小学校英語教育必修化!低学年のうちからできる英語学習とは?【元小学校教師が解説】
この記事を書いた人
榊原なつき
- 心理カウンセラー
- 中学校教諭
- 小学校教諭
- 保育士
小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務
保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。
ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!
2021年度から「新学習指導要領」がスタートし、小学校5・6年生でも「英語」が必修教科となりました。
「今までの小学校の英語教育と何が違うの?」「小学生から英語の読み書きをさせないといけないの?」と不安に思う保護者の方も多いと思います。
今回は、今までの小学校での英語教育との違いや実際の小学校での英語の授業の様子をお伝えし、低学年のうちからできる準備方法をお伝えします!
目次
1.小学校で英語が必修化されたワケ
これまで「英語」は中学校から学習がスタートしていましたが、2020年度からはついに小学校から「外国語」の教科が必修化されました。
なぜ小学校から英語学習がスタートすることになったのでしょうか?
1-1.社会のグローバル化に合わせて英語教育も重視された
それまで小学校においても「総合的な学習の時間」の中で外国語活動が行われていました。
保護者の方も年に数回、外国人の先生が来て楽しくゲームをした記憶があるかもしれません。
そのときの小学校の授業では「国際理解」という視点で、外国語に楽しく触れるということが重視されていました。
また授業の中身は学校によってばらつきがあり、英語学習を充実させているところもあれば、ほとんど行われていない学校もありました。
社会のグローバル化の進展を受け、学校での英語教育の必要性も高まってきました。
そこで、2011年度から小学校5・6年生で「外国語活動」として、週に1回の英語の授業がスタートしました。
1-2.中学校からの英語の授業へスムーズに移行できるようになった
2011年度から導入された小学校の英語の授業では、子どもたちに身近な内容を扱い、聞いたり話したりすることが授業の中心におかれました。
しかしこの中で以下のような課題が生じました。
・小学校では英語で文字を書く経験をしないため、中学校の英語学習の中で小学校の内容を十分に活用できていない。
・英語を書く経験がないので、発音したことと、文字や文章の関係を理解していない。
・中学生になって急に英語で書くことが求められ、苦手意識をもつ生徒が出てしまう。
このような課題を踏まえて2020年から小学校3・4年生では「外国語活動」、小学校5・6年生では「外国語科」として、4年間の英語学習を小学校で行うことになりました。
小学校3・4年生では「聞くこと」「話すこと」を中心に英語に慣れ、5・6年生では「読むこと」「書くこと」も加えて、中学校での学習にスムーズにつなげられるようになりました。
2.小学校での英語学習がその先の英語学習に影響
2020年度からは、小学校から高校まで一貫して英語教育が行われるようになります。
小学校での英語学習が増えることで、その先の中学校・高校の学習内容もより深いものになります。
小学校から高校・大学受験までのそれぞれの英語教育のポイントを見てみると、小学校で確実に学習内容を身に付けることの重要性が分かります。
2-1.小学校からの大学受験までの英語教育のポイントの変化
小学校から高校・大学受験までの英語教育のポイントは次のようになっています。
■小学校
・3・4年生で「話す」「聞く」活動を中心に外国語に慣れ親しむ。
・5・6年生で「読むこと」「書くこと」を加えて、中学校での学習へつなげる。
■中学校
・授業は先生の指示や生徒同士の会話も含めて英語で行うことが基本となる。
・生徒同士のやり取りを中心に授業を進める。
■高校
・授業は英語で行われる。
・「論理・表現」という科目が新設され、プレゼンテーションやディベート、ディスカッションなどを英語で行う。
・大学受験でリスニングの配点が高くなる。
・民間の英語試験を大学受験で活用する大学が増え、「書く」「話す」力も試される。
このように小学校での会話を重視した英語学習は、その後の中学校や高校での英語学習にも大きな影響を与えていきます。
これまでのペーパーテストを解く力に加えて、コミュニケーションの力や記述力も高める必要があります。
2-2.小学校での英語学習内容の深化とともに語彙数も増大
さらに英語教育の中で学習する語彙数の面を見ても、学習内容のレベルが高まっていることが分かります。
小学校では600~700の単語を習います。
それに伴い、中学校で学ぶ単語数はこれまでの1200語から1600~1800語に、
高校では1800語から1800~2500語へと増加します。
この積み重ねにより、これまでは高校卒業時に約3000語の習得を求められていましたが、今後は5000~6000語の単語習得を求められるようになります。
このように小学校での英語教育の必修化によって、中学校や高校・大学受験で求められる英語習得レベルがこれまで以上に高まっています。
そのため、小学校からの英語学習の積み重ねが、中学校や高校の英語学習をスムーズに進めることにつながっていきます。
3.小学校での実際の英語の授業はどうなる?
