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夢中になると周りが見えなくなる…セルフコントロールの育み方や対応例を紹介

この記事を書いた人

中川さくら 中川さくら

中川さくら

  • 保育士
  • 児童指導員

学生時代に障害児福祉を学び、小学校の特別支援教育支援員や療育施設の保育士、学童保育、小学校などで、子どもたちやそのご家族と関わる仕事を約10年ほど経験しました。

今は、保育園に通う1歳の息子がいます。

昔バックパッカーだったので、いつか家族で世界を旅することが夢です。

目の前のことに夢中になるあまり、お子さんが好ましくない行動をとってしまい、困った経験はありませんか?

競争や勝ち負けのある場面になると周りが見えなくなり、1番になりたくて強引な行動に出たり、やりたいと思うと順番やルールを守れなくてトラブルになったり、「この子がお友だちに嫌われてしまわないかな」と心配を抱えるママやパパもいるでしょう。

CONOBASにも、4歳の女の子のママから「夢中になると、周りの声が耳に入らなくなってしまう。」というお悩みをお寄せいただきました。

 

 

一番になるために必死…スイッチが入ると止まれない(3歳 女の子のママ)

猪突猛進でトラブルになりがちだという一方で、「これはダメなこと」とお子さん自身が理解しているため、「優しくなりたい」「わかっているけど止められない」と自分の行動の後に落ち込んでしまうそうです。

そんなお子さんの苦悩と葛藤に、とても胸を痛めている相談者様。

「夢中になると止められない」「わかっているのにコントロールできない」と悩むお子さんやママ・パパへ、普段から取り組めるセルフコントロールを育む方法や、具体的なトラブルの場面における対応例もご紹介します。


 

目次

 

1.周りが見えなくなってしまう子の特徴

どのような理由があって、「周りが見えなくなってしまう」のでしょうか。

ここでは、考えられる理由を3つ挙げています。お子さんに当てはまる内容があるか、確認してみましょう。

1-1.衝動性が強い

「衝動性が強い」とは、自分の欲求が抑えにくく、考える前に行動や発言に移してしまうことです。

その要因は、性格や環境によるものなどさまざまです。

「順番を守らなきゃダメ」「勝ちたくても友だちを押すのはダメ」など、頭では理解しているのに、やってはいけない行動をとってしまう、繰り返してしまうというのは、衝動性の強さが関係している可能性があります。

また衝動性の強い傾向があるお子さんは、ハイテンションになりやすく、テンションが極端に高くなると行動のコントロールが難しくなることもあります。

「とにかく行動してみる!」というのは実行力があるとも言えるので、一概に悪いことではありません。

ただ、状況によって行動や発言を調整できないと、普段の生活や対人関係で困る場面もあり、「周りが見えなくなっている行動」に見えてしまうことがあるでしょう。

 

1-2.セルフコントロールが未熟

セルフコントロールとは、「やりたい」と思ったことを状況に合わせて我慢したり、感情を調整する力のことです。

この力が未熟な状態だと、欲求のままに行動したり、思い通りにいかないと怒りがおさえられなかったり、それが原因でトラブルに発展してしまうこともあります。

一般的には、4〜6歳頃にセルフコントロールが育ち始めると言われていますが、性格や環境、経験などによってその育ちには個人差があります。

自分の感情をうまく調整できないことが原因で、周囲の人からは時として、周りが見えなくなっているように映ってしまうことがあるでしょう。

 

1-3.過集中の傾向がある

何かに過度に集中しすぎて、他のことが目に入らない、周りの声が耳に入らないことを「過集中」と言います。
「過集中」は、集中し始めると中断することが難しく、切り替えがうまくいかないのも特徴です。

集中力を持って取り組むことができるのは、強みになる一方で、やるべきことや時間を忘れるほど没頭してしまうと、周りのことが目に入らなくなり、日常生活に支障が出てしまうこともあります。

 

2.周りが見えなくなってしまう子への対応

上記の特徴を踏まえて、まずは「周りが見えなくなる」ことを減らしていけるようなお子さんとのかかわり方のポイントをご紹介します。

いつも意識して過ごすことは難しいかもしれませんが、ご家庭で取り入れられそうなものがあれば、ぜひ活用してみてくださいね。

 

2-1.事前に説明して心の準備をする

衝動性の強いお子さんに対しては、事前に約束事をしておくことがおすすめです。

目に入ったものへ注意が移りやすい傾向や、テンションが上がりすぎて周囲の声が耳に入らなくなる特徴があるので、事前に「今何をするのか」説明しておくことで、トラブルや危険な行動を減らすことができます。

感情のコントロールがうまくできないお子さんにとっても、「次はこれをやるよ」「○○するために順番に並ぶよ」など、見通しを持つことで心の準備ができ、感情や行動を調整することに繋がります。

事前に説明をすれば、すぐに行動を調整できるというものではありませんが、少なくとも見通しを持つことでお子さんは安心できます。可能なときはなるべく説明や予告をして、お子さんの好ましくない行動を減らし、お子さんもママ・パパも穏やかな気持ちで過ごせると良いですね。

