話しかけても返事をしない理由は?無視する子どもへの親の対応法
この記事を書いた人
みき
- 司書教諭
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
高校の国語講師として約8年勤務していました。
中学、高校の教員免許、図書館司書、司書教諭の資格を持っています。
現在は3人の子育てに奮闘中。
知識や経験を活かせるライターを目指し、勉強中です。
「聞こえているはずなのに子どもが返事をしない」「何度言っても無視するので、つい声を荒げてしまう」と言った経験はありませんか?
「返事をしない」「聞こえないふりをする」などの行動は、小学校入学前後の子どもによく見られます。親としてどのような態度で接すればいいのか、悩む親御さんも多いと思います。
そこでこの記事では、子どもが返事をしない理由や、聞こえないふりをする子どもへの親の対応のコツについてお伝えします。親子のコミュニケーションの一端を担えれば幸いです。
目次
1.子どもが返事をしないのはなぜ?
子どもが親の呼びかけに返事をしない理由は一つではありません。理由によって対処も変わるので、まずは返事をしない理由を把握しましょう。
1-1.他のことに集中している
何かに集中していると、声をかけられても気がつかない子どももいます。特に、好きなことに没頭している時に起きやすいです。
時間を忘れて何かに集中する状態は、「フロー」や「ゾーンに入る」と呼びます。幼少期のフロー体験は、子どもの集中力を養います。自分で決めた目標に到達できると、達成感も味わえ、自信が育まれていきます。
声をかける時は、事前に子どもの状況をよく観察することをおすすめします。読書や宿題に集中している時は、声をかけずに見守りましょう。またブロックやパズルなどで夢中になって遊んでいる時も、なるべく途中で声をかけない方がいいです。
なかには「食事やお風呂などやらなければならないこともあるから、いつも子どもの熱中体験を見守るのは難しい…」と感じる親御さんいるかもしれません。
しかし、子どもの集中力は小学校1年生でも「15分」と言われています。子どもの様子を観察し、集中している時は見守る、少し待ってから声をかけるなどの対応を心がけると親子の衝突が減りますよ。
1-2.漠然とした質問で答えにくい
学校や幼稚園から帰ってきた子どもに「今日どうだった?」「何かあった?」のような質問していませんか?
子どもが日中どんなふうに過ごしていたのか気になって聞いてしまう…という親御さんの気持ちはよくわかります。しかし「学校どうだった?」などの抽象的な質問は、どのように答えたらいいのかわからないと感じる子どもも多いです。
無視まではいかなくとも「わからない」「別に」「特に」と言ったそっけない返事をされることが多いのではないでしょうか。
女の子は、こちらから聞かなくても学校であったことを細かく教えてくれる子もいますが、男の子は「忘れた」「わからない」など反応が薄いことが多いようです。
実際、1日にあったことをすぐに要約することは難しく、結果として「返事をしない」といった行動につながることもあるのでしょう。
1-3.返事をしなくてもやり過ごせる
何度か呼んでも、子どもが返事をしない時「自分がやった方が早いから」「何度も同じことを伝えるのはイライラするから」などの理由で、子どもの無視を不問にしていませんか。
例えば、「脱いだ制服は洗濯機に入れてね」「食べたらお皿を下げようね」と言っても、生返事や聞こえないふりをする子どもの態度に呆れ、親がやってしまうなど、心当たりのある方も多いと思います。
毎日の生活での些細なことですし、子どものペースに合わせると時間がかかります。家事が進まないことも多く、つい甘やかして、手伝いたくなる気持ちもわかります。
しかし子どもは、こうした親の行動をよくみています。どこまでなら許されるのか、どこまでなら返事をしなくてもやり過ごせるのかを知っているのです。
そのままにしていると、「無視しても、生返事でもいいんだ」と子どもが認識してしまう恐れもあるでしょう。
1-4.親からの指示や質問が疎ましい
小学校低学年になると、中間反抗期の真っ只中という子どもも多いでしょう。
この時期は、少しずつ自我が強くなり、「親の言葉に従うのが嫌だ」「指示されたくない」という気持ちが芽生えてきます。無視や生返事といった態度も目立つようになります。
「やっとイヤイヤ期が落ち着いた」と思った矢先にやってくるのが、中間反抗期です。子どもの反抗的な態度に戸惑う親御さんも多いですよね。この現象については、次の段落で詳しく解説しますので、参考にしてください。
2.「返事をしない」のは、中間反抗期が原因?
