友達を独占する子どもの心理とは?独占する子・される子へ親ができる対応法
この記事を書いた人
白山七衣
- 心理カウンセラー
- 幼児教室講師
メンタル心理カウンセラー、日本語教育能力検定の資格所持。
幼児教室講師をはじめ、オンライン講師、家庭教師、添削指導者として0歳から18歳までのお子さんの教育や学習サポートの仕事に長年携わってきました。
現在は、主に教育ライター、子育てカウンセラーとして活動しています。
お子さんたちの学びや成長、保護者の皆様のお悩みに役立つ記事をわかりやすく丁寧にお伝えしていきたいです。
休日は自然の中でお散歩したり、スイーツの食べ歩きをして、リフレッシュしています!
年長~小学校低学年になると、集団生活が増え、友達との関わりも複雑になってきます。
「我が子が特定の子ばかりと遊びたがる」「友達が他の子と遊ばせてくれない」といった問題がでてくることもあります。
子どもが特定の友達を独占していたり、されていたりすると、どのように対応すれば良いか悩むこともあるでしょう。
そこで今回は、友達を独占する子どもの心理やその理由を子どもの発達段階をふまえてお伝えします。
友達を独占する子・される子それぞれに対する親の対応法もご紹介しますので、子どもの独占欲にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.友達を独占する子どもの心理
特定の友達を独占してしまう子どもの心理はどのようなものなのでしょうか。
ここでは、友達を独占する子どもの心理を3つお伝えします。
1-1.安心感を得たい
人は本能的に、安全な場所や安心できる場所を求めています。
子どもは、寂しさや不安を抱えていると、特定の友達を独占してしまうことがあります。
複数の友達関係の中では、自分の位置を確立することが難しく、不安定な状況に感じるため、特定の友達といつも一緒にいることで安心感を得ようとしているのです。
お気に入りの友達が自分から離れると不安になってしまうので、他の子とは引き離し、独り占めしようとします。
1-2.自分を認めてほしい
自分を認めてほしいという気持ちから、特定の友達を独占してしまうことがあります。
また、良いな、素敵だなと思う友達と一緒にいることで、自分の中にも価値を見出している場合があり、その友達に執着することがあります。
その子と一緒にいることで、自分も周りから認められているように感じるのです。
1-3.自分の欲求を通したい
年長~小学校低学年くらいの子どもは、自分と他者が違うことがわかった上で、共感することも少しずつできるようになってきます。同時に、自主性も発達し、自分の欲求がはっきりしてくる時期です。
自分の意見を受け入れてくれる、自分がやりたい事をやらせてくれる友達といるのが心地よいのは当然ですね。
そのため、自分の欲求を通してくれて、自己主張が強くない友達を独占してしまい、その子とばかり遊びたくなってしまうことがあります。
2.友達を独占してしまう理由
ここでは子どもが友達を独占してしまう理由を4つご紹介します。
どの理由も友達を独占する子どもの心理に関わるもので、「安心したい、認めてほしい」という気持ちにつながっています。
2-1.愛着形成がうまくできていない
乳幼児期に、母親をはじめとする身近な人々と愛情のあるスキンシップやコミュニケーションをとることで心理的に結びつき、人と関わる楽しさや喜びを学びます。
これを愛着形成と言いますが、この愛着形成が不十分だと自分の価値を確認できず、自己肯定感が低くなり、不安な気持ちや自信のなさを抱えてしまいます。
人との関係を過度に恐れたり、逆に執着しすぎるなど、信頼関係を築くことが苦手になります。そのため「安心感を得たい、自分を認めてほしい」という欲求が、自分の気に入る特定の友達を独占する行動につながることがあります。
愛着形成については、下記記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
・「愛着」が幼児期にも大切な理由とは?愛着形成で自己肯定感を高めよう!
