子どもの落ち着きがない原因と親の関わり方を徹底解説!
この記事を書いた人
かわもと
- 公認心理師
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
中学校教諭、高等学校教諭、公認心理師の資格を所持しています。
大学卒業後、療育施設にて勤務していました。
現在は、0歳の子どもを育てながら、子育てに役立つ記事を執筆しています。
得意なことは、絵本の読み聞かせ、歌遊びです。
「うちの子はどうしてこんなに落ち着きがないの?」「外出先で走り回って、周りの人に迷惑をかけてしまう」
子どもの落ち着きがない行動に悩んでいませんか。
この記事では、筆者が児童支援員として勤務していた療育施設での経験をもとに、「落ち着きがない子ども」の原因や、大人が取るべき対応方法をご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。
目次
1.落ち着きがない子どもによく見られる行動
落ち着きがない子どもには、どのような行動が見られるのでしょうか。
ここでは、筆者が療育施設で勤務していた頃に、親御さんからよく耳にした「落ち着きがない子どもの気になる行動」をまとめました。
①走り(歩き)回る
- 外で急に走り出して、人や自転車にぶつかる
- すぐ迷子になる
②大声をあげる
- バスや電車の中で大声を上げてしまう
③椅子に座っていられない
- 病院の待合室でじっとできない
- 勉強など、一定時間、静かに座っていることが難しい
- 座ることはできても姿勢を崩す、椅子に立つ
移動中や病院など公共の場所で、お子さんが大声で叫んだり、走り回ったりすると、周囲の視線が気になりますよね。
次の段落では、落ち着きがない子どもの原因について説明します。
2.落ち着きがない子どもの原因
子どもの落ち着きがない原因はさまざまです。ここでは4つのポイントに分けて解説します。
2-1.感情や衝動を抑えられない
3歳頃までの子どもは、自分の感情や衝動をうまくコントロールできません。新しいことが好きで、次から次へと刺激を求める、好奇心旺盛な子どもは、落ち着きがなく見えることもあるでしょう。
しかし成長とともに、「善悪の判断」ができるようになると、周りの状況に応じて、自分の衝動を抑えられるようになってきます。
また、記憶力や言語能力が発達することで、自分の感情を制御する力が育まれていきます。
思い通りにならない状況に遭遇した場合でも、「楽しいことを想像する」「気になったことを親に話す」などの振る舞いができるようになっていきます。子どもの成長を気長に待つことも大切ですね。
2-2.大人の関心を引きたい
大人の関心を引くために、わざと落ち着きがない行動に出る子どももいます。
特に幼児期は、ママやパパに注目されることが大好きです。大人の困った顔や、驚いた顔を見て、楽しい気持ちになるのでしょう。
そのほか、親御さんに叱られた後や、弟や妹が生まれたことをきっかけに、親の愛情を求め、関心を引こうとする(=落ち着きのない行動が増える)場合もあります。
2-3.体の感覚が未発達
体には、「前庭覚(ぜんていかく)」と「深部感覚」という2つの感覚があり、これらは、子どもの行動に重要な影響を与えています。
前庭覚
前庭覚は、内耳にある、体のバランスを取るために必要な器官です。お子さんは、目をつぶったまま片足立ちで、しばらくの間姿勢を保つことはできますか。
片足立ちをしたとき、前庭覚を感じると、自然と姿勢を保つために無意識に筋肉に力が入ります。前庭覚がうまく働かないと、姿勢が崩れやすくなったり、じっとしていられなかったりします。
また、前庭覚が感じにくい子どもは、体を動かして揺れを楽しんでいることがあります。激しい遊びや刺激を好むことがあるため、落ち着きがないように見えてしまうこともあるでしょう。
深部感覚
深部感覚は、自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚のことです。運動感覚や位置感覚、振動感覚などの種類があり、筋肉や腱、関節などの感覚受容器で感知することができます。
