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よく寝る子は勉強もできる!子どもの理想的な睡眠時間や「睡眠不足」の影響は?

この記事を書いた人

久美子 久美子

久美子

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

5歳と7歳(小1)の息子のアラフォーママ。

公認心理師・臨床心理士の資格を持っています。

心理士の仕事をしながら、発達心理学の視点も踏まえて、日々、子育て奮闘中。

夫にも積極的に育児に参加してもらい、親子でハッピーになれる時間を模索しています。

「うちの子、夜に全然寝てくれない!」とお悩みの親御さんも多いのではないでしょうか。

実は現在、子どもの「夜更かし」が世界的な問題となっています。

今回は、「寝る」とはなんだろうから考え、

睡眠のメカニズムや理想的な睡眠時間、

睡眠不足の影響、睡眠にまつわる都市伝説について、詳しくわかりやすくお話しします。

良質な睡眠は、子どもだけでなく親子でメリットがあります。

子どもの睡眠習慣をサポートしませんか。

 

目次

1.寝るってどういうこと?~理想的な睡眠時間は?

1-1.睡眠のメカニズム

睡眠は心と身体を休養させ、脳と身体を成長させてくれます。

睡眠のメカニズムを簡単に説明すると、

人の睡眠は、レム睡眠ノンレム睡眠に分けられます。

・レム睡眠:浅い眠りで身体は眠っているのに、脳が活発に動いている状態。
・ノンレム睡眠:脳も身体も休んでいる深い眠りの状態。

寝入ってから1~2時間後のはじめに現れるノンレム睡眠の時に、成長ホルモンが盛んに分泌されます。

また、脳内の神経ネットワークを形成したり、細胞の修復・育成、骨や筋肉の形成が行われます。

メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、夜暗くなると分泌量が増えます。メラトニンは自然な眠気を感じさせ、体内時計を整える役割があります。

十分な睡眠をとることは、子どもの健やかな発育と成長、健康保持のためにも大切です。

 

1-2.小学生の理想的な睡眠時間は? 何時間必要?

よく子どもはたくさん寝なくてはいけないといいますが、年齢によって必要な睡眠時間が異なります。

ここで、アメリカの国立睡眠財団が推奨する「年齢別の必要な睡眠時間」を見てみましょう。

表1「年齢別の必要な睡眠時間」:年齢別の必要睡眠時間(National Sleep Foundation in USA.2015より、一部抜粋)

年齢とともに必要な睡眠時間は短くなり、まとめて眠るようになります。

例えば、 1日に推奨される昼寝も含む総睡眠時間は、幼児(1~2歳)では11~14時間ですが、学童(6~13歳)9~11時間です。

小学生は、お昼寝はせず1日9時間~11時間くらい睡眠を取るのが理想です。

 

2.我が子だけじゃない「夜更かし」問題~年齢とともに増加

「夜更かし」は大人だけでなく子どもにも増えています。

睡眠不足は、学業の低下や生活習慣の乱れとも関連し、世界の国々でも問題視されています。

まず、海外と日本の睡眠時間を比較してみましょう。

 

2-1.日本の子どもは世界一、睡眠時間が短い

日本人は世界でも、睡眠時間が短い国民です。

2009年の経済協力開発機構(OECD)が行った世界の睡眠時間調査で、日本は調査した18カ国の中で2番目に睡眠時間が短いという結果でした。

さらに、日本人の睡眠時間そのものが短くなっていること、就寝時刻が遅いことも指摘されています。

この傾向は、大人だけでなく子どもや学生にも見られています。

国内調査でも、午後10時以降に就寝する3歳児の割合はここ20年間増え続けています。

厚生労働省では、「健康づくりのための睡眠指針2014」を策定するなど、睡眠不足の改善に注力しています。

 

2-2.小学生、中学生、高校生と年齢が上がるにつれて短くなる傾向

子どもの平均就寝時間は、小学生で21時台、中学生で23時台、高校生でおよそ0時台です。

年齢が上がるにつれて、就寝時間が短くなっています。

一方、学校の始業時刻はほぼ一定のため、起床時間は変わりません。

つまり、学年が上がるにつれて睡眠時間が削られてしまっていることになります。

 

3.もしや夜型?子どもの寝れない3大要因

日本で「親子で夜更かし」が増えている理由は、なぜでしょうか。

現代の子どもたちは大人と同じように、明るい照明の下で勉強したり、遊んだり、夜食を取ったりと、生体リズムが乱れがちです。

具体的な夜型化の3つの要因を見ていきましょう。

 

