無気力な小学生の原因は?親はどう対応するのがいい?
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
最近、子どもがぼーっとしていることが多い。
宿題や習いごとにも気が進まないようで、ため息をついたり表情が暗い…。
小学生の子どもの無気力な様子が気になったことがあるかもしれません。
何度もそのような姿を見ていると「このままで大丈夫?」と心配になってしまいますよね。
とは言え、どのように対応すればよいか分からないことも多いのではないのでしょうか。
この記事では、小学校低学年の子どもに見られる無気力の原因と親がとるべき対応のヒントをお伝えします。
燃え尽き症候群や子どものやる気を刺激する方法についても触れますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.無気力な小学生 その原因は?
無気力とは、何に対してもやる気が起きない状態です。
意欲や自発性が低下し、感情の起伏が小さくなったり周りに無関心になったりします。
子どもの場合、なんとなく元気がない、ぼーっとしていることが多い、などの様子が見られるようです。
なぜこのような状態になるのか、無気力になる原因を見ていきましょう。
1-1.身体的に疲れている
学校に行き、帰宅してから宿題をし、習いごとに行き…と現代の子どもたち毎日忙しく過ごすことが多いですよね。
気付かぬうちに疲労が蓄積していることもあるでしょう。
忙しさで生活リズムが乱れたり疲れがとれないままになっていたりすると、無気力になりやすい傾向があります。
充分な睡眠がとれているか、時にはゆとりのある時間を過ごすことができているか、今一度確認してみるのもよいでしょう。
1-2.勉強についていけない
勉強についていけないと感じることがあると、学校へ行くのが憂鬱になったり何かをする気力が湧かなくなったりすることもあるでしょう。
特に、毎日授業のある「国語・算数」に理解できていない部分があると、毎日の宿題も辛いと感じてしまい、一層無気力な状態に陥ってしまうこともあります。
1-3.人間関係などで心配事がある
お友達とのトラブルや心配事があるときも、無気力な状態になることがあります。
そのことが気になり過ぎて他のことが手につかないような状態です。
学校や習い事など親の目の届かないところで、小さなトラブルが起きていることもあるでしょう。
そのことをうまく親に伝えられず、自分だけで抱え込んでしまっていることがあるかもしれません。
1-4.なんでも親が決めてしまう
小学生の子どもが無気力になる原因として、親の過干渉も挙げられます。
例えば、毎日使う文房具から通う習い事まで親がなんでも決めてしまうと、子どもは「自分が何をしても変わらない」と感じます。
そのため、物事に意欲的に取り組むことが難しくなってしまいます。
自分で決めたことを成し遂げたときに得られる達成感も感じにくく、「またがんばろう」という気持ちも湧きにくくなってしまうのです。
1-5.叱られる・注意されることが多い
何をしても叱られたり注意されたりすることが多いと、なにか新しいことをしようとしても「どうせ、まただめって言われる」とあきらめ、無気力になってしまうこともあるでしょう。
自分の意思や行動を否定されることが続くと、「なにをしてもだめだ」という気持ちになり、やる気が湧かなくなってしまうのです。
<燃え尽き症候群に注意>
燃え尽き症候群とは、努力が報われなかった、もしくは目標を達成したときに生活への意欲を失ってしまう状態のことを言います。
もともとは、仕事に打ち込んでいた人が意欲を失い生活に支障が出る状態を指していましたが、徐々に小学生など低年齢にも同じような状態が見られることが分かってきました。
医学的な診断名ではありませんが、子どもの生活リズムが乱れてきたり食欲や睡眠に影響が出た場合は、かかりつけ医に相談するのがよいでしょう。
合わせて、親の燃え尽き症候群にも注意が必要です。子どもの目標のサポートをする場面が多く、気付くと子の目標が親の目標になっていることもあります。そして、目標が達成されたときに親も同時に目標を失ってしまい、親子で燃え尽き症候群の状態になってしまうこともあるのです。
2.無気力な小学生に親ができること
小学生が無気力になるのには、さまざまな理由があることがわかりました。
では、親はどのような対応をするのがよいのでしょうか?
