ふわふわ言葉とちくちく言葉とは?言葉遣いで子どもの世界が広がる!
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「子どもが相手を傷つけるような言葉を使うため改善させたい」
「思いやりの心を育てたいけど、どのように教えればいいのかわからない」
そんなことを感じたことはありませんか?
小学校低学年ぐらいの子ども達は想像力が未熟なため、相手を不快にさせるような言葉を使ってしまう場合があります。
言葉の使い方のような抽象的な学習は集団生活のなかでなんとなく学んでいきますが、それでは学びが不十分になる子どももいます。
言葉の正しい使い方、悪い使い方を直接的に教えていくことで理解が深まり、子ども達の人生の質が向上していくのです。
そこで今回は、学校の道徳の授業でも取り入れられている「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」について解説します。
また、言葉の使い方を学ぶことでどのようなメリットがあるのか、家庭でどのように子ども達に伝えていけばよいのかについても紹介していきますので、是非参考にしてください。
目次
1.ふわふわ言葉とちくちく言葉を理解しよう
ふわふわ言葉とちくちく言葉について、子どもが学校で習っていたという方や言葉だけなんとなく聞いたことがあるといった方も多いのではないでしょうか。
まずはふわふわ言葉とちくちく言葉がどのような概念なのかについて簡単に紹介していきます。
1-1.ふわふわ言葉・ちくちく言葉とは?
「ふわふわ言葉」とは、相手の心を温かく包み、優しい気持ちにさせる言葉を指します。
挨拶をする、お礼をする、感謝を伝えるような言葉はふわふわ言葉に分類されます。
一方、「ちくちく言葉」は、相手の心を傷つけたり、嫌な気持ちにさせたりする言葉です。相手をけなしたり、馬鹿にしたりする言葉が分類されます。
普段私たちは何気なく言葉を使っています。親御さん自身やお子さんはふわふわ言葉をたくさん使っていますか?ちくちく言葉を言っていませんか?日々の生活を振り返り、改めて考えてみる機会を作ってみるのもいいでしょう。
1-2.ふわふわ言葉・ちくちく言葉の具体例
「ふわふわ言葉は相手の心を優しい気持ちにさせる言葉」、「ちくちく言葉は相手の心を嫌な気持ちにさせる言葉」と子どもに伝えてもなかなか分かってもらえないでしょう。
そこでふわふわ言葉とちくちく言葉の具体例を以下に紹介します。
ある程度の法則性が分かれば子ども自身で「この言葉はふわふわ言葉だな」「こういう言い方は相手を嫌な気持ちにするな」ということが自然にわかってきますので、お子さんに伝える際の参考にしてください。
▶ ふわふわ言葉
- ありがとう
- すごいね!
- 一緒にやろう
- 大丈夫だよ
- 嬉しい!
▶ ちくちく言葉
- バカだな
- 何でできないの?
- うるさいよ
- 嫌い
- どっか行って
2.ふわふわ・ちくちく言葉の効果
ふわふわ言葉とちくちく言葉について確認できましたね。
それでは次に、ふわふわ言葉を増やし、ちくちく言葉を減らしていくことでどのような効果があるのかについて、実際の研究論文を参考にしながら紹介していきます。
2-1.子どもの自尊心に関わる言葉の研究を紹介
新潟県の小学2年生25名を対象に、「自分を好きになること」や「自分に自信を持つこと」を目的とした研究が実施されました。
この研究では、学校生活に「自分を振り返る活動」や「自分の良さに気付く活動」を取り入れる試みを行いました。
具体的には、「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」に関する学習を行い、児童に「自分のことが好きですか」「得意なことはありますか」などの項目を含むアンケートに回答してもらいました。
その後、帰りの会において、互いの良い点を伝え合う時間を毎日設けました。
それから数カ月後に、同じ内容のアンケートを再度実施し、結果を比較しました。
2-2.どのような効果があった?
結果は、取り組む前のアンケートと比較して「自分のことが好き」と答えた児童の割合が16%増加し、「自分の好きなところを見つけられる」と答えた割合も34%増加しました。
また、「自分の好きなところ」について、当初は「髪型」や「靴」などの外見的な特徴を挙げる児童が多くいました。
一方、取り組みを実施した後の回答では「やさしいところ」や「あきらめないところ」といった内面的な特徴を挙げる児童が増加しました。
さらに、ふわふわ言葉についての理解が深まったことで、児童は相手を不快にさせるちくちく言葉の使用を避けるようになり、対人関係がより良好になっただけでなく、自分自身に対する肯定感も高まったことが示されました。
このように、児童が自分に自信を持ち、自己肯定感を育むプロセスが、この研究を通じて明らかになりました。
3.言葉の使い方を自宅で教えるには?│ふわふわ・ちくちく言葉の教え方
ふわふわ言葉の有効性について紹介しましたが、実際に自宅でふわふわ言葉を取り入れ、子どもが自発的にふわふわ言葉を使えるようにするにはどうすればいいのでしょうか。
次に家庭でも取り入れられるポイントについて解説していきます。
3-1.自分たちの言葉遣いを見直す
はじめに取り組んでもらいたいことは「自分たちの言葉遣いを見直す」ことです。
夫婦での会話や子どもへの声掛けで「早くしてよ」「もうやらなくていいから」「余計なことしないで」といったちくちく言葉を使っていませんか?
