「ママがいい」は愛情不足?いつまで続くの?ママっ子への対処法も解説
この記事を書いた人
たなかれいこ
- 心理カウンセラー
- ペアレントトレーナー
- カラーセラピスト
- 保育士
子どもと関わる仕事がしたいと、保育士資格を取得しました。
障害児者福祉に5年ほど関わる中で、保護者さんの大変さを実感し、現在はペアレントトレーニングをはじめとする子育て支援の事業を行っています。
プライベートでは小2の娘と暮らすシングルマザーです。
娘と一緒にいろいろな体験やお出かけをするのが楽しみです。
何をするにも「ママがいい」と泣き叫ぶ子どもにお疲れ気味のママも多いのではないでしょうか?
いつもママにべったりな子どもの姿を見ていると、「もしかして自分の愛情が不足してるのかな」と不安になりますよね。
パパが育児に積極的に参加しようとしても、「ママがいい」と子どもが泣いてしまうと、夫婦で対応の仕方に困ってしまうでしょう。
今回は、「ママがいい」という子どもの気持ちについて解説しながら、子どもとパパそれぞれへの接し方を解説します。
「ママがいい」といわれて心が疲れてしまったママへのアドバイスもお伝えしますので、参考にしてくださいね。
目次
1.「ママがいい」はいつからいつまで続くの?
子どもの「ママがいい」はいつまで続くの?と不安に思っているママも多いのではないでしょうか?
ここでは、発達心理学の観点から子どもの「ママがいい」が始まる時期と落ち着く時期についてお伝えします。
1-1.子どもの「ママがいい」はいつから?
赤ちゃんは生後6か月を過ぎた頃から人見知りが始まります。
赤ちゃんの人見知りは、単に「恐怖」の感情から起こるのではなく、知らない人に対して興味があって近づきたいけれど怖いという心の葛藤から生じていることが最近の研究で明らかになっています。(※1)
赤ちゃんは人見知りが始まると、いつもそばにいてお世話をしてくれる「ママ」に安心感を求めるようになります。これが「ママがいい」の始まりです。
また、1歳前後になると、「この人に守ってほしい」という「特別な存在」を決めて、その人に養護を求めます。
特定の人を決めたほうが安心・安全を確保しやすいためです。多くの場合は、一緒にいる時間の長いママが「特別な存在」になります。
1-2.子どもの「ママがいい」はいつまで続く?
子どもの「ママがいい」が終わる時期は、子どもの気質やきょうだい構成など環境的な要因にも左右されるため、はっきりと断言することはできません。
幼児期は、まだまだ親の手を借りなければできないことが多いため、いつも一緒にいるママの負担が大きくなりがちです。
しかし成長とともに、自分でできることが増えてくると、大人のサポートが不要になり、「ママがいい」の頻度も減っていきます。
「自分でできる!」という子どもの自信を育てることと、ママ以外に安心できる存在を作ることが、「ママがいい」を早く落ち着かせる方法といえるでしょう。
2.子どもの「ママがいい」は愛情不足のせい?
