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姿勢を保てない子ども、発達障がいとの関連性は?原因と対策を公認心理師が解説

この記事を書いた人

本原けい 本原けい

本原けい

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

公認心理師、臨床心理士の資格所持しており、公立の相談機関で、発達相談をお受けしています。

発達全般、不登校、対人関係、情動調整などの問題を抱える親子の心理的相談業務を20年以上担当してきました。また、スクールカウンセラーとして10年以上小学校に勤務しております。

二人の子どもがいますが、手が離れて楽になったような寂しいような気持ちです。

小学校に入学すると、45分間椅子に座り、授業を受けなければならなくなります。机に向かうことが増え、小さい頃にはあまり気にならなかった姿勢の悪さが、急に目につくようになったママ・パパもいるのではないでしょうか。

また、姿勢が悪くて授業に集中できていないことを担任の先生から指摘され、きちんとしつけができていなかったのかしら…と思い悩んだり、授業参観で他の子が良い姿勢で座っているのを見ると焦ったりすることもあるかもしれません。

そこでこの記事では、公立の相談機関で発達相談を受けながら、スクールカウンセラーとして小学校に勤務している公認心理師が、子どもの発達や特性を踏まえて、その原因や改善法を解説します。

 

目次

 

 
 

1.姿勢を保てないお子さんの姿

近年、子どもの運動能力や筋力の低下が問題となっています。

一般的には5歳頃からしっかり座れるようになりますが、高学年になっても「授業中に姿勢が保てない」「立ち姿勢でも安定せずふらふらする」といった姿が見られ、筆者が小学校のスクールカウンセラーとして勤務する中でも、このような姿を見ることが増えていると感じています。

ここでは、よく見られるお子さんの様子をひとつずつ紹介します。

 

1-1.まっすぐ座れない

ふにゃふにゃしていて体が傾いたり、猫背になったりします。また止まっていられず、常にくねくねしたり、体が横を向いたりすることもあります。

 

1-2.足を前に投げ出す

少しの間でも背中をまっすぐ伸ばす姿勢を保つことができず、背もたれにもたれるため、結果的に足を前に投げ出して座ることになります。おしりがすべって、そのまま椅子からずり落ちることもあります。

 

1-3.いすの上に膝を立てる

椅子の上に足を上げると、膝の上に頭を置けるため、体が支えやすくなるようです。椅子の上で正座をしたりあぐらをかいたりする方が体が安定するということもあります。

 

1-4.机に寝そべる

頭を体で支えられないため、ほおづえをついてしまいます。それもしんどくなると机に寝そべってしまうこともあるでしょう。

 

2.姿勢を保てない原因は?

姿勢が保てないお子さんが皆、やる気がないわけではありません。

やる気があり、ちゃんとしようとがんばっているのに姿勢が悪い、というお子さんは少なからずいます。なぜなのでしょうか。

子どもの発達段階も踏まえて解説します。

 

2-1.筋肉の緊張が弱い「低緊張」

低緊張とは、体を支えるための筋肉の緊張が弱い状態のことをいいます。通常、筋肉はすぐに動かせるよう適切な緊張が持続的に保たれており、姿勢を保つことに大きくかかわります。

筋肉の緊張は脳でコントロールされており、「前庭感覚」と「固有感覚」の問題が関係しています。これは生まれつきのもので、もしも染色体異常や遺伝子異常、脳性麻痺などの疾患がなければ、後述する発達性協調運動障がい等の発達障がいの可能性もあります。

低緊張の赤ちゃんは、ハイハイの時に頭を上げなかったり、お尻をついて座位が保てず、ふたつ折りの状態になったりします。

また低緊張の状態では、5・6歳になっても持続して背中とお腹の両方に力を入れることができず、姿勢を保ちにくくなります。筋肉を意識的にコントロールしなければならない状態ですね。姿勢を保つために、他の子より大変な努力が必要になります。

 

2-2.体をイメージすることが苦手

体をイメージすることが苦手であることが理由で、姿勢が保てているかどうかを感じる力が弱く、姿勢の崩れに気づかない、そのため姿勢を直すことができない、ということがあります。
「ボディイメージが未発達」という言い方をすることもあります。

