image-12197

「上の子可愛くない症候群」心理士が親子の心理と対応法を解説【チェックリストあり】

この記事を書いた人

水谷愛 水谷愛

水谷愛

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

臨床心理士・公認心理師として、国立病院や精神障害者デイケア施設、スクールカウンセラー、発達障害者就労支援センター、障害者就労移行支援事業所、療育の現場で「心の専門家」として20年以上勤務しています

現在、思春期の2児の子どもの子育て中。

こころについてのKindleも執筆しています。

下の子が生まれたときに、「上の子が下の子に意地悪する」「上の子がやたらベタベタしてくる」といったお悩みはありませんか。

もしそういった上の子に対してネガティブな気持ちを抱いてしまう、という場合「上の子可愛くない症候群」かもしれません。

「上の子可愛くない症候群」とは、下の子を出産したあと、上の子がどうしても可愛いと思えないといった状況を指します。

お母さんも、下の子が生まれて育児が忙しくなり、お世話が大変ですよね。

そんな中で、上の子への愛情は決してなくなったわけではないけれど、下の子にかまう時間が長くなり、つい上の子には冷たくなってしまうこともあるかもしれません。

この記事では、上の子のこころの状態と、お母さんも上の子も穏やかに過ごせる関わり方のヒントをお伝えします。
 

 

目次

 
 

1.「上の子可愛くない症候群」お母さんと子どものチェックリスト

まずは「上の子可愛くない症候群」に陥っていないかチェックしてみましょう。
ここではお母さんの言動と、上の子の様子についてのチェックリストをご紹介します。

1-1.「上の子可愛くない症候群」―お母さんの言動のチェックリストー

まずは、お母さんにはどのような言動が見られるか確認してみましょう。

□上の子が言うことを聞かなくて困っている
 
□上の子のしつけで苦労している
 
□下の子ができたことで、上の子に我慢させていると感じる
 
□上の子と接する時間がほとんどない、もしくは取りたいと思えない
 
□上の子に触られたくないと感じる
 
□下の子に比べて上の子をかわいいと思えない
 
□上の子に対して嫌悪や怒りの感情を感じ、その感情を抑えることができない

 

1-2.「上の子可愛くない症候群」―上の子の様子のチェックリストー

続いて、上の子の様子についてもチェックしてみましょう。

□よく泣くようになった
 
□下の子を押しのけて甘えたり、まとわりついて構ってもらおうとしたりする
 
□いじめたり、おもちゃを取り上げたり、下の子に意地悪をするようになった
 
□「○○ちゃんなんかいらない」と言うことがある
 
□自分でできていたことをひとに頼むようになった
 
□今までより甘えた言葉遣いや赤ちゃん言葉を使うことがある
 
□怒ってお母さんにあたるようになった

小島(2017), 深沢・岩立(2013),CONOBASに寄せられたお悩みを参考に、CONOBAS編集部にて作成

 

どちらも、何点からが「上の子が可愛くない症候群」という明確な線引きはありません。チェックをつけた項目が多ければ多いほど、「上の子が可愛くない症候群」の度合いが高くなります。

では次に、なぜどうしても上の子が可愛いと思えないのか、お母さんの心理や特徴についてお話しします。

 
 

2.なぜ「上の子可愛くない症候群」になってしまうの?

「上の子可愛くない症候群」の大きな要因に、「きょうだいの年齢」と「お母さんの心理的な葛藤」が挙げられます。

下の子が赤ちゃんであったり、きょうだいの年の差が小さかったりするほど、子育てに対しての心理的負担が大きいことが研究で示されています。

「心理的負担」には、「時間やスケジュールの調整をする大変さ」や「上の子の行動についての悩み」が含まれています。詳しく見ていきましょう。

 

2-1.上の子が可愛く思えない原因

■下の子は「かわいい」から

赤ちゃんを見ると、思わず笑いかけたり、あやしたくなることはありませんか?

人間だけではなく、様々な動物に共通する赤ちゃんの特徴があります。
動物行動学者コンラート=ローレンツは、赤ちゃんには「体に対する頭の大きさの割合が大きい」「体がふっくらして手足が短くずんぐりしている」などの特徴があると述べており、これはベビーシェマと呼ばれています。

この特徴を見ると、大人はその対象を「赤ちゃん」と認識し、本能的に微笑みかけたり、お世話をしてあげたいと思うようになります。
この反応を引き出すことで、生まれて間もない未熟な赤ちゃんが、養育者からのお世話を受けられるようになっているのです。

