子どもがごめんなさいを言いすぎる…。すぐ謝る心理とふさわしい対応
この記事を書いた人
横山ミノリ
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
- 小学校教諭
- 児童発達支援士
小1と年少の男の子の母。
長男はASD(自閉スペクトラム症)
産後うつと育児ノイローゼになった経験から”ラクに生きる”がモットーに。
子どもには「自分で決めた!」「自分でできた!」という経験をたくさんしてほしいと思っています。
子どもとの好きな遊びは工作。子育てで好きな本は、高濱正伸著の「こどもの可能性を伸ばす「しない」子育て」です。
「たいしたことではないのに、とっさに”ごめんなさい”と言う」
「”ママ、○○しちゃって本当にごめんなさい”と過剰に謝る」など、
ごめんなさいを言いすぎる子どもに悩むことはありませんか?
普通なら素直に謝れるのは良いことですが、反射的に謝る、必要以上に謝るといった子どもの様子を見ると心配になりますよね。
また、他人の目がある場所でそんなふうに謝られたら、行きすぎたしつけや虐待を疑われるのではないかとひやひやするかもしれません。
そんなお悩みをお持ちの方へ、この記事では、ごめんなさいを言いすぎる子どもの心理と原因を解説し、ふさわしい対応もご紹介します。
ぜひ、子どもの本当の気持ちと向き合うきっかけにしてみてください!
目次
1.ごめんなさいを言いすぎる子どもの心理
「ごめんなさい」は本来、自分のあやまちをわびるときや、自分の失礼に対して許しを乞うときの言葉です。(参考:デジタル大辞泉)
しかし、それほど謝る必要がないときにまで過剰に謝る子どももいます。
この場合のごめんなさいに隠された気持ちは何なのでしょうか。ここでは、ごめんなさいを言いすぎる子どもの心理をお伝えします。
1-1.「ママに怒られるのが怖い」
たいしたことではないのに子どもがとっさに謝る場合は、「ママに怒られるのが怖い」という恐れの心理が隠されている場合があります。
例えば、飲み物をこぼしてしまったときや、持っている物を落としてしまったときなどに、ママに怒られるのが怖くて反射的に「ごめんなさい」と言うかもしれません。
恐れのレベルには、ママの顔を見て「やっちゃった」という程度から、怯えたり、体をすくめるような様子が見られるものまであります。後者の場合は、強い恐怖に支配されている可能性があるでしょう。
子どもが成長していく過程で、恐れという感情は必要です。健全な恐れは、危険を避けるよう子どもを動かしたり、正しい行動に導いたりします。
一方、注意しなければならない危険な恐れとは、それによって感情や行動が支配され、子どもが本当の気持ちを表現できなくなったり、正しい行動がとれなくなってしまうものです。
1-2.「ママに嫌われたくない」
叱ってもいないのに謝ったり、些細なことでも謝ったりする場合は、「ママに嫌われたくない」「ママに嫌われたかな、嫌われたらどうしよう」という不安の心理が隠されていることが多いでしょう。
子どもによっては、不安感が強くなると、少し注意されただけでも必要以上に謝るようになり、さらには、ママが少しイライラしていたり、忙しくしていたり、ただ困っていたりするだけでも謝る子どもがいます。
子どもにとって、ママは心の安全基地です。安全基地であるママが感情的で不安定になっていると、子どもは自分の安全が脅かされていると感じ、不安になるのです。
2.子どもがごめんなさいを言いすぎる原因【恐れと不安】
子どもの過剰なごめんなさいの裏にある、恐れと不安はどこから来るのでしょうか。
ここでは、恐れと不安の原因について解説します。
2-1.感情的に怒られることが多い
感情的に怒られることが多いと、子どもは、恐れから反射的に謝るようになります。
感情的に怒った場合、子どもに伝わるのは、なぜ怒られているのかという理由より、ママの大きな声や、きつい口調、怖い表情です。
このような怒られ方が続くと、子どもは、自分が悪いことをしたからというより、ママに怒られるのが怖いからという理由で謝るようになるのです。
また、子どもは怒られて育つと、「怒られないようにしなくちゃ」と過度に人の顔色をうかがうようになります。本音を話したり、言い返してはいけないという考えが強くなり、ごめんなさいしか言わなくなるでしょう。
自分の気持ちだけでなく、自分自身にも価値がないと感じ、自己肯定感が下がってしまいます。
2-2.見捨てられることへの恐怖心