「聞こえているのに返事をしない」という子どもの態度は、中間反抗期に起因するものかもしれません。
この段落では、中間反抗期について解説します。なるべく余裕を持って、子どもに接していきましょう。
2-1.中間反抗期はいつからいつまで?
子どもの反抗期と聞くと、1歳半から3歳頃の「第一次反抗期」と、思春期(11歳から17歳)の頃に起こる「第二次反抗期」を思い浮かべる方が多いでしょう。
第一次反抗期は、イヤイヤ期とも呼ばれ、子どもの自我が芽生えることで起こります。第二次反抗期は、心身の成長やストレスによって起こると言われています。
その中間に位置する「5歳ごろから小学校中学年」に見られる反抗期のことを「中間反抗期」と呼びます。
2-2.中間反抗期の主な特徴
中間反抗期に見られる代表的な態度は「無視をする」「口答えをする」「物に当たる」の3つです。
特に親の言うことを無視するようになることが多いです。少し前まではすんなり言うことを聞いてくれていたのに、干渉されるのを嫌がるようになり、反抗的な態度を取ることもあるでしょう。
友達付き合いが広がることで、いろんな言葉を覚えてくるため、突然どきっとするような言葉を発することもあるかもしれません。
また、自分の主張をうまく伝えられないストレスから、物に当たる子どもいます。
2-3.子どもの中間反抗期に向き合うポイント
話しかけても返事をしなかったり、聞こえないふりをされると、親の方が動揺してしまうこともあるでしょう。
しかし反抗期は子どもの大事な成長過程の一つです。なるべく親が気持ちに余裕を持って、受け止める姿勢が大切です。干渉しすぎず、しっかり話を聞く姿勢を見せることで落ち着くこともあります。
ただし、どんな態度も許していいと言うわけではありません。
「無視された側は傷つくこと」「物にあたっても解決しないこと」「汚い言葉は人を傷つけ、自分の価値も下げてしまうこと」など、社会や人間関係のルールや、子どものためにならないことは、毅然とした態度でしっかり伝えることが大切です。
【関連記事】
中間反抗期については、こちらの記事で詳しく解説しています。
無視、口答え、逆ギレ…親も子もつらい「中間反抗期」の特徴と対応のコツを知って上手く乗り越えよう!
3.子どもの耳に届く「声かけ」のポイント
子どもが返事をしないのであれば、返事をしやすい環境を作ってみましょう。子どもが少しでも話を聞く体制を整え、さらに返事しやすい環境を作るポイントを紹介します。
3-1.子どもの視界に入るところで
子どもに何か伝える時は、子どもの視界に入るところで話しましょう。
「ママ(パパ)が、なんか言ってる」と言う状態ではなく、「私(僕)に話しかけている」とわかりやすい状態を作るのがポイントです。
子どもの視界に入る場所から話しかけることで、お互いの様子を確認しやすくなります。そのため、子どもが何かに集中しているときは、「あえて話しかけない」と言う選択もできるようになりますね。
子どもも「親が自分に話してるんだ」と実感しやすいため、わかりやすく返事をしなければならない状況を自然に作ることができます。
3-2.目を合わせて声をかける
話し始めるときは、一度子どもと視線を合わせてから声をかけます。
アイコンタクトをとると、意識がこちらに向きやすくなります。子どもの聞く姿勢を作ることにつながりますよ。
3-3.スキンシップを併用する
小学校低学年になると恥ずかしがってスキンシップが減ってくる子どももいますが、拒否していないのであれば親の方から思い切ってスキンシップを取ってみましょう。
おすすめは、お帰りのハグです。ハグが恥ずかしい場合は、「頭を撫でる」「肩をポンポンと叩く」など、できることをしてみるといいでしょう。
スキンシップには、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」の分泌を増やし、親子の絆を強くする働きがあると言われています。
安心感の中で声をかけることで、穏やかな会話につなげることができるでしょう。
3-4.名前を呼ぶ
普段からお子さんの名前を呼んでいますか?
