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挨拶できない…話さない…。内気すぎる子の気持ちと、幼児期の対応ポイント

この記事を書いた人

中川さくら 中川さくら

中川さくら

  • 保育士
  • 児童指導員

学生時代に障害児福祉を学び、小学校の特別支援教育支援員や療育施設の保育士、学童保育、小学校などで、子どもたちやそのご家族と関わる仕事を約10年ほど経験しました。

今は、保育園に通う1歳の息子がいます。

昔バックパッカーだったので、いつか家族で世界を旅することが夢です。

話しかけられても固まってしまう。家ではできるのに、外では挨拶ができない。
そんな内気なお子さんに、悩んでいませんか?
いくら「この子の個性」「無理に直す必要はない」と思っても、「きちんと挨拶してほしい」「お友だちとも遊んでほしい」と願ったり、周りの子と比べて心配になったりしてしまいますよね。

CONOBASにも、年長さんの女の子のパパから「子どもが内気すぎる」というお悩みが届きました。

 

 

内気すぎる性格…「挨拶できない」「だんまり」

もうすぐ6歳になる娘のパパです。ものすごい内気な子で困ってます。

祖父母にも挨拶すらできず保育園の先生にも挨拶できません。友達が話しかけてくれてもダンマリだったり弟が持ってきてくれたおもちゃなども汚がったり自分の物も触られるのを嫌がって泣いたりします。

環境が変わるとまた情緒不安になります。特に4月になり先生も変わるとリセットされて静かになってしまうみたいです。

挨拶できなくて周りの人に嫌われてしまったら嫌だな。嫌なことや自分の気持ちを言えるようになってほしいな。
それはきっと、多くのママパパが我が子へ望むことだと思います。

お子さんの個性を尊重しながら、社会の中で今よりほんの少しでも過ごしやすくなれるように、幼少期からできる関わりのポイントをご紹介します。

 

目次

 

1.子どもが内気になる要因

ファミリー

 

1-1.生まれ持った気質による要因

イギリスの発達的行動遺伝学のタリア・イーリーによると、内気な性格の約3割が遺伝によるもので、残りは周囲の環境に反応した結果であるとのことです。

これは全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児と、約半分の遺伝子を共有している二卵性双生児の比較研究で、明らかにされています。

また、内向型と外向型とでは、ドーパミンの感受性に関与する遺伝子の長さが異なることが発見されています。

アメリカの国立がん研究所のディーン・ヘイマーによると、内向型はその遺伝子が短いためドーパミンの感受性が高く刺激が少なくても満足できる一方で、外向型はその遺伝子が長いためドーパミンの感受性が低く刺激を多く欲すると言われています。

つまり同じ出来事でも「強い刺激」と感じる内向型の人は不安や恐怖を感じ、「弱い刺激」と感じる外向型の人は、物足りなく感じるのです。

そしてこういった研究から、内向的・外交的という特性はある程度生まれ持ったものだと言えるでしょう。

 

1-2.環境や時期による要因

環境や時期によって、お子さんが内気になることもあります。

たとえば、引っ越しや新年度、兄弟が生まれたなど、日常の変化がきっかけになり、今までと違う環境に心が適応できず、消極的になってしまうお子さんもいます。

その他にも、家族関係や友だち関係のストレスなどがきっかけになることもあります。

自分の行動や言動が否定されたり、十分な愛情を受けられなかったりすると、お子さんは次第に自分に自信を持てなくなり、自発性を失ってしまいます。

発達心理学では、2歳頃の「内気さ」は「おそれ」の感情から来ている一方で、4歳頃からは気質や環境によって引っ込み思案になることが示唆されています。

多くの場合引っ込み思案は年齢とともに減少し、心配する必要はないとされていますが、過保護な親の関わり方があると、引っ込み思案が持続する可能性があるようです。

 

 

