小学校低学年の保健室登校とは?メリット、デメリットを詳しく解説!
この記事を書いた人
ゆうさ
- 司書教諭
- 小学校教諭
子どもに野外活動やスポーツを教える仕事に4年間勤めていました。
現在は、小学校で週2回働きながら、教育系webライターをしています。
1歳3歳の子どもがいます。
「生きる力」を伸ばす子育てが目標です!
「おうちにいたい」と学校に行き渋る小学校低学年のお子さまをお持ちの方はいらっしゃいませんか?
この記事では、「学校から保健室登校を勧められたが、保健室登校ってどんなもの?」といった疑問をお持ちの方に向け、低学年のお子さまに絞った保健室登校のメリットやデメリットについてご紹介します。
低学年ならではの目線で、学校に行き渋る理由や保健室登校後の「選択肢」についてもお伝えするので、どうぞお付き合いください。
目次
1.小学校低学年の保健室登校とは?
保健室登校の定義や低学年ならではの保健室登校の原因を解説します。保健室登校や、その後教室復帰する子どもの割合と合わせて確認してみましょう。
1-1.保健室登校とは
保健室登校とは、「常時保健室にいるか、特定の授業は出席できても、学校にいる間は主として保健室にいる状態」のことを指します。
学校に来ることはできても、何らかの理由で「教室に入れない」場合に、学校に通う1つの手段として保健室登校が挙げられます。
1-2.保健室登校している子はどれくらいいる?
日本学校保健会の「保健室利用状況に関する調査報告書」(平成28年度調査)によると、平成27年10月から平成28年9月末までの「保健室登校」している児童がいる小学校の割合は、32.4%でした。
大雑把に計算すると、約3校に1校は保健室登校している児童がいるという計算になります。
また、各小学校の保健室登校の平均人数は1.9人となっており、これらのデータから保健室登校は珍しいものでもなく、よく行われているものだとわかります。
1-3.低学年の保健室登校の原因
保健室登校と聞くと、いじめや友人関係のトラブルなどが思い浮かびますが、小学校低学年特有の保健室登校の原因として、よく見られるのは母子分離不安です。
母子分離不安とは、愛着を持っている人(多くは母親)から離れることに対して強い不安が長期間続き、お腹や頭が痛くなるなど身体症状が出たり、精神的に不安定なるなど精神症状が出たりすることを言います。
赤ちゃんが母親と離れると不安で泣くことはよくあることで、生まれながらに持っている自己防衛本能でもあります。通常は、成長とともに少しずつ自立し、距離をおいていけるようになります。
しかし、小学校に入学すると、保育園や幼稚園とは違い、自分のことは自分でやらないといけない場面が多くなります。
また、45分間座って授業を受けたり、団体行動を求められたりと、今までとは環境が大きく変わってきます。環境の変化に慣れず、「お母さんと離れたくない」「学校に行きたくない」と行き渋りに繋がる場合もあります。
1-4.保健室登校から教室復帰した割合は?
保健室登校後、教室へ行けるようになった児童はどのくらいいるのでしょうか。
日本学校保健会の調査によると、保健室登校していた児童が、平成27年10月から平成28年9月末までの1年間に教室復帰した割合は、小学校1年生では50.8%、小学校2年生では49.2%、小学校3年生では49.6%と、約半数が教室に戻っています。
なお、保健室登校の小学校の平均日数は、50.3日となっています。
多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、あくまで教室復帰したデータになります。教室復帰以外にも選択肢はありますので、参考までにご覧ください。
2.保健室登校すると、どんないいことがある?
低学年の保健室登校には、どんなメリットがあるのでしょうか。順番に見ていきます。
2-1.保健室登校する低学年の子どもへのメリット
前述したように、低学年の保健室登校の大きな原因は「不安」ですが、保健室登校することで、学校内に安心できる居場所ができます。
保健室なら、静かな環境で保健の先生などと1対1で信頼関係を築くことができるためです。
また、小1プロブレムと呼ばれる、幼稚園や保育園とは全く違う環境に慣れないことが原因で「学校に行きたくない」という子もいます。
こうした子どもたちも、保健室登校することで、教室で授業は受けなくても、学校の時間に合わせた行動をとることができ、生活リズムをつけることができます。
学校に「自分が居ていい」と思える「心の居場所」ができることで、学校への不安を軽減していく効果もあります。
小1プロブレムについては、下記記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
「小1プロブレム」の定義とは?元教師が簡単に小学校入学前・入学後の対策を解説
2-2.保健室登校は親にとってもメリットがある
保健室登校は、子どもだけでなく親側にもメリットがあります。 それは「学校とのつながり」が保てることです。
子どもの悩みを1人で抱えるのは大変なことです。学校とつながっていることで、親の孤立を防ぐこともできます。
保健室の先生と子どもの様子を共有したり、子どもの悩みを相談したりすることで楽になることもあるかもしれません。
また学校に行くことで担任の先生とも連絡を取り合え、先生からしても家での子どもの様子が分かるので、子どもとの関わり方や支援方法を考えやすくなります。
3.保健室登校すると良くないことはある?
