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育て方で変わる!ひといちばい敏感で繊細な子ども「HSC」の特徴といいところを伸ばす言葉がけをご紹介

この記事を書いた人

遠藤さおり 遠藤さおり

遠藤さおり

  • 社会福祉士

大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。

知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。

自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!

福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。

新しい場所に、なかなか馴染めない。
大きな声や物事に驚きやすい。
ちょっとしたことで泣いてしまう。

お子さんが他の子よりも傷つきやすい、繊細だな、と思ったことはありませんか?

甘やかしすぎたかな? 過保護すぎたかな?
これから大丈夫かしら……
そんな不安な気持ちもあるのではないでしょうか。

積極的な子、元気な子、明るい子、様々なタイプの子どもがいる中で、「感受性が極めて強く、感覚や人の気持ちに敏感で傷つきやすい子」が存在します。

そんな子どもたちは「HSC(Highly Sensitive Child)(ひといちばい敏感な子ども)」と呼ばれています。

その割合は、およそ5人に1人。
決して少なくない数ではありますが、大多数が「ふつう」とされる世の中では、生きづらさを感じることも多く、子どもなりに悩んでいるかもしれません。

今回は、HSCにはどのような特性があり、どのようなことに困っているのか、HSCが生きやすくなるための育て方のポイントを7つご紹介していきます。

変えるべきは敏感で繊細すぎる特性でなく、まわりを取り巻く環境かもしれません。

子どものいいところを伸ばすために、HSCの特性を長所として捉えることを出発点としましょう。

 

 

目次

1.「HSC」とは?

それでは、まず「HSC」がどういったものなのか、見てみましょう。

 

1-1.HSCはひといちばい敏感で繊細な子どものこと

HSCは、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が1996年に提唱した概念です。

その意味は、「とても敏感な子ども」「繊細過ぎる子ども」。

最近では「繊細さん・敏感さん」といった表現で、耳にすることも増えましたね。

HSCは生まれ持った気質なので、「気にしなければ大丈夫」とか「大人になれば治る」「鍛えれば良くなる」というものではありません。

赤ちゃんの頃からよく泣いたり、小さな物音に反応してすぐ起きてしまったりと、寝かしつけに苦労したお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

「子育てにずっと苦労して大変だった」という場合、育て方が原因ではなく、子どもがHSCだったのかもしれません。

一方で「全然手がかからなかった」「いつも良い子で、あまり困ったことがない」という場合も、HSCの可能性があります。

手がかからないなんて理想!と思ってしまいがちですが、もしかしたら「わがままは言っちゃいけない」「本当は嫌だけど、お母さんが嬉しそうだから」と、自分を押し殺しているのかもしれません。

ひといちばい敏感なHSCは、多くのストレスと戦っています。お子さんが生きやすくなるよう、負担を減らせる道を一緒に探し、サポートしてあげましょう。

 

1-2.HSCは病気や障害とは違います

HSCの敏感で繊細な特性は、脳の扁桃体を中心とした不安の神経回路の反応が高まりやすいことに起因しています。

感情の中枢部分である扁桃体が過剰に活動することで、不安や恐怖を感じやすい状態になっているのです。

これらは脳内のもともとの特徴なので、病気や障害ではありません。

HSCは一人を好む気質や変化への対応が苦手、傷つきやすいといった特性から、発達障害やうつ病・不安障害をはじめとする神経症とも混同されがちです。

しかしHSCは「特性」であり、病気や障害とは別の心理学的な概念なので、「診断」できるものではない、ということを知っておく必要があります。

治すべきものでも、直るものでもない、ということです。

その特性をどうやって活かしていくか、どうやって負担なく暮らしていけるか、を考えることにシフトしていけると、HSCもお母さんもラクに過ごせるようになりますよ。

 

1-3.HSCは内向型とも限らない

さて、HSCと聞くと「おとなしくて内向的」「引っ込み思案で消極的」といったイメージを持たれるかもしれませんね。

しかし、HSCは必ずしも内向的とは限りません。
むしろ、他の人よりも刺激を求めるタイプ、外交的なタイプも存在するのです。

このようなタイプはHSS(High Sensation Seeking)と呼ばれ、HSCのうちおよそ3割を占めます。

好奇心旺盛で活動的ですが、刺激に対しての反応性は強く「大胆なのに繊細」「元気だけれど傷つきやすい」といった特徴があります。

外出は好きだけれど人ごみや騒音で消耗しやすく、帰ってくるとドッと疲れている、という傾向のお子さんは、HSS型のHSCかもしれません。

一番近くにいるお母さんでも気づきにくいですが、HSCにも様々なタイプや、特性の程度があることを知っておくと、お子さんの変化に気づいてあげやすくなりますよ。

 