時間や気持ちに余裕がないと、ついついきつい言い方になってしまいますよね。
ちくちく言葉が多い家庭では必然的に子どももちくちく言葉を使うようになってしまいます。そのため、まずは大人がふわふわ言葉を意識的に使っていきましょう。
例えば朝の忙しい時間にお子さんがゆっくり行動していたらイライラしてしまいますよね。
「早くして」などと言ってしまいがちですが、それで早く行動してくれるわけもなく、「また子どもに嫌な言い方しちゃった」と落ち込んでしまうのではないでしょうか。
そこで考え方を変えてふわふわ言葉を使っていきます。
「そこまでできたんだ!次は○○だね」とまずは子どものできてる部分を認め、次の行動を促すことで、親と子の双方が気持ちよく過ごすことができます。
1度だけの声掛けでは上手くいかない場合もありますので、継続していけるといいですね。
3-2.ふわふわ言葉を使ったら褒めて強化する
大人がふわふわ言葉を使うようになると子どもも真似をしてふわふわ言葉を使うようになります。
そのタイミングで褒めて、「ふわふわ言葉を使うとママとパパが喜ぶ」「自分のことを褒めて認めてくれる」と感じてもらい、ふわふわ言葉を日常的に使えるようにしていきましょう。
褒めるときにもポイントがあり、オーバーリアクションで大げさに褒められて喜ぶ子どももいれば、さらっと一言二言で褒められたほうが喜ぶ子どももいます。
お子さんの性格に合わせて褒め方を変えていきましょう。
3-3.ちくちく言葉には反応しない
子どもがイライラしているときには、ちくちく言葉を使ってくるかもしれません。
その際に「どうしてそんな言い方をするの!」「そんな言葉遣いはやめなさい!」と叱ったところで効果は薄いでしょう。ちくちく言葉に対しては過剰に反応しないようにしましょう。
まずは、叱ったり無視をするのではなく「そうなんだ」ぐらいで流してしまいましょう。
時間をおいて子どもが落ち着いたタイミングで何を言いたかったのか、どうしたかったのかについて話し合えると「嫌な言い方をしないで他の言い方で伝える」方法を学ぶことができ、ちくちく言葉を減らしていくことができます。
4.ふわふわ・ちくちく言葉を学ぶ!言葉遣いの絵本を紹介
自宅でふわふわ言葉とちくちく言葉の学習を進める方法の1つに「絵本を活用する」というものもあります。
ふわふわ言葉とちくちく言葉について紹介している絵本はいくつかありますが、今回は2つ紹介していきます。
4-1.ちくちくとふわふわ
1冊目はCHICORA BOOKSから出版されている「ちくちくとふわふわ」という本です。
印象に残るイラストで視覚的にわかりやすく、ふわふわ言葉とちくちく言葉をそれぞれキャラクター化しているため、より感覚的にふわふわ言葉とちくちく言葉に触れることができます。
4-2.ふわふわとちくちく:ことばえらびえほん
2冊目は日本図書センターから出版されている「ふわふわとちくちく:ことばえらびえほん」です。
先ほど紹介した「ちくちくとふわふわ」よりも文章量が多いため、「どんな言葉がふわふわ言葉/ちくちく言葉なのか」という学習に向いています。
また、子どもが興味を持ちやすい工夫がされているため、抵抗感が少なく、読みやすい一冊となっています。
5.ふわふわ言葉は人間関係の広がり、自尊心の向上に役立つ
ふわふわ言葉を日常生活に取り入れることで、人間関係が円滑になるだけではなく、自信がついたり、自分自身のことをより肯定的に受け入れたりすることに繋がっていきます。
さらに親子関係においても互いを尊重し合えるようになることで、育児上での上手くいかない感、子どもに強い口調で話してしまった罪悪感の解消にもつながることが期待されます。
今回の内容が親子で言葉遣いを見直すきっかけとなれば幸いです。
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主な参考文献
・猪田直美,自尊感情を育む学級活動の工夫:あたたかい言葉がけによる相互評価の継続を通して,教育実践研究 巻21,p.245-250,2011
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