兄弟姉妹の子育てをされている方は、つい上の子を「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と呼んだり、忙しいときは「ねぇねぇ」「ちょっといい?」と子どもの名前を省略して、声をかけたりする場面もあるかもしれません。
親の呼びかけに子どもの注意を向けさせたい時は、「〇〇ちゃん、お話があるんだけど」など、子どもの名前を呼んでから要件を伝えるのが効果的ですよ。
心理学では、「ネームコーリング効果」と言って、名前を呼んでもらえると、その相手に対して好感度が上がると言われています。
また、ファーストネームでの呼びかけは、オキシトシンを増加させ、ストレスホルモンを減らす効果も明らかになっています。(※)
子どもに話しかけるときは、優しく子どもの名前を呼ぶだけで、子どもは不安やストレスなく話を聞く姿勢が整うでしょう。
3-5.子どもが答えやすい質問を
子どもに質問する時は、「どうだった?」「何をした?」など、抽象的な問いかけではなく、具体的な質問をしてみましょう。
例:
NG「学校どうだった?」
OK「今日の国語の授業は手を挙げられた?」「給食のデザートは何が出た?」
子どもが理解しやすく、答えやすい質問がおすすめです。
また、行動を促す声かけの場合も同様に、具体的な指示をすると子どもは動きやすくなります。
例:
NG:「片付けなさい」
OK:「ご飯の前にダイニングテーブルの教科書を片づけてね」
子どもに指示やお願いをする時は、1回1動作が効果的です。いくら具体性があっても、一度に何個も言われるとやる気をなくすので注意しましょう。
4.返事をしない子どもへの親の対応ポイント
聞こえているはずなのに返事がないというのは、呼びかける方に精神的な負担がかかりますよね。子どもに無視されたと思うと悲しくなります。
返事をしない子どもにはどのような対応をすればいいのでしょうか。ポイントをまとめてお伝えします。
4-1.親が子どもの話をしっかり聞く
まずは親が子どもの話をしっかり聞きましょう。親の話を聞いてもらいたいと思うのであれば、まずは親がお手本を見せることが大切です。
特に小学校低学年の子どもは人間関係を作っていく重要な時期です。人の話に耳を傾けることの重要性を教える機会にもなります。
子どもは親のことをよくみていて、良くも悪くも手本にしながら成長していきます。
また、親がしっかり話を聞いてくれるという安心感や満足度があると、コミュニケーションが取りやすくなり、返事をしないということ自体が減っていきます。
普段から子どもの言葉に耳を傾けるようにしていると、子どもも親の話を聞くようになるでしょう。
4-2.叱りすぎない
叱りすぎは逆効果です。子どもが無視をする下地を作ってしまうことがあります。
子どものためと思って、つい口を出してしまいたい気持ちはとてもわかります。しかし、毎日注意ばかりされていると、子どものやる気は下がる一方です。
上の空で親の話を聞く子どもの態度に、ヒートアップして叱ってしまう…そんな負のループに陥ると、子どもは「またなんか言ってる」程度にしか感じなくなってしまいます。
叱るときは「一度にたくさんのことを言わない」「一度叱ったら長く同じことを言わない」。この2つを心がけるだけでも、親子関係は良好になっていきますよ。
4-3.「無視、聞き流す」を容認しない
何度言っても子どもが無視したり、動かなかったりした場合、「自分が動いた方が早い」「このままにしておくわけにいかない」と親が先に動いて、解決してしまうことありませんか。
子どもの成長を信じて、親は動くことをぐっと我慢しましょう。親の忍耐も必要です。
「自分で動かなければ、自分が困る」と言う経験すれば、自然と返事をするようになり、行動が変わってきますよ。
5.親子のコミュニケーションを大切に!
小学校低学年の子どもは、人間関係を広げて、いろんな刺激を受けて大きく成長する時期です。
その過程で、親の言うことを無視する、素直に返事をしないなどの反抗的な態度を取ることもあります。
「うちの子、反抗期がひどくて、大丈夫かな」と心配になることもあるかもしれませんが、口を出しすぎず、ゆったりとした気持ちで見守ることも大切です。
どうしても子どもに守ってほしいことは、しっかり目を見て真剣に伝え、コミュニケーションを図ることを諦めずに接していきましょう。
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参考文献
※1:ファーストネームでの呼びかけがオキシトシンホルモンに影響を及ぼす事を発見(ポーラ化成工業株式会社)
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