小学校ではどのような授業が行われるのでしょうか。学習内容や実際の授業の様子を見ていきましょう。
3-1.小学校3年生・4年生で学習する内容
3年生・4年生では、週に1回「外国語活動」という授業が行われます。
4技能の中でも特に「話す」「聞く」に要点がおかれた授業が展開されます。
具体的には次のような内容を行います。
・挨拶をする(Hello!/How are you?)
・好きなことを伝える(I like~/Do you like~?)
・近くにあるものを表す(This is~/What’s this?)
・持ち物を尋ねる(Do you have~?/Yes I do.)
ほかにも、時間や天気、曜日、色などについて学習します。
3-2.小学校5年生・6年生で学習する内容
5年生・6年生では週に2回「外国語」の授業が行われます。
3年生・4年生での学習に加えて「読む」「書く」活動も少しずつ取り入れられていきます。
具体的には次のような内容を扱います。
・アルファベットを書く(大文字・小文字)
・できることを伝える(I can~/Can you~?)
・お買い物をする(Would you like~?/How much~?)
・場所をたずねる、教える(Where is~?/Go straight.)
・したいことを尋ねる、伝える(What do you want~?/I want to be~)
文字で書くことに加え、内容も日常の会話で使えるフレーズが増え、コミュニケーションの幅が広がっていきます。
これらの内容を授業ではどのように学習するのでしょうか?
実際の授業の流れの一例を紹介します。
日常でよく使うフレーズをゲームやクイズなどの活動を通して楽しく発音し、慣れていくことが大切にされていきます。
また歌や、チャンツと呼ばれる短いフレーズをとおして英語独特の発音も楽しく身に付けられるようにしていきます。
4.英語の授業が始まる前に!低学年のうちに身に付けておくべきポイント
小学校3年生から英語学習がスムーズに始められるといいですよね。
低学年のうちに以下のようなことを身に付けておくと、3年生からの英語の授業も楽しく取り組めるでしょう。
4-1.コミュニケーションの能力を高める
これは英語に限らず、日本語での会話にも共通しているポイントです。
現在小学校から高校までどの教科においても、いわゆる“アクティブラーニング”といわれる「主体的・対話的で深い学び」を目指して授業が行われています。
上で述べたように、小学校での英語の授業はもちろん、中学校や高校の英語の授業でも会話や発表が授業の中心になっています。
日本語か英語かに関わらず言語の習得をする際には、たくさん声に出して発音することで、話すことはもちろん、読み書きの能力も高めることができます。
まずは日常の生活や学校で子ども自分の思ったことや考えたことを積極的に話せるようにしていきましょう。
4-2.英語の発音に耳を慣らす
英語の発音には日本語と異なる部分があります。
例えばネイティブスピーカーの「Check it out!」が「ちぇけら!」と聞こえてくるように、隣の音がつながって聞こえることがあります。
ほかにも「light」と「right」など、日本語の発音では区別されない音もあります。
そのような発音の違いをなんとなく聞き分けられるように、ネイティブスピーカーの英語の発音や音楽などで聴く習慣があるとよいでしょう。
4-3.何度も繰り返し聞いて自然と口から出るようにする
みなさんは何度も流れてくるテレビCMを自然と口ずさんでいたり、身近な人の口癖がうつってしまったりした経験はないでしょうか?