 

2-2.セルフコントロール力を伸ばす

セルフコントロールは、周りが見えなくなってしまう行動を調整する力にも繋がります。

セルフコントロール力を伸ばすために大切なことは、まだ上手に表現できないお子さんの感情を言葉にして、気持ちを受け止めることです。言語化と共感は、感情を自分でコントロールしていく土台になります。

簡単なルールのあるゲームを通して気持ちのコントロールを学ぶこともできますし、その際に「悔しい」「嬉しい」などの感情を言語化してあげるのも良いでしょう。

「理解していること」と「実際に行動できること」は違うので、わかっているのにやってしまった…ということもあると思いますが、できる範囲から小さな1歩を積み重ねていきましょう。

また感情の中でも、怒りの感情をコントロールできるようになることはとても重要です。

自分の気持ちを適切に伝えられるようになれば、お子さん自身も過ごしやすくなりますね。アンガーマネジメントはいろいろな方法がありますが、幼いお子さんにわかりやすく伝えるには絵本も有効なので、必要に応じて取り入れてみてください。

絵本の内容を振り返りながら「こんな時、◯◯ちゃんはどんな気持ち?」「どうやって伝えたらいいかな?」と、落ち着いているときに話をしてみるのも良いですね。

このように気持ちのコントロールができた経験を重ねていって、少しずつ良い行動が増えてくることを目指しましょう。

 

2-3.聴覚、視覚的に行動の流れを示す

過集中になりやすいお子さんは、始める前に、次の行動に移る時間や休憩時間を一緒に決めておき、アラームなどを使うのも効果的です。

幼いお子さんの場合は特に、スケジュールボードを作成するのもおすすめです。時計の絵や次の行動の絵を貼るなどして、視覚的にわかりやすくするとより良いでしょう

 

3. こんなときどうする?トラブルと対応例

ここでは、周りが見えなくなってしまうことが原因で起きやすい場面を3つ挙げて、それぞれの対応例をご紹介します。

先ほど紹介したポイントに基づき具体例を紹介しているので、ご家庭で困っていることと近いケースがあれば、参考にしてみてください。

 

3-1.1番にこだわり、友だちを押してしまう

「1番」に人一倍こだわりをもつ年少のAちゃん。

保育園で「1番早くお支度を終わらせるのは誰かな?」という先生の声掛けで、一生懸命支度をしたけれど、お友だちに負けてしまいました。

1番じゃないと納得できないAちゃんは悔しさを我慢できず、その子を「ドン!」と押して泣かせてしまいました。

お家でAちゃんが教えてくれたら、まず悔しさに共感して「ダメだとわかっていたこと」を褒めてあげましょう。本人が「わかっているのにやってしまった」場合、あまり叱ってしまうと悪循環になりかねません。

気持ちが落ち着いているときに「いろいろな1番があること」をお話ししてみるのも良いでしょう。早さは○○くんが1番、丁寧さはAちゃんが1番、他の子のお手伝いした△△ちゃんは気遣い1番など。

早さだけを褒めると、子どもは「早いこと=すごいこと」と学習してしまいます。

いろいろな頑張り方に気づけると、Aちゃんも過ごしやすくなるかもしれませんね。

 

時には伝え方を変えて、このような絵本を使うのもおすすめです。

 

★ポイントまとめ
・「ダメだとわかっていたこと」を褒める

・様々な「1番」があることを伝える

 

3-2.外出先で、興味があるものを見つけると走り出してしまう

ママとスーパーへ買い物に行った年中のBくん。

店内へ入ると、大好きなお菓子コーナーへ一目散に走り出してしまいました。

棚にぶつかって、陳列してある商品を落としたり、お客さんに衝突してしまったり、ママはBくんを叱り、他のお客さんや店員さんに謝ってばかりで、買い物へ行くことが憂鬱になってしまいました。

走り出す前に、お子さんと約束事を確認すると良いですね。

お店の前で立ち止まって、「お店での約束はなんだっけ?」と自分で考える習慣をつけるのがおすすめです。店内は手を繋ぐこと、走らずに歩くことなど、「してはいけないこと」よりも「守ってほしいこと」を簡潔に伝えましょう。

理由が理解できる年齢なら「赤ちゃんにぶつかったら怪我をさせちゃうよね?」など理由を伝えると納得しやすいかもしれません。

できているときは、「すごいね、えらいね」という抽象的な言葉よりも「手を繋いで、約束を守れているね」など、具体的に伝える方がBくんの自信になっていきますよ。

禁止事項ばかりでなく、お菓子コーナーに行くための約束をBくんと一緒に考えるのも良いですね。

★ポイントまとめ
・禁止事項ではなく、目的を達成するための約束事を考える
・始める前に確認する

 

