【3・4歳】応答的関わりとは?親子の会話の中で子どもの主体性・自己肯定感を高める!
この記事を書いた人
榊原なつき
- 心理カウンセラー
- 中学校教諭
- 小学校教諭
- 保育士
小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務
保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。
ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!
3・4歳ごろのお子さんは、言葉も増え、それと比例するようにコミュニケーションの機会も増えてきます。
その中で 「いっぱい話しかけてくるけれど、どのように対応したらいいのだろう」 「ただ聞き流すだけになっているけれど、それでいいのかな?」 と疑問を感じている親御さんもいるでしょう。
そんなときには『応答的な関わり』が有効です。
保育園や幼稚園では大切にされている考え方ですが、特別な技術は不要。日常的な親子のやり取りにも生かすことができます。
『応答的な関わり』を意識することで、お子さんのコミュニケーションの能力だけでなく、自己肯定感や主体性を育みのばすことができます。 今回はその『応答的な関わり・応答的な対話』のメリットやポイントを紹介します!
目次
1.応答的な関わり・対話とは
「応答的な関わり」「応答的対話」ということばを聞いたことはあるでしょうか?
これは、国が定める「保育所保育指針」という保育園での園児との関わり方を示した文書の中でも、大切にしたい関わり方として記載されています。
具体的にはどのようなものなのか、また、3・4歳の子どもにとってどのようなメリットがあるのかをお伝えします。
1-1.応答的な関わりとは、子どもの思いを受け止めて言葉を紡ぐこと
「応答的な関わり」「応答的対話」とは、子どもの伝えたいことや思いを受け止めて共感の言葉を伝えたり、子どもが満足するまでやり取りを繰り返したりすることをいいます。
お子さんの言葉を受け止めた上で、さらに大人が言葉を重ねることでコミュニケーションの能力を育てることができます。
子どもが大人に対して発した言葉を、「〜なんだね」「〜ってこと?」と共感してあげることで、お子さんが“伝わった!““伝えてよかった!“と感じ、自己肯定感を育むことにつながります。
さらに、“また伝えたい!“”もっと伝えよう!”という主体性を育てることもできます。
幼児期においては、愛着形成が大切です。
ボウルヴィの愛着理論によると、3歳ごろまでは親などの養育者との関わりの中で、スキンシップなどを通して愛着を形成していきます。愛着が形成されることによって、安心して外の世界に出ていくことができるのです。
3歳ごろまでに愛着が形成された後は、養育者が近くにいなくても心の中に安心感を抱いて行動することができます。
しかし、外の世界では、想定もしていないことや初めてのことにたくさん遭遇し、不安になることもあります。
そんな3歳以降においても応答的な関わりを続けていくことで、受け止めてもらえたという安心感を再度得ることができ、主体的に外の世界で行動する力を育むことができます。
1-2.3歳以降も応答的な関わりが大切な理由
3歳までのお子さんにとって、応答的な関わりが重要であることはよく知られています。
しかし実は3歳以降でも、この関わりはお子さんの成長に深く影響を及ぼします。
3歳になると心身ともに発達が進んでいます。 単語だけでなく、助詞を使った文で話ができるようになります。相手の言葉に対する理解も進みます。
これにより例えば、「何を作ってるの?」「〇〇ちゃんのおうちを作ってるの」などのやりとりもできるでしょう。
また自我も芽生え、大人の意見を素直に受け入れない「反抗期」の様子が見られるのもこの頃です。
自分の意志を強く主張したり自分勝手な行動をしたりするのが、この時期のお子さんの特徴であるため、親は注意をすることも増えてくるでしょう。
ただ、注意ばかりされていると「何かやると、お母さんはすぐに怒る」という短絡的な考えに陥ることも。
そこで大切になるのが、「応答的な関わり」「応答的対話」です。
応答的な関わりを日常に取り入れることで、親御さんがお子さんの考えや気持ちを大事にしていることを伝えることができます。
さらにその会話の中で、お子さん自身が考えて言葉を紡ぐようを促すことができます。
この関わりを繰り返すことで、「何をしてもお母さんは受け止めてくれるんだ」「それでも、やっていいことと悪いことがあるんだ」と自分で考えて行動することができるようになります。
また、園などでの生活も始まり、新しい環境や初めてやることに遭遇する場面が増えます。日々、不安でいっぱいのお子さんも多いことでしょう。
そんな、緊張が続く時期に、しっかり話を聞いてもらえることで「気持ちを受け止めてもらえた」という実感を持つことができ、安心して「ちょっとやってみようかな」と次の一歩を踏み出すことにつながります。
2.【3・4歳】応答的な関わりの実践例
実際に親子で応答的対話を実践する場合、どのようなやり取りをしたらよいでしょうか?