2.【HSCセルフチェック✓】必ず当てはまる4つの特徴

アーロン博士は、HSCなら誰しもが必ず持っている「4つの特徴」を挙げ、その頭文字をとって「DOES」としました。

D:深く処理する(Depth of processing)
O:過剰に刺激を受けやすい(Overstimulated)
E:共感しやすい(Emotional reactivity and high Empathy)
S:ささいな刺激を察知する(Sensitivity to Subtleties)

具体的な傾向を以下の表にまとめましたので、セルフチェックの際に参考にしてください。

※表・HSC4つの特徴※

 

実は、筆者の娘も静かな環境を好み、神経質なところがHSCの気質に当てはまると感じています。

とくに娘は痛みに敏感で、足が痛い、頭痛がする、お腹が痛いといったことをよく伝えてきます。

「そんなに気にしないの」と言いたくなってしまいますが、グッと我慢。

絆創膏を貼ったり、湯たんぽで温めたりしながら「痛い痛いの飛んでけ~」と、明るく励ましています。

また、共感力の高さでいうと、娘は物に対しても感情移入してしまい、小さくなった洋服や靴とお別れするときには泣くことも少なくありません。

そんなときは、捨てずに一旦保管しておくことで、納得してもらっています。

想像力の豊かさと心配性の気質が重なり、夜寝る前に「怖い地震がきたらどうしよう」と泣いてしまうこともありますが、今日あった楽しい話をするなど、穏やかな気持ちで眠れるようなフォローが大切だと感じています。

 

3.HSCの子どものいいところを伸ばす育て方〜7つのポイント〜

HSCの敏感で繊細な気質は、デメリットが目につくこともあるかもしれませんが、裏を返せば5人に1人だけが持つ素晴らしい特性です。

繊細さを受け止め、その感性を大切にすることでHSCはもっとラクに、そして自分の良さを伸ばしながら生きていけるようになりますよ。

ここでは、HSCを育てていく上で気をつけたい7つのポイントをご紹介いたします。

 

3-1.主観的な状態を受け入れよう

ささいな刺激をストレスに感じるHSC。

敏感過ぎる我が子を見て、「そんなに気にしないの」「もっとラクに生きてごらん」と言いたくなってしまいますが、生まれ持った敏感さ、繊細さをなくすことはできません。

それよりも、そう言われることで自分を否定されたと感じ、かえって自信を失うことになりかねません。

そんなときは、HSCのお子さんが感じる痛みや、悲しさ、怖さ、悔しさをお母さんが代弁してあげましょう。

「今の音、びっくりしたよね」「それは辛かったね」というように、心配ごとや出来ごとを一緒に受け止めてあげましょう。

今後、友だちとの関わりが深くなる年齢を迎えたときに周囲と自分の感覚の違いに気づき、不安に感じたり悩んだりすることもあるでしょう。

そんなときは、「あなたの優しい心が嬉しいよ」「そういう風に思えることは素敵だね」といった言葉掛けも大切です。

お母さんが丸ごと受け止めてくれることで、HSCは自分の感覚を前向きに捉えられるようになるでしょう。

「こんなふうに思うなんて、変じゃなかった!」と安心できる場所を、家庭の中につくれるのが理想ですね。

 

3-2.失敗したときは、強い口調で叱らないで

HSCは周りの空気を読むのが得意であるがゆえに、失敗してしまったときのショックが大きくなりやすいです。

本人がその失敗を自覚しているのに強い口調で叱ると、叱られた記憶が強く残ります。

お母さんの顔色を伺うような過ごし方にならないよう、注意が必要です。

HSCのお子さんは言い聞かせるだけでも十分効果がありますよ。

そして、その後のフォローも大切です。

「大丈夫だよ。そういうこと、よくあるよ」など、安心する言葉がけをしてあげましょう。

「ママも子どもの頃、そんなことあったな」といった具合に、お母さん自身の失敗談を話してあげるのもよいでしょう。

叱られることを避けるように過ごしてしまうのも、HSCにはよくあることです。

手のかからない子だと思っていても、実はやりたいことを我慢しているかもしれません。

失敗したとき、叱られたとき、「次はどうしたらいいかな?」と本人の思いにも耳を傾け、安心して感情を吐き出せる場所を作ってあげましょう。

 

