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小学校低学年のいじめが増えている?いじめの原因や対処法を深く解説

この記事を書いた人

狩野淳 狩野淳

狩野淳

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。

臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。

子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。

もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!

低学年でもいじめって起きるの?

いじめられたら(いじめたら)どうすればいいの?

親にはなにができるの?――――。

いじめは大なり小なり、どの学校にも存在する問題です。

今回は、大人である私たちが、いざというときに子どもへ適切にサポートできるように知っておいてほしい「いじめ」についてお話しします。

増加しているといわれる「小学校低学年」を対象に、いじめの現状といじめが起きる要因、いじめが起きているときにどうすればよいのかといった対処法について解説しています。

子どもが学校でつらい目に合っていたら耐えられませんよね。

私たち親がいじめが起きる要因や対処法を知っていれば、1日でも早くいじめの苦しみから我が子を救い出すことができるかもしれません。

今はいじめのターゲットになっていないお子さんもいつ標的になるかわかりません。しっかりと対策をしていきましょう。

 

目次

 

1.知っておきたい「いじめ」について│低学年に多いって本当?

いじめはとてもあいまいなもので、人によっては考え方が違う場合もあります。

そこでまずはいじめについて再確認していきましょう。

 

1-1.いじめの定義~どこからがいじめ?~

いじめの定義として文部科学省は「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」としています。

つまり、「いじめ被害者の子とある程度関係性がある子から受ける、悪口や無視、暴力や物を隠すといった行為で、被害者が苦痛に感じているもの」がいじめと認定されます。

さらに、SNSを通じて悪口を言ったり、勝手に写真をアップロードするといったインターネットを通した行為もいじめの対象とするとしています。

 

1-2.小学校におけるいじめの実態

次に小学校でのいじめの実態について解説していきます。

文部科学省によるといじめの認知件数はコロナ禍の影響が大きかった令和2年度を除けば、年々増加傾向にあり、令和3年度は50万件を超えています。

また学年別にみると小学2年生が最も認知件数が多く、その次に多いのが1年生で、それ以降は学年が上がるごとに認知件数が減少しています。

このことから、いじめ問題は年々拡大しており、特に低学年では目に見えるいじめが頻発しているということがわかります。

 

1-3.低学年のいじめの特徴

では低学年ではどのようないじめが行われているのでしょうか。

東京都教職員研修センターによると、低学年のいじめはちょっかいを出すというような「叩いたり、蹴ったり」「悪口」「人の嫌なことをする」などが多いとされています。

高学年になると「無視」や「仲間外れ」といったいじめが行われるようになりますが、低学年ではこのようないじめはあまり見られません。

そのようなことからいじめが認知されやすく、結果として件数が多くなっているのかもしれませんね。

 

2.低学年クラスでいじめが起きる要因とは?

ランドセル

いじめについて解説する中で、低学年でのいじめ認知件数が最も多いと紹介しました。

ではなぜ低学年でいじめが起こってしまうのでしょうか。その要因について解説していきます。

 

2-1.欲求不満やストレス

低学年でいじめが起きる要因の1つとして「欲求不満やストレス」が考えられます。

1年生の場合は慣れない集団生活や学習環境の中で暮らすことを強制されるため、欲求不満状態に陥ります。

2年生についても「もう1年生じゃないんだから」と指導が少しずつ厳しくなってくることや集団を乱さないように行動を制限される場面があるためストレスが溜まることがあります。

成長するにつれてスポーツに打ち込んだり趣味に没頭したりすることで欲求不満やストレスを解消することができます。

しかし、低学年の子どもにはまだまだ難しいため、身近なクラスメイトに嫌がらせをしたり、悪口を言ったりして欲求不満やストレスを発散するようになり、だんだんとエスカレートしていじめへと発展するケースが非常に多いです。

 

2-2.未熟な対人関係スキル

また低学年は対人関係スキルが未熟なため、話し手が「相手の気持ちに沿った言動をとれない」「悪意なく相手を傷つける」ことが多々あります。

また受け手側も言葉の意味通りにとらえてしまうため、大人なら簡単に受け流せてしまうような些細なことで傷つき、「自分はいじめられたんだ」と思い悩んでしまうこともあります。

普段から一緒にいる時間が長く、大人からすれば仲良しだと思っていた子ども達がこういった理由から急に疎遠になることは決して珍しくありません。

 

