【お悩み相談】『神経質』は子どもにうつる?神経質な性格を改善する方法はある?
この記事を書いた人
榊原なつき
- 心理カウンセラー
- 中学校教諭
- 小学校教諭
- 保育士
小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務
保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。
ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!
コロナ禍中は手洗いやうがい、マスクの着用など、ウイルス感染から家族を守るために気を張っていた保護者の方は多いでしょう。
そんな数年を経て、「必要以上に細かなことを気にするようになった」「ピリピリ・イライラしている気がする…」など、我が子の変化が気になるという声も聞こえてきます。
CONOBASのお悩み相談フォームにも、「親の『神経質』が娘にうつったかも…」というお悩みが届きました。
そこで今回は、保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもつ「なっちゃん先生」に、『神経質』ってそもそもどんな様子なの?なおせるの?なおす必要はあるの?など、たくさんの話を伺いました。
親の『神経質』がうつったようで、心配…
4歳女の子 ママからのご相談
目次
1.コロナ禍を経て、子どもたちに見える変化とは?
––コロナウイルスが猛威を振るっていた間は、外出を極力控えたり、家の外では常にマスクを着用していたり、おしゃべりしながら食事すること子を制限されたり、大人だけでなく、子どもにもたくさんのことを強いる時期が続きました。
子どもたちの表情や言葉遣い、遊び方、寝食に関する変化など、なっちゃん先生さんが気づくことがあれば教えてください。
1-1.遊び方の変化
新型コロナウイルスの感染予防のため外出を控えるご家庭も多く、公園など外で遊ぶ時間が減少しています。
それに伴いおうちで過ごす時間が増えたことで、お友達と一緒に遊ぶ時間が減少しています。
おうちでは、ブロックや折り紙など一人遊びをすることが増えたと共に、ゲームや動画視聴の時間も増加しています。
コロナ禍以前は、お友達との関わりの中で多くのことを学んでいましたが、現在はゲームや動画から吸収することが増えているとも言えるでしょう。
1-2.食事・運動・睡眠の質の変化
家で過ごす時間が増えたことにより、生活習慣にも変化がみられています。
まず、食事については間食が増えています。また家庭によっては、バランスの良い食事を摂りづらくなっているとの報告もあります。
運動面についても、外出が減ったことにより毎日の運動量の減少がみられています。
生活習慣の変化から睡眠の量や質にも影響が出ており、起床時間や就寝時間が不規則になったり睡眠時間が減少したりする子が増えたようです。
1-3.精神面での変化
外で親以外の人と過ごす時間や経験が減ったため、他者と関わることに不慣れなお子さんが増えています。
その結果、安心して過ごせるご自宅や親御さんと一緒に過ごす場面では、ストレスの反動で必要以上に甘えるお子さんが増えた傾向があるようです。
またただ甘えるだけでなく、わがままを言ったり、自分の思い通りにならないと癇癪を起こしたりして欲求を伝えることも増えています。
2.保護者にも、気持ちや行動の変化が見られる
––子どもをコロナウイルスから守らなければ、とそれまで以上に気を張っていた保護者の方は多いのではないでしょうか。
そんな日々の中で、心身的なつらさや閉塞感を感じたりした方もいるでしょう。
なっちゃん先生が日々、子どもと関わるな中で気づいたことがあれば教えてください。
2-1.やるべきこと・気にすべきことが増えた
新型コロナウイルスの感染予防のため、誰もが手洗い・うがいを気をつけて行っていました。
親御さんはお子さんの手洗い・うがいに、今まで以上に気を配ったり、外出先でマスクをつけさせたり、周りを意識して過ごさせる必要が今まで以上に増えたのではないでしょうか。
2-2.子育ての相談をしづらくなった
コロナ禍では、外出自粛が余儀なくされました。
自主的に人と会うことを控える以外にも、園での親子行事や地域の親子イベントも規模の縮小や中止になることが多くありましたよね。
その結果、親御さん同士や子育てをサポートしてくれる人との繋がりも減少したのではないでしょうか。
子育てをする中で不安や心配になることがあっても、すぐに相談できる場がないという声もよく耳にするようになりました。
あるアンケート調査においても、「孤独だと感じる」と答えるママは全体の7割を超えることが分かっています。
3.そもそも「神経質」とはどんな状態のこと?
––「神経質」という言葉や、誰かのことを「あの人は神経質だ」と表現することは、決して特別なことではないですよね。
けれど、どんな様子を「神経質」と呼ぶのか。その正しい解釈を知っているわけではないのではないでしょうか。
なっちゃん先生、改めて「神経質」という言葉が指す概念や意味や様子を教えてください。
3‐1.「神経質」は生活の中で心配や不安が高い状態
神経質とは性格の一つで、心配や不安を抱きやすい特性のことです。
細かいことが気になったり、先のリスクを予想して注意深く考えてから行動を決めたりする、という特徴があります。
3‐2.神経質な人の4つの特徴
神経質な人には、主に以下の4つの特徴が共通するとされています。
①心配性
「〜だったらどうしよう…」と心配になりやすいです。特に、初めてのことや場所に対して不安が強く出ることがあります。そのため、事前にリスクを予想して行動しようとします。
②自己内省をする
「自分が〜したから上手くいかなかった」というように、しぜんと自分の行動を反省しているのも神経質な人の特徴です。落ち込むと気持ちの切り替えが難しいこともあります。
③こだわりが強い
細かい部分まで目が向き、自分の理想の状態に近づけようとします。自分の思い描いたもの・ことができるることに喜びを感じます。自分だけでなく周りのものや人に対しても「〜であってほしい」という思いが強いため、周りの人にも影響を及ぼすこともあります。
④ストレスを溜めやすい
日常の些細なことが気がかりになるので、ストレスを溜めやすい傾向にあります。特に、自分以外の人の行動はコントロールすることが難しいため、自分の思うようにならずに心の中でモヤモヤとした思いを溜めやすくなります。
4.親の神経質な面が、子どもに影響を与えることはある?