深部感覚は、力を加減する、運動をコントロールする、重力に抗して姿勢を保つなどの働きがあります。
例えば、牛乳をコップに注ぐとき、わたしたちは牛乳パックの重さを手を通して感知し、指先や腕の力を調整することで牛乳をコップに注ぐことができます。
深部感覚が未発達な子どもは、物の重さを感じ取ったり、力加減を調整したりするのが苦手です。そのため、物を乱暴に扱ったり、ドアを勢いよく閉めたりなどの「困った行動」に繋がりやすいと言えます。
2-4.子どもを取り巻く「環境」の問題
子どもの落ち着きのなさは、環境が影響している場合もあります。以下、具体例を5つ挙げてみました。
①未知なこと
初めて行く公園や慣れない店、初対面の人がいる場所など、見慣れない景色や人を怖いと感じる。
②曖昧な状況
何のために来たのか分からない場所や、何をしたらいいのか分からない状況など。手持無沙汰になり、刺激を求めるために落ち着きのない行動に出る。
③刺激が多い
騒がしい空間、人混みが多い場所、物が多い部屋など。刺激の強い環境にいると、興奮や不安、ストレスから集中力が途切れやすくなる。
④体に合わない物を使っている
椅子や机が子どもの身長に合っていない。文房具や洋服の素材が合わない。
⑤急激な環境の変化によるストレス
弟や妹が誕生した、入園・入学、引っ越しなどの環境の変化。
子どもの落ち着きのなさに悩んだ時は、子どもだけに目を向けず、「環境が子どもに合っていないこと」も疑い、改善してみると良いでしょう。
3.落ち着きがない子どもへの親の関わり
落ち着きがない子どもへの関わりや、ご家庭でできる対策を3つご紹介します。
3-1.子どもを観察する
「落ち着きがないのはどんな時か?」「静かに集中しているのはどんな時か?」まずは子どもの様子をしっかりと観察してみましょう。
例えば、
- ゲームなど、何かに熱中している時は落ち着いているが、手持ち無沙汰な時は落ち着きがない。
- 物が少ない空間にいるときは集中できるが、物が多い空間では気が散ってしまう。
などの場合は、「環境」が原因であると考えられます。
- 姿勢が崩れやすい、体を揺らし、落ち着きがない。
- 年齢の割に少し不器用なところがある。
などの場合は、「身体的な問題」かもしれません。
子どもを冷静に観察し、子どもの性格や特性を深く知ることで、日常で困った出来事に遭遇しても、余裕を持って対策を立てやすくなります。
3-2.事前に予告し、準備をする
初めての場所や曖昧な状況が苦手な子どもには、「どこに何の目的でどれくらい外出するか」「どんなふうに過ごすか」「守ってほしいルールやお約束」などを出かける前に伝えておきましょう。
子どもと一緒に「やることリスト」を作ってもいいですね。目的地の画像をスマホで見せたり、お約束をメモするなど、視覚化することも有効です。
電車やバスに乗るのであれば、落ち着けるグッズを持たせます。
ゲーム、本、なぞなぞ、スケッチブックなど、子どもに選ばせるのがポイントです。その際も、「ゲームは消音にする」「到着したらやめる」など、ルールも事前に伝えておきます。
また外出する場合、一番大切なのは子どもの安全です。騒がしい空間や、車などが多い危険な道をあらかじめチェックしておきます。万が一、迷子になってしまった場合も考え、子どもに派手な服を着せるなど見つけやすいように工夫してみましょう。
3-3.環境を整える
強い刺激が苦手な子どもには、なるべく刺激物を取り除いて、落ち着ける空間を作ることが大切です。
筆者が療育施設で指導していた際には、椅子に座った時に床に足がつくと、床を蹴って椅子と一緒に移動する遊びを好む子がいました。対策として、「足置き台を置く」という方法を取り入れ、お子さんが落ち着いて過ごせる環境を整えました。
また、椅子の足の間にゴムバンドをつけて足置きにするのもおすすめです。座っている時、ゴムバンドに足を乗せて力を加えることで、動きたい欲求も満たすことができます。椅子用のゴムバンドはネットでも購入できますよ。
