貧乏ゆすりをする子ども〜原因はなに?改善策はあるの?
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「食事中やテレビを見ている時に、貧乏ゆすりをずっとしている」
「保育士さんから貧乏ゆすりについて指摘されたが、止められず困っている」
そんなお悩みはありませんか?
無意識に貧乏ゆすりを行っているお子さんも多く、声掛けだけではなかなか止めることはできないでしょう。
何度言っても止まらないと、親御さんもイライラしてしまいますよね。
そこで今回は、貧乏ゆすりをしてしまう原因から意外と知らない貧乏ゆすりの効果など、貧乏ゆすりについてお伝えしていきます。
「なんとかしてあげたい」「治した方がいいのでは…」と感じている保護者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.貧乏ゆすりのメカニズム
貧乏ゆすりの改善方法などについてお話する前に、まずは、貧乏ゆすりはどのようなものかについて確認していきましょう。
1-1.貧乏ゆすりとは
貧乏ゆすりとは、座っているときにヒザやかかとを小刻みに揺らすことを言います。
「貧乏ゆすり」の由来には諸説ありますが、有力な説としては江戸時代に、「足を揺すると貧乏神に取り付かれるといわれていたから」「貧乏人が寒さに震える様子から」と言われています。
1-2.貧乏ゆすりをなぜするのか
貧乏ゆすりをしてしまう原因もいくつか考えられています。
主な原因としては「イライラしている、ソワソワしているなど、心理的に落ち着かない時に、気を紛らわせるために行う」「ずっと座っていると、イライラしている下半身の血流が滞ってしまうので、それを解消するために反射的に行う」が挙げられます。
2.貧乏ゆすりのメリット・デメリット
貧乏ゆすりの概要と原因について確認しましたが、「貧乏神」「貧乏人」という言葉が由来に関係しているということもあってか、なんとなく良くないイメージを持たれている方も多いと思います。
しかし意外にも、貧乏ゆすりを行うことにはメリットがあります。
貧乏ゆすりによって得られるメリット・デメリットについて解説しましょう。
2-1.メリット1|血流を促進する
1つ目のメリットとして、貧乏ゆすりによって血流がよくなり、健康面でプラスに働くことが挙げられます。
貧乏ゆすりをすることによって、「第二の心臓」と言われるふくらはぎの筋肉が収縮し、全身の血行が良くなります。
悩んでいる女性が少なくない「むくみ」の改善や、長時間同じ姿勢でいることが原因で引き起こされる「エコノミークラス症候群」の予防にも効果があると言われています。
2-2.メリット2|気持ちを落ち着かせる
貧乏ゆすりを行うことは、気持ちを落ち着かせることにもつながります。
人間は一定のリズムを繰り返す運動をすると、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌量が増えるといわれています。
貧乏ゆすりも一定のリズムで行われる運動ですので、セロトニンが分泌されるのです。
精神的に不安定になった際に貧乏ゆすりを行ってしまうのは、無意識にセロトニンを増やして、メンタルを安定させようとしているのかもしれませんね。
2-3.デメリット|周囲からのマイナスな評価
貧乏ゆすりには、もちろんデメリットもあります。
貧乏ゆすりをしていると「落ち着きのない人」「躾がなっていない」という評価を受けてしまうことがあるでしょう。
特に子どもの場合は、無意識に貧乏ゆすりをしているケースが多く、注意されても、繰り返し貧乏ゆすりを行ってしまうため、「注意されても改善できない子」「言うことを聞かない子」というレッテルを貼られかねません。
3.貧乏ゆすりをする子には発達障がいの可能性がある?
