暴言を吐く子どもへの対処法とは?~OK対応とNG対応についても解説~
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「『バカ』『死ね』という言葉を使うようになってしまい、どうしていいかわからない」
「いくら注意してもやめず、イライラしてしまう」
など、お子さんの暴言や言葉遣いについてのお悩みをお持ちの方へ、暴言を吐いてしまう子どもの心理的な背景について解説します。
また、子ども暴言に対してのNGな対応とOKな対応についても解説していますので、ぜひお子さんへの関わり方の参考にしてください。
目次
1.暴言を吐く子どもの気持ちとは?
まずは、暴言を言ってしまう子どもの心理と、暴言を言うことがもたらす子どもの心理的変化について解説していきます。
1-1.子どもが暴言を吐くときの心理背景
お子さんが暴言を言うときの心理は、大きく分けて3つあります。
1.「自信のなさを隠す」
4歳~5歳の子どもは社会性が身に付く時期です。
多くの人と関係性を結ぶことの楽しさを感じる一方で、恥ずかしさやくやしさ、みっともなさなども強く感じるようになります。
そのような感情を「周囲の人に悟られたくない」と無意識に感じ、遠ざけようとして暴言を言ってしまうのです。
2.「伝え方がわからない」
日常会話は問題なくとも、まだまだ自分の感情や考えを言葉にして相手に伝えることは難しい年頃です。
また、相手の気持ちを考える想像力も未熟なため、ストレートに伝えてしまいがちです。
騒がしい人に対して「静かにして」と言えばいいところを、「だまれ!」と強い口調で伝えてしまう、といったこともこの心理から生じてしまうのです。
3.「かまってほしい」
弟や妹が産まれ、親御さんになかなかかまってもらえなかったり、幼稚園や保育園で仲間に入れてもらえなかったりすると、「こっちを見てほしい」という気持ちから、わざと暴言を使って注目を集めようとするお子さんもいます。
「あの子の暴言はいつものこと」と周りが次第に慣れてくると、さらに注目を集めようとして暴言がエスカレートすることも珍しくありません。
1-2.暴言を言うと、子どもにどんな変化が起こる?
お手伝いをした子どもを褒めるとどんどんお手伝いをしてくれるように、子どもは日々の生活の中で経験(「お手伝いをしたら褒められた」)と学習(「お手伝いをすると褒めてもらえるから、もっとたくさんお手伝いしよう」)を繰り返しています。
この心の動きは暴言にも当てはまります。
例えば「『うるせー!!』と大きな声で叫んだら、周りが静かになり自分の思い通りになった」「『どけ!』と怒鳴ったら、人がいなくなっておもちゃを独り占めできた」というように、暴言を言うことで自分にとって都合のいいことが生じると、子どもはますます暴言を言うようになります。
このように「暴言」→「『自分の思い通りになった』という経験をする」→「暴言を言えば『自分の思い通りになる』と学習をする」→「ますます暴言を言うようになる」→「ますます『自分の思い通りになった』という経験をする」→…というループに陥ってしまうのです。
2.子どもの暴言に対してどう対応する?
