食に興味がない子ども!?その原因と楽しく食に親しむアプローチをご紹介
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
「もうご飯だよ」と言っても、遊び続けて見向きもしない。
「今いらない」とご飯を喜ぶこともない…。
そんな様子を見ると、食に興味がないのかな?食べることが楽しくないのかな?と思ってしまいますよね。
4歳ごろになると、大人と同じように食べられるものも増えて、食具を使って食べることにも慣れてきます。
にもかかわらず食があまり進まないと、「なぜ?」と感じるママやパパも少なくないでしょう。
食事量が減り、栄養が偏ったり成長に影響が出たりするのではないかと心配になることもあるかもしれません。
この記事では、4歳ごろの子どもが食に興味がもてない理由を探り、食に興味をもってもらうためのアプローチをご紹介します。アプローチは、ご家庭ですぐに取り組めるものも多いので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
1.食に興味をもてないのはなぜ?
そもそも、食にどれくらい興味があるかは個人差が大きいと言えるでしょう。
何もしなくても食べることが大好きな子もいれば、その逆の子もいます。
それを前提としても、なぜ食に興味をもてないのかは気になりますよね。どのような理由があるのかを見ていきましょう。
1-1.遊びなどその他のことを優先するから
さまざまなことに興味をもち、好奇心旺盛な幼児期。
食事よりも魅力的な活動がたくさんあると、なかなか食に気持ちが向かないということもあります。
自分の興味があることに集中していたり、遊びの中で新しいことを発見することに夢中になっていたり、気持ちが食事に向かないこともあるでしょう。
「食べた後で続きをやろう」と、すぐに気持ちや頭を切り替えるのがまだ難しいこともあります。
1-2.食べることが楽しいと感じる経験が少ないから
食事の時間が楽しい時間だという認識が乏しいと、食に興味をもちにくくなることもあります。
食事においては、マナーやバランスよく食べることなども大切です。
しかし、そのことで厳しく規制されたり過度に注意されたりすると、食事の時間が楽しいと思えず、だんだん食に気持ちが向かなくなってしまうこともあります。
1-3.空腹を感じないから
空腹を感じにくいため、食に興味がもてない子どももいます。
テレビやYouTubeを観ることが日中の活動の中心になっている場合もあり、エネルギーを消費しきれないこともあるでしょう。
活発に運動することなく食事の時間を迎えると、「おなかが空いた」と感じないまま、食べることになります。
自ら「おいしそう!」「食べたい!」と意欲的になることはないかもしれません。
さらに、飽食の時代と言われる昨今は、空腹で「何でもいいから食べたい」と感じることは多くありません。
小さい頃から、ぐずらないように常にお菓子を与えられるなどしていると、食べ物を欲する気持ちが湧きにくく、食に興味をもつ気持ちが芽生えにくい、という側面もあるでしょう。
1-4.好き嫌いが明確になってくるから
幼児期は、味覚が発達するにしたがって好き嫌いが明確になってきます。
2歳ごろから甘未・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの味を区別できるようになってきます。
それに伴い、好き嫌いも出てくるようになり、4歳ごろにピークを迎えます。
苦手な味のものを食べた経験から、食への警戒心が芽生えたり、食事自体に嫌なイメージをもってしまうことがあります。
そのことから、食への興味を失ってしまうこともあるでしょう。
2.食に興味をもつことの重要性
食べることは身体やこころの健やかな成長はもちろん、社会で生きていくうえでも重要です。
食に興味をもてない理由もさまざまなものがあることが分かりましたが、ここでは、食がどのように大切であるかをみていきましょう。
2-1.生活リズムが整えられる
生活リズムを確立していく時期にあたる幼児期では、食事のリズムができることで生活リズムが整っていくとも言えます。
