小学校は普通級と支援級どっちにする?グレーゾーンの学級選びについて公認心理師が解説!
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「グレーゾーンの我が子は普通級、通級利用、支援学級のどれが合うのかわからない」
「学級選びの際の考え方がわからない」。
小学校入学を控えた保護者の方の中には、そんなお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
公認心理師である筆者も、このような悩みを持った保護者の方に会う場面が多くあります。そんなときは、それぞれのご家庭やお子さんの特性に合った学級を毎年、保護者の方と話し合いながら決めるお手伝いをしています。
この記事では、普通級、通級、支援級のそれぞれの特徴についてご紹介します。また、グレーゾーンでそれぞれの学級を利用しているケース、学級選びのポイントについても解説しています。
小学校は、子どもにとって初めての大規模な集団生活の場です。お子さんに合った学級を選択し、よりよい小学校生活をスタートできる環境を整えてあげてください。
目次
1.普通級と通級、支援級の特徴とは?
写真はイメージです。(photoAC)
一般的に普通級、通級、支援級と呼ばれる学級は、正式名称をそれぞれ「通常学級」「通級指導教室」「特別支援学級」といいます。
それぞれに異なった特徴があるため、まずはそれぞれの学級がどのような役割を持っているかについて解説していきます。
1-1.普通級(通常学級)とは
普通級(通常学級)は基本的に特別な支援が必要ない、もしくは、少しのサポートがあれば問題なく学校生活を送ることのできる児童が在籍する学級で、標準人数は40名(1年生のみ35名)です。
普通級については、イメージしやすいかもしれませんね。普通級では、多様な人間関係の中で生活することで対人スキルを磨くことができます。
学習内容もカリキュラムに沿って進んでいくため、大きなトラブルがなければ、中学、高校とスムーズに進学することができます。
しかし、30数人に1人の先生が配置されるため個別のケアが難しく、学習の遅れや人間関係の問題を見逃されてしまうこともあります。
1-2.通級(通級指導教室)とは
通級(通級指導教室)は、通常学級に在籍している子どもが、特定の時間だけ別の教室で個別のサポートを受ける仕組みです。
例えば、算数の時間に教室を歩き回ってしまう子どもの場合は、算数の時間だけ通級で少人数で学習します。相手の気持ちを考えることが苦手でトラブルが多い子どもは、道徳や総合の時間に社会スキルを学ぶことで、困り感の解消や苦手意識の改善を図ります。
個別のサポートを受けることができ、「普通級ではトラブルがあるものの、支援級に行くほど支援は必要ない」など、学級選択の判断が難しい子どもにとっては、有効な選択肢です。
しかし、通級はすべての小学校にあるわけではなく、近隣の小学校に移動しなければならないケースもあるため、通う予定の小学校に通級があるのかが選択する際の重要なポイントとなります。
1-3.支援級(特別支援学級)とは
支援級(特別支援学級)は、特別な支援を必要とする子どもが、集中的なサポートを受けながら学べる学級です。
普通級と異なり、より個々に対応した指導が行われるため、発達障がいや知的障がいなど、様々な特性を持つ子どもに対して適切な環境が提供されます。
小人数での授業が行われることが一般的で、個々の子どものペースに合わせた学習が進められます。
様々な学年の子どもが一緒に授業を受けるため、教科書に沿った学習だけではなく、畑や公園での課外活動や、日常生活スキルやコミュニケーション能力向上のための授業も行われています。
支援級で過ごすことで、落ち着いた雰囲気の中で生活することができるでしょう。
また、教員や支援員の数も多いため、手厚い支援を受けることができます。
その一方で、普通級に戻りたいと希望が出た際に、基礎的学力の差が開いてしまっているケースが多いため、普通級に通い始めても不適応状態に陥ってしまうこともあります。
2.学級選びの具体的なケースを紹介
写真はイメージです。(photoAC)
普通級、通級、支援級の基礎的な部分について確認できました。それでは、実際にどのような考えで学級を決めていけばよいのでしょうか。
それぞれの学級について、グレーゾーンの子どもを持つ保護者がどのような考えで進路を決めていったのか、具体的な例を挙げながら解説していきます。
2-1.普通級(通常学級)を選択した例
グレーゾーンの中でも、必要な支援が少なく、「普通級でチャレンジしたい」という思いが保護者に強くあり、子ども自身にも「周りの子と同じ教室で過ごしたい」という要望がある場合には、普通級から小学校生活を始めるケースが多くあります。
支援が少なくて大丈夫そうとはいえ、担任の先生をはじめ、養護教諭(保健室の先生)、スクールカウンセラーには事情を話し、気にかけてもらったり、適度に声掛けをお願いするなど保護者の働きかけは不可欠です。
普通級では子どもの困り感が見逃されやすいため、周囲の大人が子どもの様子に注意を向けるように根回しをしておくのです。
「一度、普通級に入ったら、ずっと普通級で頑張らなくてはいけない」と誤解している保護者が少なくありません。
しかし、定期的に面談を行い、情報共有や支援体制の見直しを行い、必要であれば通級などの個別的なサポートを行える旨が説明されるでしょう。
2-2.通級(通級指導教室)を選択した例
日常生活では大きな問題がないものの、学習障がいなどで授業のスピードについていけない、特定の状況(わからないことがある、騒がしい、など)に置かれるとパニックになってしまうなど支援が必要な場合は、通級を選択するケースが多いです。
環境を整える(席を前の方にする、個別にプリントを配布する)ことで、普通級でも適応できる子どももいますが、環境を変えることが難しいケースや個別での関わりが必要な場合は、通級に通うことが勧められます。
通級でうまくいくやり方を模索したり、不足している内容を補うことで普通級でも適応できるように支援し、最終的には通級に行かなくてもいいように指導していきます。