つまり下の子が生まれると、本能的に下の子のことを可愛いと思ってしまい、下の子と比較したときに上の子のことを可愛くないと思ってしまうことがあるのです。

この場合お母さんが意図的に「可愛くない」と思っているわけではないので、自分を責めすぎないことが大切です。
 

■お母さんの期待と、上の子の態度にずれがあるから

「可愛く思えない」という感情は、「期待と違っていた」という認識から起こります。

下の子が生まれても、お母さんは下の子だけにかかりっきりというわけにはいかず、上の子のお世話も同時にしなければなりませんよね。

2人の子育てで余裕のない中、「上の子には”いい子”でいてほしい」と思ったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、下の子が生まれたとき上の子がイヤイヤ期であったり反抗期であったりする場合も多く、お母さんが望む通りの「いい子」でいてくれないことがあります。

このとき、お母さんの上の子に対する「いい子でいてほしい」という期待と「手がかかる」という現実とのズレが生じます。

その結果「上の子可愛くない症候群」に陥り、上の子にイライラしてしまったり、「下の子のお世話の邪魔をしないでほしい」と、つい上の子に冷たく接してしまったりしまうことがあるのです。

 

2-2.「上の子が可愛くない」と思ってしまうお母さんの特徴

「上の子が可愛くない症候群」になりやすいお母さんには、次のような特徴がみられます。

  • お母さん自身が育児を完璧にやるべきだと思っている
  • 周りを頼ろうとせず、ひとりでがんばろうとしてしまう
  • 一生懸命二人の育児をしようとするあまり、精神的にも体力的にも疲れてしまっている

 

2人の子を育てるときには様々な心理的負担が生じることが研究でわかっています。

実際にこんなお悩みを聞くことがあります。

・「下の子を寝かしつけようとしていたところ、上の子が騒いでしまいなかなか寝かしつけができません」
・「毎日兄弟げんかばかりで、目が離せないし、仲裁するのもストレスです…」
・「2人分のお世話をしていると『もうこんな時間…』となってしまいます。眠くても残った家事を済ませなくてはいけないし、自分の時間も取れずイライラしてしまいます」

そのような負担を感じたとき、周りの人に「助けて」と言えずにひとりで抱え込んでしまったり、「上手に」育児をこなせない自分を責めてしまったりするお母さんが「上の子が可愛くない症候群」になりやすいのです。

お父さんや、お母さんのご両親、地域の保健師さん、保育園や幼稚園の先生など、周りに頼れる人はいませんか?

話を聞いてくれる人や力を貸してくれる人がいる場合は、思い切って頼ることも大切です。

 
 

3.下の子が生まれたときの、上の子の言動の裏にある心理とは

「上の子可愛くない症候群」の背景として、お母さんの期待とは異なる上の子の行動があります。

お母さんとしては、二人の子どもの育児を一生懸命がんばっているのに、なかなか上の子が言うことを聞いてくれないというのは大変ですよね。

下の子が生まれて、上の子はどんなことを思っているのでしょうか?

上の子の言動の裏にある心理について、お話しします。

 

3-1.赤ちゃん返りー下の子と同じ立場になろうとするー

下の子が生まれると、上の子は「一瞬にして環境が変わってしまった」という状況になります。
それまでお母さんを独り占めできていたのが、下の子が家にやってきたそのときから、かなわなくなるのです。

そんなとき、上の子は「下の子のように赤ちゃんになれば、またお母さんに甘えることができる」と思い、赤ちゃん返りをします。
例えば、やたら泣いたり、それまでひとりでできていたことをやらなくなってしまったりすることがあるでしょう。

また、本当は口に出して伝えることができるのに、下の子に手を出してしまうこともあります。

上の子は、下の子のように赤ちゃんに戻れば、今までの自分のポジションを取り戻せると思っているのです。

 

3-2.お母さんの気持ちを繋ぎとめようとする

下の子がうまれると「あなたはおにいちゃん(おねえちゃん)だから」とお母さんが上の子に何でもひとりでやってもらおうとすることがあるのではないでしょうか。

今までサポートしていたことを一人でやらせることは、確かに子どもの成長につながります。

しかし子どもからしてみると、「今まではお母さんにお世話してもらっていたのに、もう構ってくれないんだ」と、寂しい気持ちになってしまうことがあります。

また、お母さんが下の子にばかりかまっているように感じるため、上の子はどうにか自分への愛情をつなぎとめようと、甘えたり、ベタベタしたりします。

「上の子可愛くない症候群」に陥ってしまったお母さんは、そういった子どもの様子をうっとうしく思ってしまうこともあるので、親も子も互いにネガティブな感情を抱えるといった悪循環に陥ってしまうのです。

 

3-3.下の子への嫉妬心

お母さんが以前より構ってくれない状況で、上の子は「下の子がお母さんの愛情を自分から奪ってしまった」と思っています。

そのため下の子に意地悪をしたり、ときには「下の子なんていなくなってしまえばいいのに」となどと言ったりすることもあるかもしれません。

下の子への嫉妬心を抱えているとき、さらにお母さんが上の子に我慢を強いると、上の子は反抗的な態度をとってお母さんを困らせたり、反対に何も反応しなくなったりすることもあるのです。