3-1.テレビの視聴時間やスマホ、ゲーム、SNSの影響

寝る時間が遅れるのは、寝る間にスマホやテレビの高照度の光を浴びることによって、

「寝る」や「起きる」といった周期を調節するホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されるからです。

メラトニンは、夜間の暗いところで分泌されるため、いざ寝ようと布団に入ってもメディアに触れた直後はなかなか寝つけません。

 

3-2.放課後の習い事や宿題、通学時間の長さ

子どもの夜型化の要因に「習い事・宿題」そして「通学時間」も影響しています。

宿題に追われたり、放課後に習い事に行くお子さんも多いですよね。

中には、小学生で21時に習い事が終わるという子もいます。そうなると必然的に、寝るのは22時を過ぎてしまいますね。

ある研究では、公立の学校に通う子どものほうが、私立学校に通う子どもよりも就寝時間が早いことがわかっています。

これは、「通学距離」の違いが原因ではないかと言われています。

中学生、高校生の調査では、通学時間の他に、自宅や塾などの勉強も就寝時間が遅くなる要因になると言われています。

小学生は、学校の宿題をこなしたり、習い事や友達との交流が増えてくる年齢です。

学校の始業時間や通学時間に合わせて、理想的な睡眠時間を確保することはなかなか難しいですが、睡眠時間の確保も重要です。

 

3-3.クロノタイプ(朝型と夜型)と深部体温

最近注目されている生物学的な要因も紹介します。

人は生まれつき睡眠パターンが決まっていて、朝型・夜型のどちらかに分けられます。

こうした個人差を「クロノタイプ」と言います。

・朝型:一日の中で朝に調子がよい。メラトニン分泌の開始時刻が早く、早寝早起きタイプ
・夜型:夜になるにつれて調子がよくなる。

夜型の子どもが学校の始業時間に合わせるためには、普段から生活習慣に注意して、朝型生活に慣れていく必要があります。

クロノタイプは、生涯を通して思春期から夜型化になる子どもが増えていき、20歳前後がピークになると、そのあとは加齢とともにまた朝型に戻るそうです。

 

4.よく寝る子どもは学力が高い!睡眠不足の脳・体への影響

睡眠不足は、子どもの学力や心の状態にも影響します。具体的にどのような影響が出るのでしょうか。

 

4-1.睡眠不足は学力低下や記憶力の低下を引き起こす

海外の小学生を対象とした調査では、睡眠不足や日中の眠気が学校でのパフォーマンスに影響していることが報告されています。

眠気の頻度が多い子どもは、眠気がほとんどない子どもよりも注意力・集中力、興味のモチベーションが低下していて、学業成績低下のリスクも高かったそうです。

また、睡眠時間が9時間~10時間の子どもに比べて、9時間未満の子どもは学業成績低下のリスクが高いことが示されています。

睡眠は学習したことを整理したり、記憶を定着させる統合的な役割があります。

 

4-2.睡眠不足は抑うつやイライラ、さらに肥満のリスクに

睡眠不足では、脳の扁桃体や前頭葉を低下させるため、実行機能も低下します。

これにより、ネガティブな感情を引き起こしやすく、不安になりやすくなります。

感情のコントロールが不良になると、攻撃的になることもあります。

平成26年「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」では、就寝時刻が遅くなるにつれて、

「なんでもないのにイライラする」と回答する子どもの割合が増え、「自分のことが好き」と回答する子どもの割合が低くなることが示されています。

このようなイライラや自己肯定感の低下は、学力低下にもつながるでしょう。

 

5.「睡眠の新常識」ゴールデンタイムって本当?寝だめはできる?

昔から言われていた睡眠の常識が、実は都市伝説だったなんてこともあります。

睡眠の研究が進むにつれて、昔とは相反した情報も発見されてきています。

この機会に、情報をアップデートして、親子で睡眠の新常識を取り入れましょう。

 

5-1.90分単位で起きるとスッキリ目覚められる?

「睡眠は、90分単位で起きると目覚めがいい」という話を聞いたことがありますか。

睡眠がレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れるサイクルを90分として、90分の倍数に睡眠時間を設定すると、ちょうど浅い睡眠のタイミングですっきり目覚めることができる、というものです。

しかし、実は科学的には証明されていません。

睡眠周期は共通して90分なのではなく、「個人差や年齢差がある」ことがわかっています。

90分単位に当てはめて睡眠時間を決める必要はなく、自分が「しっかりと眠れて目覚めが良かった」と感じる睡眠時間を選択できます。

家族ひとりひとり、最適な睡眠時間を探してみてはいかがでしょうか。

 

睡眠周期は?