筆者の娘は、幼稚園に入園してからも「ママがいい」ということが多かったのですが、そのたびに「私の愛情が足りてないから、娘はこんなにべったりなのかな」と不安に思った時期がありました。
ここでは、幼児期に大切な「アタッチメント形成」について触れながら、「ママがいい」という子どもの気持ちを詳しく解説します。
親の愛情を子どもに効果的に伝える方法についてもお伝えしますので、ご家庭でも実践してみてくださいね。
2-1.親の「愛情」とは何か
「愛情」を辞書で引くと、
1.深く愛し、いつくしむ心。「—を注ぐ」
2.(性愛の対象として)特定の相手を恋い慕う心。「ひそかな—をいだく」
(引用:デジタル大辞泉)
と書かれています。親が子どもに注ぐ愛情は「1」の方ですね。
愛情は測れないものなので、余計に悩むママも多いと思います。
「うちの子の“ママがいい”は愛情不足のせい?」と不安になった方は、お子さんが誕生してからの生活を振り返ってみてください。
数時間おきにミルクをあげたり、栄養を気にしながら離乳食を作って食べさせたり、体調に気をつかったり、いろいろな所へお出かけしたり……。毎日、お子さんのためにいろんなことをしてきましたね。
子育ては「やって当たり前のこと」と感じるかもしれませんが、ひとつひとつのお世話こそ、親の愛情と言えるのではないでしょうか。
また、子育てに悩むのは、子どもを「深く愛し、いつくしむ心」を持っている証拠でもあります。わが子への愛情があるから、悩みが尽きないのです。
ママは今のままでも十分に愛情を持って子どもと関わっていますよ。
2-2.「ママがいい」はアタッチメントが形成されている証拠
アタッチメント(愛着)とは、イギリスの児童精神科医、ジョン・ボウルビィが20世紀半ばに提唱した概念で、養育者と子どもの間に見られる特別な感情を意味します。
日本の教育心理学者、遠藤利彦さんの書籍では、
「アタッチメントとは、特定の誰かにくっついて安心感を得る不安解消システム(※2)」
と説明されており、養育者と子どもの間の情緒的なつながりや、親子の絆とも言い換えられるでしょう。
人は触れ合うことで、愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が生成されます。このオキシトシンは、ストレスや不安の軽減に効果があると言われています。
ママと子どもの間にアタッチメントが形成されると、子どもにとってママは安心感を与えてくれる存在となり、何をするにも「ママがいい」と執着するのです。
一般的には子どもと一緒に過ごす時間が長いママが、アタッチメント形成の対象と思われがちですが、子どもに関わることのある人であれば、誰でも形成することが可能です。
アタッチメントに関する情報は、こちらの記事で詳しく読むことができます。
・「愛着」が幼児期にも大切な理由とは?愛着形成で自己肯定感を高めよう!
2-3.子どもに愛情を伝える方法
ママやパパがどれほど子どもを愛していても、態度や言葉で伝えなければ、子どもには届きません。
親の愛情を子どもに伝えるには、日々の繰り返しが大切です。
週に1回のたくさん時間よりは、毎日10分でもいいので密度の濃い関わりを続けた方が、子どもの心は満たされていきます。
お風呂や食事などちょっとした時間に、子どもの話を聞き、触れ合いを大切してください。
筆者は娘と寝る前の読み聞かせが日課になっています。一緒に本を読んで、感想を話し合う幸せな時間です。時には、「大好き~」と言いながらハグもします。
子どもは大きくなると恥ずかしがってスキンシップを嫌がるようになりますので、まだまだ喜んでくれる今のうちにたくさんの「大好き」とハグで愛情を伝えようと思っています。
愛情は、日々の触れ合いから育まれていきます。1日数分でもいいので、スマホや家事から離れ、お子さんと向き合う時間を持ってみてくださいね。
3.「ママがいい」という子どもへの対応法
続いて、「ママがいい」と子どもがグズグズしたときの適切な対応法を紹介します。
3-1.子どもの「ママがいい」という気持ちに共感する
まずは、子どもの「ママがいい」という気持ちを受け入れます。
「そうだね、ママがいいね」と子どもの言葉をおうむ返しすることで、子どもは「ママに受け入れてもらえた」という安心感を得ることができます。
子どもの気持ちを受け止めた後で、どうしてもパパにお願いする場合は、「今日はパパと一緒にお願いね」と伝えます。
「今日はママも忙しいからできないの」と理由を伝えるのもいいでしょう。
3-2.「パパも頼りになる」と伝える
日頃から「パパ」の存在を感じさせるのも効果的です。
「単純接触効果」をご存知でしょうか。これは、アメリカの心理学者のロバート・ザイオンスが提唱した行動心理学における効果で、
「人は同じものに対して繰り返し接触を重ねることで、そのものに対して親しみが湧いてくる現象」
のことを指します。
子育てに置き換えてみると、パパと子どもがあまり交流ができていないとしても、毎日パパの写真を見せたり、パパの話をしたりすることで、子どもはパパに親しみを持つようになります。