私たちは、自分がどんな風に動けるのか、自分の体はどれくらいの大きさなのかといった体のイメージをもつことができます。これば自分の体の位置の理解や動きのコントロールの基礎となるものです。

一般的に、ボディイメージは6歳前後で形成されるとされており、姿勢の傾き、腕や足の位置、力の入り具合などの情報を脳内で統合させていきます。

また、姿勢を保つためには、お尻の下の骨(坐骨)に体を乗せなければいけません。その感覚が分かりにくく、姿勢を保つという感覚が持ちづらいということもあります。

このように、ボディイメージ形成の途中でつまづいたことにより姿勢保持が難しい、という例は多く見られます。

 

2-3.覚醒状態がうまく保てない

覚醒とは、脳の目覚めの程度のことです。覚醒の状態が低かったり高かったりして、ちょうどよいところで保てないと、姿勢にも影響します。

覚醒が低いと感覚の情報が受け取りにくく、ぼんやりした状態になります。そうすると、座位が保ちづらくなり、姿勢が崩れてしまいます。覚醒を高めようとして、感覚刺激を求めて動き、集中できないということにもつながります。

それに対して、覚醒が高いと、感覚の情報を受け取り過ぎるため、脳が興奮した状態になります。そうすると、体に力が入り過ぎる状態になり、長時間、姿勢が保てなくなります。様々な感覚刺激が気になり、イライラしたり、落ち着きがなかったり、ということにもつながります。

 

2-4.発達性協調運動障がい「DCD」のお子さんもいる

姿勢を保てないお子さんの中には、発達性協調運動障がい「DCD」の診断がつくお子さんもいます。発達性協調運動障がい(以下、DCDと記載)は発達障がいのひとつに分類されており、脳機能の障害のために生じるとされています。

協調運動とは、複数の動作を一度にしなければならない運動のことです。学校での学習は、協調運動ができることが前提となって組み立てられています。姿勢が保てなかったり、運動が苦手だったりするくらいで障害?と思われるかもしれませんが、DCDのお子さんには、運動の不器用さがあり、普段の授業や生活全般に少なからず困難を抱えています。

例えば

    • 学校の授業では板書についていけず怒られることが多い
    • 勉強したくても長時間座ることが難しくみんなと同じようにできない
    • 字を書くことがうまくできない
    • 身体がぐにゃぐにゃ・フラフラしてうまく体操や運動ができず、体育が苦痛
    • 給食で食べるのに時間がかかったり、食べこぼしが多かったりして、友達から非難される

など、学校ではあらゆる場面での困りごとにつながります。

 

3.姿勢を保てない子どもへのアプローチ【公認心理師おすすめ】

では、DCDや、姿勢を保てない子どもたちには、どのように関わるとよいのでしょうか。

 

3-1.遊びの中で姿勢を保つ力をつける

近年、子どもたちの運動量が格段に減っていると言われています。

小学校時代は体を作る時期です。遊びの中で、運動量を増やせるようにしましょう。バランスよく筋力がつくと、姿勢が保てるようになり、学習に対して集中力がアップし、意欲にもつながります。

・お腹に力が入り、筋力がつく遊び:鉄棒・ジャングルジム・アスレチック・綱引き・押し相撲・ボルダリング・マット登り
・体をまっすぐ保つためのバランスを身につける遊び:ブランコ・お馬さん・逆立ち・豚の丸焼き(鉄棒にぶら下がる) 

楽しみながら運動経験を積むことで「もっとやりたい!」という気持ちが育ちます。ママやパパと一緒に運動を楽しめる雰囲気作りが重要です。

 

3-2.自分の姿勢に気づきやすくする

「ちゃんと座りなさい」と言うだけでは姿勢に気づきにくいことがありますので、体に触れながら姿勢を修正したり、座り直しの時間を入れたりします。ご家庭や通級などでは、バランスボールをいすとして使うと姿勢改善に役立ちます。

また、お子さんが自分の目で見て姿勢に気づくことも大事です。鏡や写真で自分の姿勢をチェックするよう促しましょう。まず体に意識を向けることが大切です。

 

