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【公認心理師が解説】ギフテッドと発達がいの違いとは?適切な接し方は?

この記事を書いた人

狩野淳 狩野淳

狩野淳

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。

臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。

子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。

もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!

「我が子が『ギフテッド』であると言われたけれど、どんな特徴があるのか実はよくわかっていない」
「『ギフテッド』は、発達障がいなの?」
「『ギフテッド』の子どもに、どう関わればよいのかわからない」

そんなお悩みはありませんか。

あるいは、「天才的な頭脳の持ち主や偉業を成し遂げた人には、どんな特性があるのか知りたい」という方もいらっしゃると思います。

そんなお悩みや好奇心をお持ちの方へ、ギフテッドの概要やギフテッドの子どもへの関わり方、そして発達障がいとの違いについて紹介します。

 

目次

1.ギフテッドとは?発達障がいとの違いは?

写真はイメージです。(photoAC

 

ギフテッドという言葉自体は聞いたことがあるものの、実は特徴についてはよくわかっていないという方もいらっしゃると思います。

まずは、ギフテッドの概要とギフテッドの定義の仕方、発達障がいとの関係性について解説していきます。

 

1-1.ギフテッドは、「特別な才能を持つ子ども」

ギフテッドとは、英語の「gifted」に由来しており、「天賦の才を与えられた人」という意味です。

ギフテッドの人々は高い知能や運動能力、芸術的感覚をもっており、様々な分野で活躍しています。

ギフテッドは人口の2%程度、つまりおおよそ50人に1人存在しているとされており、それほど少ない数字ではないと言えるでしょう。

現時点ではまだ成果をあげていなくとも、将来的に才能を開花させる可能性のある子どももギフテッドであると考えられていますので、気づいていないだけで私たちの身近には意外と多くのギフテッドの子どもがいるのかもしれませんね。

 

1-2.ギフテッドの判別方法は?

勘違いされがちですが、ギフテッドは病気や障がいではありません

そのため、医療機関を受診してもギフテッドであると診断を受けることはありません。

では、どのようにしてギフテッドであると判断されるのでしょうか?

生活環境の聞き取りや子どもの観察をメインに行いながら、WISCやQEEG検査を行うことでギフテッドであるかどうかを判定します。

WISCとは「ウェクスラー式知能検査」のことで、知能を構成する4つの領域における問題の得点をもとに知能(IQ)を数値化します。IQが130以上の場合はギフテッドの可能性が高いという評価になります。

また、QEEG検査とは、「定量的脳波検査」のことで、脳波を可視化することで脳の状態を観察することができる検査です。

脳のどの部分がどんな時に強く反応しているのかを調べ、脳波のパターンを測定します。ギフテッドの子どもと似たようなパターンの脳波が検出されれば、ギフテッドである可能性が高くなります。

WISCは小児科や心理相談室、QEEG検査は専門の医療機関で受けることができますので、我が子がギフテッドであるか知りたいという方は受診してみるとよいでしょう。

 

1-3.ギフテッドと発達障がいの関係性

「ギフテッドは発達障がいの仲間である」という誤解は、どういう経緯で生まれたのでしょうか。

一説によると、ギフテッドの特性と発達障がいの特性が類似しているため、このような認識が広まってしまったとされています。

ギフテッドの子どもは知的好奇心が高く、自分が興味を持った分野に対してすさまじい集中力を示すことがあります。

対して発達障がい、特にADHDの子どもも普段はいろいろなところに意識が向いてしまい、自分の疲労や眠気なども忘れてしまうほど集中する(=「過集中」といいます)ときがあります。

また、ギフテッドの子どもは「他人にどう思われるか」よりも「自分が何をしたいか」を優先することがあり、それが発達障がい、特に自閉スペクトラム症の「他者に対しての関心の薄さ」としてとらえられてしまうことがあります。

さらに、ギフテッドであり発達障がいでもあるというケースが存在していることが、ギフテッドと発達障がいを強く結びつけてしまう要因になっていると言えるでしょう。

ギフテッドと発達障がいを併せ持つ方を『2E』と呼びます。2Eとはtwice-exceptional(二重に例外的な)という意味で、ギフテッドと発達障がいの両方の支援を必要とする人を指します。