以下に、特別な準備を必要としない対応を4つ挙げました。子どもの言動や様子に合った対応を意識しましょう。
2-1.家庭を、心身が休まる場所にする
まずは、子どもの疲労を取り除きましょう。
スケジュールが過密過ぎないか、睡眠は充分とれているかなどを確認し、「時にはゆったり過ごせる日をつくりましょう。
好きな遊びをする時間が充分あるかなども、話してみるとよいかもしれません。
また、なにか悩み事を抱えている様子が見られる場合、無理に何か聞き出そうとするのではなく、「いつでも力になるよ」という姿勢を示し、親に助けを求められる環境をつくっておくとよいでしょう。
2-2.子どもの言うことを受け止め、見守る姿勢をとる
子どもが無気力になったとき「しんどい」「やりたくない」「疲れた」などの言葉を発することがあるかもしれません。
そのような場合、まずは「そうだね」「疲れたよね」と子どもが言うことをそのまま受け止めましょう。
「そんなこと言わないの!」などと否定するのは避けましょう。
親が自分の思いを受け入れてくれないと感じると、反発したり、さらに無気力になったりしてしまうかもしれません。
「もっとがんばらないと」と強制したり「こうしなさい」と指示したりするのもやめて、基本的に子どもの行動を見守るという姿勢をとりましょう。
2-3.環境を変えてリフレッシュする
時には、思い切ってリフレッシュすることが有効な時もあります。
子どもが行きたがっていた場所に足を運ぶ、家族で外食に行くなど普段とちがうことをすると、気持ちが切り替わることもあるでしょう。
大人も旅行など普段の生活圏から離れて気分転換ができると、「またがんばってみようかな」と言う気持ちが少し湧いてくることもありますよね。
子どもも、そのようなリフレッシュが有効なことがあるでしょう。
2-4.親も一緒に何かに取り組む
例えば、子どもが宿題になかなか取り組めないとき、「○○くんが宿題している間、お母さんもここでお勉強するね」など、子どもと同じタイミングで同じことに取り組むことが効果的なこともあります。
例えば筆者は、子どもが宿題をなかなかできないとき、向かいに座り一緒に漢字の勉強をしていた時期がありました。
家事なども気になりますが、少しの時間でもいいので、子どもと同じ視点で取り組む姿を見せると「自分もやってみようかな」という気持ちを持つことにつながります。
3.無気力な小学生のやる気を刺激する2つの方法
無気力な小学生が「また少しがんばってみようかな」と思ったときに、フルパワーでがんばるようにとお尻を叩いたり、「こうしなさい、ああしなさい」と指示したりするのはNGです。
また同じように無気力な状態に戻ってしまう可能性があります。
ここでは、子どものやる気を引き出す対応のヒントとなる2つの考えを紹介します。
3-1.外発的動機付けで“今すぐ”の行動につなげる
外発的動機付けは、たとえば「がんばったらごほうびをあげる」など自分以外の人からの賞罰で、行動へのモチベーションが高まることを指します。
例えば、「宿題が終わったら好きなお菓子を買いに行こう」と励ますような場面です。
外発的動機付けはすぐに効果が見られますが、賞罰がなくなると意欲は下がってしまい、持続は難しいことが多いのが一般的です。
そのため、この方法は子どもの成長につながりにくく、何度も使うのはおすすめできません。
しかし、子ども自身ががんばっていてあと一押ししたいときなど、ここぞという時タイミングを見極めて用いると、子どもの意欲向上につながることが期待できます。
3-2.内発的動機付けで、内面からやる気を引き出す
内発的動機付けは、自分の興味や関心から行動を起こそうとする意欲が高まることを指します。
例えば、宿題に出てきた漢字の成り立ちに興味を持ち、自分で辞書で調べるようになるというような場面です。
内発的動機付けは、子どもの好きなことをきっかけに、内なるやる気を引き出すことができます。
好きなことへの興味を認め、子ども自身が動こうとするのをサポートできるとよいでしょう。
子どもが勉強に無気力なときにも、趣味など、好きなことへの取り組みを認めましょう。
好きなことで達成感や充実感を得られることで、少しずつやる気を取り戻すかもしれません。子ども自身の成長にもつながるでしょう。
4.まずは子どもの今の気持ちを受け止める
子どもは、様々な原因で無気力になってしまうことがあります。
その様子を見て心配したり、イライラしたりするかもしれませんが、まずは子どもの今の気持ちを受け止めることを心がけましょう。
心身を休め、リフレッシュし、子どもがまた動き出そうとしたときは、子どもの好きなことで少しずつ内なるやる気を引き出していけるといいですね。
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