自分の話ばかり!人の話を聞けない子への関わり方・教えたい「会話力」
この記事を書いた人
はる
- 言語聴覚士
言語聴覚士として5年救急病院で働き、長女の妊娠を機に退職。
その後、3年児童発達支援施設で子どもと触れ合いながら言葉の力を伸ばすお手伝いをさせて頂いております。現在次女を出産し、育休中です。
仕事では「楽しみながら言葉の力を伸ばす」ということを大切にしており、「リハビリ!」と力を入れすぎず、子どもたちの沢山の笑顔を引き出しながら言葉の支援を行っております。
家庭では、子どもたちに「全身を使って沢山の経験を吸収してほしい」と考えて育児をしています。
「話しを聞いてくれない」「自分の話しばかりする」
我が子についてそんなお悩みをお持ちの親御さんへ向けて、今回は、子どもが「話しを聞けないのはなぜか」その発達・心理的な理由や、子どものうちから身につけておきたい「正しい会話の方法」や、「親の関わり方」について紹介します。
言語聴覚士である著者が「どうすれば人の話が聞けるようになるのか」「会話のキャッチボールを身につけさせるには?」という視点で解説します。お悩みのパパやママはぜひ参考にしてみてください!
目次
1.「自分の話ばかり」「話を聞けない」のはなぜ?
子どもが「自分の話ばかりする」「人の話を聞けない」理由はさまざまです。
親としては「ちゃんと話を聞いてほしい」と感じるかもしれませんが、それは子どもの「話したい!」という気持ちが成長している証でもあります。
今回は、以下の3つの側面から子どもが自分の話ばかりする理由を考えてみましょう。
- 発達的な側面:言葉の学習期
- 心理的な側面:認めてほしいという気持ち
- 社会的な側面:会話のルールの理解不足
1-1.①発達的な側面:言葉を使ったコミュニケーションの学習期
子どもが何かに強い興味を示す時期を「敏感期」と呼びます。モンテッソーリ教育では、0~6歳を「言葉の敏感期」と位置づけています。
この時期、子どもは言葉への興味が強まり、たくさんの言葉を覚え始めます。敏感期は、興味をもった対象への好奇心と学びが著しく伸びる時期です。
0~3歳は「話し言葉」に興味をもち、周りの大人や環境からたくさんの言葉を学びます。3〜6歳になると「書き言葉(文字)」に興味を示し、ひらがなを読んだり、書いたりするようになります。
4歳くらいまでの子どもは、大人の助けを借りながら、子ども同士でも会話することができるようになってきます。
しかし、幼児期には子ども同士での会話はまだ難しいものです。ある研究によると、6歳になっても、子ども同士での会話がスムーズに進むのは6~7割程度だといいます。
子どもはまず、自分の身の回りのことや体験したことを言葉と紐づけて、言葉の意味や使い方を深めていきます。これが「自分のこと」を話す理由なのです。
1-2.②心理的な側面:認めてほしいという気持ち
「認めてほしい!」「今、話を聞いてほしい!」という気持ちから、自分の話ばかりしてしまうこともあります。
忙しい日常の中で、ついスマホを見ながら子どもの話を聞くことがあるかもしれませんが、子どもはそれでは満足できません。
「ママ、見て!聞いて!」と何度も言うのは、「自分に注目してほしい」という気持ちの表れです。少しの時間でも手を止めて、子どもの話をしっかり聞くことが大切です。
たとえ短時間でも、真剣に向き合うことで子どもの心は満たされ、他者の話が自然と聞けるようになっていきます。
1-3.③社会的な側面:会話のルールがわからない
子どもは会話のルールを学んでいる途中です。自分が話したい気持ちが強いため、相手が話している最中でも割り込んでしまうことがあります。
例えば、お友達と遊んでいるときに「私が話しているのに!」と喧嘩になる場面も見られるでしょう。
5~6歳頃になると「今は先生の話を聞くとき」「今は〇〇くんが発表するとき」といった役割やルールを意識するようになります。しかしそれも、すぐに身につくものではなく、何度も繰り返し経験して身についていくものです。
小学校低学年くらいまでは、「今は話を聞きましょう」「〇〇ちゃんが話す番です」など、大人が「話すこと」「聞くこと」をサポートする必要があります。
2.一方的に話す子どもに必要な力とは?
