小学生で泳げなくても大丈夫?!焦らなくても良い理由と苦手克服方法をご紹介
この記事を書いた人
横山ミノリ
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
- 小学校教諭
- 児童発達支援士
小1と年少、2人の男子の母です。
ASD(自閉スペクトラム症)の長男への関わり方を学ぶため、「児童発達支援士」と「発達障害コミュニケーションサポーター」の資格を取得しました。
自身が産後うつと育児ノイローゼになった経験から”ラクに生きる”がモットーに。
子どもには「自分で決めた!」「自分でできた!」という経験をたくさんしてほしいと思っています。
子どもとの好きな遊びは工作。子育てで好きな本は、高濱正伸著の「こどもの可能性を伸ばす「しない」子育て」です。
毎年6月中旬頃になると、全国の小学校でプール開きが行われます。小学1年生にとっては、初めてのプール授業ですね。
子どもが泳げなかったり、水を怖がったりしている場合、ママは「子どもが授業について行けるか」「プール授業を嫌がったらどうしよう」などの不安を抱えていることでしょう。
この記事では、小学校低学年のプール授業の内容とねらいから、子どもが泳げなくても焦らなくて良い理由をお伝えします。
また、子どもが泳げない原因と、ご家庭でできる苦手克服方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読めば、泳げない子も、そのママも、プール授業を前向きに楽しめるようになるでしょう。
目次
1.学習指導要領の定めでは?
小学校低学年のプール授業について、学習指導要領ではどのようなことが定められているのか解説します。
1-1.小学校低学年のプール授業のねらい
学習指導要領によると、小学校から高校におけるプール授業のねらいには2つのポイントがあります。
1つ目は「陸上における各種の運動と違う点を理解する」ことです。陸上とは違い、水の中では、浮力・抵抗・水圧が発生します。
これらの力をうまく使って、水に浮いたり、もぐったり、泳いだりする技術を身につけるのです。
プール授業の2つ目のねらいは、「自己や他者の身を守るための視点についても水泳の意義を認識させる」ことです。
もしものときに泳ぐことができれば、自分や他の人の命を救えるかもしれません。浮いていられるだけでも、助かる可能性は上がります。
水の危険から身を守るうえで水泳が果たす役割を教えることも、プール授業の目的なのです。
小学校低学年のプール授業では、これら2つのねらいを、「水遊び」の中で実践していくよう定められています。
1-2.小学校低学年のプール授業の内容
学習指導要領では、小学校低学年のプール授業の内容は「水遊び」と定められており、2つのメニューで構成されています。
1.「水に慣れる遊び」
- 水につかってのまねっこ遊びや水かけっこ
- 胸まで水につかって大きく息を吸ったり吐いたりする
- 水につかっての電車ごっこやリレー遊び、鬼遊び
2.「浮く・もぐる遊び」
- 壁につかまっての伏し浮き、補助具を使って浮く遊び
- 水中でのジャンケン、にらめっこ、石拾い、輪くぐり
- 水に顔をつけて口や鼻から息を吐く
- 息を止めてもぐり、跳び上がって空中で息を吸う
低学年のプール授業のキーワードは「遊び」です。
水への苦手意識や、運動神経の差などを考慮し、みんなが楽しく行えるような授業内容になっています。
1-3.小学校低学年のプール授業の評価
小学校低学年のプール授業では、「進んで水遊びに取り組むこと」「順番や決まりを守りながら友達と仲良く活動できること」「水の中での安全に気を配れること」が評価項目となっています。
また、技能面では、「水遊びを楽しく行なうための基本的な動きや各種の運動の基本となる動きができるか」が評価されます。
「水遊び」が中心となる、小学校低学年において、泳げるか泳げないかの評価はありません。自分のペースで楽しみ、お友達と仲良く活動できるかが、低学年のプール授業では評価されるのです。
プール授業で良い評価を得るためだけに、焦ってスイミング教室に通う必要はないかもしれませんね。
ちなみに、改訂された学習指導要領によると、小学校では、評価に際して正確な距離やタイムは重視されなくなりました。少しでも泳げるようになった児童に達成感を持たせるためです。
児童の個性に対応する指導で、子どもはより楽しく学べるようになり、主体性を発揮できるようになったと言えるでしょう。