特別なコミュニケーションをとる必要はなく、日常会話の中で「共感」「応答」「疑問」などをお子さんに投げかけることで、「応答的関わり」「応答的会話」は成立します。
ここからは、実際のコミュニケーションの例を見ていきましょう。
2-1.好きなことを介したやりとり
3・4歳ごろのお子さんは、他者とやり取りをしながら遊ぶことができるようになってきます。
例えば、おままごとを例に考えてみましょう。
「ママにごはん作ったよ!」
「わー!ごはん作ってくれたの?ありがとう!食べてもいいかな?」
「いいよ!フーフーしてね」
「フーフーするんだね!出来立てアツアツなのかな?」
「そう!出来立てだからね」
このように、お子さんの言葉を繰り返すことで、お子さんの考えたことをまずは受容します。
また、「ありがとう!」と応答したり、「~なのかな?」と疑問を投げかけることで、さらにお子さん自身が考えて発信をするきっかけを作ることができます。
2-2.苦手なことを介したやりとり
苦手なことを克服して欲しいと思う親御さんも多いかと思います。 そんなときにも、応答的な関わりが役立ちます。
例えば、服の着替えに苦手がある場合の例です。
「お着替え、ママやって」
「ママにやって欲しいんだね。どれを1番やって欲しいのかな?」
「くつ下」
「そっか、くつ下難しいもんね。一緒にやってみよう」
このように、いつもならできることであっても「できるでしょ」と伝えるのでなく、一度、子どもの気持ちに共感することが大切です。
いつもできていてもやりたくないと言うのは、お子さんが苦手ながらにも頑張っている証拠です。
親に自分の思いが伝わった、と感じるだけで苦手なことへのハードルも低くなります。
また、疑問を投げかけることで、自分のことを客観的に考えるきっかけになります。
答えることが難しい場合は「ズボン?くつ下?」のように、選択肢から選んでもらうことで答えやすくなります。
共感をしてもらえた上で、苦手なことにもできるところから取り組む。そうるすことで「できた!」という経験が増え、自己肯定感を高めることができるでしょう。
3.【3・4歳】応答的な関わりを家庭で取り入れるコツ
「応答的な関わり」「応答的対話」と聞くと、知識やスキルが必要な難しいもののように捉えがちですが、小さなコツさえ分かれば日常の些細なやり取りの中で実践することができます。
親御さんに大切にしてほしい、3つのコツをご紹介します!
3-1.正しさを求めすぎない
大人は、子どもが言う前についつい先回りして、様々なことを考えて伝えてしまうものです。
また、子どもの発想や考えが間違っている場合も少なくないでしょう。
そんなときはつい、「それは違うんじゃない?」「~のほうがいいよ」と伝えてしまうこともありますよね。
しかし、先回りして大人から言葉を伝えてしまうと子どもは「自分の話を聞いてくれない」と感じてしまいます。
応答的な関わりでは、お子さんが「思いを受け止めてもらえる」という経験をすることが大切です。
そこでまずは、「どうしたの?」「どうして?」などと、お子さんの言葉を引き出すことから始めましょう。
さらに、お子さんの言葉に対して「○○なんだね」とおうむ返しで共感したり、「〜ってことかな?」と代弁することで、よりお子さんは受容された気持ちになります。
3-2.子どもの話したい気持ちを引き出す
大人でも、”共通の話題”があることで、他者との話が盛り上がることがありますね。
子どもとの対話でも同じく、共通の話題(ものや出来事)があることで応答的対話は発展していきます。
例えば
・家でのおもちゃ遊び、着替えやお風呂などの生活
・お散歩やお出かけ、公園での遊び
・絵本の読み聞かせ
など一緒に時間を過ごす中で、見たものや出来事に対して話をすることが、対話のきっかけや話を広げるキーワードとなるでしょう。
3・4歳のお子さんの場合、過去の出来事などは記憶が曖昧になってしまうため、その場で見てわかるものであると発想が広がりやすくなります。
3-3.すべての要望に応える必要はない
お子さんの伝えてくれたことに対して共感をすることはとても大切ですが、全てをお子さんの思い通りにしなくてはいけないわけではありません。
例えば、「片付けしたくない」という言葉を聞いて「片付けたくないんだね」と共感を示してそのままおもちゃを出しっぱなしにするのは、お子さんの成長につながりませんよね。
こんなときは、「どうして片付けしたくないのかな?」「作ったものが壊れるのが嫌なのかな?」など理由を聞いてみます。
その上で、「作ったものは飾ろう。残ったブロックは箱にしまえるかな?」と提案をしてみましょう。
共感をした上で、お子さんの思いを尊重した妥協点を見つけていき、お子さんの「それならやれる!」という気持ちを引き出すことも応答的な関わり・応答的対話の大切なポイントです。
3-4.答えを急がず、じっくりと待つ
忙しい中で、ついつい「すぐに反応がほしい」と思うことも多いでしょう。
しかし、応答的対話においては、必ずしもすぐに答えや成果が返ってくるわけではありません。
しかし、それはお子さんがじっくり考えて言葉を伝えようとしている証拠です。
その時間こそが、お子さんの思考力や主体性を高めていきます。
また、疑問を投げかけても言葉が返ってこないこともありますが、表情には変化があるかもしれません。
言葉でなくても、表情やその後の動きで親御さんの言葉かけに応えようとしている場合もあります。
「この聞き方をしたらどういう反応をするのかな?」と、親御さんも楽しみながらやり取りをできるといいですね。
4.応答的関わりと対話で、子どもの主体性を引き出そう
3・4歳は、周りの環境からたくさんの学びを得て、心も体も大きく成長していく時期です。
その時期に親御さんに”受けて入れてもらえる”という安心感が自己肯定感を高め、新しいことへ挑戦するエネルギーとなっていきます。
ぜひ、日常の中でたくさん応答的対話をして思いを受けとめ、お子さんの主体性を伸ばしていきましょう!
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参考文献・サイト
・保育所保育指針(厚生労働省告示第百十七号)
・保育所保育指針解説(厚生労働省)