3-3.休ませることを大切にしよう

HSCは日々大きなストレスにさらされているので、知らず知らずのうちに、身体に疲れをためがちです。

脳と身体の疲れを癒やすためにも、休養を大切にしましょう。

毎日の睡眠時間をしっかり確保することはもちろんのこと、こまめに休憩をとったり、疲れていそうだなと感じたときは、必要に応じて休息日を設けましょう。

本人が頑張りすぎているときは、「今は無理しなくて大丈夫だよ」と伝えることも大切です。

HSCに限らず、子どもは「ほどほどに」が難しいことがあります。

「しっかりやらなければ!」「失敗できない!」と追い詰めてしまいがちなHSCにこそ、まわりが本人の状態に目を配ってあげましょう。

 

3-4.本人のやり方やペースを尊重しよう

刺激を受けやすいHSCにとって、本人のペースを乱すような関わりをされるのは好ましくありません。

「早く早く!」と急き立てたり、「もっと上手にやらないと!」と口を挟むと焦りにつながり、本来の力を発揮できなくなります。

日々の生活の中でも、声掛けに工夫をしてみましょう。

「急がなくても大丈夫だからね」「うんうん、それでいいよ」といったように、安心できる声かけに変えるだけで、落ちついて物事に取り組めるようになりますよ。

また、一度に多くのタスクがあると混乱しやすいHSC。

「◯◯と△△と✕✕をお願いね」と一気にまとめるのではなく、「まずは〇〇をお願いね」というように、簡潔に伝えましょう。

HSCが自分なりのペースとやり方で取り組める環境を作ることが大切です。

 

3-5.見通しが立つように、先の予定を伝えよう

予想外の出来事にストレスを感じやすいHSC。

先の見通しが立つように、あらかじめわかっている予定を丁寧に伝えると、安心して過ごせますよ。

「今日はこれから〇〇に行って、△△をするよ。そのあと◯時には帰ってくるからね」というように、具体的に伝えるのがオススメです。

 

3-6.愛情を言葉で表現しよう

周りの環境や、人の気持ちに敏感なHSC。

身近にいるお母さんがどう思っているかを、実は一番気にしています。

お母さんが疲れているときや、イライラしているときの雰囲気をささいな言葉や表情、声のトーンから察知します。

お母さんは愛情たっぷりに注いで育てているつもりでも、HSCが不安に思うことは少なくありません。

そんなときは、思いっきり言葉と態度で愛情を表現してみてください。

「大好きだよ」「〇〇のことがとっても大切!」といったように、わかりやすい言葉とスキンシップで安心させてあげましょう。

HSCは、お母さんが喜んでくれることを何よりも嬉しく感じますよ。

 

3-7.自己肯定感を伸ばすような経験をさせよう

自己肯定感とは「ありのままの自分に価値がある」「自分は大切な存在だ」と思える感覚のことです。

思いやりにあふれた優しい心を持っているHSCは、いいところはたくさんあるはずなのに、足りない部分に目が行ってしまい、自己肯定感が低くなりがちだと言われています。

周りの子どもと比べて苦手を克服させようとせずに、コツコツ取り組むことで着実にステップを踏んでいけるような経験や、得意なことを伸ばせる経験を大切にしましょう。

出来ても出来なくても、「ありのままの姿」を受け入れることが大切です。

自己肯定感が大きく育てば、無理しない生き方を選ぶことができ、将来の生きづらさを少しでも解消することにつながりますよ。

「このままでいい」という思いを持って人生を歩んでいけるよう、自己肯定感を育む接し方を大切にしていきましょう。

 

4.HSCの特性を理解して、いいところをどんどん伸ばそう!

敏感で繊細な感性の持ち主であるHSC。

どのように育てていったらいいかな?と不安になり、今まで色々な育児書を読まれ、こちらのページを開かれたお母さんも多いのではないでしょうか。

HSCの敏感さや繊細さは個人差が大きく、全ての場面で全員に一様な特性が見られるわけではありません。

ましてや、世間一般に広がる子育て法は、5人中4人に向けたものが多く、なかなかしっくりくる答えにたどり着けなかったことと思います。

今回も、ピッタリな答えが見つからなかった方もいらっしゃるでしょう。

子どもの特性を理解したうえで、お母さんが「あれ?このやり方はどうかな?」と疑問に感じるのであれば、無理に型に当てはめようとする必要はありません。

子どもの特性を丸ごと受け止め、肩の力を抜いて自分らしく生きていけるよう、前向きにサポートしていきましょう。

 

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