2.小学1年生が泳げない原因
ここでは、子どもが泳げない原因をいくつかご紹介します。
2-1.水が怖いから
この年齢の子どもが泳げない原因の1つに、水への恐怖心があります。ママのおなかの中にいたときは羊水に浮いていたことを考えると、水への恐怖心は、子どもがもともと持っているものではないでしょう。
水を怖いと思うようになったきっかけがあるはずです。
例えば、足のつかないプールに入ってしまって溺れた経験から、水が怖くなった子もいるでしょう。
水遊びのときにふざけて水をかけられたり、お風呂で無理やりシャワーをかけられたりして、嫌な思いをしたことがあるかもしれません。
2-2.水やプールに嫌なイメージを持っているから
子どもが泳げないのは、水やプールに対してネガティブな印象を持っているからかもしれません。
例えば、学校のプールのように、大きな場所に冷たい水がたまっていることが怖いと感じる子どももいます。
プール前に浴びるシャワーが冷たくて嫌いという子もいるでしょう。水着の着心地が苦手という子どももいるかもしれません。
子どもが持っている嫌なイメージには、その子の繊細な性格や、感覚過敏が影響している可能性もあります。
2-3.泳ぎ方がわからないから
子どもが泳げない3つ目の原因は、単純に、泳ぎ方がわからないからです。
水の中は陸上とは違うため、思ったように動けず、水の中でからだをどのようにコントロールしたらよいのかわからないのかもしれません。
水に浮く感覚や沈む感覚がつかめない、息継ぎの仕方がわからないなど、子どもによってつまずいているポイントはさまざまです。
2-4.コロナ禍の影響
子どもが泳げない原因には、コロナ禍の影響が考えられるかもしれません。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国のプールや、水遊びができる公園が使用できなくなりました。
お子さんが通っていた幼稚園や保育園でも、水遊びが中止になったのではないでしょうか。
このような状況下で幼少期を過ごした子どもたちは、家庭の外で水に触れる機会が少なかったと言えます。水に触れる機会が少なかった子どもが、泳げないのも無理はありませんよね。
3.小学1年生で泳げない子へのサポート方法
泳げない子をサポートするうえで、無理強いはNGです。他の子と比べず、子どもの頑張りを認めて褒めるように心がけましょう。
3-1.水に慣れる機会をつくる
泳げない子、特に水が嫌いな子どもに対しては、まずは水に慣れる機会をつくりましょう。もし水で怖い思いをした経験があっても、傷が浅いうちでしたら、楽しい体験で上書きすることができます。
お家でプールを出したり、お風呂で水遊びしたりするのもいいですね。一緒にプールに行くときは、泳ぎ方を教えるのではなく、水と触れ合う楽しさを伝えるようにしましょう。
大切なのはママも一緒に楽しむことです。
3-2.不安を解消してあげる
何らかの不安から、水に苦手意識を持っている子どもに対しては、その不安を解消してあげることが大切です。まずは、何が嫌なのか、不安なのか子どもに聞いてみましょう。
水の冷たさや、寒さが原因となっている場合は、気温と水温が高い日に水遊びするようにします。先ほどお伝えしたように、子どもの気質や感覚過敏が原因となっている場合には、学校の先生に相談してみてください。
その子に必要な合理的配慮を受けられるかもしれません。子どもは、先生やお友達に理解してもらえるだけで安心できるはずです。
最初は不安でいっぱいな子どもも、お友達の楽しそうな姿を見たり、暖かい日が続いたりすると、プール授業を楽しめるようになるでしょう。
3-3.苦手なことを少しずつ克服していく
泳げない子のサポートをする前に、まずは何が苦手なのか子どもに聞いてみましょう。苦手をピンポイントで対策し克服することで、泳げるようになるはずです。
例えば、顔を水につけるのが苦手であれば、掌にためた水で顔を濡らすことから始められます。
水に浮く感覚がわからない子どもには、何かにつかまりながら浮く練習で、浮く感覚をからだに覚えさせることができるでしょう。
息継ぎが苦手な子どもには、まずは、水の中で口から息を吐けるようにサポートしましょう。
ここで、お風呂でできる簡単な練習をご紹介します。鼻の下まで湯船につかり、口から吐く息で、目の前に浮かべたおもちゃを進ませる遊びです。慣れてきたら、水中で鼻からも息を吐けるようになるでしょう。
