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白黒はっきりさせないと気が済まない子どもの特徴は?声かけや考え方のヒントをご紹介

この記事を書いた人

横山ミノリ 横山ミノリ

横山ミノリ

  • 中学校教諭
  • 高等学校教諭
  • 小学校教諭
  • 児童発達支援士

小1と年少の男の子の母。

長男はASD(自閉スペクトラム症)

産後うつと育児ノイローゼになった経験から”ラクに生きる”がモットーに。

子どもには「自分で決めた!」「自分でできた!」という経験をたくさんしてほしいと思っています。

子どもとの好きな遊びは工作。子育てで好きな本は、高濱正伸著の「こどもの可能性を伸ばす「しない」子育て」です。

子どもの言動で、「白黒はっきりさせないと気が済まない」「1つの失敗で自己否定してしまう」「曖昧な状況が苦手」などの傾向が気になりませんか?

もしかするとお子さんは、物事を「白か黒」「0か100」で考える「白黒思考」をもっているのかもしれません。

白黒思考をもっている子どもは思い込みが強いので、ママが「そんなことないよ」「大丈夫だよ」と言っても、なかなか受け入れられません。白黒思考によって生きづらさを感じている我が子を見るのも、つらいですよね。

この記事では、4~6歳の子どもにみられる白黒思考の特徴と要因、親子でできる対策をお伝えします。

日々、我が子の白黒思考に向き合っている筆者の実体験もご紹介するので、悩めるママの力になれたら嬉しいです。

白黒思考の子どもとそのママが、ラクに生きられるようになるヒントが見つかりますように!

目次

1.白黒はっきりさせないと気が済まない「白黒思考」とは?

白黒はっきりさせないと気が済まない考え方のことを、心理学用語で「白黒思考」といいます。白黒思考は、アメリカの心理学者であるジュディス・ベックが定義したものであり、病名ではありません。

白黒思考をもっている人は、物事を「白か黒か」「良いか悪いか」「0か100か」といった、両極端に位置する2択のみで考え、どちらにも属さない曖昧な状況に不安を感じます。

そのため、白黒思考は「二極思考」「全か無か思考」「曖昧耐性」とも呼ばれています。

白黒思考は認知のゆがみの1つで、考え方のクセともいえます。実際には白と黒の間はグラデーションになっていて、いろんな考え方ができるのに、白と黒しか見なくなってしまうのです。

白黒思考に陥ると、視野が狭くなり、周りの意見を受け入れづらくなります。理想と現実のギャップに落ち込み、ネガティブな感情から抜け出すことが難しくなる可能性もあります。

白黒思考は将来の生きづらさにもつながるので、子どものうちに改善できるといいですね。

 

2.「白黒思考」の子どもの特徴《チェックリスト》

「白黒思考」になる子どもにはどのような特徴があるのでしょうか。以下のチェックリストを参考にしてみてください。

◻︎ 物事を「良いか悪いか」「成功か失敗か」に分けて考える

◻︎ たった1つの良くないことが気にかかりネガティブな感情から抜け出せない

◻︎ 曖昧な状況が苦手ですぐに答えをほしがる

◻︎ お友達とトラブルがあると「自分は嫌われた」と思ってしまう

◻︎ 小さな失敗をしたり少し注意されたりすると「自分はダメだ」と思ってしまう

◻︎ 何事も完璧にこなさないと気が済まない

白黒思考の子どもは、1つでも良くないことがあると、全て悪いと考えます。「いつも~だ」「絶対~だ」など、決めつける言葉が多いのも特徴的です。

曖昧な状況が苦手で、中途半端な言動をとる人を許せないこともあるでしょう。ある1場面だけを切り取って、間違った思い込みをしてしまうこともよくあります。

例えば、お友達が自分の方を見て話しているだけで「悪口を言われている」と思ったり、ママに少し注意されただけで「ママに嫌われた」と思ったりしてしまうのです。

さらに、完璧主義は白黒思考の特徴の1つです。小さな失敗をしただけで完全な失敗だと考える子どもは、常に100点を目指す完璧主義になりやすいでしょう。

失敗に目が向いてしまうので、できているところを褒められても、なかなか受け入れられません。

 

3.子どもが「白黒思考」になる要因


ここでは、子どもが白黒思考になる3つの要因について解説します。これらの要因が複数関係していることもあるでしょう。

 

3-1.経験不足

子どもが白黒思考になる要因の1つは、経験不足です。

私たち大人は、今までに自分が経験してきたことや、一般的に言われていることを総合的に考えたうえで、判断や決断を下しますよね。

しかし、経験が少ない子どもは、判断材料になる経験値が少ないので偏った考え方をしがちなのです。

また、経験が少ないと、「好きか嫌いか」「受け入れられるか受け入れられないか」といった感情で判断することが多くなるでしょう。

経験が少ない子どもは、発達面から考えても、様々な角度から物事を捉えることが難しいのです。白と黒に分けたがるのは、白と黒しか知らないからかもしれません。

 

3-2.養育環境

子どもが白黒思考になる要因の2つ目は、養育環境です。

親のしつけが厳しすぎたり、親が過干渉だったりすると、子どもは白黒思考になりやすいのです。

例えば、親が子どもに対して、少しの失敗も許さず成果を上げたときだけ褒めるなら、子どもは物事を0か100かの2択で判断するようになり、完璧以外は失敗だと考えるようになるでしょう。