保健室登校は、全ての子どもに合う方法だとは言い切れないのが実態です。保健室登校のデメリットについて解説します。
3-1.保健室登校する低学年の子どもへのデメリット
子どもの性格や精神状態によっては、保健室登校することで人目を気にして、辛くなってしまう場合があります。
保健室にいると、同じ学年の子や同じクラスの子に会うこともあります。低学年だと「なんで学校来ているのに、教室こないの?」とストレートに聞いてくる子もいます。
子どもによっては、他の子は教室で授業を受けているのに、なぜ自分はできないのかと、人と比べて辛くなってしまうこともあるのです。
このようなケースが心配な場合は、担任の先生や保健室の先生と相談してみるのがおすすめです。
子どもの性格や精神状態に合わせて、負担にならないような方法を一緒に考えてもらうのも良いでしょう。
3-2.保健室登校の親への負担
保健室登校は、時間が決まっていない場合が多いです。 子どもの精神状態に合わせて行ける時間に登校したり、登校できたとしても調子を崩し、お迎えの依頼が来たりする場合もあります。
また、保健室の先生の出張などで登校できない日や時間がある場合もあります。毎日の登校時間下校時間が読めず、子ども中心の生活スタイルになります。
そのため家の用事がしにくくなったり、仕事をしている場合は、職場の理解が必要になってきたりします。
4.小学校低学年の保健室登校から教室復帰への進み方のコツ
保健室登校が不安なくできるようになってくると、次に考えるのが教室復帰です。
保健室登校から教室復帰のハードルは、子どもによってはハードルが高いので、時間をかけて慎重に考えていく必要があります。
4-1.学校が安心できる場所だと思えるようにする
保健室登校から次のステップ、教室復帰に進むには、子どもが「学校は安心できる場所」だと思えるようになることが大切です。
担任の先生や保健室の先生と連絡を取り、子どもがつまずいている部分はどこなのか見極めて、焦らず進めていく必要があります。
親と離れるのが不安なら、一時的に付き添い登校をして、教室の外や中で授業を見守るのも1つの方法です。
小学校という環境に慣れなくて行きたくない場合には、少しずつ慣れるよう、短時間から教室に入って授業を受けてみるのもいいですね。
その際、事前に担任の先生と相談して、教室に入れなかった場合や途中で辛くなって教室の外へ出たくなった場合に避難できる場所を用意してもらえると、子どもも安心です。
保健室に避難したり、図書室で一息ついたり、教室に入れなくても学校内に安心できる場所があるというだけで、心が楽になり、学校が嫌という気持ちが軽減される場合もあります。
学校の環境や方針によって変わってくると思うので、先生と相談しながら、焦らずじっくり進めていきましょう。
4-2.小さなことから自信をつける
教室復帰ができるようになるには「スモールステップで自信をつけていく」ことも大切です。
教室のドアをタッチして帰る、給食だけ教室で食べる、授業を1時間だけ受けるなど、小さな目標を立ててできることからやっていきましょう。
自分はできるという自信を取り戻すことが大切なので、 焦らずに見守ることがポイントです。
少しずつ教室に行けるようになると、周りはもう大丈夫だろうと思うかもしれませんが、行ける日と行けない日の波があって当然です。
教室復帰までの道のりで、1番不安で焦っているのは子ども自身です。周りは焦らずどんと構えて、どんな子どもでも受け止められるよう見守ってあげられるといいですね。
5.教室復帰だけが全てではない
ここまで保健室登校や教室復帰についてお話してきましたが、教室復帰だけが解決策ではありません。 保健室登校以外にも、学校に通う方法があります。
また、必ず学校に行かなければならないということもなく、学校以外にも方法はありますので、ご紹介します。
5-1.教室復帰以外で学校に通う方法と、その割合
1つ目は、放課後登校です。学校の授業が終わり、クラスメイトが下校した後に登校し、担任の先生などと少しお話をしたり、勉強の分からないところを聞いたりします。
保健室登校や別室登校の前のステップとして、行われることもあります。
2つ目は、別室登校と呼ばれるものです。学校によっては、学校に行きづらい子どもを対象に、学校内の相談室などで、学習支援員や教職員が子どもに合わせたカリキュラムで勉強に付き添ってくれる場合もあります。