「話を聞く」「自分の話ばかりしない」など、当たり前のようですが、実は大人でも上手に人と話をするのは難しいものです。
他者とのコミュニケーションとして会話をするのには、4つの基本的な力の働きが関係すると言われています。
1. 相手の話しを「聞く」力
会話をするときは、「話し手」と「聞き手」の交代が不可欠です。話すだけではなく、相手の話しを「聞いて理解する」力もとても大切といわれています。
まずは一対一や少人数で会話の練習をし、少しずつ役割交代を理解できると大人数の会話も自然とできるようになります。
2. 相手の意図を「理解する」力
相手がどんな気持ちなのか、どういうことを伝えたいのかという意図を「理解する」必要があります。
相手を理解するときに、子どもは必ず「今どんな気持ちかな?」と考えるので、この考える力がとても大事になってくるのです。
3. 自分の気持ちを「伝える」力
自分が今何をしたいのか、何がいやなのかを伝える力は、会話をする上でとても大事です。
相手の気持ちを考えながら場に合わせて言葉を選び、周囲の状況に合わせて良いタイミングで自分の気持ちを伝えていく必要があります。
4. 豊富な「語彙」力
自分の気持ちを表現するだけではなく相手の意図を組んで合った内容を返すのに必要なのは、語彙力です。
沢山使える言葉を頭の中に保存して必要なときに使い、会話をする相手によってさまざまな表現で伝えていきます。
これら4つの力をバランスよく身につけることが、上手に人と話す技術につながります。
それぞれの力は、教えられなくても親や先生、友達など、さまざまな人とのコミュニケーションから学び、徐々に身につけていくものです。
しかし、子どもの個性によっては、4つの力のどれかだけが弱かったり、力が上手く身につかないこともあります。また昨今は、習い事で休みの日や放課後に友達と遊ぶ機会が減っていたり、一緒にいても一人でゲームをして遊ぶ子どもが多かったり、人と会話をする機会も減っています。
「話すことは誰でもできる」「そこまで口を出さない方がいいかな?」と思う方もいるかもしれませんが、会話に必要な力を自然に身につける機会が乏しくなっている子もいます。
そのため、時には親御さんが子どもの会話力の成長をサポートしてあげる必要があるでしょう。
3.「聞く・話す」子どもの会話力を鍛えるために親ができること
子どもの会話力(コミュニケーション力)を鍛えるために、親ができることはたくさんあります。
学校や幼稚園などの集団生活でも役立つコミュニケーション力は、子どもが生きていく上でとても大切な力です。その力を伸ばしていくために、パパやママが家でできることをお伝えします。
1. 会話内に質問を盛り込む
質問に答えることが楽しいと思えば、質問を「聞く」力も自然と伸びていきます。Yes/Noで考える質問だけではなく、自分でしっかり考えて答えるような質問をしてみましょう。
子どもがうまく答えられないときは「ヒントは?」「〇〇かな?正解?」など、遊び心を加えて「答えへの質問」をしてみると、子どもは楽しそうに考えて話してくれるでしょう。
2. たくさんの世代の人と会話をする機会を作る
さまざまな世代の人と話をすることで、相手によって会話の仕方を変えたり、相手の表現力の違いを聞いて学んでいきます。
例えば、年齢が上のお友達が「今日は〇〇しよう」と約束しているのを見たら、見ている子は遊ぶときにどんな遊びをするのか人に「提案」し「約束」するということを覚えます。
園や学校の友達だけではなく、先生や友達のパパやママ、祖父母など、たくさんの人と話ができる機会がもてると良いですね。
3. 挨拶をしっかりする
挨拶は会話の基本であり、とても大切です。パパやママがすすんで挨拶していると、子どもも自然と挨拶をすることを覚えていくでしょう。
そこから育まれる会話を経験することで、子どもの会話力が伸びるため、挨拶は会話の力を伸ばすきっかけとなります。元気に挨拶ができたときは、いっぱい褒めてあげてくださいね。
子どもの会話力は、家での遊びを通しても育むことができます。