このほかにも、発達障がいであるが故に高い記憶力や計算力をもっている『サヴァン症候群』と、天才的な才能をもっているギフテッドが似ているなど、様々な共通点があります。

しかし、発達障がいは脳の機能的な障がいであり、ギフテッドは高い能力をもっている人を指すだけなので、両者は全く異なる概念なのです。

 

2.ギフテッドの子どもが抱えやすい悩み

写真はイメージです。(photoAC

 

ギフテッドとは何かについて解説しましたが、「天才的な才能があるなら、ギフテッドはいいことなんじゃない?」「普通の人よりも優れているなんて、羨ましい」と思った方も多いかもしれませんね。

しかし、ギフテッドの子どもには幸せなことばかりあるわけでありません。ギフテッドだからこそ、困ることもあるのです。

そこで、ギフテッドの子どもが抱えやすい悩みについて解説していきます。

 

2-1.周囲と知能的レベルが合わない

ギフテッドの子どもは知的能力が高く、他の子どもとレベルが合わないことが多いため、孤立してしまう場合があります

周囲の会話がつまらなかったり、幼稚園や小学校での学習を幼稚に感じてしまったりすることで、毎日が退屈に感じてしまうのです。

興味関心が合わないだけではありません。

勉強や運動における能力が飛び抜けているため、なんとなく近づき難い雰囲気を与えてしまい、遊びに誘われない、話の輪に混ぜてもらえないといった問題も生じます

ギフテッドの子どもは、先生をはじめとした大人から褒められる機会も多いため、「ずるい」「なんであの子ばっかり」と嫉妬の対象となる場合もあります。

そうしたことが原因で、小学校にあがるといじめの対象になる危険性があることも否めないでしょう。

 

2-2.集団生活が苦痛

ギフテッドの子どもは、様々な点で周囲とのレベルが合わないため、集団生活を苦痛に感じることがあります。

一回でわかることを何回もやらせたり、自分はできる/わかるのに周囲のペースで進めなければならなかったりすることが少なくなく、ギフテッドの子どもはストレスを感じてしまうのです。

先生も数十人を少ない人数でみなければならないため、なかなか個別の対応ができません。

対応する時間を捻出することで逆に、ギフテッドの子どもが先生に依存するようになり、同級生との間にますます深い溝を生んでしまうこともあるため、非常に対応が難しいと言えるでしょう。

 

2-3.感覚が鋭く疲れやすい

ギフテッドの特徴の一つに「過度激動」というものがあります。

過度激動とは、日常的に生じる刺激を強烈に感じ取ってしまうことを指します。

普通の子どもなら気にならない光や音に対しても、過度に眩しがったり、不快な音として感じたり、「嬉しい」「悲しい」といった感情も激しく感じてしまったりします。

知的能力が高く、特別な才能があるとはいえ、精神的にはまだ幼いため、うまく言葉にして他者に伝えることは難しいでしょう。

加えて、対処方法も確立できていないため、日常生活を送っているだけでも精神的に疲れてしまいます。

過剰激動の原因として、脳の神経細胞の感受性の高さが考えられています。

神経細胞が発達していることで高いパフォーマンスを発揮できる一方で、情報受容の感度が高いため、少しの刺激にも過剰反応してしまうとされています。

 

3.ギフテッドの親が抱えやすい悩み

写真はイメージです。(photoAC

 

ギフテッドの子どもが抱えやすい悩みについて解説してきましたが、悩んでしまうのは子どもだけではありません。ギフテッドならではの育てにくさから、保護者も育児に悩んでしまうケースが多くあります。

ギフテッドの子を持つ親は、どんな悩みを抱えやすいのでしょうか。

 

3-1.子どもの才能の活かし方が分からない

ギフテッドの子どもは高い能力や優れた才能を持っていますが、両親にその分野に精通した知識がないと、才能を発揮させたり、正しい方向に発展させたりすることは難しいでしょう。

知能が高ければ塾、芸術的な才能があれば絵画教室や音楽教室に通うことで才能を伸ばすこともできるでしょう。

しかし、先生と相性が合わなかったり、サービスの質などが子どもと合わないケースもあるため、何がベストな選択かわからず、困ってしまう保護者の方はたくさんいらっしゃいます。

 

