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インクルーシブ保育とは?メリット・デメリット、国内外の実践例を紹介!

この記事を書いた人

猪狩はな 猪狩はな

猪狩はな

  • 司書教諭
  • 中学校教諭
  • 高等学校教諭
  • 小学校教諭
  • 保育士

2児ママ× 現役国語科教員×ライター!

持続可能に「好き」を楽しむ生き方をしたくて転職。

・国語科(専門は古典文学)
・私立中高一貫校講師、公立中学校フルタイム教員を経て私立高校講師として勤務
・3歳と5歳の男児を育児中

キャリアに悩む人の助けになれるような発信を目指しています。

「インクルーシブ保育という言葉は聞いたことがあるけれど、詳しくはわからない」
「インクルーシブ保育はどのように行われるの?」
「我が子に合っているのか知りたい」

そんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、今話題の「インクルーシブ保育」について解説していきます。

インクルーシブ保育のメリット・デメリットだけでなく、日本の現状や、海外での実践事例もあわせてご紹介しますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

目次

1.インクルーシブ保育とは?

「インクルーシブ保育」とは、子どもの年齢や国籍、障がいの有無に関係なく、同じ空間で生活・保育を行うことを指す言葉です。

インクルーシブ(inclusive)とは、「包括的な・全てを含んだ」という意味があります。

さまざまな背景をもつ子どもたちを受け入れて、全ての子どもたちがそれぞれ必要な援助を受けながら共に成長していく保育形態です。

2010年、文部科学省から「インクルーシブ教育の理念」が示されました。

また、2013年には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立し、インクルーシブ教育の導入が進められています。

これにより、障がいの有無で子どもを区別せず、「一人ひとりに違いがある」という考えのもとで保育しようという考えが生まれました。

 

 

2.インクルーシブ保育のメリット

さまざまな背景をもつ多様な子どもたちが一緒に過ごす「インクルーシブ保育」は、子どもたちにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。以下3点にまとめました。

 

2-1.多様性を学べる

年齢の違いや国籍の違い、能力・個性の違い、障がいの有無など、自分とは違う多様な立場の子どもと一緒に過ごすことで、「いろいろな人がいて当たり前」という感覚を身につけられます。

 

2-2.多様な人との関わり方を学べる

多様な立場の人と関わることで、例えば以下のような心が育まれると考えられます。

  • 相手が困っているときに自然と手を差し伸べる
  • 相手の立場に立って考える
  • 自分とは境遇が違う人の考えを尊重する

 

2-3.状況に応じた対応力が身につく

例えば、縦割り保育で年齢の違う子どもと交流する場面では、

  • 年下の子どもに遊びを教えてあげる、手伝ってあげる
  • 年上の子どもの言動を見て刺激を受ける、憧れる

といった、同じ年齢の同じ立場の子どもたちの中では得られない経験をすることができるでしょう。

発達段階の違い、考え方の違いに実際に触れながら、状況に応じた柔軟な対応力を身につけられます

 

3.インクルーシブ保育のデメリット

多様性を認め合い、お互いに尊重し合うことは良いことだけではなく、注意すべき点もあります。インクルーシブ保育には、以下のようなデメリットがあると考えられます。

 

3-1.お互いを知るのに時間がかかる

インクルーシブ保育では、今まで出会ったことのない、さまざまな背景をもつ子どもたちと関わることになります。

そのため最初はお互いを知るのに時間がかかり、なかなか打ち解けられないという子どもも出てくることになるでしょう。

場合によっては発達段階や価値観の違いなどからトラブルになることもあります。

 

3-2.劣等感を抱く場合がある

多様な子どもたちと同じ空間で過ごすため、できること・できないことの差が大きくなります。

周りの子どもたちと自分を比較し、「なぜ自分にはうまくできないのか」と劣等感を抱く場合もあります。

まずは子どもたちが自分自身を認め、自尊心を育める環境であることが大切ですね。

 

3-3.物足りなさを感じる場合がある

逆に、成長が早い子どもや年長の子どもにとっては、保育内容に満足できず、物足りなさを感じる場合もあります。

個々に合わせた声かけや保育がどの程度行われているのかを園に確認してみるのもおすすめです。

 

4.インクルーシブ保育・教育の現状と実践例

では実際に、インクルーシブ保育・インクルーシブ教育はどのように実践されているのでしょうか。ここでは、日本と海外の事例についてご紹介します。

 

4-1.日本のインクルーシブ保育・教育の現状と実践例

縦割り保育

縦割り保育とは、年齢関係なく他の学年の子どもたちと一緒に過ごす保育方法です。

年上の子どもと年下の子どもが同じ空間で過ごすことで、社会性が育まれます

年齢や能力が異なる子どもたちを小さなグループに分け、グループごとに1つの課題に取り組んだり、障がいの有無に関わらず0~18歳の子どもたちが行き来できたりする園もあります。

 