3-3.状況を読めずに喋り続けてしまう

年長のCくんは、お休みの日にパパと図書館へおでかけすることになりました。

「今日は図書館へ行くよ」とパパが話し始めると、Cくんは大きな声で遮り「図書館ママと行った!○○の絵本を借りて△△〜〜」と喋り始めました。

パパが「Cくん、シー」と注意すると「なんでだよ!」と怒鳴り声をあげ、椅子を蹴って怒り出してしまいました。

衝動性の強いお子さんの中には、「ひとりで喋り続けてしまう」「指名されていないのに先に答えてしまう」という子もいます。

「図書館」という言葉を聞いた瞬間に自分の経験と結びつき、衝動のままに喋り出したんですね。

遮られた上に注意され、「なんで話を聞いてくれないんだ」とCくんは理由がわからず、怒ってしまったのです。

できれば、お話の前に「今日のお散歩の話を3つするよ。①行く場所、②帰る時間、③お約束。3番までパパのお話を聞いたあとに、Cくんのお話を聞くね。」というふうに説明しておくと、話の終わりの見通しが持てます。

言葉や会話の発達は個人差も大きく、話題が飛び飛びだったり、まだまだ会話のキャッチボールが難しく一方的になったりするお子さんもいます。

普段から、お子さんの話を聞いている時に、「そうなんだ、すごいね」などの相槌だけでなく、簡単な質問を挟んで会話のキャッチボールを意識してみるのも良いでしょう。

こちらの話を遮らずに聞けたときは「最後まで聞いてくれて嬉しかったよ」と伝えて、成功体験にしてあげてくださいね。

★ポイントまとめ
・見通しを持てる声掛けを
・普段から会話のキャッチボールを意識する

 

4.自己肯定感を育む親子の関わり方

相談者様のお子さんのように、周りが見えなくなって行動してしまったあとに落ち込んだり、保育園などでうまくいかない経験が増えたりすると、自分に自信がなくなり自己肯定感が下がってしまうことが心配ですよね。

どう声をかけたら良いのか悩んでいるママやパパもいるでしょう。

自己肯定感とは、一言で言うと「自分を大切にする気持ち」のことです。

たとえトラブルや問題があっても、「自分は愛されている」「そのままの存在が宝物」ということがお子さんの心に根づくと、ネガティブなことを乗り越えていく力になり、良い行動を増やしていくことにもつながります。

親子の関わりを通して、自己肯定感を育んでいきましょう。

 

4-1.失敗の中でも「頑張ったこと」を褒める

トラブルになってしまうと、褒める所やできた部分は見えにくいかもしれませんが、その中にもお子さんが頑張ったところがきっと隠れています。

もし、カッとして大きな声を出してしまったら「悔しかったけど、物や人を叩くのを我慢したんだよね。」と伝えることもできます。

もちろん危険を伴うことや人を傷つけることはいけないと、きちんと教える必要があります。

それでもできる限り、失敗してしまったことの中の「頑張ったこと」や、当たり前に見える普通のことにも目を向けて、叱る回数よりも褒める回数を増やしていけると良いですね。

 

4-2.集中力や衝動性を活かして得意を伸ばす

集団生活や社会の中で過ごすためには、苦手なことと向き合うことも必要ですが、それ以上に、得意なことを伸ばしていくことが自己肯定感を育むためにもとても重要です。

過集中になりがちなお子さんは、その抜群の集中力が強みになります。

興味があることへ一直線の、衝動性の強いお子さんなら、そのひらめきや創造力、行動力は素晴らしい長所になり得ます。

手先が器用で大人顔負けの折り紙を折る子や、絵の具で大胆なアートを作り出す子など、大人や他のお子さんたちが難しいことにものめり込んで力を発揮することがありますし、自分に自信をつけることにも繋がります。

お子さんが何が好きなのかを観察して、生活に支障の出ない時間を使って、集中して取り組める環境を用意すると良いでしょう。

 

5.長所を生かしながら少しずつ成長する姿を見守って

自分の短所と向き合おうと葛藤するお子さんの姿は、素直で一生懸命で、そばで支えているママやパパは胸が痛むことと思います。

「優しくなりたい…」と悩む相談者様のお子さんは、相手の気持ちを想像できる、じゅうぶんに優しい子なのでしょう。

それは、お子さんの気持ちに寄り添い、たくさん悩んでいる優しいママに似たからなのではないでしょうか。

周りが見えなくなってしまうと大変な場面もありますが、他の人が緊張してしまう中でも、失敗を恐れずに行動できる、挑戦できる強さも持っています。

好奇心旺盛で新しいことにも取り組めるなど、他の人にはない長所もあります。そんな素敵な部分を生かしながら、困りごとを少しずつ乗り越えていけるヒントになれば幸いです。

 

主な参考文献
・一般社団法人 加古川医師会「安心子育て応援ブック」12.発達障害について 57-61
・伊藤公美子 北村博幸(2021)幼児期の非認知能力と実行機能の関連における研究の現状と課題 北海道教育大学紀要. 教育科学編 71 2 69-82

 

 

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