「傾聴」で子どもの自己肯定感を伸ばそう!効果的な話の聞き方と6つのポイント
この記事を書いた人
遠藤さおり
- 社会福祉士
大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。
知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。
自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!
福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。
子どもの話をゆっくり聞いてあげたいと思いながらも、忙しくてつい後回しにしてしまうこともありますよね。
なかなか要領を得ない子どもの話に、曖昧に相槌を打つだけになってしまうことも多いのではないでしょうか。
相手の伝えたいことに深く耳を傾けて話を聞くことを「傾聴」と言います。近年この「傾聴」が子どもの「自己肯定感」を伸ばすと注目されています。
自己肯定感は、「ありのままの自分に価値がある」「自分は大切な存在だ」と思える感覚のことです。
自己肯定感が高い人は、他人の評価ではなく自分の価値観で幸せを感じられるので、逆境にも強く、人生の幸福度が高いといわれています。
そんな「傾聴」を効果的に活用するためには、ポイントを押さえて実践する必要があります。
今回は、子どもの話を聞く時に取り入れたい「傾聴」のポイントを、実例を交えてご紹介します。
お子さんの話を「傾聴」して、幼児期に伸ばしたい自己肯定感をサポートしましょう。
目次
1.「傾聴」とは、どんな話の聞き方?
それでは、さっそく「傾聴」がどのような話の聞き方なのか、見てみましょう。
1-1.「傾聴」はカウンセリング技法のひとつ
傾聴は、「聴」の字が使われているとおり、ただ話を「聞く」ことだけを意味するのではありません。
話し手の「話したいこと・伝えたいこと」に「耳」を傾け、仕草や表情に「目」を向け、どうしてそう考えるに至ったのか「心」を配って聞くことで、話し手の「話したい」という気持ちを引き出す技法です。
アメリカの心理学者カール・ロジャーズ(Carl Rogers)が提唱し、もともとはカウンセリングで活用されてきました。
近年は、傾聴がもたらす様々な効果が注目され、ビジネス分野やスポーツ分野、子育て分野でも取り入れられるようになってきています。
1-2.「傾聴」に重要な3つの姿勢とは?
ロジャーズは、傾聴には3つの姿勢が大切だと位置づけました。
①共感的理解
子どもの話しを、子どもの立場に立って、子どもの気持ちに共感しながら理解しようとする。
②無条件の肯定的関心
子どもの話を親の好き嫌いや善悪の価値観で判断せず、なぜそう考えたのかを想像しながら、肯定的に聞く。
③自己一致
子どもの話にわからないところがあったら、親も積極的に質問する。
相手に自分の話をしっかり聞いてもらえると、嬉しくなりますよね。それは、子どもも同じことです。
子供との対話に「傾聴」を取り入れることで、子どもは「自分は愛されている・認められている」と実感でき、「自己肯定感」がグンと育つといわれています。
2.子どもの話を聞く時にオススメ!「傾聴」の効果とは?
「傾聴」とは、相手の話に深く耳を傾け、真摯な態度で理解しようとする姿勢を見せることです。
傾聴には、子どもにとっても、嬉しい効果がたくさんありますよ。
2-1.子どもとの信頼関係が育つ
大人でもそうですが、自分の話を相手が真摯な姿勢で真剣に聞いてくれると嬉しいですよね。
特に、楽しいことだけでなく、辛いことや悩んでいることも含めて親身になって聞いてもらえると、「自分を大切にしてもらえている」と実感できます。
信頼関係を築く上で、傾聴は欠かせません。
これから年齢が上がっていくごとに子どもの悩みも複雑化していきますが、「お母さんはしっかり話を聞いてくれる」とわかっていれば、心の拠り所となるはずです。
子どもとの対話に傾聴を取り入れて、親子の信頼関係を深めましょう。
2-2.子どものコミュニケーション能力が向上する
親子の対話の中で傾聴を大切にしていると、子どもの「伝える力・聞く力」が育ち、コミュニケーション能力が向上すると考えられています。
相手を尊重する「傾聴」の技術が自然と子どもに伝われば、子どもがまた他の誰かと信頼関係を築く時にも役立つでしょう。
2-3.子どもの思考が整理され、感情のコントロールが上手になる
人は自分の気持ちや経験を言葉にすることで、自分の心を見つめ、感情の整理をしたり、鼓舞したりできます。
一番身近な存在のお母さんがしっかりと話を聞いてくれれば、困難なことでも「やってみよう」という意欲につながったり、落ち込んだ時も「また頑張ろう」と思えたりします。
傾聴の技術を活用すると、子どもは「もっと話したい!」と思え、どんどん感情のコントロールが上手になっていきますよ。
2-4.子どもの自己肯定感が高まる
お母さんに話をしっかり聞いてもらえると、子どもは「受け入れられている」「認められている」「大切にされている」と実感でき、子どもの自己肯定感がグンと高まります。
この実感が積み重ねられると、子どもの中で「ありのままの自分に価値がある」と思える「自己肯定感」が豊かに育まれていきます。
多少の困難があっても、自己肯定感が高い子どもはポジティブに乗り越えられると言われています。
子どもの時期にこそ、自己肯定感を育む経験をさせてあげたいですね。
2-5.親が子どもを一個人として認められる
実は「傾聴」は子どもだけでなく、親御さんにとっても嬉しい効果があります。
赤ちゃんの頃から大切に育ててきた我が子。
どうしても、いつまでも赤ちゃん扱いしてしまいがちですが、子どもは子どもなりに自分の考えを持った一個人です。
子どもの話をじっくり聞くことで、親もそんな子どもの成長を知ることができ、自分とは違う考えを持つ独立した人格なんだと実感できます。
傾聴は、子離れ・親離れの重要なステップとしても大きな役割を果たします。
3.子どもの話を「傾聴」するとき〜6つの実践ポイント〜
それでは、「傾聴」を効果的に使うために、具体的にどのようなことに注意したらよいのでしょうか?
