』の存在を教えましょう。
プライベートゾーンとは、「口」「おっぱい(胸)」「性器」「おしり」のことを示します。 プライベートゾーンは「恥ずかしい場所」ではなく、「命をつなぐための大切な場所」です。
もし誰かに「プライベートゾーン(おちんちんやおっぽいなど)をみせて」「触らせて」と言われたり、無理に触られたりしそうになったときには、はっきりと「イヤ!」と言ってその場から逃げて、おとなに相談できるようにうながしていきましょう。
【伝えるタイミング&伝えかた】
お風呂や着替えをするタイミングで、プライベートゾーンの存在を教えましょう。
「他の人にみせたり触らせたりしない場所は、肌着で隠してあるんだよ」「お口はご飯食べる場所だから隠せないけど、肌着で隠してある場所とおなじくらい大切なんだよ」と伝えます。
また、「自分がイヤだと思ったら、『イヤ!』と言っていいんだよ」と教えておくことで、子ども自身がプライベートゾーンを守ることにつながります。
子ども自身が「プライベートゾーンは大切な場所」と理解して、自分でもしっかりと守れるように声かけをしていきましょう。
お子さまが興味を示したり疑問に思ったりしたときに、ごまかさずにその場できちんと伝えることが大切です。
また、「お風呂でのおちんちんの洗いかた」や「立ってトイレをするやりかた」の説明など、父親だからこそできる性教育もあります。 母親だけが担うのではなく、父親も一緒になってお子さまの性教育に取り組んでいきましょう!
4.おうちで性教育|こんな時はどう教える?家庭で性教育をするときのQ&A
おうちで性教育をするときに、どのように声かけをしたらいいのか迷うことが多いですよね。
ここでは、性教育に関する疑問をQ&Aにして3つ紹介します。
4-1.話してもいい場所・いけない場所を教えるときの声かけ
Q. 人がいる前でも、子どもが楽しそうに「おちんちん!」「おっぱい!」と言ってしまうことがあります。 やめて欲しいのですが、どのように伝えたらいいのでしょうか?
A. 話してもいい場所・いけない場所をしっかり教えましょう。
お子さまはまだ、「どこで、どんな話をしていいか」がわかりません。
そのため、公共の場でお子さまが「おちんちん!」「おっぱい!」と言ったとき、まわりの反応を楽しんでいることも…。
一方的に怒ったり一緒に笑ったりすると、かえって性のタブー感を強めてしまい、性の話題に触れにくくなってしまう可能性もあります。
「性の話題がダメ」なのではなく、「人がいるところで性の話をすると、聞きたくない人もいるかもしれないから、おうちで話そうね」と説明をしましょう。
お子さまも、すぐには納得できず、またおなじように公共の場で性の話題を出すかもしれません。 そのときはまた説明をして、「おうちで話すこと」と理解できるようにうながしていきましょう。
4-2.子どもが自分の体を触っていたときの声かけ
Q. 子どもが自分の体(性器など)を触っていたときに、どのように声かけをしたらいいのかわかりません。
A. 「触るのはダメ」と一方的に禁じるのではなく、触るときのマナーを教えましょう。
性器を触っていたときに「触っちゃダメ!」と叱ってしまうと、「これはいけないことなんだ」と委縮してしまい、子どもが性の話題をしにくくなる場合もあります。
触っていることを叱るのではなく、「あなたの大切な体だから、触るときは人にみられないようにしようね」「傷がついたりバイ菌がついたりしたら大変だから、手をきれいにしてから触ろうね」のように、触るときのマナーを教えましょう。
性器を含めて、体に興味をもつことは自然なことです。 たまにみかける程度であれば、基本的に放っておいて大丈夫です。
ただし、頻繁にみかけた場合は皮膚にトラブルが生じている場合もあります。 お子さまに、「かゆい場所はないか」「痛いところはないか」を確認したり、「なにかイヤなことでもあった?」など、さりげなく声をかけてみましょう。
4-3.生理を不思議に思ったときの声かけ
Q. 子どもが生理の血をみたときに「これなに?」と聞いてきました。まだ子どもだし、どう説明したらいいのかわかりません。
A. 子どもでも想像できるような表現を使って、生理について説明をしましょう。
親御さんと一緒に過ごしていれば、お風呂やトイレのときに、生理をみかける機会もあります。
お子さまが不思議に思ったときが、性教育の学びのチャンスです!
「生理は赤ちゃんのベッドをつくるために大事なこと」のように、子どもにもわかりやすい表現を使って教えましょう。
生理の説明をごまかすのではなく、「赤ちゃんのためのベッドとしてママのお腹のなかにあったんだよ。これは生理といって、毎月、新しいベッドにかえて準備するんだよ」と、隠さずに説明をしましょう。
また、「ベッドをお掃除するときに、お腹が痛いときもあるんだよ」と話すことで、「ママが生理のときは、体調が悪いときもあるんだね」と理解していきますよ。
我が家ではこう伝えました!
筆者の息子は4歳です。お風呂に入ったときに「ママの生理」について疑問を抱きました。
そこで性教育の一環として、「赤ちゃんのためのベッドを新しいベッドにかえてあげるんだよ」「お腹が痛くなったり、イライラしたりすることもあるんだ」と、包み隠さず説明をしました。
最初のうちは、「そうなんだね」くらいの反応で、理解したのかしていないのかもわかりませんでした。
月に1回訪れる生理のたびに説明をしていくと、しだいに息子は生理について理解をし始めました。 私が「ママは今日、生理なの」と伝えると、「じゃあお腹痛い?あったかいお布団かけてあげるね!」「ホッカイロもってきたよ!これでお腹あっためてね!」と、ママの体を気遣うように…!
さらに息子は、「今日はママがつらい日だから、お布団のところにおもちゃをもってきてあげるね!寝ころびながら、一緒に遊ぼう!」と言ってくれるようになりました。
正しい性の知識を教えることで、相手の状況をしっかりと理解し、思いやりの気持ちが芽生えます。 ぜひ、お子さまが疑問に思ったときに、正しい性の知識を伝えて教えていきましょう!
5.性教育をオープンな話題にして聞きやすい環境をつくろう
性教育は、自分自身を守るためにも他者への思いやりの心を育てるためにも、とても大切なことです。
家庭で性教育をすることで、お子さまが感じた悩みや疑問を、親御さんに気軽に聞けるような環境づくりができます。
お子さまが「性」について疑問を抱いたときが、性教育スタートのチャンスです。
「5歳」にこだわらなくても大丈夫。 お子さまのペースに合わせて、家庭でも性教育をしていきましょう。
参考文献
・国際セクシュアリティ教育ガイダンス
・警察庁「なくそう、子供の性被害。」関係統計 統計データ【児童ポルノ事犯】被害児童の学職別・被害態様別の割合
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