また、通級と繋がっておくことで、子どもの相談相手や居場所として機能することも期待でき、進級時や中学進学時にも先生間での情報共有がスムーズになります。
普通級でうまくいっていない子どもの場合は、一度見学に行っておくといいでしょう。
2-3.支援級(特別支援学級)を選択した例
日常生活でも支援が必要な場合や、多くの場面で個別的なかかわりが必要な場合は、支援級を選択する方が多いです。
知的水準が平均と比べ低く、コミュニケーションはとれるものの、学習内容の獲得が難しい場合や普通級のスピードについていけない子どもの場合は、支援級で自分のペースで学びを進めた方が、のびのびと学校生活を楽しむことができるでしょう。
普通級で無理に頑張ってしまうと、不登校に陥る、いじめの対象になるといったトラブルが発生しやすくなります。
また、自治体にもよりますが、支援級からスタートし、進級するタイミングで普通級に編入するケースは少なくありません。
まずは、支援級で様子を見て、学校生活に慣れてきたタイミングで特定の教科を普通級で過ごしてみる。その上で問題がなければ普通級に切り替えて、そのまま卒業していった子どもを、筆者は何人も知っています。
もちろん、学習習熟度や人間関係など乗り越えなければいけない壁はありますが、子どもの成長に合わせて環境を変えられるため、学校の先生や支援級の先生、校長先生や教頭先生などの管理職の先生とよく相談してみるとよいでしょう。
3.普通級?通級?進路先を選択する際のポイント
写真はイメージです。(photoAC)
各学級は、学校や先生によって受けられる支援や教室の雰囲気は異なります。そこで、学級を選ぶ際に検討してほしい部分や見てもらいたいポイントについて解説していきます。
3-1.子どもの支援の必要度
重要なのは、「我が子は、どこまで支援が必要なのか」をしっかりと見極めることです。
日頃子どもの様子を見ている保育園や幼稚園の先生に、生活上の困り感について聞き取りを行い、文字の読み書きや指示の理解度を考慮に入れ、「何が苦手なのか」「どんなサポートがあれば学校生活を送れるのか」を明確にしましょう。
そうすることで、「普通級でやっていけそうか」「通級を利用した方がいいのか」「支援級でゆっくりとスタートするのが適しているのか」が見えてきます。
3-2.学校のサポート体制
担任の先生によってできること、学級の雰囲気などにはそれぞれ違いがあります。
子どもとの相性もありますので、どんな先生が担当しているのか、どんな考えをもって指導しているのかについて、事前に確認できるとよいでしょう。
また、「スクールカウンセラーと面談ができるのか」「通級が学校内にあるのか、なければ近所にあるのか」「普通級でも、加配の先生は配置してもらえるのか」についても確認しておきましょう。
特に、通級を利用するか・支援級を利用するか悩んでいる場合は、支援体制が充実しているなら通級のみの利用でも適応できる場合があるため、ぜひ確認しておきたい重要なポイントです。
3-3.将来に向けての支援の有無
福祉サービスを利用し始めるときや中学校に進学する際に、どのような支援を受けられるのかについても確認しておくとよいでしょう。
筆者が住む自治体では、基本的に普通級の児童が放課後等デイサービスを利用する際、担任の先生は引き渡しに来ません。
そのため、その日の学校の様子や最近の情報などは先生から得ることができず、保護者を通してのやり取りしかできないというのが現状です。
もちろん、自治体や先生によって異なるため一概にはいえませんが、外部の福祉サービスの職員とも情報交換をしてもらえるのか、必要に応じてケース会議などを開いてもらえるのかについて聞いておくと、デイサービスとの連携もしやすくなります。
また、中学校へ進学する際に引継ぎをしてもらえたり、個別に見学の機会などを設けたりしてもらえるのか、今までグレーゾーンの子はどんな進路選択を行ってきたのかについても情報を集めておけるといいですね。
数年後の話になりますので入学前に確認する必要はありませんが、グレーゾーンの子どもにとって中学進学は大きな壁になります。少しずつ知見を広めておけるとよいでしょう。
特別支援学校とは?
普通級、通級、支援級以外の選択肢として「特別支援学校」があります。
特別支援学校は先生の数が多いだけでなく、一人ひとりの先生が障がいについて専門的な知識と経験を持っているため、より手厚い支援を受けることができます。
ただし、グレーゾーンの子どもの場合は活動に物足りなさを感じてしまうケースもあります。
そのため、小学校は通級や支援級で過ごし、学習内容や人間関係が複雑化する中学や高校から特別支援学校に入学するケースが多くあります。
特別支援学校は、小学部や中学部の支援の質が高いことはもちろん、高等部卒業後の就職サポートが特に手厚いです。
就労に向けて少しずつ準備をしていくという観点からも、特別支援学校を視野に入れておいてもよいかもしれませんね。
4.慣れるまではサポートが充実している選択を
写真はイメージです。(photoAC)
普通級、通級、支援級についての概要と学級選びのケース、抑えるべきポイントについて解説してきましたが、筆者は、小学校に慣れるまでは手厚いサービスが受けられる環境を用意してあげることをお勧めしています。
小学校はそれまでの環境とは大きく異なり、グレーゾーンの子どもにとっては大きなストレスとなる場面がいくつもあります。もちろんそのストレスから学べることはありますが、学校に対するマイナスな印象を持ってしまったり、不登校になってしまったりしては意味がありません。
子どもの「できること・苦手なこと」と「学校の支援体制」を総合的に考えて、「我が子にとって何がよい環境なのか」を一番に考え、お子さんと相談しながら決めてあげてください。
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主な参考サイト
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