現在の日本では、一日朝昼晩に3食が基本です。起床から就寝までの間で午前、午後、夜の活動の区切りとして食事の時間がやって来るともいえるでしょう。
食に興味をもっていると、食事を規則正しくとることにつながり、それがひいては生活リズムを整えることにつながります。
2-2.人と楽しい場を共有できる
食事は、誕生日会やパーティー、季節の行事などと切っても切り離すことができません。
その時々の特別な食事や会話を楽しむことは、食の醍醐味とも言えるでしょう。
大人になってからも、食事をともにし時間を共有することは、人と親睦を深めるのに大切です。
食に興味がないと、そのような時間をもつことに気が進まなかったり難しかったりと、他者と楽しい気持ちを共有する機会が大きく減ってしまうかもしれません。
2-3.社会に目を向けるきっかけになる
食に興味があると、食に関するさまざまなことに興味をもつようになります。
「自分の食べている野菜は、どこからきているのだろう?」「スーパーの野菜は、どのようにしてここまでくる?」「食べ物を買うお金は、どうやって手に入れる?」など食を中心にさまざまな方向に興味を広げ、社会の仕組みを知っていくことにつながるでしょう。
さらに、人の労働に感謝する、限りある自然や資源、食物を大切にしようという気持ちが芽生えるなど、豊かなこころの成長にもつながります。
3.食に興味がない子へのおすすめアプローチ
食への関心は、心身の成長に関することだけでなく、社会的にも大切です。
食に興味がない子も、日々の関わりで少しずつ興味をもってくれたら嬉しいですよね。
そこでここでは、親は日頃、どのように関わり、アプローチしていけばよいのかご紹介します。子どもに合った方法で焦らず、食への興味を育んでいきましょう。
3-1.食に触れる経験をする
食事にこだわらず、まずは食に関するものに触れることから始めてみるのもよいでしょう。
スーパーへ買い物に行き野菜や果物の売り場を一緒に見る、話題の食べ物を買ってみるなどは食に興味をもつきっかけになるでしょう。
家庭菜園などで、自分で育てた野菜や果物を食べる経験も、食べ物への関心を引き出すのによいですね。
また、一緒に調理をするのもおすすめです。自分で調理したものには愛着がわき、食事の時間に気持ちが向くきっかけになるでしょう。
牛乳を入れて混ぜるだけのような簡単な過程で調理が完成するものもあるので、気軽に試してみることができます。たくさんの種類がある知育菓子も、子どもは遊び感覚で興味を持ちやすいです。
3-2.一緒に食べることを楽しむ
家族の生活リズムにより、子どもだけ先に食べて親は別の時間に食事をするご家庭もあるでしょう。
その場合、一緒に食べて「おいしいね」「うれしいね」という気持ちを共有する機会が減ってしまっているかもしれません。
まずは、お菓子や間食などでも一緒に食べる時間をもつと良いでしょう。
「半分こに分けて食べよう」「お母さんのお菓子と交換しよう」など他者と共に食べるならではの体験ができると、「食べることは楽しい」「ママパパと一緒に食べるって楽しい」という気持ちを抱くきっかけになります。
また、外食のように普段と違う場所で一緒に食べる時間を持つのもいいでしょう。いつもと気分が変わり、食に気持ちが向きやすくなるかもしれません。
子どもとの外食は、食事を用意する時間を一緒に食べる時間に充てることができます。
気候のいい時期は、外でピクニックをするのもいいですね。
3-3.絵本や遊びを通して食に親しむ
食べるシーンのある絵本を読んだり、遊びを通して食に触れたりするのもいいですね。
子どもにとって「遊びや普段の生活の延長線上に食がある」と気付くことは、食に興味をもつ大きな一歩となるでしょう。
工作が好きな子は折り紙などで見立て遊びを、人形遊びが好きな子はごっこ遊びの中で食べるシーンをするなど、その子に合った方法で遊びながら食に親しんでいきたいですね。
中でも絵本は食をテーマにしているものも多く、子どもが「食べること=楽しいこと」とイメージするのにぴったり。
絵本の中のシーンを再現してみる、同じように作ってみるなど、子どもが興味をもった部分を一緒に行ってみるのがおすすめです。
子どもが食に興味をもてるような絵本を3冊ご紹介します。