内気と言っても人それぞれ度合いが異なり、幼児期に現れる子もいれば、学童期以降に現れる子もいます。

このことから、遺伝と環境のどちらかだけではなく、両方が相互に影響し合って内気な性格になると考えられます。

 

2.内気な子どもの特徴

「内気」と一言にいっても、お子さんによって特徴や苦手なことは様々ですよね。

ここでは「内気な子」といわれやすいお子さんの特徴をあげていきます。

お子さんがどんなことを感じているのか、一緒に考えてみましょう。

 

2-1.環境の変化に不安を感じる

内気な子は、環境が変わることや新しい物事に不安を感じやすい傾向があります。

質問者様のお子さんも、「4月になると(保育園で)リセットされて情緒不安定になってしまう」とのことでした。

特に新年度は、先生やお友だちが変わったり、お部屋やロッカー、さらに年齢に合った役割が増えるなど、大きな変化がありますよね。

物事を敏感に感じ取るお子さんにとっては、それらは大きなハードルになります。

そのような不安を、言葉や態度で表出する子もいれば、自分の中に閉じ込めて表出できないお子さんもいるでしょう。その姿が、周囲には「内気な子」と見えているかもしれません。

 

2-2.慎重・失敗が怖い

前に何かを失敗したことが原因で、「また失敗するかもしれない」「失敗するのが怖い」と思い、恐れや自信の無さから内気になっているお子さんもいるでしょう。

失敗して誰かに笑われたり、恥ずかしい思いをしたり、あるいはお友だちや先生に怒られてしまった経験は、誰でも心の傷になりやすいですよね。

失敗しても再度チャレンジする子もいれば、慎重になる子もいます。

慎重で注意深い姿が、時として「内気すぎる」と周囲の目に映りやすいのかもしれません。

 

2-3.特定の場所や場面で黙ってしまう

話しかけられたり挨拶を求められると、答えられず黙りこくってしまう子や、保育園や学校など特定の場所で話せなくなってしまう子もいます。

「言わなきゃ」と思うと、見られている不安や緊張が一気に高まり、そのタイミングで声を出せなくなってしまうケースもあるのです。

家では挨拶や会話もできるため、周囲からは勘違いされやすいですが、本人も「喋りたくても声が出ない」という困り感を抱えています。

大人から見ると「挨拶くらいで」と思うような日常の些細な場面でも、内気なお子さんにとっては大きな試練になり得るのです。

 

2-4.ひとりでいるのが好き

大勢でワイワイ遊ぶのを好む子もいれば、ひとりで静かに過ごす方が好きな子もいます。

1-1で「気質に影響するという遺伝子の話」を書いたように、もともと刺激を好む人、穏やかさを好む人など、人の気質はそれぞれです。
「お友だちの輪に入れない」のではなく、ひとりで過ごしたいと思っているのかもしれないし、しばらく観察してから参加する方が、安心できるタイプなのかもしれません。

 

3.「内気」を克服するためにできること

十人十色というように、内気な性格は克服する必要なんてないのかもしれません。

でも、お子さんが常に不安や心配事を抱えているのだとしたら和らげてあげたいものですよね。幼少期から取り組めるおすすめの方法をご紹介します。

 

3-1.挨拶は会釈から練習する

挨拶ができない場合は、まずはママパパの「こんにちは」に合わせて、会釈から練習してみるのも1つの方法です。声に出すよりもハードルが低く、相手にも挨拶をした気持ちが伝わるでしょう。
もし会釈ができたらたくさん褒めてあげてくださいね。「○○ちゃんの挨拶、伝わっていたね!」「おばあちゃん喜んでいたね」と、できたことを自信にしていきましょう。

また、お友だちに話しかけられると固まってしまうお子さんは、仲の良い子をお家に呼んで遊ぶのはいかがでしょうか。園や学校では緊張してしまう子も、お家ではリラックスしてお喋りできるかもしれませんし、その延長で少しずつ場所や場面を広げていけると良いですね。

 