2-3.学級内の雰囲気

いじめの要因は何も子ども同士の関係性だけで起こるのではありません。クラスの雰囲気も大きく関係しています。

低学年はパワーがあり、行動に自制がきかない子もいるため、担任もそれ相応の力量が求められます。

まだ先生としても経験が浅かったり、内気な性格の場合は、子ども達に「この先生ならふざけてもいいな」「ちゃんとしなくてもいいな」と「読まれて」しまうことで学級内の雰囲気が緩んだものになってしまいます。

そうすると統率がきかず、授業も成立しない、いじめが横行する環境になってしまうのです。

 

3.いじめられたらどうすればいい?対応の流れ

いじめが起きる要因について確認することができました。

もちろんこのほかにも様々な要因が複雑に絡み合い、いじめが発生してしまいます。

それでは次にいじめられているときに親には何が出来るのか、どんなことをしてあげられるのかについて解説していきます。

 

3-1.対応1:子どもからいじめ加害者に「やめて」と伝えさせる

すでに紹介した通り、低学年のいじめの場合には、必ずしも相手が明確な悪意をもっていじめてきているとは限りません。

対人関係構築スキルやコミュニケーション能力の未発達さから「嫌がっている、傷ついている」とは気づいていない場合があります。

そこでまずは「やめて」と伝えてみることが大切です。そうすることで相手が「嫌だったんだ」と気づき、問題が解決するケースは非常にたくさんあります。

お子さんとしても「嫌なときはきちんと伝えると改善する」という成功体験に結びつきますし、両者にとって学びとなります。

その際に子どもの口から「やめて」と言わせることが重要です。低学年だからといって何でもかんでも親が介入すればいいというものではありません。

この先お子さんはたくさんの壁にぶつかり、乗り越えていかなければなりません。子どもの力で解決できる問題、段階なのであれば助言だけにとどめ、見守ってあげましょう。

 

3-2.対応2:スクールカウンセラーや弁護士に相談する

相手が明確な悪意をもって、複数人でいじめを行っているのであれば子どもだけで対処するのは難しいでしょう。

その際には学校、特に担任スクールカウンセラーに相談してください。担任に相談するチャンスはたくさんありますので今回は割愛して、スクールカウンセラーをメインに紹介していきます。

スクールカウンセラーは心理のプロであり、いじめや不登校といった学校のトラブルへの対処法を熟知しています。

スクールカウンセラーに相談するには、担任にスクールカウンセラーと面談したい旨を伝えるというのが手っ取り早いでしょう。

学校は問題に対してチームで対応するのが基本のため、担任やスクールカウンセラーに相談した時点で校長先生や教頭先生といった管理職、保健室の先生などの養護教諭にも情報が伝わります。

親御さんを含め、5~6人ほどで話し合いをするケースもあります。

いじめは本当に起きているのか、どんな内容なのか、改善するにはどうすればよいのかを議論し、改善へと繋げてくれるでしょう。

またいじめの内容が「暴力」や「金銭トラブル」にまで発展している場合は弁護士に相談することもできます。

学校で起きたトラブルは「子どものしたことだから~」となんとなく許される雰囲気がありますが、暴力やお金をとるといった行為は立派な犯罪ですので、損害賠償の対象にもなりえます。

いじめた子が注意されるだけで許されると、いじめられた子は「自分が間違っていたんだ」「自分がおかしかったんだ」と間違った方向で解釈してしまいます。

自治体によってはいじめの無料相談を行っている弁護士会もありますので、場合によっては躊躇することなく相談してみてください。

 

3-3.対応3:物理的に距離を置く

ここまで対処法について紹介してきましたが、それでも改善・解決しない場合があります。

そんなときには引っ越しや転校をすることで「物理的に距離を置く」ことも視野に入れてください。

小学校低学年は本当に大切な時期で、ここからつまずいてしまうと、将来に多大な影響を及ぼしかねません。その学校にいる限り「いじめられた事実」や「またいじめられるかもという不安感」からは逃れられません。

この提案をすると「いじめられた側が逃げるなんて、こっちが悪いみたいじゃないか。悪いのは向こうだろう!」と怒る保護者の方がいらっしゃいます。

確かにそのように捉えることもできるでしょう。しかし実際に学校に通うのは子どもです。苦しい思いをするのは子どもなのです。

逃げたと周囲から思われるかもしれませんが、転校することで環境を変え、新しい友達を作り、楽しい学校生活を送ってもらうことの方が「逃げずに辛い思いをした」ことよりも何倍も価値があるとは思いませんか?