〇サンドイッチ サンドイッチ(小西英子/作)
❚ あらすじ
サンドイッチを作る工程を、色鮮やかな具材のイラストとリズミカルな表現であらわしています。ページをめくるたびにサンドイッチが完成していき「いただきまーす!」と食べるシーンが想像できます。
❚ おすすめポイント
サンドイッチなので作り方は簡単で、すべての工程を子どもと一緒に行うことができます。つい「サンドイッチサンドイッチ♪」とつい口ずさんでしまい、子どもの「作ってみたい」という気持ちを引き出すのにピッタリです。
〇しろくまちゃんのほっとけーき(わかやまけん/作)
❚ あらすじ
しろくまちゃんがホットケーキを作り、お友達と一緒に食べるストーリー。「できたできた」と完成したホットケーキをお皿に入れる姿に、おかあさんと一緒に作ったよろこびが表れています。ホットケーキが焼けるのを待ち望んでいる様子に、こちらもワクワクしてしまいますよ。
❚ おすすめポイント
一緒に作って楽しい、一緒に食べて楽しいという姿が表されており、食への興味をもつのにぴったりの1冊です。シンプルでストーリーも分かりやすく、ホットケーキを焼く工程は擬音が楽しく「やってみたい」「ママと一緒に食べたい!」という興味を引き出せます。
〇おにぎりに はいりたいやつ よっといで(岡田よしたか/作)
❚ あらすじ
擬人化されたおにぎりが、中に入れる”具”を探しに町へ繰り出します。思わず笑ってしまうような展開、テンポのいい関西弁の表現で、おにぎりたちの世界を表現しています。
❚ おすすめポイント
おにぎりの世界に入り込み、思わず笑ってしまうような場面がたくさんあります。「何をいれる?」「のりも巻いてみよう」「これは中に入れてもいいかなぁ?」などと自分が食べることを想像して話が弾みます。
お気に入りの絵本が見つかると、その絵本を通して食がぐっと身近に感じられますね。
3-4.簡単な体操などでお腹を減らす工夫をする
日中の活動量が少なく空腹を感じににくいときには、子どものエネルギー消費のために簡単な運動に取り組んでみるのもいいでしょう。
ママパパも一緒に行うとリフレッシュにもなり、親子の楽しい時間も作り出せるため一石二鳥ですよ。 昨今は、体を動かし適切な運動をして規則正しく食事をとる重要性を伝えるため、さまざまな自治体がオリジナルの体操を作っています。
〇さかい食育体操(大阪府堺市)
〇ひらかわ食育体操(青森県平川市)
いずれも難しい動きはなく、かわいいキャラクターが登場してお子さまも取り組みやすいです。
皆さんがお住まいの自治体でも、オリジナルの体操があるかもしれませんよ。おうちで空いた時間にお子さまと一緒に試してみてはいかがでしょうか。
3-5.食べるよう無理強いしたり圧をかけるのはNG
食に興味がもてないと、食べる量が少ない、偏食であるなど、親としては身体の成長に関わるのではと不安を感じることが多いと思います。
食に興味をもってもらいたい、とにかく食べてもらいたいと思いますよね。
子どもは、親の様子に敏感です。「どうして食べないの?」とイライラしたり暗い顔をしたりしていると、萎縮してしまいます。
食事の時間が安らげる時間でないと食事の時間そのものを嫌うようになり、さらに食への興味を失うことになってしまいます。
とにかく食べるよう無理強いする、イライラしている様子を露骨に見せたり「ごはんを食べないと、おやつなし!」などと圧をかけたりするのは避けましょう。
4.子どもに合ったアプローチで食への興味を高めよう
この記事では、食に興味がもてない子へのアプローチを紹介しました。
まずは「食べる」ことにこだわらず、食を身近に感じることができるといいですね。
そのためには、子どもの「楽しそう」「やってみたい」の気持ちが大切です。
食べることを無理強いしたり食べないことを叱ったりするのではなく、お子さまに合った方法で、少しずつでも食に興味をもっていけるよう関わっていきましょう。
参考文献
・厚生労働省「食を通じた子どもの健全育成(-いわゆる「食育」の視点から-)のあり方に関する検討会」報告書について
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