■保育士による子どもたち一人ひとりに応じたサポート(合理的配慮)

合理的配慮とは、障がいのある子どもが出会う困りごとを取り除くための調整のことです。

一人ひとりの特性に応じた対応を個別具体的に行います。

【合理的配慮の具体例】

・年少の子どもや発達に遅れのある子どもでもわかりやすいよう、絵カードを使って説明する

・音や光に敏感な子ども、パニックを起こしやすい子どものために、個別で落ち着ける部屋を作る

 

ときには専門知識を持った保育者を配置したり、作業療法士、公認心理師、言語聴覚士などの専門家の意見も取り入れたりしながら保育を進めていく園もあります。

 

4-2.海外のインクルーシブ保育・教育の現状と実践例

イタリア

イタリアでは、インクルーシブ教育をスムーズに進めるために、支援員の配置を積極的に行っています。

支援員は、特別なニーズを持つ子どもたちに対して個別の支援を提供することが主な役割です。教員と協力して、子どもたちの発達を促進するための支援を行います。

障がいのある子どもがいるクラスについては、1クラスの定員を20人までに制限するなど、少人数クラスにすることで個別のサポートが行えるようにしています。

また、大人1人あたりにつく子どもの数にゆとりを持たせ、円滑にサポートできるよう対応しています。

 

■スウェーデン

スウェーデンではインクルーシブ保育が国の教育政策の一環として位置付けられています。

多くの難民を受け入れており、異なる人種や文化を持った子どもたちがクラスにいることが一般的です。

多様な背景をもった子どもたちが同じ空間で過ごすため、遊びや学びにも決まりはなく、子どもたちのニーズに合わせて柔軟に行われています。

 

■ニュージーランド

ニュージーランドでは、学校や保育施設が障がいを理由に入園・入学を断ることが認められていません。

障害のある子どもが「特別支援学校」に通う割合は、0.5%と他の国々に比べて非常に低く、通常の保育施設や学校に通う子どもが10人に1人という高い割合になっています。

教育省地方事務所の学習支援チームが、子どもが活動に参加できるような環境整備を行っています。

例えば、病気が理由で通学が難しい場合には、ヘルススクール(病気療養中の子どもに先生を派遣する機関)から入院先へスタッフが出向くなどの支援も行われています。

また、保護者向けの相談体制が整えられているのも特徴の1つです。

日常の相談も、「家庭医」を登録して気軽に行えます。さらに、「学習支援」に関する情報も、教育省の保護者向けホームページに集約されているため、誰でもアクセスできるようになっています。

発達障がいのある子どもの保護者に対しては、国が講座を開き、全国で受講できる機会を提供しています。

 

■フィンランド

特別支援学校は残しつつ、できるだけたくさんの子どもたちが地域の学校に通えるよう制度を整えています。

フィンランドのインクルーシブ教育で特徴的なのは、基礎学校(小・中学校)の教員の支援方法を明確にしていることにあります。

フィンランドにおける「三段階支援」は、以下のような支援の考え方です。

・第1段階 一般支援:通常の学級の担任が「すべての在籍児の困難」に早期対応する
・第2段階 強化支援:一般支援が十分ではない場合に行われる
・第3段階 特別支援:それでも十分でない場合、個別に特別支援を行う

これに加え、「Co-teaching(協働による指導)」という複数の教員が協力して授業を行う形態をとることで、誰にとっても学びやすい環境づくりをしているのです。

 

■ノルウェー

ノルウェーでは特別支援学校が原則廃止されています。

学習指導要領も一元化されており、支援が必要な子どもは自治体の教育心理研究所の支援を受けながら地域の学校で学びます。

そのため、「LPモデル」という学習環境を開発する取り組みが盛んです。

一人ひとりの子どもを取り巻く環境(家庭・学校・医療機関など)の整備を行うことで、子どもの可能性を最大限に伸ばすことを目指しています。

 

■デンマーク

デンマークには特別支援学校・特別支援学級がありますが、子どものニーズに合わせて柔軟に対応しています。

まず、全ての子どもを対象とした「個別の配慮」からスタートし、教育心理研究所(PPR)の心理士、言語療法士、社会福祉士などの専門スタッフが特別支援教育の必要性を判断します。

特別な支援が必要な子どもには、生活支援や学習支援を提供するためにペダゴー(指導員)や行動・情緒面の専門教員(AKT)も養成され、学校内で重要な役割を担っています。

 

5.インクルーシブ保育への理解を深め、子どもの可能性を広げよう

日本では広がり始めたばかりの「インクルーシブ保育」は、実践例や実践園の数もまだまだ少ないという現状があります。

しかし、多様な人と関わり、共生するという価値観は、これからの時代に必要不可欠です。

海外での成功実例なども参考に、インクルーシブ保育への理解を深めてみてください。

 

主な参考文献
・文部科学省「障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク」
・内閣府 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」

 

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