3-3.覚醒をコントロールする

感覚刺激を用いることや、興味・関心のある活動を行うことにより、覚醒をコントロールすることができます。

覚醒を上げるためには、ブランコ、大きく揺らす、ジャングルジムへ上る、追いかけっこをする、ジャンプをする、といったことが有効です。

感覚を求めるお子さんには足元に人工芝などの感覚刺激を入れられるものを置くとよいでしょう。

授業中、長時間、座っているのが苦痛な様子であれば、プリント配布や黒板消し、職員室等への用事を頼む、といった役割で、動いても良い場面作ってもらうことを、担任の先生やスクールカウンセラーに相談してみましょう。

覚醒を下げるためにはリラックスをさせるよう、マッサージ、好きな感触の物を触る、抱っこをしてゆっくり揺らす、といったことが有効です。

 

3-4.環境を整える

机と椅子の高さを確認しましょう。座ったときに足が床につき、ひざが90度に曲がる高さがベストです。
おしりがすべらないようにすべり止めシートを敷くと、姿勢を保つことが楽になり、授業に集中できるようになるお子さんもいます。

 

4.実際のお子さんの例

姿勢が保てず、小学校入学時に苦労していたお子さんが、ご家庭と学校での工夫により改善に向かった実際のエピソードをご紹介します。

 

4-1.遊びの中で筋力がついたA君

授業中、集中ができず横を向いたり、椅子からすべり落ちたりし、先生に注意されてばかりの1年生のA君。姿勢を保てないことにより、授業に集中ができず、字を書くことも辛くなっている様子がうかがえました。

すっかり学校に行くことが嫌になり、家では寝そべってゲームばかりしています。

姿勢を保つことについて、低緊張が原因であると思われ、家庭では鉄棒や押し相撲など、親子の遊びの中で筋力をつける試みを続けてもらいました。学校ではすべり止めシートを使用し、椅子の高さはクッションで調整しました。

いすの調整で座りやすくなったこと、低緊張について担任の先生に理解していただき、注意されることが減ったこと、ママパパと楽しく筋力アップのための遊びの時間が増えたことで、気持ちが前向きになり、がんばろうという意欲がわいてきました。

このような試みを続けた結果、徐々に筋力がつき、いすからすべりおちるようなことはなくなり、学習に意欲的になりました。

 

4-2.覚醒のコントロールができるようになったB君

少しの刺激に反応しやすい小学校1年生のB君。落ち着かずにすぐに離席することもあれば、授業中、机の上にうつぶせになってしまうこともあります。

先生には「ちゃんとやる」と何度も話し、授業をきちんと受けたいという気持ちはあるようですが、体が思うようにコントロールできず、困っている様子です。

どうしても体が動くときは覚醒が上がっている状態、体が動かないときには覚醒が下がっている状態であると思われました。

そこで、覚醒が上がっているときに落ち着くためのリラックスグッズ(イガイガボール)を持参してよいことにしてもらいました。手のひらのマッサージも自分でできるようにしました。覚醒が下がっているときには、授業の前に先生に促してもらい、ジャンプをするようにします。

最初は先生に促されていましたが、学年が上がり、自分で体を動かして覚醒を上げたり、マッサージをして覚醒を下げたりして、少しずつ覚醒をコントロールできるようになりました。

 

5.お子さんの特性に合わせて遊びの工夫や環境の調整をしましょう

「ちゃんとしなさい」「どうしてできないの!」と、言われ続けたお子さんは劣等感が積み重なり、自己肯定感も低くなりがちです。この先、できるはずのことも「どうせ自分にはできない」と、前向きな挑戦に二の足を踏むようになるのはもったいないことです。

お子さんの行動には必ず理由があります。できていないことにも、できていることにも、その理由を見極め、お子さんの特徴に合わせた対応をしていれば、意欲を伸ばすことができます。その結果、できることが増え、苦手なことがあっても、がんばろうという自己肯定感を育てていくことができます。

姿勢についても、お子さんに合わせて遊びや覚醒のコントロールなど、大人ができる設定をし、お子さんにとっては「がんばればいつの間にかできるようになっていた!」となるように、できることを増やしてあげましょう。

もしDCDの傾向があるようなら、姿勢が保てないだけではなく生活全般に困難を抱えているはずです。

学年が上がるにつれて、周囲と比較するようになると、自分はダメな子だと自己肯定感が低くなっていきがちですので、早い段階で専門家に相談しながらお子さんに合わせた対応を工夫していくことをおススメします。

 

 

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