 

3-4.下の子を受け入れようと葛藤する気持ち

下の子が生まれたときは、母親だけでなく上の子も「葛藤」を抱えています。

上の子が下の子に対しいじわるをする反面、下の子をかわいがったり、お世話をしたりしようとする様子も見られることがあります。

これは上の子が自分なりに「これまでは自分だけがお母さんにかまってもらっていたけれど、新しく下の子が入ってきた」という状況を受け止めようとしている葛藤の表れなのです。

上の子は上の子なりに葛藤しながら、これまで通りお母さんの愛情を注いでもらえるかを試しています。

子どもは、自分がどのような行動をしてもお母さんに受けとめてもらいたいと思っているものです。

上の子も下の子も、愛情をもって受け止められるといいですね。

 
 

4.「上の子可愛くない症候群」にならないためには?

上の子を可愛くないと感じてしまう原因には、上の子が起こす行動が「お母さんの期待」から乖離していることが挙げられます。

「上の子をかわいがらなくてはいけない」と思って変えられるものではないので、子どもの悩ましい行動を減らせるよう、関わりを工夫してみましょう。

 

4-1.上の子に積極的にかかわる時間を持つ

まずは上の子と向き合う時間を作り、上の子との関係を安定させることが大切です。

たまには下の子をお父さんや一時保育などに預け、上の子とお母さんだけの時間を持つようにしてみましょう。

■例

下の子がお昼寝してる時間、お父さんに下の子をお願いして、一緒に買い物に行ってみましょう。
遠出や長時間の外出が難しい場合、スーパーで好きなおやつを一緒に選んで食べるだけでも十分です。

他にも、上の子と約束を決めて「スペシャルタイム」を作ることもおすすめです。

上の子は、お母さんと一緒に過ごす時間が持てることで気持ちが落ち着きます。

気持ちが安定することで、「○○はひとりでやってほしいな」「(下の子)を見てる間、少し待っていてくれるかな?」といったお母さんからの頼みも、上の子が受け入れてくれやすくなるのです。

 

4-2.育児のハードルを下げる

「周りに頼れる人がいないから、時間は作れない」という方もいらっしゃるかもしれません。

このように感じる場合、「一人で完璧にやらなくてはならない」と育児へのハードルを高くしてしまっていることがあります。

心当たりがある方は、一度自分のこだわりを見直してみましょう。

■例

食事作りを頑張り過ぎてしまう…
子どもの料理は作るけれど、大人の食事はミールキットやテイクアウトを活用してみましょう。たまにはお母さんの好きなものを食べたり、ちょっとした贅沢もいいですね。
野菜の好き嫌いがあって毎回の食事が大変
キャラクターのカレーや野菜入りのふりかけなどを使ってみる、とにかく少しでも食べてくれればOKと割り切ってみましょう。
家事の時間が取れない、家事が終わらない
「とにかく洗濯物はどれが誰のかわかればOK、たたむのは翌日にしよう」、というように”今日絶対にやらないといけないこと”のハードルを下げてみましょう。

「今日はここまで良し」と区切りをつけたり、「完璧にやらなくても困らない」というように、自分の中のハードルを下げたりすることで、心にも時間にも余裕が生まれるかもしれません。

 

4-3.上の子に対して肯定的な言葉をかける

上の子の悩ましい行動は「自分は構ってもらえない」「自分は下の子より愛してもらえていない」と感じていることが原因となっている場合があります。

何かトラブルが起こると上の子を叱ってしまいがちですが、お母さんが余裕のあるときには、上の子の行動をほめたり、上の子を愛していることを伝えたりしてあげましょう。

言葉で伝えるのが難しいときはスキンシップも有効です。

下の子が寝ている間や、お父さんなどに預けている間、上の子も抱っこしてあげたり、手をつないであげたりしましょう。

そうするだけでも、上の子はお母さんからの愛情を感じることができ、お母さんに対して素直になることができますよ。

 

4-4.ルールを決めて期待値を調整する

お子さんに対する「ここまで一人でやってほしい」という期待値が大きいほど、現実との差が大きくなり、「上の子可愛くない症候群」に陥りやすくなります。

そこで、これはどうしてもやってほしいけれど、これ以上は期待しすぎない、というようにお互いに譲歩してルールを決めてみましょう。

例えば

・「お着替えは一人でやってほしいけれど、洋服をたたむのは一緒にやろうね」と決める

・「今からお母さんといっしょに遊ぼう、でも時計の針が〇になったらお片付けをしようね」と、切り上げるタイミングを明確にする

などです。

ここで大切なのは、「決めたことはしっかり守る」ということと、「決めた以上のことはできなくても受け入れる」ことです。

そうすることで、お母さんも「本当はお着替えも一緒にやってあげないといけないのに…」と自分を責めることなく、「これは2人で決めたことだから、私は口だししなくていいんだ」と軽い気持ちでとらえることができるのではないでしょうか。