また、親が子どもに干渉しすぎて、失敗を含む様々な経験の機会を奪っていることも考えられます。経験不足が白黒思考の要因になることは、先ほどお伝えしたとおりです。

また、ママ自身が完璧主義だったり、「こうあるべき」という思い込みが強かったりと、白黒思考にとらわれている可能性もあるでしょう。

子どもには柔軟に考えることを教えていたとしても、ママの思考パターンは子どもに伝わっているかもしれません。

 

3-3.発達障がい

発達障がいが白黒思考の要因になっていることもあります。

「白黒つけたがる」「曖昧なことが苦手」というのは、発達障がい、特にASD(自閉症スペクトラム)の特性の1つだからです。

ASDの子どもは、特定のことへの関心やこだわりが強いという特性をもっています。そのため、好き嫌いがはっきりしており、ルールを完璧に守ることにこだわる子どもが多いのです。

また、想像力が弱いため曖昧なことが苦手で、白か黒かのどちらかで考えたがります。ASDの子どもは、考えが主観的になりやすく思い込みが強いのも特徴的です。

 

4.「白黒思考」の子どもに対してできること

ここでは、白黒思考の子どもに対してできることをお伝えします。親子で一緒に取り組んでいきましょう!

 

4-1.子どもが自分の気持ちを知るように助ける

白黒思考をもっている子どもに対してまずすべきなのは、子どもの話をよく聞くことです。

根拠もなく「そんなことないよ」「大丈夫だよ」と言っても、子どもは納得しないでしょう。子どもが白黒思考に陥っていたり、ネガティブな感情から抜け出せなくなっているときには、子どもが自分の気持ちを客観的に見られるように助けてあげるのです。

曖昧さに不安をもっているなら、その気持ちに寄り添い、共感してあげましょう。

具体的にどのようにできるのか、実体験をご紹介します。

ASDである筆者の長男は、小さなミスからすぐに自己否定する傾向があります。

あるとき長男が、登園に使っている公営バスの中に幼稚園の帽子を忘れ、パニックになってしまいました。会話できるまで落ち着いた長男に気持ちを聞いてみると、

「帽子を置き忘れてしまった自分はダメな子だ」
「帽子は絶対見つからない」
「帽子をかぶらないと幼稚園に行けない」

と、思っていることを話してくれました。

このように気持ちを言葉にして、自分の感情を認めるだけで、白黒思考のループから抜け出すきっかけになるのです。

その後、長男がいるところで幼稚園とバスの営業所に電話をかけ、それぞれ事情を説明しました。

幼稚園が終わったら、帽子があるか一緒に確認しに行くことを約束すると、長男は納得して登園していきました。

曖昧で不安だった状況がはっきりして安心したのでしょう。

 

4-2.考え方のクセを直すように助ける

子どもの気持ちを聞いてあげた後は、状況を違う角度から見られないか一緒に考えてみます。思い込みには「~かもしれない」のワードを使うと効果的ですよ。

例えば、「私はこう思う。けれど他の人は違うかもしれない」「今回は失敗してしまった。今日は調子が悪かったからかもしれない」といった具合です。

「いつも」「絶対」という言葉には、「今日は」「今回は」など、条件を付けてみると違う見方をしやすくなります。

先ほどの長男の場合

「お母さんも忘れ物をすることはある」
「帽子は運転手さんが見つけてくれるかもしれない」
と考えることができました。

見方を変えることで、白黒思考のループから抜け出し、次に気持ちを切り替えられるように助けていきましょう!

 

4-3.いろんな体験をさせる

白黒思考をもっている子どもには、いろんな体験をさせてあげましょう。子どもは誰でも経験によって成長していくものですが、視野が狭くなりがちな白黒思考の子どもにとって、経験は特に大切です。

失敗から立ち直る体験や、考え方を変えても大丈夫だった経験は、子どもが思い込みの殻を破る力になるでしょう。

白黒思考の子どもは不安感が強い傾向にあるので、ママが一緒にいてあげることも大切です。安心できる環境でたくさんの経験をさせてあげましょう。

長男の帽子は営業所に保管されており、無事に受け取ることができました。長男は今でも、失敗やミスをしますが、そのたびに何とかなるという経験をたくさんした結果、落ち着いて対応できるようになりました。

6歳になった今では、小さなミスから自己否定に陥ることはほとんどありません。

 

5.「白黒思考」になる子どもの気持ちに寄り添いつつ、たくさんの経験をさせてあげよう!

白黒思考は考え方のクセなので、改善することができます。

とはいっても、「白黒思考を完全に直さなければ」と思って苦しくならないでくださいね。

行き過ぎた白黒思考は生きづらさにつながりますが、自分の中で判断の基準がはっきりしていることや、決断力があることは素晴らしいことだからです。

白黒はっきりさせたいというお子さんの気持ちに寄り添いつつ、無理なく考え方を変えられるよう手助けしていきましょう。

子どもが小さいうちに親子でたくさんの体験をして、世の中には白と黒に分けられないものがたくさんあることを伝えていけたらいいですね。

 

参考資料
・ジュディス・S・ベック「認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第3版
・神田信彦「曖昧さ及び、曖昧さに対する耐性―非耐性の再考
・江口実希,桐野匡史,國方弘子「推論の誤り尺度(TES)の妥当性と信頼性の検討―看護師を対象にして―

 

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