暴言を言ってしまう背景について解説してきましたが、では、子どもの暴言をやめさせるにはどのようにすればいいのでしょうか。
やってしまいがちなNGな対応と、ぜひ試してほしいOKな対応を2つずつ紹介します。
2-1.NG対応①|すべての暴言に反応する
1つ目のNGな対応は「すべての暴言に反応する」です。 こちらはついついしてしまう対応だと思います。
子どもからの暴言にいちいち反応していると大人も疲れてしまいますし、「暴言を使えば、言うことを聞いてもらえる」「暴言を言えば、かまってくれる」という学習をますます強めてしまいます。
相手を傷つける言葉(「死ね」「キモイ」)などの言葉が出た際にのみ注意し、その他の暴言は聞き流して、「『自分の思い通りになった』経験」「暴言を言えば『自分の思い通りになる』学習」の流れを断ち切っていきましょう。
最初のうちは暴言がひどくなるかもしれませんが、次第に「暴言を言っても意味がないんだ」ということがわかりはじめます。加えてOKな対応を繰り返していくことで、暴言が自然とおさまってくるお子さんは多くいます。
2-2.NG対応②|怒りに任せて怒鳴る
2つ目のNGな対応は「怒りに任せて怒鳴る」です。
手塩にかけて育ててきた子どもから暴言が出てきたらとても悲しく、同時に怒りがこみあげてくると思います。
また、「このままじゃいけない!やめさせないと!」という気持ちが強くなり、子どもの暴言にかぶせるように「どうしてそんなことを言うの!」「あんたこそうるさい!」と声を荒げてしまう人もいるのではないでしょうか。(そのあと「どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」と後悔して落ち込んでしまうんですよね…)
暴言に対して怒鳴っても意味はありません。むしろ、親子の関係性が悪くなりますし、子どももますますヒートアップしてしまいます。
怒鳴るのではなく、落ち着ついた口調と凛とした態度で「そんなことを言うなら、もう相手にしません」とはっきり伝え、物理的・心理的に距離をとりましょう。
聞き流せないほど暴言がひどくなったところで距離をとることで、お互いにクールダウン(落ち着くための時間の時間をとること)をしていきます。
その後は大人側が引きずらず、何事もなかったように接することがポイントです。
2-3.OK対応①|「言われた側の気持ち」を伝える
OKな対応の1つ目は「『言われた側の気持ち』を伝える」です。
暴言に対して「なぜそのようなことを言うのか」「そんな言葉は使ってはいけない」と長々と話したところで、子どもには響いていないことがよくあります。
子どもからすれば大人の言っていることのどこが大切で、どうすればいいのかがつかめないのです。
そこで、短く・簡潔に「ママ(パパ)、悲しい気持ちになっちゃった」「嫌な気持だから、今はお話ししたくない」などと「暴言を言われてどう思ったか」を伝えてあげてください。
冒頭でも紹介した通り、子どもは自分本位で、他者の気持ちを考えられるほど成熟していません。
言葉に出し、伝えていくことで理解が進み「この言葉はママ(パパ)を嫌な気持ちにするんだ」という学習を促していくのです。
2-4.OK対応②|暴言を言わない場面を褒める
2つ目が「暴言を言わない場面を褒める」です。
「うちの子、ずっと落ち着きがなくて…」「しゃべりっぱなしでうるさくて仕方ないんです」という悩みを持ってカウンセリングに来られる方はよくいらっしゃいます。
しかしよくよく話を聞くと、「本の読み聞かせはおとなしく聞いている」「ご飯の時は黙々と食べている」などのように、「例外」を見つけることができます。
その例外を少しずつ広げていくことで、いつの間にか「例外」が「日常」になっていくのです。
そこでますは、お子さんの「暴言を言わずに、自分の思いや考えを伝えられた場面」を見つけましょう。
そして、「いま、ひどい言葉を使わないで伝えられたね!えらい!」と褒めてあげることで、「暴言を使わなくてもいいんだ」「使わない方が褒めてもらえるんだ」という経験と学習を進めていくのです。
<障がいの可能性?>
暴言の背景に発達障がいが隠れていることもしばしば見られます。 特にADHDのお子さんの場合は衝動性が高いため、瞬発的に相手を傷つけるような言動を行ってしまいます。自分でもコントロールできず、止めることが難しいため、周りから非難されてしまいます。 その結果、ますます相手を暴言や暴力で押さえつけようとしたり、反対に人との関わりを避けたりする傾向があります。 暴言の他に不注意さや多動性も見られる場合は発達障がいの可能性も考慮し、一度医療機関を受診しましょう。
3.子どもが暴言を吐く背後を想像しよう
暴言とは、他人を傷つけるような言葉や乱暴な言葉を指します。
私たち大人でもイライラしていたり、興奮している時につい暴言を使ってしまうことがありますよね。ですから、子どもに暴言をまったく使わせないというのは難しいでしょう。
大人と違って子どもは状況を読み取る力や、相手の立場になる想像力が未熟です。そのため、善悪の判断がつかず、言葉の意味や相手の気持ちを理解しないまま暴言を使ってしまいます。
そのまま放置していると暴言に対して間違った学習がされ、幼稚園や保育園、小学校などで適切な関係性が築けない場合もあります。
そうならないために、「どうしてこの子は暴言を言ってしまうのだろう」とその背景を考え、適切な対応を繰り返し行っていきましょう。
そうすることで、「暴言を言われると、相手はどんな気持ちになるのか」「どうして暴言を言ってはいけないのか」が伝わり、暴言を減らす手立てになるでしょう。
参考文献/記事
・「4歳児・5歳児の発達について」 香川県健康福祉部子ども政策推進局
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