3-2.選択式質問法で意思表示の練習をする

幼い子どもは「どうしたいの?」と聞かれても、漠然としすぎて答えられないことがあります。そんな時におすすめの方法です。

例)
「こっちのおもちゃと、あっちのおもちゃどっちがいいかな?」
「パパが一緒に挨拶するのと、ママが一緒に挨拶するのどっちがいいかな?」
「自分で選ぶのと、パパが持ってくるのどっちがいいかな?」

といったように、選択肢の中からだと答えやすくなりますし、自分で考えて自分で決める練習ができます。

内気なお子さんもこの方法だと答えやすくなり、声を出して答えるステップになりますね。

また「自分の物も触られるのを嫌がって泣いたり」してしまうとのこと。

理由を聞くときにもこの選択式質問法は有効です。

自分で上手く理由を説明できないときは、「○○だったのかな?△△だったのかな?」と言語化してあげながら質問をすることで、子ども自身もどのように伝えれば良いのか学んでいきます。

 

3-3.得意なことを伸ばして自信をつける

内向的な人は、好きなことに没頭する集中力や、コツコツと向き合える辛抱強さを持っている傾向があります。

また、繊細で物事に敏感な人は、感受性が豊かとも言い換えられます。

好きなこと、得意なことが見つかったら、存分に伸ばしてあげましょう。

好きなことの中で、新しい経験や成功体験、時には失敗する経験も重ねていけると良いですね。きっとそれらが、自分の気持ちを表現する自信になっていくでしょう。

 

聖心女子大学名誉教授の高橋惠子さんは「持って生まれた気質も、まわりの人との触れあいで変化する。」と述べています。

これからの関わり方や経験によって、内気な性格は変化していく可能性があるということだともとらえられます。

子どもの良いところは伸ばし、子ども自身が過ごしにくいと感じている部分は関わりの中で良い方向に変化させてあげられたら良いですね。

 

4. 内気な子どもへの逆効果な対応

最後に、内気なお子さんへのNG対応をお伝えします。

内気なお子さんに限らず、子どもと接するうえで大切なポイントです。

 

4-1.子どもの行動や考えを否定する

選択式質問法の際にも注意が必要ですが、子どもの答えを否定したり、笑ったりしないようにしましょう。

自分の意見を否定されることを恐れて、ますます言えなくなってしまいます。
たとえ大人から見たら不十分な答えや、もどかしい行動でも、お子さんにとっては一生懸命考え、勇気を出したことです。その気持ちを受け止めてあげてくださいね。

 

4-2.できなかったことを責める

内気なのは、気質や得意不得意の違いであって、その子が「悪い」わけではありません。

「みんな仲良く遊んでいるのに」と比較されたり、「だんまりで恥ずかしいよ」と言われたりしたら、子どもはとても傷ついてしまいますし、「自分はダメだ」と思ってしまうでしょう。

挨拶できなかった時には、叱ったり責めたりせず、言えそうなら理由を聞いてみましょう。「緊張した」など理由がわかれば「そうなんだね、パパも緊張しちゃう時あるんだよね」など共感してあげると、お子さんも安心感を得ることができるのでおすすめです。

 

5.内気な子の強みを生かそう

最後に、内気な人の強みにも目を向けてみましょう。
たとえば、自分と同じような、繊細な人の気持ちを理解できる優しいところ、細かい部分に気が付けるところ、観察力があるところなど、将来仕事や対人関係に活かす強みになり得るでしょう。

社会には、社交的で行動力のある外交的な人も必要ですし、慎重で思慮深い内向的な人も必要です。

お子さんが自分の言いたいことややりたいことを、自信を持って表現できるよう手助けしながら、もともと持っている素敵なところを大切にしてあげたいですね。

 

主な参考文献
・山本 佳代子(2022)敏感性の高い子どもの育ちへの支援 西南学院大学人間科学論集 17巻 2号 215-226
子どものこころを育てる 4 公益財団法人 母子衛生研究会

 

 

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