学校によって実施状況は異なるので、気になる方は先生に聞いてみてもいいかもしれません。
放課後登校や保健室登校も含んだ別室登校の割合は、令和2年文部科学省が小学校6年生を対象に行った調査によると、前年に不登校だった児童のうち47%、約半数が別室登校の経験があると答えています。
5-2.学校に通う以外の方法と、その割合
学校に通う以外の方法もあるので、3つ紹介します。
1つ目は、適応指導教室です。適応指導教室とは学校に通えない(通いづらい)児童生徒のために設置された教育委員会が運営する教育支援センターのことです。
不登校の専門知識がある指導員が、子どもに合わせた指導やカリキュラムを作ってくれます。
適応指導教室のメリットは、在学校の出席扱いになることです。 自治体によって規模、指導体制や内容、方法などに差があるようなので、気になる方は在籍の小学校または、地域の教育委員会に相談してみてください。
2つ目は、フリースクールです。フリースクールとは「不登校の子どものための居場所」で、個人や民間の企業、NPO法人などによって運営されています。
フリースクールのメリットは、子どもに合ったスクールを選べることです。規模や方針、雰囲気など、それそれ異なるので、まずは相談、見学などに行くことをおすすめします。
3つ目は自宅学習です。自宅学習はその名の通り、学校やフリースクールなどには通わずに、自宅で学習することです。
自宅学習のメリットは、自分のペースで好きなように学習を進められることです。
その他、地方に一定期間住みながら地元の学校に通う山村留学や、海外留学などの方法もあります。
なお、学校に通っている前年不登校だった児童が支援機関等を利用したことのある割合は、令和2年に文部科学省が小学校6年生を対象に行った調査によると、教育支援センター(適応指導教室)等の公的な支援機関を利用した割合は40.1%、フリースクール等の民間施設を利用した割合は11.9%、オンラインを活用した自宅学習をした割合は17.9%となっています。
5-3.卒業認定(出席扱い)について
学校に通う以外にも様々な選択肢があるのがわかったところで気になるのが、小学校の卒業認定が認められるのかという点だと思います。
適応指導教室やフリースクール等の学校外の機関で指導等を受ける場合は、一定の要件を満たせば出席扱いとなります。
また、自宅でIT等を活用して行った学習活動についても,訪問による対面指導が適切に行われていることなどの一定の要件を満たす場合,出席扱いとなるようです。
詳しい条件等は、小学校や各機関の先生にお尋ねください。お子さんに合う方法を学校や他機関の先生と相談して見つけていけるといいですね。
6.保健室登校だけが「正解」ではない。子どもに合った方法を考えよう!
保健室登校だけが解決策ではありませんし、学校に通うことだけが選択肢でもありません。
大切なのは、子どもが心身ともに元気で希望を持って生きていくことです。
この記事を読んでくださった方の中には、お子さまが学校に通いづらくなっている方もおられると思います。将来が見えず、不安でたまらない方もおられるかもしれません。
不安定になっている子どもたちを支えることは大変ですよね。毎日本当によく頑張っておられますね。
親にできることは、子どもを信じ見守ることです。 親側に余裕がないと難しいです。
大変な状況の中かもしれませんが、5分でも10分でも自分のための時間を作って、自分が好きなこと、ほっとできることをやってみてください。
情報を正しく知ることが、子どもの選択肢を広げることに繋がります。
子どもの状況や正しい情報に心のアンテナを張りながら、先生や周りの信頼できる方と相談し、子どもに合った方法を考えていきましょう。
参考文献
・ 公益財団法人日本学校保健会 (平成30年2月発行)「 保健室利用状況に関する調査報告書 平成28年度調査結果」
・文部科学省「不登校への対応について」
・不登校児童生徒の実態把握に関する調査企画分析会議 (令和3年10月)「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」
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