過剰なごめんなさいの心理である不安感は、「見捨てられ不安」からくるものかもしれません。
英国カウンセリング心理療法協会(BACP)のメンバーである心理療法士のリンジー・ジョージ氏は、「見捨てられ不安とは、あなたが愛した人があなたの元を去り、戻ってこないのではないかという大きな恐怖のことです」と説明しています。
子どもの場合、「見捨てられ不安」は、ずっと近くで育ててきてくれたパパやママに対して抱きます。物理的にも精神的にも少しずつパパやママから離れていくなかで、「パパ・ママに見捨てられたらどうしよう」という不安感が出てくるのです。
「見捨てられ不安」は、1歳前後から現れ、3〜4歳の幼児期後半までにはほとんどの子どもが体験します。後追いや、試し行動など、様々な形で現れ、ごめんなさいの言いすぎも、「見捨てられ不安」による行動の1つです。
2-3.不安を感じやすい性格
子どもの中には、もともと敏感で繊細な子もいます。「HSC」や「繊細さん」と呼ばれる子どもは、ストレスに弱く、物事をネガティブにとらえやすい気質を持っています。そのため、恐れや不安を感じやすいのです。
ママが叱るつもりのないことで謝ったり、自分が悪くないことまで謝ったりするなら、人一倍不安を感じやすい子どもなのかもしれません。
繊細な子が最も影響を受けるのは、1番近くにいるママです。ママが怒っていたり悲しそうにしていたら、自分に原因があるのではないかと思ってしまいがちです。ママの不安が移ることもあるでしょう。
また、不安を感じやすい子どもでなくても、環境や状況の変化により一時的に敏感になったり、不安が強くなったりすることもあります。例えば、引っ越しや入園、ママの仕事が忙しい、下の子が生まれた、というときなどに謝ることが増えるかもしれません。
3.ごめんなさいを言いすぎる子どもにできること
恐れや不安を抱えている子どもは、常に緊張状態にあり、ストレスを感じています。
ここでは、子どもが安心でき、パパとママから愛されていると感じるためにできることを紹介します。
3-1.感情的・一方的に怒らない
子どもに注意するときは、感情的にならないようにしましょう。子どもに、「怒られて怖い」という恐怖だけが伝わることのないようにします。
叱る理由と、子どもがやるべき行動を具体的に伝えましょう。子どもの存在を否定するような言い方はやめて、子どもの良くない行動に対してだけ叱るようにします。落ちついた声のトーンで話すと、子どもの耳と心に届きやすいですよ。
また、子どもの気持ちを聞かずに一方的に怒らないようにします。
子どもが「だって」と反論してきたら、気持ちを聞いてあげるチャンスです!子どもは、自分の意見をママが聞いてくれるとわかれば、本当の気持ちを押し殺して、ごめんなさいしか言わないということはなくなるでしょう。
さらに、言い訳を聞いてもらえる子はママの言うことを聞きやすくなり、結果的にママが感情的になることも減るという良いサイクルが生まれます。
3-2.子どもが不安になるような環境をつくらない
親がいつもイライラしていたり、子どもの前で、不安や不満などのネガティブな感情を言葉や態度に出していたりすると、子どもは、家庭を安心できる場所と認識できなくなります。
たとえ、マイナスの感情を子どもにぶつけなくても、ママの気持ちが不安定であることを見るだけで子どもは不安になります。また、夫婦喧嘩が常習化している環境も危険です。
だからといって、ママは思っていることを我慢すべきということではありません。どうしても気持ちを抑えられないこともありますし、ママが我慢して気持ちを抑え込んでいる状況も、子どもを不安にさせるからです。そんなときは、子どもに理由を話してあげるといいかもしれません。
「ママ、今仕事が忙しくて少しイライラしちゃってるんだ」「ママ、昨日あんまり寝られなくて、元気がないんだ」などです。
また、夫婦喧嘩をしてしまったら、子どもの前で仲直りする姿を見せると子どもは安心できますよ!どちらの場合も、子どものせいではないということをきちんと伝えましょう。
難しく考えたり、完璧を求めなくても大丈夫です。子どもと一緒にご飯を食べ、たくさん会話し、同じ布団で眠るだけで子どもは安心感を得ることができるからです。子どもにとって安心できる場所で、ありのままの自分でいられることがとても大切なのです。
ママがつらいときは素直な気持ちを話すことで、子どもも我慢せずに気持ちを表現していいんだということを学ぶでしょう。
