子どもの自立心や自己肯定感を育む「上手な甘えさせ方」は?わがままとの違いも解説
この記事を書いた人
多村美穂
- 保育士
元保育士のWEBライターです。
保育園勤務時は、主に0~2歳児を担当していました。
現在は、大きくなってきた子どもを見守りながら、育児・教育を中心に様々なジャンルの記事を執筆しています。
保育園にて勤務した経験や、自らの子育てを通して得た知識を、分かりやすくお伝えしていきたいです!
3~4歳頃になると、食事や着替えなどの基本的な生活習慣が一人でできるようになり、他者とコミュニケーションもとれるようになってきます。
そんな3~4歳頃の子どもが甘えてくると、「わがままじゃないのかな」「甘やかしすぎかな」などと迷ってしまい、どう対応していいのか分からず困ってしまうこともあるでしょう。
しっかり甘えた経験のある子どもは、自己肯定感を身に付け自立できるようになります。
そこで今回は、「甘え」と「わがまま」の違いや、上手な甘えさせ方を解説していきます。
「甘え」に関する知識を身につけることで、子どもにしっかり向き合う自信がつきますよ。
子どもの「甘え」について悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.「甘え」と「わがまま」の違い
■甘え
教育研究者の汐見稔幸先生は、「甘え」とは心を安定させるために起こす自然な行動であると指摘しています。
例えば、怖いことがあった時に「抱っこして」と言ってきたり、「お話聞いて」とねだってきたりする行為が、心を安定させるための「甘え」です。
また、いつもは一人でできる着替えや片付けを「ママ手伝って!」と言ってきたりするのは、心の成長や自立に必要な「甘え」と考えられます。
しっかり甘えて育った子どもは、親から受け止めてもらえる存在であるという安心感や自信が身に付き、自立心や探求心が育まれていきます。
■わがまま
「わがまま」とは相手を思い通りに動かしたいという、身勝手な欲求のことです。
例えば、「おもちゃ買って」「おなかが空いたからご飯の前だけどお菓子が食べたい」などという物質的な欲求は「わがまま」と言えます。
また、「ものを投げる」「食卓の上にのぼる」などの危険な行為や、「公園で遊具の順番を守らない」「公共の乗り物の中で騒ぐ」など人に迷惑をかける行為も「わがまま」と言えるでしょう。
「わがまま」に応え続けると、要求がエスカレートし、子どもの成長を妨げる恐れがあります。
2.3つのNGな甘えさせ方
自立心を育てるために子どもを甘えさせようと思っても、逆効果となってしまうNGな甘えさせ方も存在するので注意が必要です。
ここでは、NGな甘えさせ方を3つ紹介します。
2-1.子どもが欲しがる物を無制限に与える
NGな甘えさせ方の1つ目は、お菓子やおもちゃなど子どもが欲しがる物を無制限に与えることです。
このような物質的な欲求は「わがまま」にあたるため、受け入れて甘やかし続けると、我慢する力が身に付かなくなってしまうからです。
子どもが「わがまま」を言ってきた際は、きちんとダメであることや、その理由を伝えてあげてください。
なお、「かまってほしい」「甘えたい」という気持ちを表現するために、子どもが「わがまま」を言う場合もあるでしょう。
その場合は、子どもの話をしっかり聞いてあげたり、スキンシップをとったりすることで解消できますよ。
2-2.子どもに干渉しすぎる
子どもが自分でできることをさせず、大人が先回りしてやってしまうのも、NGな甘えさせ方です。
子どもに干渉しすぎることで、子どもが自分を出せず無気力になったり、親子関係が悪化する恐れがあるからです。
児童精神科医の佐々木正美先生も、過干渉は自我の目を摘み取り、自主性、主体性を損なう恐れがあると指摘しています。
着替えや片付けなど、親が自分でやった方が早く片付くような場合は、つい手を出したくなってしまうこともあるでしょう。
しかしそれは「甘えさせ」ているのではなく、「過干渉」なのだと思い出し、なるべく子どもを見守ってあげてください。
2-3.親の都合で甘やかす
親の都合で子どもを甘えさせるのも、NGな甘えさせ方です。
そもそも、「甘えさせる」は子どもが主体となり、子どもの気持ちやペースが尊重されるものです。
一方、親が主体となって子どもの要望を何でも聞いてあげたり、先回りして子どもの身の回りのことをしてあげる場合は「甘えさせ」ではなく「甘やかし」となります。
「甘やかし」は、わがままや過干渉につながり、子どもの成長を妨げる恐れがあります。
甘えの主体が親なのか子どもなのかを考え、「甘やかし」なのか「甘えさせ」なのかを判断するといいでしょう。
3.上手な甘えさせ方4選
ここからは、上手な甘えさせ方を4つ紹介します。
3-1.甘えてきた時は存分に応える
子どもが甘えてきた時には、十分に応えてあげましょう。
親をはじめ、周囲の大人たちに甘えを受け入れてもらうことで、子どもは自分に自信を持ち、自己肯定感や自立心を育てていくからです。
甘えに応えることの具体例は、次の通りです。
<具体例>
●かまってほしがったり、スキンシップを求めてきたりしたら、目を見て話を聞きながらスキンシップを取る
●身支度など子どもが自分でできることでも、急に「やって」と言われたら、「自分でできるでしょ」と突き放さずに子どもに付き合う
●子どもが何かに挑戦している時に、助言を求めてきたら一緒に考える
できる範囲でかまいません。思う存分子どもを甘えさせてあげてくださいね。
3-2.頭ごなしに否定せず、まずは話を聞く
