【低学年】子どもが不登校になる前のSOSサインは?ストレス・問題行動への対策
この記事を書いた人
榊原なつき
- 心理カウンセラー
- 中学校教諭
- 小学校教諭
- 保育士
小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務
保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。
ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!
「小学生になってできることが増えてきたと思っていたのに、最近なんだか気になる行動が多い」と感じることはないでしょうか。
家を出る前に「お腹が痛い」と言ったり、「学校に行きたくない」と言ったり…
子どもの気になる問題行動は、子どもなりのSOSのサインかもしれません。
子どものSOSを早期に発見し対処することで、不登校などのトラブルを防ぎ、お子さんが安心して楽しい学校生活を送れるようサポートできます。
今回は、現代の子どもを取り巻く社会背景に触れながら、子どもの問題行動に秘められたSOSサインの具体例とその対処法をお伝えします。
目次
1.いま子どもたちの周りで起きていること
現代の子どもたちの周りでは、どのようなことが起こっているのでしょうか。
不登校やいじめなど学校で起きる問題は、高学年や中学生だけでなく小学校の低学年からも見られるようになっています。
1-1.不登校・問題行動の増加
文部科学省の令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によると、小学校の不登校の人数は8年連続で増加しています。
また小学校1・2年生の不登校児童数においても増加傾向がみられます。
いじめの認知件数は小学校2年生が最も多く、悪口やからかい、軽く叩かれる、蹴られるなどの被害が多くみられるようです。
低学年で問題が現れる背景には、まだ問題が小さい段階で教員に発見されやすいことも関係していますが、思い通りにならないストレスから行動に移してしまう発達の課題もあります。
1-2.コロナ禍による子どものストレスの増大
日々子どもたちはさまざまなストレスを受けて過ごしています。
近年では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって子どもたちも心理的なストレスをより多く受けています。
「国立成育医療研究センター」の調査によると以下のような変化が子どもたちの周りで起こっていることがわかります。
・遊びの方法や場所の制限を受ける
・学校の中での守るべきルールが増える(マスクの着用、黙食など)
・家にいる時間が長くなり、不規則な生活になる
・友だちや大人と話す機会が減る
・周りの大人のストレスを感じ取り、不安になる
ルールや制限を受けることが多くなったうえに、人とのコミュニケーションも思うように取れずモヤモヤとしたエネルギーは溜まる一方となり、その結果、疲れや苛立ちを感じやすくなるでしょう。
大人にとっても大きなストレスとなっている孤立や制限の問題は、子どもにとっても何気ない日常の生活を脅かしている原因になっています。
1-3.不登校や問題行動の裏にある子どもの気づかれにくいSOSサイン
大人と同じように子どもも日々ストレスを感じて過ごしています。
さらに新型コロナウイルス感染症の拡大によってストレスを抱えやすく、解消する機会も減っているといった現実があります。
ストレスを溜めてしまうことは、不登校やいじめの原因の一部として挙げられる「無気力」や「不安」を感じる状態につながる可能性があります。
しかし、子ども自身も明確な理由がわからないままストレスを溜めてしまうため、子どもは周りから見れば問題行動として捉えられてしまうような、気づかれにくい形でSOSのサインを出すことがあります。
そこで子どもが出すSOSのサインを理解し、早期に対応することが大切です。
2.子どもの問題行動から見えるSOSサインの具体例
それまで健康で元気に育ってきたお子さんが急に体調不良を訴えたり問題行動を起こしたりする場合、それは、子ども自身も気づかずに発しているSOSサインかもしれません。
なぜ子どもは大人が気づきにくいSOSサインを出すのでしょうか。
その理由と、具体的なSOSサインについて解説します。
2-1.子どもは言葉で思いを伝えることが苦手
小学校低学年の子どもは自分の思いを言葉で伝えることがまだ上手にできません。
体験した出来事について客観的に捉えて言語化する力がまだ発達途中のため、自分の周りで何が起こったのか理解することの難しさや、感じたことを言葉にすることに難しさがあります。