2-2.コミュニケーションが苦手
子どもの発達段階におけるコミュニケーション能力の未熟さが、友達を独占する行動につながっていることがあります。
年長~小学校低学年くらいの子どもは、自主性が芽生える一方で、相手の気持ちを考える力や友達関係を調整する能力はまだ未熟です。
複数の友達との関係を同時に築いたり調整したりするには、コミュニケーションが欠かせませんが、この時期の子どもは自分の欲求を優先し、自分の思い通りにしようとします。
特に、周りの人とのコミュニケーションが苦手な子どもは、自分の考えが否定されることを極端に恐れたり、相手の意見を受け入れたりすることが難しい場合があります。そのため、自分の主張を受け入れてくれる友達を見つけ、その子を独占してしまうことがあります。
コミュニケーション能力は年齢や経験とともに発達しますので、年長~小学校低学年くらいの子どもが特定の友達を独占する行動は、一時的なものである場合も多いです。
2-3.自分に自信が持てない
子どもが自己肯定感が低く、自信が持てない場合、自分を受け入れ、認めてくれる友達を求めて執着してしまうことがあります。
例えば、「きょうだいと比較される」、「結果だけを評価し、認められたり、褒められたりすることがない」などの状況では、子どもの自己肯定感が低くなってしまいます。
また、過度に厳しいしつけや過干渉があると、子どもは自分の考えを十分に主張することができません。
親は子どものことを思って言っているつもりでも、子どもからすると、自分は信頼されていないと感じて自己肯定感が低くなり、自信を持てなくなってしまいます。
自信や自己肯定感が不足していると、友達を独占することで安心感を得たり、自分の価値を確認しようとしたりすることがあります。
2-4.家庭環境の変化
下のきょうだいの誕生、引っ越し、両親の離婚など家庭生活の変化で、一時的に不安や寂しい気持ちが大きくなり、特定の友達を独占して安心感を得ようとすることがあります。
聞き分けが良く、しっかりしている子でも、心の中では不安や寂しさを抱えていることがあります。
3.友達を独占する子どもへの対応法
我が子が友達を独占する姿を目にすると、心配になりますね。
ここでは、友達を独占する子どもの心理や理由をふまえて、友達を独占する子どもへの対応法をいくつかご紹介します。
3-1.子どもとたくさんコミュニケーションをとる
日頃から家庭で積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
新聞やテレビのニュース、幼稚園や学校での出来事など、話しやすい話題を見つけて、家族それぞれが意見を言ったり、聞いたりすることはコミュニケーション能力を高める良い機会です。
食後の団らんのとき、少しで良いので毎日時間をとってみてはいかがでしょうか。
「お父さんはこう考えるな」「お母さんはお父さんとは違うけど、こう思うよ」など、異なる意見を尊重し合いながら楽しく会話することで、子どもも、友達同士のコミュニケーションがうまくできるようになるでしょう。
3-2.子どもの気持ちに共感し、自己肯定感を育む
子どもの自己肯定感を高めることで、自信を持ち、友達関係や物事に前向きな姿勢になれるので、特定の子を独占する行動がなくなっていくでしょう。
自己肯定感を育むためには、子どものありのままを認め、気持ちに共感してあげることが大切です。親の考えだけで子どもの行動を否定することのないように気をつけましょう。
子どもにはその行動をした理由があるので、話をよく聞くとよいですね。子どもは、話をしっかり聞いてもらえるだけでも、自分を認めてもらえていると感じることができます。
気持ちを否定せず「そうだったんだね」「こういう気持ちだったんだね」と繰り返しの言葉かけをすることで、親が共感していることを示すことができます。
3-3.子どもの視野を広げる
特定の友達を独占してしまう子どもは、その友達から離れることに大きな不安を覚えています。他の友達と交流する機会を作ったり、興味のあることや得意なことに向き合う時間を作ったりすると良いでしょう。