3-2.周囲からの理解が得られにくい

ギフテッドの子どもは高い能力があるため、困りごとがないように思われがちです。

良い部分ばかり注目され、ギフテッドの子どもの苦手なこと、悩んでいることに周囲が共感してくれず、「すごい才能があるのに贅沢だ」と批判的な意見を返され、保護者が孤立してしまうケースがあります。

また、幼稚園や保育園、小学校では本来、ギフテッドの子どもには個別で支援が必要ですが「この子には力があるから大丈夫」と、受けるべき支援が受けられないことも問題視されています。

 

4.ギフテッドの子どもとの関わり方と保護者にできること

写真はイメージです。(photoAC

 

ギフテッドは輝かしい側面がある一方で、子どもと保護者はそれぞれ悩みを抱えやすいことを紹介しました。では、保護者は、ギフテッドの子どもにどのように関わっていけばよいのでしょうか。

 

4-1.好きなことを存分にできる環境を整える

ギフテッドの子どもは好奇心旺盛で、興味のあることやしたいことを制限されるとストレスを感じてしまいます。

そのため保護者は、「他の子と同じように生活してほしい」「みんなと同じレールの上を進んでほしい」と考えて、“普通の子の枠”に押し込めない方がよいでしょう。

好きなこと、やりたいことを存分にできる環境を提供してあげましょう。

例えば、土日や夏休みには、好きなことに没頭できる時間や好きなことを深める機会を提供する、子ども部屋を用意し、その空間は自由に使わせてあげるなどが挙げられます。

そうすることで、日頃、集団生活の中でストレスが溜まったとしても、自宅で発散でき、登園渋りなどの問題に発展することを防げるでしょう。

 

4-2.ギフテッドの特性について周囲へ理解を促す

ギフテッドについて理解のない人や、そもそもギフテッドの存在を知らない人もいます

そんな人がギフテッドの子どもの集団生活ができない様子や、(内容が簡単すぎて)活動に真剣に取り組もうとしない姿勢を目にして、「なぜサボってるんだ!」「ちゃんとやりなさい!」と言うこともあるでしょう。

そんな環境では、子どもの対人スキルがますます育たなくなってしまいます。

そうした場面では保護者が、子どもの特徴や考え方のクセなどを周囲に知らせるとよいでしょう。

ギフテッドの特性があっても過ごしやすい環境に整えていくには、このような周囲への働きかけが不可欠なのです。

 

4-3.ギフテッドの集まりに参加してみる

日常生活の中では、ギフテッドならではの才能や悩みを持った人にはなかなか出会えないでしょう。

そのため、「自分はおかしいんだ」「“普通”にならなきゃいけないんだ」と子どもが思い込み、自らの才能を潰してしまうこともあります

そこで活用していただきたいのが、「ギフテッドの集まり」です。

日本全国のギフテッドの当事者と保護者が互いの悩みや困りごとについて話し合い、問題解決を図っていくために発足された団体です。

例えば、特定非営利活動法人日本教育再興連盟の「ギフテッドプロジェクト『sprinG』」という団体は、オンラインでのギフテッドの集いの他にも対面式のイベントも開催しており、ギフテッドの人たちが互いに通じ合う場を提供しています。

保護者支援も行っているため、ギフテッドの我が子について悩みや困りごとを抱えていて、周囲に相談できる人がいない方は、ぜひ活用してみてください

 

5.ギフテッドの子どもが輝けるよう、バックアップしていきましょう

写真はイメージです。(photoAC

 

ギフテッドの概要と発達障がいとの違い、ギフテッドの子どもとその保護者が抱えやすい悩み、そしてギフテッドの子どもへの関わり方と周囲の大人にできることについて解説しました。

「集団の和」「同調圧力」という意識が強い日本では、ギフテッドの子どもは辛い思いや歯がゆい思いをすることが多くあると思います。

しかし、それらの困りごとは、周囲の大人が環境を整えてあげることで解決できる場合も少なくないでしょう。

そのなかで子どもは「こういうときは何と言えばいいのか」「こんな時はどうしたらうまくいくのか」などを学び、次につなげることができます。

今回の内容を参考しながら、お子さんが生活しやすい環境を整えてあげてください。

主な参考サイト
NHKクローズアップ現代「知られざる天才 “ギフテッド”の素顔」

 

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