大人であれば嫌だったことやモヤモヤしたことがあれば、友人と喋って発散したり自分でストレス解消法を試したりできますが、子どもは自分にとって何がストレスだったのか気が付かず、知らない間に1人でストレスを抱え込んでしまっていることも。
抱え込んだストレスが心のコップから溢れてくると、身体症状や言動に現れはじめます。
周りからみると「突然どうしたの?」と思うこともしばしば。
原因が分からないので仮病やわがままに見えることもありますが、怒りや不安な思いを言葉の代わりに表現しているのです。
2-2.事例で紹介:子どもの問題行動はSOSのサイン
実際には以下のような行動が子どものSOSサインとして考えられます。
・かんしゃく、イライラ、暴力:「うるさいな!」などと怒鳴る。叩いたり、ものを投げたりするなど
・分離不安、甘え、赤ちゃんがえり:「ママどこ?」「ママ手伝って!」
・無気力:楽しいこともやりたがらなかったり、「いやだ」と拒否する
・登校しぶり:「学校に行きたくない」「学校まで送ってほしい」
・自傷行為:爪を噛む、髪を抜く、叩く
・微熱:37度前後の微熱が続いたり、朝熱があるが夜になると下がるを繰り返す
・腹痛:家を出る直前に腹痛を訴える
・朝起きられない:休日は起きられるのに、学校がある日はぐずる
お子さまによってSOSサインの現れ方はさまざまですが、「いつもと少し様子が違う」と感じた場合は、子どもがSOSを発している可能性も考えてみるとよいでしょう。
3.子どもの問題行動に隠された心理的ストレス
このような子どもの問題行動が現れる背景にはどのような理由があるのでしょうか。
子ども自身も気が付いていない様々な要因が子どもにストレスを与えているかもしれません。
3-1. 親から離れることへの不安
小学校は多くの人がいるなかで、たくさんのことを1人でこなしていくことが当たり前の環境になります。
それまで保育園や幼稚園に通っていた時には、送り迎えをしてもらったり自宅で保護者と過ごす時間が長かったりしましたが、保護者に頼れないことが増えていきます。
また、弟や妹がいるご家庭では1人でできることが増えた小学生のお子さんとゆっくり過ごす時間も減っているかもしれません。
3-2.環境の変化
新学期や長期休み明けなどは、人間関係や生活サイクルなどが変化することが多いです。
子どもは新しい先生やお友だちとのコミュニケーションに不安を感じたり、新しい時間割に慣れるまで知らず知らずのうちにエネルギーを消費しています。
ほかにも、
「思ったことを先生に上手く伝えられない」
「お友だちと何を話せばよいのかわからない」
「考え方や話が合わないことで喧嘩になってしまう」
「周りのお友だちの様子が気になってしまう」
などコミュニケーションに関する悩みは様々。
傍からは気付きにくい問題ですが、お子さま本人はつらい問題として感じていることもあります。
3-3.勉強についていけない
最初は大きなつまづきだと思っていなかった分野でも、少しずつ積み重なると急に授業が理解できなくなることがあります。
また計算の分野は得意でも図形の問題は苦手など、分野によって差が出てくることもあるでしょう。
■小学校低学年に多い教科別のつまずき例■
国語:漢字(書き順、止め、はね、はらい)、作文、発表など
数学:二桁の足し算引き算の「繰り上げ・繰り下げ」、九九、図形 など
3-4.生活習慣の乱れ、忙しさ
生活リズムが不規則になったり、睡眠時間が不足したりすることで日中に疲労感や不安感、苛立ちを感じやすくなることが分かっています。
またポテトチップスやチョコレートやグミなどのお菓子を食べることが増えたり、朝食や夕食を食べなかったりすることで、栄養のバランスが崩れてしまうことによってもストレスが増えることが明らかになっています。
特に休み明けや長期休暇明けには、規則正しい生活へ戻すことに強くストレスを感じることもあるでしょう。
3-5.発達障害
ADHDや自閉症など、発達障害の傾向がみられるお子さんにとっては、学校で多くの人と同じタイミングで同じことをするということは大きなストレスになる場合も。
学校での生活では周りの動きに合わせて気持ちを切り替えて行動したり、指示を聞いて行動したり、友だちの気持ちを優先して行動したりすることが求められます。
保育園では先生がきめ細かに声をかけてくれていても、小学生になると1人で行わなければならないことが多く、戸惑うことが増えるかもしれません。
なかでも軽度の発達障害は見過ごされやすいため注意が必要です。
また、知的発達は問題ない学習障害(LD)は小学校に入って初めて発覚することが多いといわれています。
