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発達検査と知能検査の違いは?内容やメリット・デメリットを公認心理師が解説!

この記事を書いた人

狩野淳 狩野淳

狩野淳

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。

臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。

子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。

もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!

「園から、発達や知能に関する検査を進められたけれど、受ける必要があるの?」
「どこで受ければいいの?」
「どのようなことをするのか、どんな結果がでるのかわからない」

そんなお悩みや不安をお持ちの保護者の方へ。発達検査や知能検査の概要から、検査を受けるメリット・デメリット、検査を受ける際に気を付けてほしいことについて解説します。

多くの方にとって発達検査や知能検査は馴染みがなく、イメージするのが難しいため、「なんとなく怖い」「できるなら受けさせたくない」と考えるかもしれません。

しかし、各種検査は子どもの発達状況を把握し、よりよい環境を作っていくための便利な道具です。

まずは検査についての理解を深め、子どもへの支援のための選択肢の一つとして考えてみてください。

 

目次

1.発達検査・知能検査とは?

写真はイメージです。(photoAC

 

未就学の子どもが検査を受ける際に用いられる代表的なものとして、「発達検査」と「知能検査」が挙げられます。

本記事では、この発達検査と知能検査について概要を紹介します。

それぞれの検査で何がわかるのか、代表的な検査はどのようなものがあるのか、どこで検査を受けることができるのか、などについて解説していきます。

 

1-1.発達検査は、心身の発達状態を調べる

発達検査とは、心身の発達状態を確かめる検査のことを指します。

代表的なものに、「新版K式発達検査」があります。

新版K式発達検査は、おもちゃなどを用いて遊び方や検査者の言葉に対する反応などを見ながら、どの程度発達が進んでいるのかを確認します。

検査結果から、「今は、何歳程度の発達状況なのか」「同年齢と比べて発達が進んでいるのか・遅れているのか」「どの部分がどれくらい発達しているのか」について確認することができます。

 

1-2.知能検査は、知的発達の程度を調べる

知能検査とは、知識や理解度、記憶力など、知的発達がどの程度進んでいるのかを調べる検査のことを指します。

代表的なものに「ウェクスラー式知能検査」と「田中ビネー知能検査」があります。

どちらの検査も、検査者と1対1で問題に取り組み、検査を進めていきます。

検査結果から、100を基準とした知能指数(IQ)と得意な能力・苦手な能力がわかり、それをもとにどんなことに困難さを抱えているのか、どんなサポートがあれば困難さを解決できるかを考察していきます。

 

1-3.検査の適応年齢は?

適応年齢は、検査ごとに異なります。

◼️新版K式発達検査

発達検査の「新版K式発達検査」は0歳から成人まで実施可能です。「1歳の時には反応しなかったが、3歳では反応するようになった」「この項目についてはずっと同じ反応をしている」といった追跡調査が可能であることから、様々な場所で取り入れられています。

◼️ウェクスラー式知能検査

「ウェクスラー式知能検査」は、以下のように年齢ごとに3つに分かれています。

・WIPPSI(2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月)
・WISC(5歳0ヶ月~16歳11ヶ月)
・WAIS(16歳0ヶ月~90歳11ヶ月)

筆者の感覚になってしまうのですが、WIPPSIを用いる場所は少なく、この年代の知能検査には「田中ビネー式知能検査」が用いられることが多いです。

◼️田中ビネー知能検査

「田中ビネー知能検査」は、児童相談所などで多く採用されており、2歳から成人まで実施可能です。

 

1-4.検査時間はどれくらいかかる?

検査の所要時間も、検査やケースごとに異なります。

◼️新版K式発達検査

「新版K式発達検査」は、遊びの中で行動観察をおこないます。緊張をほぐすために教具の順番を変え、自由に遊ばせてみることもあります。子どもによって実施時間は変わってきますが、15分~1時間程度で終わることが多いです。

◼️ウェクスラー式知能検査

「ウェクスラー式知能検査」の場合は、1時間半~2時間程度かかる場合が多いでしょう。設問が多いため、途中に休憩を挟めばそれ以上かかることもあります。子どもが疲れていない午前中に行われることが多いです。

◼️田中ビネー知能検査

「田中ビネー知能検査」の場合は、ケースによって所要時間が大幅に変わります

この検査は「〇歳級」という区切りで問題が構成されており、全問正解できる年齢級と全問不正解になる年齢級を確定させる必要があります。 例えば、5歳の子どもが検査を受ける際には「5歳級」の問題からはじめ、「4歳級」「3歳級」と全問正解するまで年齢級を下げていき、次に「6歳級」「7歳級」と全問不正解になるまで年齢級を上げていきます。そのため年齢±1歳級で検査が終わることもあれば、年齢±4歳級の問題まで進むこともあるため、所要時間が読めないのです。

 

1-5.費用の概算はいくら?