「傾聴」には、いくつかの専門的なテクニックがありますが、どれも難しいものではありません。
ここでは、6つの実践ポイントをご紹介します。
3-1.受容する
まずは、子どもの話した内容をありのまま受け入れましょう。
例「◯◯ちゃんに叩かれちゃったの」
「そうだったの、叩かれちゃったんだね」
「そのあと、あなたはどうしたの?」と、その先も気になるところですが、子どもの話を遮るのはNG。
まずは、子どものありのままの姿を受け入れましょう。
その姿勢が伝わると、子どももその後の言葉を伝えやすくなりますよ。
また、口に出した言葉だけではなく、子どもの視線や声色、表情などからも様々な感情が読み取れますね。
楽しそう・悲しそう・疲れているなど、子どもの心の動きも含めて、受け入れましょう。
3-2.共感する
「共感」は、傾聴の中でも特に大切な要素です。
まずは、子どもが真っ先に伝えてきた気持ちに注目し、共感的な姿勢を見せましょう。
例「転んだところがずっと痛かったの」
「そうだったのね。それは辛かったね〜」
「どこで転んだの?」「お友達とぶつかっちゃった?」などなど、聞きたいことはたくさんあっても、最初はグッと我慢。
まずは、子どもの気持ちに寄り添うところがポイントです。
3-3.繰り返す
子どもは些細なこともお母さんに報告したいもの。
「ふ〜ん」で終わってしまうような出来事も、子どもの言葉を使って「オウム返し」してみましょう。
例「今日は虫を見つけたよ!」
「おー!虫見つけたんだね!」
「お母さんがしっかり聞いてくれている」という実感につながり、その後の言葉も引き出しやすくなります。
3-4.言い換える
子どもの話を聞きながら、「言い換え」で相槌を打つこともオススメのテクニックです。
例「今日のお昼全部食べたよ」
「給食残さなかったんだ、凄いね!」
話が弾むだけでなく、子どももより多くの言い回しを知ることができ、コミュニケーション能力が養われる貴重なチャンスになります。
3-5.要約する
まだまだ伝える力が未熟な時期の子どもは、何を言っているのか、ピンとこないことも少なくありません。
一生懸命話しているものの、支離滅裂なんてこともありますよね。
そんな時は、「もう少しわかりやすく話してみて」とお願いしてみたり、「それはどういうこと?」と詳しく聞いてみましょう。
子どもなりに、要点を絞ったり、詳細を伝えようとするでしょう。
それをお母さんが「〇〇で、〇〇だったってこと?」と要約してあげると、子どもは「しっかり聞いてくれた」と実感できます。
お母さんが要約してくれた言葉を聞いて、子どもの「人に伝える力」も養われていきますよ。
3-6.開かれた質問をする
子どもの話を聞く中で、お母さんが質問を挟むのも効果的です。
特に、「はい・いいえ」で答えられる質問ではなく、自由に答えられる「開かれた質問(Open Question)」を投げかけることで、より子どもの話を深く掘り下げられます。
例「今日はみんなと遊んだのが楽しかったよ」
「へ〜!何をして遊んだのが楽しかったの?」「誰と遊んだの?」
子どもも自分の頭の中を整理できるので、より深く考えるきっかけになります。
毎回、子どもの話を完璧に傾聴するのもなかなか難しいですよね。
ここぞ、という時にポイントを押さえて、取り入れてみてください。
コツさえ掴めば、子どもは「お母さんがしっかり話を聞いてくれた!」と強く実感できますよ。
4.こんな時どうする?「あるある」のお悩み解決策
子どもの話をしっかりと聞く姿勢を心がけていても、毎回傾聴するのはなかなか難しいもの。
後回しにしてしまったり、否定の言葉で口を挟んでしまったり…。
「もっといい方法があったかも……」と罪悪感を感じることも少なくありませんよね。
そんな時は、ポイントを押さえた対応で前向きに対処してみましょう。
4-1.忙しい時は「あとでね」でも大丈夫。