4.子どものSOSに気付いたら?保護者ができる対処法
毎日多くの時間をお子さまと過ごしている保護者であれば、早い段階で子どものSOSサインに気がつくことができます。
お子さまのSOSサインに気がついた場合は、まず以下のようなことを実践してみましょう。
4-1.リラックスできる環境を作る
毎日多くのストレスを受けているお子さんは、不安な気持ちを抱いているはず。
まずは保護者がお子さまの味方であることを伝えましょう。
「毎日がんばっていたんだね」「たくさん心配なことがあったんだね」「休んでもいいんだよ」と声をかけたり、お子さまと一緒に過ごす時間を増やしたりするといいでしょう。
普段なら1人でできる着替えや準備なども、やってとおねだりされたら「いつも頑張ってるから特別だよ」と言って受け入れてあげる時があってもいいかもしれません。
子どもは自分と周囲の境界線が曖昧なので、周りの大人が焦りや不安を感じていると敏感に察知してより不安感が増してしまいます。
まずは保護者が落ち着いて、お子さまと一緒にリラックスできる環境を作っていきましょう。
4-2.学校の様子を知る
お子さまが話したくないという時には無理に聞く必要はありませんが、はっきりとした原因をお子さんが自覚していてお子さまから話してくれる場合は、そのストレスの原因を取り除けるといいでしょう。
お子さまに直接聞けない場合には、学校の先生と連絡を取って最近のお子さまの学校での様子を聞いてみると解決のきっかけになるかもしれません。
問題の解決も大切ですが、自分のために大人が動いてくれるということをお子さまが感じることも安心して過ごせることにつながっていきます。
4-3.子どもが自信をもって取り組めるものを見つける
学校では新しい勉強が次々に行われ、点数での評価や指摘を受けることも増えます。
「できなかった」が積み重なることで自己肯定感が下がってしまうことも。
その中でも日々の小さな「できた!」や「これは自信をもって取り組める!」というものを見つけていきましょう。
おうちのお手伝いや習い事、学校でのお勉強のささいなこと(丁寧に字を書く、漢字を覚える、素早く計算を解く)など、小さなことで大丈夫です。
5.それでも解決しないときは:周りのサポーターを頼ろう
保護者が行動してもなかなか解決しないことも少なくありません。
そんなときは周りにいるサポーターにどんどん頼っていきましょう。
専門知識をもった方はいつでも保護者の味方になってくれるはずです。
5-1.学校内の担任の先生以外のサポーター
学校には担任の先生以外にも、養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーなどが配置されています。
学校の事情もよく知っている第三者の目からお子さんをみてもらうことで、お子さまの困り感を知るきっかけを見つけられます。
「担任の先生に言うのは気が引ける」「担任の先生に話してみたけど解決しない」という場合はぜひ相談してみるといいでしょう。
5-2.専門機関への相談も有効
学校以外でも行政が運営しているサポートセンターにも子どもの行動について詳しい専門家が多く配置されています。
市のホームページなどにも多く掲載されているので、そこからクリニックの先生などを紹介してもらえることもありますよ。
◆代表的な相談機関
よりそいホットライン
0120-279-33(つなぐ・ささえる)
運営:一般社団法人社会的包摂サポートセンター
「どんなひとの、どんな悩みにもよりそって、いっしょに解決する方法をさがします」
子どもと家族の相談窓口
kodomotokazoku@jamhsw.or.jp(24時間受付)
運営:日本精神保健福祉士協会
「不安で落ち着かない毎日、誰かとつながることで乗り越えられることもあると思います。私たち精神保健福祉士は子育てを応援いたします。子どもたちの毎日を応援いたします」
◆都道府県や市町村が運営する主な相談先
役所(市役所、区役所など)、保健センター、精神保健福祉センター、児童相談所、少年サポートセンターなど
6.保護者が落ち着いて過ごすことで、子どもの安心感を高めよう
お子さまが安心して楽しく毎日を過ごすことができるよう、まずは家庭が落ち着く場であることが大切です。
そのためにはまず保護者自身が安心して過ごせる環境を整えることが重要になります。
保護者も心を安らげるために、家族はもちろん、友人や専門機関を頼ることも選択肢のひとつ。
保護者もお子さまも安心して楽しく毎日を過ごせるように、みんなで助け合いましょう。
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