そのほか、
- おもちゃなど気が散りやすいものは事前に隠し、必要なものだけ出す
- 机や椅子の高さが子どもの体に合っているか確認する
- 鉛筆は握りやすいようにグリップを付ける
- 服はチクチクしない、綿100%のものを選ぶ
などのポイントを確認して、お子さんがリラックスして過ごせる環境を整えてみてくださいね。
4.子どもが落ち着きのない行動をした時の対処法
実際に子どもが落ち着きのない行動をした場合、親や周りの大人はどのように対応したらいいでしょう?ここでは、対応方法を3つご紹介します。
4-1.ゲーム感覚でルールを守る
子どもの好奇心は満たしてあげたいですが、状況次第でマナーやルールは守ってほしいですよね。そんなときは、ゲーム感覚でルールを守るように提案してみましょう。
例えば、病院の待合室や電車の中など、静かに過ごしてほしい場面では、「小さな声でしりとりをする」「次の駅まで赤い屋根を見つける」などの遊びを親子で楽しみます。もしお子さんが少しの間でも静かに過ごすことができたらゲームクリアです。
お子さんが物をつかんだり、壊してしまう場合があるときは、「あそこまで手をつないでいこうね」などと声をかけましょう。
勉強など集中してほしい時は、タイマーを使って区切るのも効果的です。
子どもは「楽しいこと」が大好きです。落ち着きのない行動に困ったときこそ、お子さんに合った、遊びやゲームを上手に取り入れてみてください。
4-2.体を動かす
子どもがエネルギーを発散させたくて走り回っている場合、近所の公園などで満足するまで遊ばせるのもいいですね。
筆者が勤めていた療育施設でも、「子どもと公園で散歩などをして、十分体を動かしてから病院などへ向かう」という親御さんもいらっしゃいました。
体を揺らすのが好きな子は、公園のブランコや滑り台などの前庭覚や深部感覚を得られる遊具で遊ばせるのがおすすめです。公園や遊具はなくても散歩をする・走る・ジャンプをするだけでもエネルギーを発散させることはできます。
親子で体を使った遊びをたくさん取り入れてみましょう。「だるまさんが転んだ」は、動く・止まるの2つの動作のメリハリをつけた遊びなので、身体のコントロールを身に付けることができます。
体をたくさん動かすのが難しい場合は、「手をグーパーする」「深呼吸する」などの方法でも、お子さんを落ち着かせる効果があります。
また、折り紙やお絵描き、勉強などじっと座るのが苦手な子どもの場合は、時折動く要素を取り入れるといいです。ペンやハサミを取ってきたり、描いた絵を大人に見せにいくなどの方法がおすすめです。
4-3.子どもの気持ちに寄り添った声かけをする
子どもが不安な気持ちになった際には、気持ちに寄り添った声かけをしましょう。
子どもはまだ言葉が発達途中にあるため、自分の不安を表現することが難しいです。自分の気持ちを表現することが難しい時は、気持ちを代弁しましょう。「○○と思っているんだね」というだけでも安心できます。
子どもが曖昧な状況に対して不安になったときは、どうしてほしいかを随時確認しましょう。事前に作った「やることリスト(※3-2を参照)」を見せたり、「今はなにするのかな?次はなにするのかな?」と優しく声をかけたりことで、子どもは状況が明確になって落ち着くことができます。
また、子どもが落ち着いているとき、落ち着いた後はしっかりほめることも大切です。
5.子どもの成長を温かく見守ろう
この記事では、子どもの落ち着きがない原因や、親の対応方法をまとめました。
普段から子どもの様子をよく観察し、「出かけるときは事前に予告する」「環境を整える」など、子どもに合った対策を考えていきましょう。
上手くいかなかった日は、「まぁそういう日もあるよね。また次の対策を考えよう!」と割り切ることも大切です。
お子さんをたくさん褒めながら、成長を気長に温かく見守ってあげましょう。外出先でも、ご家庭でも、親子で楽しい時間を過ごせるといいですね。
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