他の友達と交流することで、子どもは新たな視点を得ることができ、みんなと交流することの楽しさに気づくことができます。
また、友達とは関係なく、自分の好きなことに集中して楽しく過ごせることに気づくと、特定の子に執着しなくても自分の中に安心感が生まれます。
3-4.適切な距離感で成長を見守る
我が子が友達を独占している様子を見たり、他の人から指摘されたりすると、心配になって、子どもにあれこれ尋ねて注意したくなってしまいますね。
しかし、ここは少し我慢して、適切な距離感で子どもの様子を見守りましょう。
子どもは、親が見守っていてくれるという安心感や、自分は認められているという自信を得ると、自分で考えて行動できるようになります。
少し嫌な思いをしたり、友達関係につまずく経験もしながら、たくましく成長します。
徐々に特定の子に執着することなく、様々な友達関係を上手に築けるようになるでしょう。
対応のポイントどの対応法も、子どもが自分で考え、自分の力で成長していけるように、親が愛情を持って接することがポイントです。
子どもの「安心したい、認めてほしい」という気持ちを理解し、寄り添ってあげたいですね。
4.友達から独占される子どもへの対応法
我が子が友達に独占されて、嫌なのに嫌と言えなかったり、他の友達と遊びたいのに遊べない様子をみると、親は切ない気持ちになってしまうことでしょう。
ここでは、友達に独占される子どもへの対応法についてご紹介します。
4-1.子どもの気持ちを聞いて、自己表現する手助けをする
友達に独占される子どもは、友達に対する共感力が高い傾向があり、本当は嫌なときでも、はっきりと嫌と言えないことがあります。
子どもが、2人だけで遊ぶことに満足していれば問題はありませんが、他の子とも遊びたい気持ちを我慢している場合は、「自分の気持ちを友達に言っていいんだよ」と伝えてあげましょう。
そしてどう行動すればよいかを一緒に考えてあげると良いですね。
親の考えを押し付けるのではなく、子どもの意志を引き出し、尊重することがポイントです。
4-2.子どもの行動を褒めて自信をつけさせる
我が子が我慢しているのだとわかると、親は切ない気持ちになってしまうかもしれませんが、子どもが自分で判断して行動できていることを褒めてあげましょう。
褒められたことで、子どもは自信がつき、自分の気持ちを外に出せるようになったり、行動力がついたりします。
4-3.独占する子が悪いと決めつけない
子ども同士の関係は、外から見ただけではよくわからないこともあります。先走って独占する子が悪いと決めつけないようにしましょう。
不安や自信のなさが、友達を独占するという行動に現れていることが多いので、気持ちが安定する状況になれば、困った行動も自然におさまってくることもあります。
先生に相談して子どもの様子を聞いたり、親同士の交流を広げてみたりすることで、より客観的な情報を得ると良いでしょう。
親も広い視野で理解することができ、過度の心配をしなくてすむかもしれません。
5.友達を独占する子どもの事例~原因と声かけ例~
ここでは友達を独占する子どもの事例をあげて、原因と声かけの例をご紹介します。
5-1.いつも2人で遊びたがる小1の男の子
A君とB君が2人でゲームをして遊んでいるところへ、一緒に遊びたいとC君がやって来ました。でもA君は「ダメ!」と言ってC君を仲間に入れません。B君はC君とも遊びたいようですが、黙っています。
■原因
このような場面では、A君はなぜ「ダメ!」と言うのか理由は明確ではありません。
2人だけで遊びたいからダメなのか、ゲームの途中だから途中から入ってくるのはダメだと考えているのか、C君が同じゲームを持っていないからダメなのか、理由はいろいろ考えられそうです。
A君は相手の気持を考える力やコミュニケーション力が不足しているようです。また、いつも特定の子を独占しているならば、不安や自信のなさといった心理が隠れているかもしれません。