例えば、食事のとき、「いただきます!」の後に「パパはまだお仕事頑張ってる時間だね。お腹空いてないかな?」とさりげなくパパの存在を感じさせるといいでしょう。
また、休日に家族で出かけた写真を一緒に眺めながら「この前のお出かけ楽しかったね!パパはサッカーが上手で、一緒に遊ぶと楽しいよね」など、パパも頼りになることを伝えるのもおすすめです。
4.「ママがいい」に落ち込むパパへの対応法
パパが子どものお世話をしようと張り切っていても、「ママがいい」と泣かれてしまうという話をよく聞きます。
せっかく子どもと関わりたいパパも、悲しい気持ちになりますよね。
ここでは、パパも楽しく子どもと関わることができるように、ママがパパにできることを紹介します。
4-1.「ママがいい」に凹んでいるパパをフォローする
まずは、子どもに「ママがいい」と言われて、落ち込んでいるパパを励まします。以下のポイントを意識して、子どもの気持ちやママの思いを伝えてみてください。
- 子どもの「ママがいい」は、パパが嫌いなわけではないこと
- 子どもは、パパのお世話に慣れていないので、不安な気持ちから嫌がる場合もあること
- アタッチメントの形成は、日々の積み重ねが大事であり、毎日少しずつ子どもと触れ合う時間を持ってほしいこと
子どもが「ママがいい」と言うたびにパパが手を出さないでいると、父子関係が希薄になる可能性もあります。パパが子どもを大事に思っていても、その愛情が子どもに伝わらなければ、パパも悲しい思いをしてしまいますね。
また、「パパがいてくれると助かる」「パパは頼りになる。さすがだね!」など、ママがパパを頼りにしていることを言葉で伝えることも大切です。
子どもが機嫌よくパパと遊んでいるタイミングで、「パパと遊んでいるときは、すごく楽しそうだよね」などと声をかけるのもおすすめです。
ママから頼りにされれば、パパもやる気を出してくれますよ。子どもも「パパって頼りになるんだ!」と安心感にもつながります。
4-2.パパとしかできない遊びを体験する
ママは苦手だけど、パパが得意なことを探してみましょう。
例えば、虫取りや釣り。運動が好きなパパなら、親子でスポーツをするのもいいですね。
特に得意なことがないというパパでも、「休日の公園遊びは、パパとする」などと決め、普段は行かない大きな公園に子どもと出かけるのもいいかもしれません。
また、たかいたかいや肩車など、パパの体格を活かしたダイナミックな遊びも、子どもウケ抜群です。
パパも子どもの喜ぶ顔を見たり、子どもに頼りにされたりすることで、育児に自信を持つことができます。
4-3.一緒にお世話して、徐々にパパへお任せする
子どものお世話に慣れていないパパに、いきなり育児をすべてお願いするのはハードルが高いかもしれません。
まずは、ママと一緒に子どものお世話をしながら、子どもとの関わり方やお世話のコツを伝えます。
パパがお世話をするときは、ママは手を出しすぎずにパパを信じて見守ります。
はじめは、子どもが泣いて拒否するかもしれません。そのときはパパも子どもも大変かもしれませんが、徐々に落ち着くものです。
数回繰り返せば、パパも子どもも慣れてきます。ママは子どもに声掛けをして安心させながら、取り組んでみてください。
5.「ママがいい」に疲れたママへのアドバイス
どんなに子どもが可愛くても、毎日「ママがいい」と繰り返されると、疲れることもありますよね。
ときには育児を投げ出したくなることもあると思います。でも、そんな自分を責めないでください。
ママは毎日、家事や育児、仕事と十分に頑張っています。幼児期の子どもと向き合い続けると、心身の疲れやストレスを感じるのは当たり前です。
筆者も、疲れているときは、子どもを強い口調で叱ってしまうこともあります。
「イライラすることが増えた」と感じたら、心も体も疲れているサインです。
そんな時は思い切って、人に頼るようにしましょう。
パパや祖父母に頼るのが難しい場合は、ファミリーサポートセンターや一時保育、ベビーシッターなどのサービスを検討してもよいでしょう。
子どもと関わるためには、心の余裕が必要です。おおらかな気持ちで子どもと向き合うためにも、周りの助けを借りながら、適度に休息をとっていきましょう。
そして、「ママがいい」は子どもの成長とともに必ず減っていきます。
今は大変かと思いますが、できることから少しずつ取り入れてみてください。
ママもパパもお互いを認め合いながら、子どもと関わっていけたらいいですね。
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参考文献
※1:科学技術振興機構,「赤ちゃんの『人見知り』行動 単なる怖がりではなく『近づきたいけど怖い』心の葛藤」,平成25年6月6日
※2:遠藤利彦『アタッチメントがわかる本 「愛着」が心の力を育む』(講談社)
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