逃げることは決して悪いことではありません。失敗から学び、次に生かしていくことでよりよい人生を送ることに繋がります。

もしもお子さんから「引っ越したい」「別の学校に行きたい」と話があるようでしたら、「どこにも行きたくない」「学校には絶対に行かない」と社会とのつながりが途切れてしまう前に行動に移すことをお勧めします。

 

4.いじめられない、いじめをさせないために親ができることは?

いじめは被害者に心の傷を与え、加害者にも間違った学習を促す可能性やふとしたときの罪悪感に苦しむ場合があります。

いじめの対処法について解説しましたが、そもそもいじめが起きないようにするにはどうすればよいのでしょうか。

最後にいじめられない、いじめをさせないために親にできることについて解説していきます。

 

4-1.日頃から子どもとの時間を大切にする

何より大切なことは親子で過ごす時間を大切にすることです。

家族での時間が十分とれていれば、学校での欲求不満やストレスを解消することができるだけでなく、コミュニケーションの取り方、関係性の築き方を自然な流れで学ぶことができるため、いじめに繋がりにくい子どもにすることができます。

また、学校についてよく話を聞くことで、些細な変化に気づき、いじめられそうになっているときにはすぐに介入し、いじめを行いそうな方向に進んでいる場合は注意することでいじめを防ぐことができます。

 

4-2.学校以外での居場所を作ってあげる

学校以外での居場所作りも重要です。

学校はどうしても閉塞的な環境になりやすく、人間関係が固定化しやすいです。

上手く溶け込めないと対人関係スキルを伸ばすことができず、いじめられる、いじめる原因になるかもしれません。

そのため学校以外の活動場、具体的には習い事やママ友・パパ友の子どもとの交流の場を積極的に活用することで、学校以外でも遊べる、コミュニケーションをとれる人間関係を作る機会を用意してあげましょう。

欲求不満やストレスの解消、人間関係の学びの場だけでなく、親同士悩みを相談し合うなどの親御さんのリフレッシュの場としての機能を持たせることができるため、非常に効果的です。

 

4-3.担任の先生をはじめ、学校と日頃からコミュニケーションをとる

そして学校と常日頃からコミュニケーションをとっておきましょう。

子どものことをよく見てくれているのは間違いなく学校の先生です。学校の先生と良好な関係を築けていなければ逃してしまう情報もあります。

いざというときに力になってくれる学校を味方につけない手はありません。

  • 機会を見つけて積極的にコミュニケーションをとる
  • 校長先生や教頭先生の人柄を知ろうとする
  • スクールカウンセラーはどんな人でいつ学校に来ているのかを把握しておく

このような地道な活動が子どもをいじめから救う足がかりになります。面倒かもしれませんが、少しずつ出来るところから始めていきましょう。

何を話せばいいだろう?と悩む方は、まずは「この間、トトロの歌が給食中にかかって、それがうれしかったみたいで」など、子どもから話を聞いた学校での話をしてみると、自然と話がはずみますよ◎

 

5.いじめは他人事ではない!いたずらやふざけから要注意

新一年生

今回は小学校低学年のいじめ問題についての概要、いじめを引き起こす要因、いじめられたときの対処法といじめを起こさない親のかかわり方について解説してきました。

今回は低学年をメインに話しましたが、もちろん中学校、高校、大学そして社会に出てもいじめはあります。長い人生を生きていく中で、決して他人事ではありません。

いじめ問題は予防と早期対応が重要です。今回の内容をきっかけに、お子さんがいじめ問題に巻き込まれていないかを確認してみてください。

問題が起きている場合は、すぐに対策を立て、被害を最小限にしていきましょう。

 

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お子さんの「知る楽しさ」を引き出し、学びの力を自然と育みます。

毎日の小さな学びが、未来の大きな成長につながるはずです。

親子でも子どもひとりでも楽しく読めます。

これからの未来を生き抜く力、学びの力を伸ばすために新聞をご活用してみてはいかがでしょうか。

 

主な参考文献
文部科学省 初等中等教育局,いじめの状況及び文部科学省の取組について,2022
東京都教職員研修センター,第1章 いじめの心理と構造

 

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