子どもが何かを求めてきた際、それが不可能なことであったとしても、頭ごなしに否定しないで話を聞いてあげるのも上手な甘えさせ方です。
子どもは親に話を聞いてもらうことで、「受け入れてもらえている」と安心でき、甘えたい気持ちが満たされるからです。
また、3~4歳頃になると物事の良し悪しが分かるようになるので、ダメなことはダメと教えれば理解できるようになってきます。
しっかりと子どもの目を見て話を聞いた上で、不可能な理由を説明したり、少し譲歩して約束したりするといいでしょう。
3-3.子どもの好きなメニューを作る
甘えさせるのが苦手な人におすすめなのが、子どもの好きなメニューを作るという甘えさせ方です。
日常生活を送る上で欠かせない食事という場面で、自分の気持ちが受け入れてもらえたという事実は、子どもの自信につながるでしょう。
子どもの好きなメニューと言っても、毎日ごちそうを作る必要はありません。
例えば、
「牛乳は冷たいのと温かいの、どっちがいい?」
「ゆで卵と目玉焼き、どっちが食べたい?」
など、ちょっとした子どもの要望を聞くだけで十分です。
前述の通り、どう甘えさせたらいいの分からない親はもちろん、甘えるのが苦手な子どもにもおすすめの方法ですよ。
3-4.上の子には言葉やスキンシップを多めにかける
子どもが3~4歳になるころに、下の子が生まれるというご家庭も多いでしょう。
その場合、上の子には多めに言葉やスキンシップをかけてあげてください。
下の子が生まれることで、どうしても上の子へかける時間が減ってしまいます。
すると、上の子は「無条件で受け入れてもらえた」という気持ちが揺らいでしまう恐れがあるからです。
自信が揺らいだ子どもは親の関心をひくために、わざとわがままを言ったり、反対に過度に良い子になろうと頑張りすぎてしまったりします。
子どもが困らせることをしてきた時や、頑張りすぎていると感じた時は、「甘えが足りないんだな」と、積極的に甘えさせてあげてくださいね。
4.「甘え」に関するQ&A
ここからは、「甘え」に関するさまざまな疑問に答えていきます。
4-1.子どもが甘えてこない時はどうする?
子どもが甘えてこない時は、手がかからないからと放置するのではなく、少しずつ関わりを増やしていくのがおすすめです。
甘え上手な子どもがいるように、甘えるのが苦手な子どももいます。
しかし、表に出せないだけで、「親に甘えたくない」と思っている子どもは少ないでしょう。
甘え下手な子どもに突然スキンシップをとっても、びっくりさせてしまいます。
「危ないから手をつなごうね」「○○ちゃんの好きなおままごとを一緒にしよう」など、少しずつ関わりやスキンシップを増やし、甘えさせる機会を作ってあげてくださいね。
4-2.何歳まで甘えさせればいい?
子どもの「甘えたい」という気持ちの個人差は大きいものです。
年齢にこだわらず、子どもが甘えたい間は十分に甘えさせてあげてください。
子どもの心が自立していくのと比例して、自然に親離れをし、甘えてこなくなってきますよ。
4-3.甘えさせる余裕がない時はどう対応すべき?
育児中は時間に追われ、甘えさせる余裕がない時もあるでしょう。
そのような場合は一度子どもの目を見て話を聞いた後、親の状況を正直に子どもに話し、「後でね」と伝えるのがおすすめです。
「抱っこしてほしいんだね。でも今お料理で火を使ってるから、作り終わるまで待ってね」
「お話聞いてほしいんだね。でも今下の子が泣いててよく聞こえないから、寝る前にゆっくり聞かせてくれる?」
など、子どもが「気持ちを受け止めてもらえた」と感じる言葉がけをすることによって、子どもは安心できるでしょう。
また、具体的にいつまで待てばいいのか分かる言葉を伝えることで、「いつまで待てばいいのか分からない」という不安を取り除いてあげられますよ。
4-4.祖父母の甘やかしはどう対応すべき?
祖父母の家に遊びに行った際に、家では禁止している寝る前のおやつを祖父母に与えられてしまったなど、祖父母の甘やかしに困ってしまった人もいるのではないでしょうか。
しかし、祖父母に家庭の教育方針とは違うことをされてしまったとしても、あまり神経質にならず、大目に見ることも必要です。
なぜなら、子どもにとって家とは異なる所にも安心できる居場所があるというのは、好ましいことであるからです。
ただ、アレルギーがあるなど、祖父母と子育ての方針を共有しなければならないこともあるでしょう。
その場合は、普段から子育ての方針についてあらかじめ話しておくと良いですよ。
その際は、協力してくれるようにお願いする形で伝えるのがおすすめです。
5.子どもを上手に甘えさせ、自立心や自己肯定感を育てよう
「甘えさせ」「甘やかし」「わがまま」…これらには明確な境界線がなく、子どもの対応に迷ってしまうこともあるでしょう。
しかし、「愛情を求めているのか、物質的な欲求なのか」「親が主体なのか、子どもが主体なのか」という基準を手掛かりにしてある程度判別できます。
子どもが甘えたがっている時は、存分にスキンシップをとりながら甘えさせてあげてくださいね。
たくさん甘えて育った子どもは、親の愛情の中で自立心や自己肯定感を手に入れ、すこやかに育っていきますよ。
参考文献
・『はじめて出会う育児の百科』監・文/汐見稔幸 監・文/榊原洋一 監・文/中川信子
・『子どもへのまなざし』佐々木 正美 著
・『子どもの心の育てかた』佐々木 正美 著
・『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』加藤 紀子 著
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