子ども自ら泳げるようになりたいと思っているのであれば、スイミング教室に通うのもありですね。子ども自身が「やってみたい!」と思っているときこそ、子どもが1番伸びるタイミングです。
4.子どものころに水泳を学ぶメリット
ここでは水泳のメリットをいくつかご紹介します。特に、子どものころに水泳を学ぶことにはたくさんのメリットがありますよ。
4-1.全身運動が可能
1つ目のメリットは、水の負荷を受けながら、全身運動ができる点です。水泳は、全身の筋肉をバランスよく鍛えられるだけでなく、体幹やバランス感覚を強化することもできます。
さらに、幼少期に全身運動をすると、運動能力が飛躍的に向上すると言われています。「ゴールデンエイジ」と呼ばれる9歳〜12歳に、子どもの身体能力が急速に発達するからです。
3歳〜8歳までは「プレゴールデンエイジ」とされており、小学1年生はここに該当します。プレゴールデンエイジは、神経系が最も発達する年齢です。
そのためこの時期の運動は、身体能力だけでなく、脳の発達にも良いとされており、さまざまな遊びを通してからだを動かすことがすすめられています。小学校低学年の「水遊び」は、まさに、子どもの発達を促すのにぴったりだと言えるでしょう。
4-2.肺活量・心肺機能が鍛えられる
2つ目のメリットは、肺活量や心肺機能が鍛えられることです。水圧により肺に負荷がかかった状態での呼吸は難しく、水中にいるだけで肺活量が増加します。また、息継ぎによって呼吸が制限されることで、心肺機能が鍛えられるのです。
肺活量と心肺機能の向上は、水泳以外のスポーツでも役に立ちます。さらに、基礎代謝がアップし、健康で太りにくい体づくりにもつながりますよ。
4-3.免疫力の向上
メリット3つ目は、免疫力の向上です。1つ前でお伝えしたように、肺活量が増えることによって全身の血流が良くなり、免疫力が向上します。
また、肌が冷たい水の刺激を受けることで自律神経の働きが活性化し、免疫力が向上するのです。
免疫力がアップすると、からだがウイルスや細菌に強くなります。水泳を習うと風邪をひきにくくなると言われているのはこのためです。
4-4.怪我のリスクが少ない
4つ目に、怪我のリスクが少ないというメリットもあります。水泳が怪我をしにくいスポーツなのは、浮力が関係しています。重力が陸上の6分の1~10分の1に減ることにより、からだにかかる力が少なくなるのです。
また水泳は、全身の筋肉を均等に使うので、からだの一部を集中的に使うスポーツに起こりやすい傷害が少なく、関節が未発達な成長期の子どもにも安心です。
さらに、団体競技にあるような接触事故も起こりにくいというメリットもあります。
4-5.その他のメリット
水泳には他にもたくさんのメリットがあります。例えば、消費カロリーが大きいので、睡眠の質が向上します。水中では全身の力を抜くことができるので、リラクゼーション効果も期待できるでしょう。
また、同じ動作を繰り返し行うリズム運動で、ストレス解消にもつながります。
さらに、早ければ生後6か月から始められるベビースイミングのように、年齢制限がないのも魅力の1つですね。
水泳は、誰でも楽しめて心身の健康維持に役立つ、生涯スポーツと言えるでしょう。
5.小学1年生で泳げなくても大丈夫!楽しみながら苦手を克服していこう
学習指導要領で定められている通り、小学校1年生で泳げなくても心配はいりません。泳げないことが理由で、プールの授業や学校を嫌がってる子どもには、「楽しめれば100点!」ということを伝えてあげましょう。
小学校中学年になって泳ぎの練習が授業に含まれるようになり、泳げる子が増えてくる頃までに、苦手が克服できていれば十分です。
それまでは、泳げない子どものレベルや意欲に合わせて、丁寧にサポートしていきましょう。
水泳はたくさんのメリットがあります。子どもが遊びながら泳げるようになり、夏の楽しみが増えたら嬉しいですね!
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参考資料
・文部科学省「学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」」,平成26年3月
・筑波大学体育系准教授 山口香「これからの時代に求められる教育体育・保健体育が果たすべき役割」
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