3-3.無条件の愛情を伝える
無条件の愛情とは、子どもの存在そのものを愛するということです。
本当の気持ちを抑えて謝っている子どもは、自分の気持ちや、自分の存在そのものに価値がないと思うようになります。そんな子どもに必要なのは、「ありのままの自分で、パパやママに愛されているんだ」「自分は価値ある存在なんだ」と思えることです。
では、無条件の愛情はどのように伝えたらよいのでしょうか。「大好き」という言葉と共にぎゅっと抱きしめてあげるだけでも十分です。できるなら日ごろから、「生まれてきてくれてありがとう」「今日も大好きだよ」と言葉にして伝えてみましょう。
伝えるタイミングがわからないのであれば、朝起きたときや、寝る前には必ず言うようにするのはいかがでしょうか。言葉にするのが照れ臭いのならば、スキンシップを増やすことから始めてみてもいいかもしれません。
また、子どもの話をよく聞き、共感することによっても無条件の愛を伝えられます。
3-4.悪いと思ったときだけ謝ればいいことを伝える
実際に、子どもに過剰にごめんなさいと言われたときの対応をお伝えします。
子どもが謝ってくれたら、まずは気持ちを受け止めましょう。謝る理由を聞いてあげてもいいかもしれません。それから、謝るのは、本当に自分が悪いと思ったときだけでいいことを伝えます。
必要以上に謝ることは、自分で負う必要のない責任まで背負うということです。自分の責任がどこまであるのか考える習慣を持つことは、自分と他人の境界をはっきりさせることになり、自分を大切にすることにつながっていきます。
さらに、ついごめんなさいを言ってしまう子どもには、ごめんなさい以外のコミュニケーションを教えることができます。例えば、子どもがこぼした飲み物をママが拭いていたら、「こぼしちゃってごめんね。拭いてくれてありがとう」で良いでしょう。
ママ自身も、すぐに謝る癖がないか見直してみるもの良いかもしれません。「ごめんなさい」より「ありがとう」が増えたら、ポジティブな会話で家庭がさらに明るく元気になりそうですね!
4.すぐ謝る我が子に気づけたママはすごい!
最後に、すぐに謝る我が子に気づくことができたママの素晴らしさをお伝えします!
4-1.ママが気づけたのは子どものことを想っているから
すぐ謝る我が子に、何か問題があるのではないかと気づけたママは素晴らしいです。なぜなら、謝れる子のことを、自分の思い通りに動いてくれる、育てやすい子だと思ってもおかしくないからです。
ごめんなさいを言いすぎる子どものことで悩み、ごめんなさいの裏にある心理を知りたいと思ったのは、自分都合の育てやすさではなくて、子どものことを考えているからではないでしょうか。
本記事を読んでくださっているママは、子どもの本当の気持ちに向き合おうとしている素敵なママなのです!
4-2.気づいてもらえた子どもは幸せ
子どもにとって、幼児期にありのままの自分を受け入れてもらえたり、素直な気持ちを表現できる環境は大切です。もし、ママに気づいてもらえず、ごめんなさいを言い続けることが当たり前になっていたら、「いい子症候群」になってしまっていたかもしれません。
また、今抱えている恐れや不安を解消できないまま大人になってしまうと、将来人間関係で悩むことが多くなるでしょう。
相手の反応や、その場の空気を気にしすぎることからくる必要以上の謝罪は、様々なトラブルの原因となりえます。日本人特有の謝り癖がつかないためにも、早い段階でママに気づいてもらえた子どもは幸せだといえるでしょう。
5.ごめんなさいを言いすぎる子どもの本当の気持ちに向き合おう!
ごめんなさいを言いすぎる子どもの心理には、恐れと不安が隠れています。子どもが安心できる環境を整えたり、無条件の愛情を伝えることで、恐れや不安を解消してあげましょう。
もしかしたら、子どものごめんなさいが増えるのは、ママが頑張りすぎているサインかもしれません。ママ自身の気持ちや生活を見直し、肩の力を抜いて、今できることをおこなっていきましょう。
自分の本当の気持ちを受け入れてもらえると、子どもは素直な自分を表現できるようになります。また、ありのままの自分を受け入れてもらえた子どもは、自分に自信をもって生きていくことができるでしょう。今回のお悩みが、ママと子どもの本当の気持ちに向き合うきっかけになったら素敵ですね!
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