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文章や本を読むのが苦手な5・6歳。練習やサポートは必要?【言語聴覚士に聞く】

まわりには、絵本や文を読んでいる友達もいる一方で、我が子は単語を読むのもやっと…。そんな子どもの様子に、不安を抱えている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

5・6歳のお子さんに、文章や本が正しく読めない、スラスラ読めないという様子がみられたとき、家庭での練習やサポートは必要なのでしょうか。

日頃からたくさんの子どもと保護者に関わっている言語聴覚士・aki先生に、5・6歳の子どもが文章を読むということ、そして文字を読むことや理解するということについて、話を伺いました。

(文責:CONOBAS編集部)

 

目次

1.文章や本を読むのが苦手な5・6歳。どんなことをすればいい?

−−幼稚園の年長さんで就学準備の段階になったときに、周りの子は文字を読めるのになかなか読めるようにならないと、気になることがありますよね。そのようなときに、何かできることはありますか?

1-1. 文字を読む土台となる音韻意識を育てる

aki先生:この時期の言語発達で重要なこととして、『ナラティブ』が挙げられます。もう一つは、音韻意識です。音韻意識は文字習得に欠かせない土台で、4・5・6歳で大きく発達していきます。

そのため、5・6歳で文章や本がスラスラ読めなくても、まだそれほど焦る必要はないということはお伝えしておきたいです。

言葉の発達全体において言えることですが、個人差が大きいので、4歳くらいで文字を読んだり書いたりしている子もいます。

それを見ると親御さんが焦る気持ちも分かるのですが、まずは、音韻意識が育っているか、文字に興味を持っているか、つまり、文字を習得するのに必要な土台ができているかというところに注目してほしいですね。

 編集部コラム 

~ナラティブとは~
ナラティブとは、「物語」という意味です。言語発達の領域で使われる際には、自分の考えやその日の出来事を、時系列に並べて述べる力のことを指します。音韻意識と同じように、5歳以降に大きく発達するとされています。

 

−−音韻意識が文字習得の土台になるということですね。音韻意識とは、具体的にどのようなものですか?

aki先生:音韻意識というのは、単語がいくつの音からできているか、はじめの音は何かといったことを認識する力のことを指します。例えば「すいか」は、「す・い・か」と3文字で、「す」ではじまり「か」で終わる言葉、と捉えることができます。

小さいお子さんが、テレビを「てべり」と言うような言い間違いをすることが、度々ありますよね。このころは、まだ音韻意識が未発達で、「テレビ」という言葉について正しく音の順を認識できていないために起こることが多いと考えられます。

それが、だんだん音韻意識が育ってくると「テレビ」が「テ」「レ」「ビ」という音がつながってできている、ということに気づきます。そうすると、「てべり」と言うことはなくなり、「テレビ」と言えるようになってきます。

つまり、こういった言い間違いが少なくなってくる背景には、音韻意識の育ちがあると言われています。

音韻意識を使った言葉遊びとして、しりとりや「パンはパンでも、食べられないパンってなーんだ?」のようなナゾナゾが挙げられます。こういった遊びを楽しめるようになると、文字を読む土台ができてきたなと感じますね。4・5歳ころから、その力が伸びることが多いです。

 

−−文字をうまく読めない子は、前段階である音韻意識が育っているかをみることが大切、ということでしょうか?

1-2. まずは単語からスモールステップで

aki先生:そうですね。それと合わせて、どのようなもので読む練習をしていくのかということも大切です。文字を読めるようになるはじめのころは、一つ一つの文字を音に換える練習をしている段階です。

子どもが自分の名前を読めるようになると、すぐに文や文章、本も読めると思ってしまいがちですが、その間にはたくさんの経験を積み重ねる必要があるのです。

まだ、一つ一つの文字を確認しながら「す・い・か…」と読んでいるので、大人が思う以上に集中力も頭も使っています。まずは一文字、次は二文字と単語を読む時間は、たくさんある方がいいですね。

1・2歳のころに読んでいた本は、単語で書かれていたり同じようなフレーズが繰り返し出てきたりするものが多く、一文字ずつ読んでいる時期でも、読みやすいかなと思います。

保護者の方が普段読み聞かせをしているであろう5・6歳が対象の絵本は、文章が多いので、それをいきなり読ませるのは少しハードルが高いことが多いです。子どもが挑戦したいと言うときはいいのですが、読む練習をするのであれば、単語が多い本を使うことをおすすめします。

易しいものからスタートすることで子どもも抵抗感なく取り組め、「分かった」「読めてうれしい」という経験を積み重ねることができます。そのように読むことを繰り返すことによって、文字をスムーズに音に変えることができるようになり、文章などを読めるようになっていくのです。

 

2.文章や本が読めるようになるために、どんなサポートができる?