■独占するA君への声かけ例
A君には、「B君とどんなゲームをしていたの?」「C君も一緒に遊びたかったみたいだけど、どうして一緒に遊ばなかったの?」などの声かけを通じて、A君の気持ちを確認しましょう。
その後、「そうだったんだね」と共感を示し、「次はC君も誘って、3人で遊ぶともっと楽しいんじゃない?」「C君も一緒に遊びたいと思っていたみたいだから、喜ぶんじゃないかな?」など、解決策を提案したり、相手の気持ちを考える言葉をかけてみましょう。
うまく説明できずに下を向いてしまうような場合は、無理に聞き出そうとせず、子どもの日頃の様子をよく観察しましょう。
不安や自信のなさが見受けられる場合は、「認める、共感する、褒める」といったアプローチで、子どもの自己肯定感を育んでいきましょう。
■独占されるB君への声かけ例
B君には、「B君はC君とも一緒に遊びたいの?」「どんな遊びがしたい?」など具体的な質問を通じて、気持ちを引き出してあげましょう。
「その気持ちをお友達に伝えるといいよ」と促して、自分の気持ちを表現する練習をサポートしましょう。
5-2.仲の良い子と同じものを持って、他の子を遊びの仲間に入れない年長の女の子
AちゃんとBちゃんは、同じヘアアクセサリーをつけて、同じおもちゃを持って2人で遊んでいます。他の子が「入れて」と言ってもAちゃんは「ダメ!2人で遊ぶんだから。あっち行って。」と他の子を寄せ付けません。
Aちゃんは、Bちゃんが新しいものを持っていると、必ず同じものが欲しいとおねだりするので、ママも困っています。
■原因
Aちゃんは引っ越してきて、最初に仲良くなったBちゃんに対して、憧れのような気持ちを抱いているようです。
Bちゃんが持っているものが何でもよく見え、自分も同じものを持つことでBちゃんと同じように素敵になれると感じているのかもしれません。
また、引っ越してきて、家庭環境が変化したことで不安を感じ、忙しいママにかまってもらえず、少し自信をなくしているようです。
■独占するAちゃんへの声かけ例
Aちゃんには、毎日少しの時間で良いのでママとスキンシップをとったり、2人でお話する時間を持つと良いのではないでしょうか。
「今日はどんなことが楽しかった?」「友達との遊びは楽しかった?」といった質問を通じて、寝る前などにスキンシップをとりながらAちゃんの気持ちを聞いてみましょう。
また、「Aちゃんの気持ちをママはいつでも聞いているよ」というような言葉で、Aちゃんの気持ちを安心させてあげることも大切です。
Aちゃんが安心感と自信を取り戻せば、自然に他のお友達とも仲良く遊べるようになるでしょう。
■独占されるBちゃんへの声かけ例
Bちゃんには、「引っ越してきたばかりでお友達のいないAちゃんと仲良く遊べているんだね」とBちゃんの行動を認めて、自己肯定感を高めましょう。
その上で、「Aちゃんと遊ぶのは楽しいけど、みんなと一緒に遊ぶのも楽しいよね」「Bちゃんは何をしたい?」というような声かけを通じて、自分の考えを表現できるようサポートすると良いでしょう。
6.友達を独占する子どもの気持ちに寄り添い、成長を見守ろう
この記事では、「安心感を得たい、自分を認めてほしい」という子どもの心理が特定の友達を独占する行動につながっていることをご紹介しました。
特に年長~小学校低学年くらいの子どもは、自主性が出てくる一方で、相手の気持を考える力がまだ十分ではなく、自分の欲求を優先して行動することも、友達を独占する要因となっています。
子どもの心理や発達段階を理解すると、保護者の方も少し安心できるのではないでしょうか。
子どもは、失敗や嫌な思いを経験しながら少しずつ成長していきます。
今回の対応法を参考に、子どもの気持ちに寄り添って、温かく成長を見守っていきましょう。
参考文献
・『ベーシック発達心理学』開一夫/斎藤慈子(編集)
・『子どもへのまなざし』佐々木 正美 著
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