検査にかかる費用は、実施場所によって変わります。

◼️病院などの医療機関

保険適用になる場合があり、費用を安く抑えることができます。同時に、予約が先まで埋まっていることが多く、検査を受けるのに時間がかかる傾向があります。

◼️教育支援センターなどの教育機関

無料で実施されているところもありますが、自治体によって取り扱いの差があります。「学校関係者以外には結果を見せられない」「保護者にも、口頭のみで説明する」など、検査結果を活用しきれない場合があります。

◼️児童発達支援事業所などの福祉事業所

医療機関や教育機関に比べると費用がかかります。事業所によって異なりますが、1万~1万5千円程度としているところが多いです。

医療機関と異なり、予約で埋まっていることは少ないため、申し込みから時間を空けず検査を行ってくれることもあります。「施設利用者のみ検査実施可能」など、事業所ごとに取り決めが異なる場合があるため、確認が必要です。

◼️心理系大学院付属の相談所  

5千円程度で検査を受けることができる場所もあります。しかし、心理職の育成施設であるため、大学教授からの指導や助言を受けた大学院生が担当することもあります。他の場所と比べると、検査結果の説明を丁寧に行ってくれる場合が多いでしょう。

検査を受ける際には、なるべく子どもの負担にならないよう、近くの場所や馴染みのあるところで受けることをおすすめします。リラックスして検査に臨むことができるため、より等身大のデータが得られる可能性が高くなります。

様々な視点から考えて、より適した場所で検査が受けられるといいですね。

 

2.発達検査・知能検査を受けるメリットとデメリット

写真はイメージです。(photoAC

 

次に、発達検査と知能検査を受けることで得られるメリットと、知っておかなければいけないデメリットについて紹介していきます。

正しく検査結果を活用すれば子どもにプラスに働きますが、注意しなければいけない部分もありますので、ぜひ確認してください。

 

2-1.メリット① 子どもの発達状況を確認できる

発達検査と知能検査は、身体の発達具合、知的能力の発達具合を数値で示すことができます。

主に用いられる検査は、わかりやすいように同年代の平均を100としており、100より高ければ得意な分野、低ければ苦手な分野であると、普段は目に見えない発達具合をわかりやすく示してくれます

得意・不得意が分かれば、得意な部分をさらに伸ばしたり、苦手な部分を克服するプログラムや他の能力でカバーする方法を考え、実施したりすることができます。つまり、支援の糸口となりやすいのです。

「なぜわからないのか」「なぜできないのか」が明らかになり、本人だけでなく保護者も納得して先に進めることは、発達検査と知能検査の大きな利点の一つです。

 

2-2.メリット② 合理的配慮を受けやすくなる

「合理的配慮」とは、「障がいや特別なニーズのある人が他の人と同じように学び、生活できるようにするための配慮」を指します。

具体的には、「発達に遅れのある児童に対して、特定の時間に補助の先生に来てもらう」「漢字を読むことに時間がかかる児童に対して、教科書やテストにルビを振る」といったことが合理的配慮といえるでしょう。

しかし、合理的配慮を受ける際には根拠を求められることがあり、学校や先生から「甘え」や「怠け」ととらえられてしまうこともあります。

そのときに、専門家が実施した検査結果があれば客観的な根拠となります。「適切な理由があるため、子どもが暮らしやすいように配慮してほしい」とはっきりと主張できるため、合理的配慮を受けやすくなります。

 

2-3.デメリット:数字が独り歩きする可能性がある

ここまで見ると、発達検査や知能検査を受けることがよいことに感じてしまいますが、気をつけなければならないデメリットもあります。

たしかに、発達検査や知能検査は素晴らしい道具で、効率的に子どもの状態に対するデータを集めることができます。

しかし、だからといって、子どものすべてを知ることができるわけではありません

そのため、「検査結果」=「子どものすべて」と考えてはいけないのです。

筆者が、検査についてあまり知らない先生やきちんとした説明を受けていない保護者と話していると、「この子は5歳なのに、精神年齢が2歳といわれて悲しい」「知能指数が70だから、できなくてもしょうがない」といった言葉をよく耳にします。

