家以外では黙ってしまう。初めての人と話せない…。対応のポイントは?【言語聴覚士に聞く】
普段は話すことに問題は感じないけれど、慣れない場面・場所では急に話せなくなる。体や表情がこわばってしまうこともある。
そんな5・6歳の我が子の様子に、恥ずかしがり屋なのかな?緊張しやすいのかな?と考えている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
日々子どもと向き合っている言語聴覚士のaki先生に、知らない人の前や場所に身を置くと言葉がでなくなってしまう原因や背景、そして周囲の大人ができる対応などについて伺いました。
サポートの際に心がけたいポイントもアドバイスしてくださいました。
(文責:CONOBAS編集部)
目次
1.親しい人とは話せても、知らない人とは話せない…。理由は何?
−−家族や園の先生、お友達とは普通におしゃべりできるのに、初めて会う人や親しくない人の前ではしゃべれなくなってしまう。そんなお子さんもいるようです。理由はどんなところにあるのでしょう?
1-1. できることを徐々に増やせるよう関わるのが基本
aki先生:そういうお子さんもいますよね。家ではよくしゃべるけれど、外では寡黙になるとか。あと、登園した途端に表情がこわばったり、不安そうな様子になったり、会話ができなくなったり、ということもあります。
−−そういうお子さんの場合、訓練やトレーニングで様子は改善するのでしょうか?
aki先生:「発話を強制しない」「ことば以外のコミュニケーション手段(視線や指差し等)からはじめる」ということを柱に、できることをちょっとずつ増やしていけるよう、一緒に考えていきます。
話す相手や場所、それから活動内容に分けて考えて、それらを少しずつ変えながら、結果的に相手・場所・内容の組み合わせに関わらず話せるようにしていくことを目指します。
例えば、お母さんと2人なら園の教室でしゃべれる。でも、先生とはしゃべれない。そんな子の場合は、お母さんも交えた3人での場面を設定することがあります。
あるいは、支援の場で好きな塗り絵をするときにはお話できる、でも、手元になにもなく、改まって質問をされるとしゃべれない。
そんな時には、塗り絵をしながら少しずつ簡単な質問をしてみる、など。今できていること・できないことの組み合わせを変えて、できることを増やしていく、自信を持てるようにしてく、という関わりや取り組みをしています。
編集部コラム
~場面緘黙(選択性緘黙)とは~
緘黙(かんもく)とは、口を閉じて何も言わないことや押し黙ることを意味します。
人見知りや恥ずかしがり屋との違いは、「特定の場所・場面で、話したくても話せない状態が1ヶ月以上続く」ことです。家庭では普通に話せていても、家庭以外や園では話せない様子などが見られます。5歳未満で症状が見られることが多いとされていて、年齢とともに改善するという報告もあるそうです。
−−話せないのは緊張しているから。だから、安心して話せるようゆっくり導いていく、というイメージでしょうか?
1-2. まずは、安心してしゃべれる環境を用意したい
aki先生:言葉でやりとりする前提として、表情や指差しや首振りなど、非言語的なコミュニケーションが取れる、ということがあります。
さらにその前の段階として「安心できる場所であるかどうか」ということが挙げられます。ずっとビクビクしている子どもにとって、しゃべるという行為はハードルが高いですよね。
まずは、安心して過ごせること。それから、しゃべれはしなくても指差しや表情でなんとなく意思表示ができること。それらができるようになってやっと、言葉は出てきます。なので、言語聴覚士による支援もその順に沿ってやっていくことが多いです。
−−スモールステップを踏んでいけば、相手や場所を問わず話せるようになるのでしょうか?
aki先生:お子さんによって様々だと思いますが、なるべく早く専門家が介入した方がよい、と思います。周りの大人が理解をし、お子さんにとってよりよい環境を整えることが大切だと考えています。
2.外でうまくしゃべれない子どもに、保護者は何ができる?
−−他者の前や慣れない場所ではうまく話せないということは、慣れている家庭より、なるべく専門機関や施設へ通所することが望ましいですか?
2-1. お子さんと相談しながら、家庭や園で小さなことにチャレンジしてほしい
aki先生:通っている園や学校など、お子さんが属する母集団との連携はとても大事だと思います。1日の多くの時間を過ごす場所で、環境調整への力添えをしてもらうことが大切でしょう。しゃべりにくい雰囲気や、緊張を強いる場面などになるべく直面することがないよう協力してもらえるといいですよね。
あとは例えば、仲良しの友達と家でしゃべれるようになるとか、外で一緒に遊べるようになるとかも、スモールステップとしていいと思います。
仲の良い子と一緒であれば、保育園でもしゃべれるようになった、というケースもあります。他にも、図書館へ行って、保護者の方がそばで見守っている中で、カウンターの人へ本を返却することに挑戦するなど。
こういう取り組みは、ご家庭と園や学校が協力してこそできることです。お子さんの気持ちを尊重しつつ、やってみたいことを一緒に考え、適切な難易度の目標を作る。そうしたことが、私たちの役割の一つだと思っています。
3.スモールステップを積み重ね、改善できることもある
<編集後記>
家や家族と一緒のときはおしゃべりも弾むのに、知らない場所や初めての人の前となると言葉が出なくなってしまう…。親御さんとしては、心配な気持ちや不思議に思う気持ちを抱くことでしょう。
お子さんのそんな様子に気づいたら、なるべく早く専門家に相談することが対応の第一歩となります。園の協力や少しずつさまざまなシチュエーションに身を置くことで、改善が見られることもある、とaki先生は教えてくださいました。
子どもの不安な気持ちに寄り添い、小さな成功体験を重ねていけるとよいですね。
お話をうかがった先生
aki先生
児童発達支援施設や医療センターの小児科で働く言語聴覚士。幼児から中学生までの、発達やことばの遅れ、読み書きの苦手さなどがあるお子さんを対象に、個別での言語療法を担当。Instagramや公式LINEで、おススメの教材や療育グッズについての情報を発信するなど、教材作りの楽しさをお伝えしつつ、支援者の繋がりを広げるキッカケ作りにしていきたいと思っています。
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