みんなで遊べる「ボードゲーム」や「テレビゲーム」は、しているときもした後も、会話が盛り上がるためおすすめです。
年長や低学年になってくると、自分が勝ったときは「弱っ!弱くね?」と相手をバカにする言葉を使ったり、負けたときは「は?ずるしたんじゃないの」「もういいや」などと怒ってしまう子もいるかもしれませんね。
そのような掛け合いも学びの経験です。「そんな言い方されたらイヤじゃない?」など、使う言葉についてサラッと伝えてあげられると良いですね。気持ちの良い会話ができるようになるには、コミュニケーションを通して、相手への思いやりをもつことも大切です。
また、しりとり遊びは「自分の番・相手の番」というように順番を守って言葉を交わす練習になります。「かぶせるように話してくる」「自分の話ばかりしてしまう」子には、まさに打ってつけですね。
こちらが考えているうちに、自分だけでしりとりを進めてしまう子もいるかもしれません。そんなときは「それじゃあ面白くないよ。次はママね」などと、ルールに沿うよう誘導してあげましょう。
4.子どもが「話を聞ける」ようになるための関わり方
子どもに「一方的に話すのではなく、話を聞いてもらいたい」と思ったら、まずは親が関わりをさりげなく工夫してみましょう。
ここでは、押さえておきたい3つの関わり方について取り上げます。
1. まずはしっかり聞く
子どもが自分の話ばかりしないためには、まずは自分の話を聞いてもらえる場所があることが大切です。自分の話を聞いてもらうことができて初めて、人の話も聞けるようになります。前述した通り、1日に数分でも子どもと向き合って話を聞くようにしましょう。
子どもは大人をよく見ているので、「興味を持っている」という姿勢を見せることが大切です。
2. 会話の順番のルールを伝える
大好きなパパやママ、幼稚園や学校の先生など、話を聞いてくれる大人の前では「話を聞いて!」という思いが強くなりがちです。
その気持ちはとても大切ですが、兄弟やクラスメイトなど子どもが複数いるなかでは、一人の子どもの話をずっと聞いているのは難しいものです。
そんなときは、「今は〇〇ちゃんの番だね。あなたは次だから、ちょっと待っててね」と順番を提示したり、「ママは洗濯をしてくるから、終わったらまたお話を聞いてもいい?」というように、順番を伝えてあげられると良いでしょう。
視覚的に理解しやすいように、ボールやマイクを使って「持っている人が話す」というルールを設けるのも効果的です。
「あ、今は自分の番ではない」という雰囲気が理解できると、少しずつ待つことを覚えていきます。
3. 聞き手と話し手の役割交代の練習をする
「話しだしたら止まらない」「自分の話が終わると人の話を聞かない」というのも、子どもによくあることですね。
「会話」は、「聞くと話す」がセットです。「聞き手」がいなければ「話し手」はただの独り言になってしまいます。
自分が話したら終わりなのではなく、「聞き手」という役割についても学んでもらう必要があります。そのためにはまず、自分事として話を聞いてもらうことが大切です。
話す前に「今から話すから聞いてね。あとから質問するよ」と言っておいて、話し終えた後に「どう思った?」「どこが良かった?」と聞いてみてください。
話の感想を聞くことは、話すことだけでなく聞くことの練習にもなります。
5.「話を聞けない」「話が止まらない」子どもとどう向き合うべきか?
今回は「自分の話ばかり」「人の話しを聞けない」子どもについて発達・心理・社会面から解説しました。
「聞く・話す」といった一見、当たり前にできると思えることも、子どもは少しずつ理解して身につけていくものです。
わたしたち親も、実は子どもの話を聞かずに、自分の意見ばかり話しているかもしれません。「聞いてもらえないと聞きたくない」のは、大人も子どもも同じですね。
忙しい毎日のなかで、話を聞くのも一苦労ですが、「おやすみなさい」の前のほんの少しの時間だけでも、一生懸命話してくれる子どもの顔を見ながら聞いてあげられるといいですね。
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