検査から導き出される数値は、「この子はこのぐらいの力がある。だから、こう支援していこう」と支援の方向性を決めるためのものです。

決して子どもに、「平均より下の子」「成長していない子」といったレッテルを貼るためのものではありません。

数字が独り歩きしてしまうと、検査結果が子どもにマイナスの影響を与えかねません。

保護者や本人にとってよくない結果を伝えられたとき、落ち込んでしまうのも当然のことです。

しかし大切なのは、結果を生かし、将来につなげていくことです。数字に囚われず、お子さんの得意な部分・伸ばしてあげたい部分と向き合ってあげてほしいと思います。

 

3.検査を受ける前に知ってほしいこと

写真はイメージです。(photoAC

 

筆者も、発達検査と知能検査を度々実施し、結果を伝えることも多くあります。

その際、保護者や保育園・幼稚園の先生、学校の先生が検査について勘違いしていたために、あるいは認識の違いからトラブルに発展することがあります。

そこで、検査を受ける前に知っておいてほしいことを紹介していきます。

 

3-1.検査結果がそのまま診断に結び付くわけではない

発達検査や知能検査で、発達や知的水準に遅れがあったとしても、それがそのまま発達障がいや知的障がいに結び付くわけではありません

たしかに、医師の診断の際に、判断材料の一つになることもあります。

しかし、診断は、検査結果だけではなく、医師の豊富な経験と知識に基づいて下されます。保護者や周囲の大人が「発達障がいだ」「この子はおかしい」と、短絡的に判断することは避けましょう。

同様に、高い数値が出たからといってなんの困りごともなく生活できるというわけでもありません。

得意な能力と苦手な能力の差が激しいことも、子どもの不全感や困り感につながります。

数値は目安と考え、子どもの発達具合を捉えるツールとして活用しましょう

 

3-2.検査者が検査に精通しているとは限らない

発達検査や知能検査を実施するにあたり、検査者に特別な資格や研修は必要ありません。

極論を言えば、やり方さえ知っていれば誰でも実施することはできます。

しかし、「実施すること」と「正しく活用すること」は全く違うことです。

そのため、検査を受ける際にはどんな人が検査をしてくれるのか、専門的な知識や経験があるのか、結果はどのような形で教えてもらえるのか、活用してくれるのかを確認することをおすすめします。

検査は、子どもに少なからずストレスを与えます。

「なんで検査を受けなきゃいけないの?」「自分はおかしいってこと?」など、検査に対して否定的な感覚をもつ子どもは少なくありません。グレーゾーンの子どもならなおさらです。

保護者が納得できる場所で、公認心理師や臨床心理士といった資格をもっている検査者から検査を受けられるとよいでしょう

 

3-3.③検査内容を家で練習したり、公表してはいけない

保護者の中には、検査結果に納得がいかない方もいらっしゃいます。

そのため、次回検査を受ける際に数値を上げようと、どんな問題があったかを子どもから聞き取って練習させたり、検査の内容についてSNSで発信したりする方がいらっしゃいます。

検査で得られる数値は、参考値でしかありません

そのため、家で練習して数値自体を上げたとしても、我が子の発達に関する課題が解決するわけではありません

また、検査内容を公表することは、他の子どもが検査を受けた際に正確なデータをとることができず、結果的に子どもにマイナスの影響を与えかねません。

検査にはありのままの状態で臨み、より正確で確実な情報が得られるようにしましょう

 

4.検査結果を活用し、子どもが過ごしやすい環境にしていきましょう

写真はイメージです。(photoAC

 

各種検査は非常に便利で、子どもの発達状況を正確に捉え、「発達」という目に見えないものを数値化し、その先の支援へとつなげる突破口となります

一方で、検査について正しく理解していないと、子どもにマイナスの影響を与えかねません。

検査はあくまで道具にすぎず、「検査結果をどのように生かすのか」がとても重要です。

わからないことは、検査者をはじめとした専門家に積極的に質問しましょう。

検査結果を活用して「どうすれば子どもの力を伸ばせるのか」「どんな工夫があれば子どもは楽に生活できるのか」を一番に考えてあげたいですね。

 

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