−−文字を読む、あるいは音韻意識を育てるための教材で、aki先生がSNSで紹介しているものには、どんなものがありますか?

2-1. ゲーム感覚で音への意識を高める

aki先生:音韻意識を育てる遊びとしては、「コトバすごろく」や「おとのかず」があります。文字の数に合わせてコマを進めたり、塗りつぶしたりすることで意識を高めます。

 

単語を読むことに焦点をあてたものとして『ひらがなビンゴ』があります。イラストのビンゴシートと文字カードを使い、2、3、4文字とステップアップしていけるように工夫しています。

 

また、単語が比較的読めるようになったときに、まる・さんかく・しかくの表情がついているものも使います。3つのキーワード(赤・丸・怒る等)を読み取り、カルタのようにして遊びます。

 

音韻意識を身につけるために、言葉の音の数だけ太鼓をたたいてもらうこともあります。運動しながら覚えてもらうのも効果的です。グリコのような感じで、一音ずつ歩く、ジャンプするなどして学んでいくこともありますね。

 

−−文章を読むのが苦手というのは、学校に入ってからより課題になってきますよね。ある程度ひらがなも単語も知っていて、教科書の短い文章なら読めるようになったけれど、なかなかスラスラと読めるようにならない…という場合、対応は変わってくるのでしょうか?

2-2. 読みの”スムーズさ・正確さ”に注目する

aki先生:入学後、ひらがなの学習が進んでも、なかなか流暢に読めるようにならない・音読を嫌がるという状況であれば、より注意して観察し、担任の先生などに相談してみると良いでしょう。


親御さんや先生がお子さんの困難感に気が付くのが早い場合、1年生の夏休みごろに、「読めていない気がする」「音読が苦手」などを主訴に病院を受診されることもあります。

病院では、知能検査や読み書き評価などを行い、その結果、『発達性読み書き障がい』だと分かるケースもあります。

 編集部コラム 

~発達性読み書き障がいとは~

「ディスレクシア」ということもある、学習障がい(※)の一種です。生まれつきの特性で、失語症とは異なります。文字から情報をインプットしたり、文字を書いてアウトプットしたりすることが苦手だという特徴がありますが、その差には個人差が大きいです。
※知的発達には遅れがないものの、聞く、話す、読む、書く、計算、または推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難がある状態のこと

 

3.読みの土台となる“音”に目を向けましょう

<編集後記>

子どもが文章や本を読むのが苦手な様子を見ると、不安になることもありますよね。そんなときはまず、文字を読む土台である「音韻意識」が育っているかを見ることが大切であると、aki先生は教えてくれました。

音韻意識は、音に合わせて身体を動かしたり、しりとりなどの言葉遊びをしたりして育っていきます。読むことではなく、まずは一つ一つの「音」に注目することを意識してみましょう。

そして、自分の名前など身近なものを読めるようになっても、いきなり長い文章ではなくまずは1・2文字の短い単語、長い単語、文、そして文章とスモールステップで進めていきましょう。

何より、子どもが「分かった!」と読めた喜びを感じられることを大切にできるといいですね。

 

お話をうかがった先生

aki先生

児童発達支援施設や医療センターの小児科で働く言語聴覚士。幼児から中学生までの、発達やことばの遅れ、読み書きの苦手さなどがあるお子さんを対象に、個別での言語療法を担当。Instagram公式LINEで、おススメの教材や療育グッズについての情報を発信するなど、教材作りの楽しさをお伝えしつつ、支援者の繋がりを広げるキッカケ作りにしていきたいと思っています。

 

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