仕事に家事に育児に、毎日忙しいお母さんに子どもが「あのね、あのね」と構わず話しかけてくることもあるでしょう。
ついつい「ちょっと待っててね〜」「お話は、あとでね」と後回しにしてしまい、罪悪感を感じることも少なくありませんよね。
本来ならば、しっかりと向き合ってゆっくり話を聞いてあげられればよいのですが、忙しい時はなかなかそうもいかないものです。
そんな時は、「あとでね」と伝えて大丈夫。大切なのは、その後のフォローです。
きちんと約束を守り、「お待たせ。さっきのお話、何だったの?」と向き合ってあげましょう。
「あと5分だけ待っててね」「お洗濯物を干したら聞かせてね」と具体的に伝えるのもおすすめです。
4-2.きょうだいがいる時は、それぞれの時間を設ける
きょうだいがいると、なかなか一人ひとりの話をじっくり聞く機会が作れませんよね。
一人が話していると、もう一人がやってきて話し始めるなんてことも「あるある」です。
特に幼い頃は、きょうだいの話を待ってから話し始めるのは難しく、子どももフラストレーションが溜まってしまいます。
そんな時は、じっくり一人ひとりと向き合う時間を作ることがオススメです。
3分でも5分でも、大丈夫です。
お母さんが「自分だけの話をしっかり聞いてくれる特別な時間」を意識的に作っていきましょう。
4-3.ながら聞きをするときは、アイコンタクトを大切に
子どもが話している時に、つい手元は料理に夢中になったり、もしかしたらスマホを触りながら、なんてこともあるかもしれません。
このような「ながら聞き」をする時こそ、意識的に子どもと目線を合わせてみてください。
ずっと目を合わせていなくても、要所要所でアイコンタクトが取れることで、子どもが話しやすい雰囲気が作れます。
4-4.子どもの話は遮らず、最後まで聞いてみて。
ついつい子どもの話しを途中で遮ってしまうこともありますよね。
子どもの拙い説明だと、「それで、どうなったの?」「ちゃんと謝ったの?」など、聞きたいこと・言いたいことが次々と出てきてしまうものです。
しかし、話の腰を折られると、大人でもガッカリしてしまいますよね。
傾聴を意識するときは、子どものペースに合わせて、最後まで聞くようにしてみてください。
4-5.否定の言葉を挟まずに、子どもの心に目を向けてみて。
子どもの話の途中で、つい「え?それはダメだよ」「どうしてそんなこと言っちゃったの?」など、否定の言葉を挟みたくなることはありませんか?
相槌が否定の言葉だと、続きを話す気持ちも削がれてしまいますよね。
親の物差しで善悪を判断せずに、どうして子どもがそう考えるに至ったか、その心に目を向けてみましょう。
4-6.話をまとめてしまわず、最後まで根気強く聞くことを大切に
まだまだ「伝える力」が未熟な子どもたち。
なかなか要領を得ない話に、「あぁ、〇〇ってことね〜」「〇〇だったんでしょ?」と先回りして話をまとめてしまうことも少なくありませんよね。
まずは根気強く最後まで話を聞いてみてください。
そのあとに言い換えたり要約したりすることで、子どもの思考は整理されていき、「伝える力」もどんどん養われていきますよ。
5.傾聴で子どもの「自己肯定感」を育てよう!
子どもの話を丁寧に聞く「傾聴」。
簡単そうに思えるのに、忙しい毎日の中で実際取り入れようとすると、難しいと感じる部分も少なくはありません。
毎回しっかり子どもの話を傾聴することは難しくとも、少し意識することで、子どもとの対話が変わります。
幼児期にに伸ばしてあげたい「自己肯定感」を、お母さん・お父さんとのやり取りの中で、育ててあげましょう。
親子の対話を、ぜひ大切にしてみてくださいね。
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参考文献
・厚生労働省 “心の耳” 働く人のメンタルヘルスポータルサイト (参照2022-01-15)