睡眠周期には個人差がある。
個人差・年齢差があるため、自分にベストな睡眠時間を見つけよう!

 

 

5-2.睡眠にはゴールデンタイムがある?

「ゴールデンタイム」とは、古くなったり傷ついたりした細胞を修復させ、疲労を回復させる「成長ホルモン」が、1日の中で最も多く分泌される時間帯のことで、午後10時から午前2時と考えられていました。

現在では、この成長ホルモンは1日を通して分泌されることがわかっています。

そのため眠くないのに、無理して午後10時に布団に入る必要はありません。

成長ホルモンは1日を通して分泌されますが、睡眠開始から約3時間内のノンレム睡眠中の分泌は24時間の中で最も多いそうです。

睡眠が途切れたり、途中で起こされたりすると、成長ホルモンの集中的な分泌が阻害され、効率的な回復力が低下するという報告もあります。

一日の疲れを最大限に癒やすためにも、睡眠後まとまって眠れるような環境を整えることが重要です。

素晴らしい自己回復の恩恵を存分に受けましょう。

 

睡眠のゴールデンタイムは?

ゴールデンタイムは、気にかけなくても大丈夫。
重要なのは睡眠を途切れさせないこと◎

 

5-3.寝だめはできる?

「いつも寝るのが遅いから、今日は寝だめしておこう」と、休日に昼過ぎまで寝てしまうことはありませんか?

実は、この“ためる”という表現は不適切です。実際には溜めているのではなく、睡眠不足を「補っている」状態です。

例えば、ご飯をお腹いっぱい食べても、その後何日も食事をとらないでいることはできませんよね。

睡眠も同じで、集中的にたくさん寝たからといって、1週間分の睡眠を「寝だめ」で溜められるわけではありません。

また、「寝だめ」には、デメリットもあります。

寝すぎによって、時差ボケと同様の症状(日中の眠気、体のだるさ、体調不良など)が生じることがあります。

休みの日も、いつもの睡眠に「+2時間」程でとどめておきましょう。

 

「寝だめ」の実態は?

「寝だめ」では、睡眠不足を改善できない。
「寝だめ」には、デメリットも×

 

5-4.ショートスリーパーの子どもっているの?

「ショートスリーパー」は、短時間の睡眠でも健康を維持できる人のことです。

一般的な人の睡眠時間は7~8時間ですが、ショートスリーパーは6時間未満です。

睡眠時間が短くても問題なく毎日を過ごせるショートスリーパーは、睡眠中の浅い眠り「レム睡眠」の時間が少ないといわれています。

効率的に深く眠れるため、睡眠時間が短くても問題なく過ごせます。

しかし、これは大人の場合です。実際に子どもにもショートスリーパーは存在するのでしょうか。

答えは、子どものショースリーパーは存在しますが、その数はそこまで多くはないそうです。

 

子どものショートスリーパー?

少数であるが、子どものショートスリーパーは存在する。
一般的には、夜型の生活習慣が影響している可能性がある✓

 

 

6.子どもと一緒に睡眠改善!大人は6~8時間の睡眠が理想的

さまざまな調査結果から睡眠時間の確保が重要であることがわかっています。

よく寝る子は、記憶力もアップし、それが学力アップにも繋がります。

勉強時間も大事ですが、学力のベースを養う睡眠時間も考えて日々のスケジューリングができるといいですね。

とくに小学生のお子さんは、ママやパパの生活習慣の影響を多く受ける年齢です。

まずは、ママとパパが睡眠の質を高めるために、寝る前はテレビやスマホを見ない時間を作ったり、休日も昼まで寝すぎないように意識してみてはいかがでしょうか。
 

主な参考文献
・浅岡章一,福田一彦,山崎勝男,子どもと青年における睡眠パターンと睡眠問題,生理心理学と精神生理学25 (1):35-43,2007
・駒田陽子,知っておきたい子どもの睡眠,睡眠口腔医学3(2) 127-132,2017
・文部科学省委託調査,平成26年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究-睡眠を中心とした生活習慣と子どもの自立等との関係性に関する調査-
・駒田陽子,知っておきたい子どもの睡眠,睡眠口腔医学3 (2),127-132,2017

 

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