––質問者さんは、「自分の神経質さが、子どもにうつったのでは…」と心配しています。 そのようなことは、実際にあるのでしょうか?
4-1.知らず知らず、親のマインドを子どもが受け取っている
結論から言うと、「ない」とは言い切れないでしょう。
子どもは、周りにいる大人の影響を強く受けて育ちます。
周りの大人が神経質であると、毎日の生活の中でも細かい部分を気にするように言われるでしょう。
「子どもに悲しい思いをさせたくない」という思いで「~しないように〇〇しなさい」というように、行動する前から繰り返し言われていくうちに、「またお母さんに言われてしまうかも…」「新しいことをして失敗するのが怖い」とお子さんも不安が高まっていく可能性があるのです。
5.「神経質」はよくないことなの…?
––「神経質」という言葉を使う時は、どちらかというとマイナスのイメージが強いかもしれません。
「神経質」であることは、よくないことなのでしょうか?また、なおす必要はありますか?
5-1.神経質な性格には両面性がある
人間の性格は、マイナスの作用とプラスの作用の両方を兼ね備えています。
例えば、神経質の4つの特徴で考えてみましょう。
①心配性→先のリスクを予測して、事前に入念な準備をする
②自己内省をする→上手くいかなかったことを分析して、次はより良いものにしようとする
③こだわりが強い→試行錯誤をして、一つのものをより良いものに仕上げる
④ストレスを溜めやすい→(細かいことに目が向くので)周りの人の気持ちに気づきやすい
神経質な性格は、マイナス面に目がいきがちですが、必ずしも悪い面ばかりではありません。場面によっては良い影響をもたらすこともある、ということをぜひ知っていただきたいと思います。
5-2.バランスをとることが重要
神経質であることは必ずしも悪いことではありませんが、あまりに周りのことが気になるとストレスを強く感じて日常生活がままならなくなってしまうこともあります。
神経質な性格の良い面を認めつつ、時には、気にしすぎないように意識的に練習していくことも大切でしょう。
6.「神経質」緩和のために、家庭で気をつけることは?
––「神経質」なところをなおしたいと思った時、どんなことに気をつければ良いですか?
保護者の方がサポートする際のポイントやヒントを教えてください。
6-1.安心できる環境で新しいことに挑戦してみる
簡単なことからでよいので、安心できる環境で、新しいことに挑戦してみましょう。
例えば、友達と一緒に初めての場所を訪れたり、新しい習いごとに取り組むのも良いでしょう。
行動に移すことに戸惑いがある場合は、実際に経験したことのある人の話を聞くことから始めるのも有効です。
事前に自宅で親御さんと練習しておくと、新しいことへの抵抗も少なくなります。
実際にやってみて上手くいかないときの対処法を経験しておくことで、不安感を減らすことができます。
6-2.本人が納得できる言葉がけをする
お子さんの神経質を緩和させるためには、お子さん自身が納得して行動することが大切です。
大人が「とにかくやらせてみよう」とすると、余計にやりたくないと感じてしまいますよね。
「お母さんと一緒にやってみよう。もしできなかったら、お母さんが手伝うからね」と助けがあることを伝えたり、「もし失敗しても、もう1回できるからね」と不安を取り除いておいたりすることで、自分で行動できるようにしていきましょう。
事前に流れを見せたり、困ったときの対処法を確認できていると、安心して行動できる場合が多いですよ。
6-3.「まあ、いっか」と思う経験を増やしていく
小さな経験を積む中で、完璧に思い通りにならなくても「まあ、いっか」と思えるタイミングを増やしていくことも大切です。
例えば、工作で思うようにハサミで切れなかったとしても「テープで貼ったら元に戻るね」と一緒に打開策を見つける、思ったようにできなくても「〜の部分が、とっても素敵になったね!途中で変えたから、もっと良くなったね」など、思い通りにならなかったことに対して「完璧でなくてもいいんだ」と思える声かけを大人ができると良いでしょう。
「思い通りにならなくてもいいんだ」と経験の中で感じられるように、大人がメッセージを伝えていきましょう。
7.「神経質」を気にしている保護者の方へ
焦らずじっくり「神経質」と向き合いましょう
神経質であるため物事がスムーズに進まないと、もどかしく感じることもあると思います。
でもその分お子さんは、慎重に考え、よりよい結果になるように努力する力を持ち合わせています。
「変わらなきゃいけない!」と強く思うことでより不安になることもあるでしょう。今できていることやお子さんのよいところに目を向けて、さらにそれを生かして伸ばしていけるように少しずつ挑戦していけるとよいですね。
親御さんが笑っている姿が、お子さんにとっては成長の糧です。気負いすぎず、親子で楽しんで様々なことに取り組んでいきましょう!
参考文献/参考サイト
・国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート 第1回調査 報告書」
・鈴木 瑛貴. 遠藤 隆志. 窪谷 珠江 馬場 彩果. 植草 一世. 「コロナ禍が幼児の日常生活ならびに健康に与える影響─ 2021年2-3月の保護者へのアンケート調査より ─」.植草学園短期大学紀要 第23号 87 ~ 95頁(2022)
・子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会
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