たくさんの英単語を知ることも大事ですが、何度も同じフレーズを聴くことで、自然とそのフレーズを口ずさむことができるようになります。
日常の中で何度も同じフレーズを繰り返し聞くことができる環境を作ることで、子どもも自然とそのフレーズを発音できるようになり、英語の発音が身につくと同時に、英語を話すことに抵抗感がなくなっていきます。
4-4.英語を話すことが楽しいと感じられるようにする
英語学習の方法はたくさんあります。
書店に行けばたくさんの参考書や勉強法の書籍が並び、英会話教室や英語学習教材も調べると沢山みつかりますよね。
しかし一番大切にしたいのは「子どもが楽しんで取り組めるか」です。
どんなに保護者の方が英語学習を子どもにやらせようと意気込んでも、子ども自身が嫌々英語学習に取り組むことは、その先の学校での英語学習にも抵抗感を生んでしまいます。
「好きこそものの上手なれ」と言いますが、子どもは特に好奇心が強く、自分の好きなことややってみたいと思うことは、大人には考えられないほどの集中力を発揮して身につけていきます。
英語の勉強のいちばんのポイントはこの「英語を話すことが楽しい!」「もっと英語を使いたい!」と子どもに感じさせることです。
5.低学年だから身につく!お家でできる英語学習方法
これらのポイントをふまえて、以下のような勉強法を家庭で実践してみるといいでしょう。
低学年の子どもは「やってみたい!」と思ったことへの挑戦意欲が特に強く、様々なことに楽しんで取り組むことができます。
この時期に「自分にも英語が話せる!」「英語を口ずさむことが楽しい!」という感覚が身につくように、生活の一部に英語を取り入れてみましょう。
5-1.日常のコミュニケーションに英語を取り入れる
朝起きたら「Good morning!」と挨拶をする、「かっこいいね!So cool!」と日本語のあとに英語を使うなど、日頃よく使う言葉に英語を取り入れてみましょう。
保護者の方が使っていると、子どもも自然と英語を口にするようになります。
「Dinner timeだよ!」「今日のご飯はFish!」など日本語と織り交ぜても大丈夫です。
日常にあるものや動作と英語の音が自然とつながっていくことが大切です。
5-2.英語の歌を流す
朝の支度時間、歯磨きの時間、片付けの時間など、決まった時間に英語の曲を流してみましょう。
ポイントは同じ時間に同じ曲を流すことです。
「この曲が流れたら〇〇をする」と決めることで動作と曲が一緒になって子どもの体に染みついていきます。
毎日同じ曲を聴くことで、次第に口ずさむようにもなってきます。
ここでは英語の音に子どもの耳をなじませることが大切です。
子どもが曲に興味を示して「どんな内容の歌なの?」と聞いてきたら一緒に確認してもいいでしょう。
曲はCDを使ってもよいですし、YouTubeにたくさん投稿されている子ども向けの歌を使っても良いでしょう。
5-3.アニメやゲーム・英語学習アプリなどで英語を使う
子どもが好きなアニメを英語版で観るのもよいでしょう。日本語を使わなくても、映像があることで動作と英語が一体となって入ってきます。
また、英語が身につくおもちゃやアプリもたくさんあります。
子どもが楽しくあそべるものの中で英語を自然と聞くことができると、より積極的に「英語を使いたい!」と思うようになるでしょう。
5-4.外国人と触れ合う
これはなかなかすぐできることではありませんが、可能であれば積極的に海外の方との繋がってみましょう。
NPO法人などが地域で国際交流イベントをおこなっていることもあります。
実際海外の人と触れ合うことで「もっと英語を使えるようになりたい!」と思うきっかけになります。
会話は「この人のことをもっと知りたい!」「自分のことを知ってほしい!」という思いから始まります。
英語においても、子どもがそのような思いをもつことができるといいですね。