また、「上の子可愛くない症候群」は、子どもの成長につれて解消していく場合もあります。

下の子が大きくなるにつれて上の子へ構える時間を確保することができたり、上の子が大きくなるにつれて、お母さんがやってほしいと思っていることをできるようになったりするためです。

悩みすぎず、実践できそうなことから少しずつ取り組んでみましょう。

 
 

5.「上の子可愛くない症候群」子どもの困った行動の対応

具体的な場面を取り上げながら、実際にどのように対応すればよいのかをご紹介します。

 

5-1.上の子が下の子に攻撃をしたとき

例)上の子が下の子をたたいてしまったり、おもちゃを奪ったりしてしまったとき

まずは上の子と下の子を引き離し、子どもがケガなどをしないよう守りましょう。

この場合、上の子は下の子への敵対心や嫉妬心から攻撃的な行動を起こしている可能性があるので、まずはその気持ちを取り除いてあげる必要があります。

その場ではなんで叩いてしまったのか理由を聞き、気持ちを受け止めてあげましょう。

そしてときには下の子を預け、上の子と積極的にかかわる時間を持ち、積極的に上の子とのスキンシップを取るようにしましょう。

すぐに変化は起きないかもしれませんが、次第に上の子の気持ちが落ち着いてくるでしょう。

 

5-2.上の子が下の子に意地悪をしたとき

例)上の子が、寝ている下の子をわざと起こして泣かせたり、お母さんから離れず下の子をお母さんに近づけないようにしたりしたとき

この場合、お母さんから「(下の子が)寝るまで待っててね」と伝え、下の子が寝たら、上の子と二人だけで過ごす時間をつくるようにしましょう。

下の子が寝たらすぐ「下の子が寝るまで待っててくれてありがとう。〇〇ちゃんは優しいね」など、肯定的な言葉をかけてあげましょう。

その後、上の子をたくさん抱っこしたりして甘えさせてあげると、上の子は「下の子が早く寝れば、お母さんは自分との時間をつくってくれる」とわかってくれます。

 

5-3.上の子が必要以上にお母さんにベタベタしてくるとき

例)上の子が、お母さんにしきりに抱っこをせがんできたり、お母さんから離れずまとわりついてきたりするとき

この場合は、上の子ができそうな家事のお手伝いを頼み、たくさん上の子を褒める機会を作りましょう。

最初はうまくお手伝いができないかもしれませんが、お手伝いをしてくれること自体をほめてあげることが大切です。

上の子は、お母さんから褒められる機会が増えると嬉しくなり、お母さんの家事にも協力的になってくれます。

さらに、「家事が終わったら一緒に遊ぼうね」と上の子に伝えてあげると、上の子はますますお母さんが早く家事を終えられるよう、協力してくれるようになるのです。

 
 

6.「上の子が可愛くない症候群」になったらひとりで悩まないで

「上の子可愛くない症候群」に陥ることは、下の子が生まれるとよくあることです。

お母さんが二人の子育てを一生懸命するからこそ起こりうる現象なので、自分を責めすぎないでください。

「上の子が可愛くない症候群」に陥ってしまったと感じたら、まずは今回ご紹介した対応法を実践してみてください。

それでも上の子が可愛いと思えなかったり、お互いが穏やかに過ごせなかったりする場合は、ためらわずに専門家に相談するのも大切です。

一人で抱え込まず、思い切って周りを頼ってみてください。

 

公式LINEでもパパ・ママの悩みに寄り添った情報を発信中!

・どうして○○するの?

・育て方はこれでいいの?

そんなお悩みはありませんか?

「なぜ」がわかると…

子どもの成長に前向きに向き合える

見通しが持てる、安心できる

CONOBAS公式LINEではパパ・ママの悩みに寄り添った情報を発信中!

ぜひお友だち登録してくださいね!

非認知能力についてはこちらで詳しく解説中!⇓

 
 

参考文献
小島康生(2007)二人の子どもがいる母親に特有の育児困難感とその背景要因–4か月齢の第二子を持つ母親と19か月齢の第二子を持つ母親の比較を通して 小児保健研究 = The journal of child health 66 (6), 821-831
深澤怜紗 岩立京子(2013)次子出生における長子の変化としての葛藤反応 : 長子や次子の性別・年齢差・気質との関連から 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64 (1), 85-94

 

ランキング

カテゴリー一覧

人気のタグ