貧乏ゆすりにいくらメリットがあるとはいえ、常に体を動かしていて、注意しても止まらない我が子を見ていると「何か障がいがあるのかな…?」と心配になってしまうかもしれませんね。
そこで、貧乏ゆすりと発達障がいの関係性について見ていきましょう。
3-1.ADHDとの関連性
<ADHD(注意欠如・多動症)とは>
「注意力を持続させることが難しい」「落ち着きがなく待つことができない」「行動をコントロールすることができず、衝動的かつ突発的な行動をしてしまう」などの特徴が継続的に見られ、日常生活に困難が起こっている状態を指します。
幼稚園や学校、家庭などの複数の場所で同様の症状がみられる場合に診断されます。
ADHDのお子さんは姿勢保持が難しく、絶えず体のどこかが動いてしまいます。
そのため、貧乏ゆすりを止められないお子さんは決して珍しくありません。
貧乏ゆすりが止められず、それ以外にも「注意力がない」「自制がきかない」などの様子が様々な場面で見られるようでしたら、専門機関を受診することをお勧めします。
3-2.自閉スペクトラム症との関連性
<自閉スペクトラム症(ASD)とは>
「同年代の人とやり取りをすることが難しい」(小さいお子さんの場合には「人間に興味がない」「物への執着が強い」)「冗談が通じない」「距離感やルールなど、目に見えないことを把握することが苦手」などの特性から、日常生活に困難さが起きている状態を指します。
自閉スペクトラム症のお子さんは周囲に無頓着で、例え周囲の迷惑になる行為であっても、自分の中で整合性が取れていれば行ってしまう傾向にあります。
そのため大きな声で歌ったり、独り言を言ってしまったりして、例え注意されても、「どうしてダメなのか」が理解できず、繰り返し行ってしまうのです。
そんな行動の1つに、貧乏ゆすりが見られることもあります。
メリットとしても挙げましたが、貧乏ゆすりは気持ちを落ち着かせる効果もあるので、気持ちが不安定なときに貧乏ゆすりをしてしてしまい、例え周囲から非難されても止めようとしません。
自閉スペクトラム症は1歳半検診や3歳児検診で指摘されることもありますが、大人になってから診断を受けるというケースも珍しくないため、気になる方は専門機関への受診を検討することをお勧めします。
4.貧乏ゆすりをする我が子と付き合うヒント
貧乏ゆすりについて、発達障がいとの関連も絡めたお話をしてきました。
発達障がいのお子さんが貧乏ゆすりをすることはありますが、だからといって「貧乏ゆすりをしているから発達障がい」というわけではありません。
また、貧乏ゆすりにもメリットがあることから、必ずしも「貧乏ゆすり=悪」と言い切ることもできないでしょう。
貧乏ゆすりを有効活用することで、プラスの方向へもっていくことも可能なのです。
そこで最後に、わが子の貧乏ゆすりとどのように付き合っていくか、親としてどのように考えていけばよいのかについて紹介していきます。
4-1.貧乏ゆすりをする理由を考える
子どもの行動には必ず理由があります。
大人からすれば無意味と思えるかもしれませんが、その背景には子どもの思いや欲求が隠れています。
貧乏ゆすりも同様で、もしかしたらイライラしているかもしれませんし、過ごしている時間に退屈さを感じているのかもしれません。
貧乏ゆすりをはじめとした行動は子ども達の心理状況を読み解くサインとなり得ます。
貧乏ゆすりを始めたタイミングで「イライラしているの?」と問いかけ、言葉で表現・発散させる助け舟を出したり、子どもが興味を持ちそうなものを提示したりすることで、子ども達はより充実した時間を過ごすことができるようになります。
4-2.貧乏ゆすりを止めたいなら
どうしても貧乏ゆすりをやめさせたいなら、頭ごなしに否定したり、怒鳴りつけたりしても意味はありません。
むしろ、そのことにストレスを感じたり、意地になったりして、余計に貧乏ゆすりがひどくなる場合もあります。
子どもの状態をしっかりと見守り、いつ、どんな時に貧乏ゆすりをしているのか、逆に何をしているときには貧乏ゆすりをしないのかといったデータを集め、規則性や法則を見つけましょう。
「もしかしてこれが原因かも?」と思う部分を改善していく。もしうまくいかなければ分析に立ち戻り、もう一度考えていく。こうした地道で継続的な努力が子どもの意識や習慣を変えていくのです。
4-3.貧乏ゆすりとの付き合い方
貧乏ゆすりにはメリットとデメリットの両方があり、全面的に否定されるべきものではありません。
しかし、貧乏ゆすりによって子どもの評価が下がる可能性があることもまた事実です。
貧乏ゆすりを否定的・批判的に捉えるのではなく、「言葉にできない感情を貧乏ゆすりとして表現している」と考え、子どもの生活の質を向上させるためのヒントとして考えてみてはいかがでしょうか?
参考文献/記事
・日本経済新聞「貧乏ゆすり、実は健康にプラス」2012年4月10日 付
・ベネッセ教育総合研究所「発達障害のある子どもたちの学びに関わる問題」フォーラム NPO法人発達障害をもつ大人の会(DDAC)代表 広野ゆい氏インタビュー
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