指先の不器用さ…どうしたら改善する?親が押さえるべき適切な関わり方
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「折り紙の折り方が雑だな」「ハサミが危なっかしいな…」
うちの子、不器用かも?と思ったら、親は何をしてあげられるでしょう?
今回は、不器用さの原因と改善するために必要なこと、気を付けるべき親の心構えなどについて紹介しています。
不器用さで一番悩み、苦しんでいるのはお子様自身かもしれません。今回の記事を参考に少しでもお子様の生きづらさを改善してあげてください。
目次
1.不器用な子ってどんな子だろう

器用さをどう伸ばしていくかを解説する前に、まずは「不器用」について一緒に考えていきましょう。
不器用さとはどのような状態なのでしょうか、また不器用になってしまう要因にはどのようなものがあるのでしょうか。
1-1.子どもの不器用さは身体を操作する力
ここでいう子どもの「不器用さ」とは、簡単に言えば「身体をうまく活用できない状態」のことです。
例えば、「折り紙がうまく折れない」「お菓子の袋が開けられない」「シールがうまく剥がせない」といった、指先をうまく使えないケースが挙げられます。
また、「ボールを投げる」「真似をして踊る」など、体全体を大きく使った動きが苦手な場合も「不器用さ」と言えます。
専門用語では、指先を使った細かい運動を「微細運動(びさいうんどう)」、体全体を使った大きな運動を「粗大運動(そだいうんどう)」と呼びます。
どちらか一方だけでなく両方が苦手という子どもも多いのですが、年齢が上がるにつれて指先を使う場面(微細運動)が圧倒的に増えるため、「できない」「苦手だ」という意識が強くなりやすい傾向があります。
1-2.不器用なのはなぜ?
不器用になる要因はいくつか考えられます。まずは「慣れていない」場合です。
最近ではタブレットやスマホ、ゲーム機が普及したこともあり、普段の生活の中で指先を使う経験、体全体を大きく動かす経験が減っている家庭も珍しくありません。
時間をかければできるようになりますが、夫婦共働きでなかなかゆっくりと時間を作ってあげられない、人手不足から保育園や幼稚園でも個別に十分なかかわりができないといった背景から微細運動、粗大運動の経験を多く積むことができない子どももいます。
もう一つは「体感の弱さ」です。体を支える力が弱いため指先がぶれるなど、姿勢を保持できないことが不器用さに繋がっている場合もあります。
こちらも運動の機会が減ったことが1つの原因であり、もちろんタブレットなどの普及が影響していますが、公園での活動の規制、防犯意識の高まりなどから遊びたくとも遊べない現状があることも考えられます。
また、「心理的な拒否感」も考えられます。
「どうせ自分にはできない」「上手くなんてならない」という思い込みから不器用さに向き合うことがなくなり、微細運動や粗大運動を避けるようになって、ますます不器用さにつながるケースも考えられます。
2.不器用さを改善するために必要な環境づくりとは?

不器用さは指先だけのことではなく、体を大きく使った運動のことも含まれること、不器用になってしまう要因はどのようなものが考えられるかについて紹介してきました。
次に、そんな不器用さを改善するためにはどんなことが必要なのかについて、とくに微細運動の苦手さの改善に焦点を当てて解説していきます。
2-1.まずは…生活の中で指先を使う場面を増やす
はじめに紹介したいのが「指先を使う場面を増やす」です。
子どもの成長には日々の積み重ねが欠かせません。生活の中のちょっとしたことでも、毎日継続していくことで子どもの生活力を伸ばすことができます。
例えば洋服。筆者である私自身もそうですが、子どもが自分で着替えやすいようにとTシャツやトレーナーなど、「頭からかぶって腕を通せば着られる服」ばかり着せていませんか?
確かにボタンやチャックがあると着替えに時間がかかるし、面倒に感じてしまうかもしれません。もちろん最初から完璧にできる必用なんてありません。コツコツと練習していき、親子で「できた!」と喜ぶことで子どもは前向きになり、どんどんチャレンジしていきます。
指先を増やせる場面は日常生活の至る所にあります。いきなりいくつも場面を作るのではなく、1つずつクリアしていく楽しさを作りながら取り組めるといいですね。
2-2.指先を使う遊びを用意しておく
お子さんは今、どんな遊びに夢中ですか?ブロック、人形、本、アプリ、YouTube…。その中で「指先を使う遊び」はどれくらいあるでしょうか。
指先の器用さは、使わなければ改善が難しいものです。もちろん、ゲームやアプリなど画面上の操作でも指先は使いますが、不器用さの改善には、粘土や折り紙のように、実際にモノに触れ、その固さや重さ、感触を確かめながら指先を調整して動かす遊びもおすすめです。
大切なのは、子どもが夢中になれる遊びを「練習」としてではなく、あくまで「遊び」として取り組めるよう、そっと環境を整えてあげることです。
例えば「あけ移し」という遊びがあります。 2つの容器を用意し、片方に豆などを数粒入れ、箸やスプーンで空っぽの容器に移すシンプルな遊びです。
このとき、親は「もっとこうした方がいい」とアドバイスするのではなく、「惜しかったね」「移せたね!」と、挑戦したことや、できたことに注目して声をかけてあげると良いでしょう。
慣れたり飽きたりしてきたら、バリエーションを加えます。 例えば、「豆に色を付けて、同じ色の容器に移す(豆の色塗りも一緒にできると、なお楽しいですね)」「つまんだまま(すくったまま)一度高く持ち上げてから移す」などです。
こうした遊びを定期的に用意し、時々入れ替えてあげることで、指先の練習(微細運動)になるだけでなく、親子のコミュニケーションの時間にもなりますよ。
2-3.「自分にはできない」という感覚を取り払えるようにサポート
不器用さについては周囲からからかわれてしまうことも考えられ、「みんなはできるのに自分だけできない」「自分はずっとできないままなんだ」と深くとらえすぎてしまうこともあるでしょう。
このような傷つき体験を経験すると「できなかったこと」や「新しいこと」から逃げたり避けたりする子どもはとても多いです。これは年齢が上がっても尾を引いてしまうので、早めに解決してあげる必要があります。
そこで重要なのは「相対評価ではなく絶対評価で考えること」です。確かに周りには器用な子も多く、その子達と比べると苦手かもしれません。しかし、だからといって練習しても器用さが上達しないというわけではありません。
過去の自分、練習する前の自分と比べ、今がどうなっているのかを伝えたり見せたりすることで少しずつ自信をつけ、「自分にはできない」という感覚を拭い去ることができます。
例えば先ほど紹介した「あけ移し」のような遊びから成功体験を蓄えてもらいましょう。
「はじめはこれだけ時間がかかっていたのに、今はスムーズになったね」など具体的で分かりやすく伝えてあげることで、「大丈夫だよ」「きっとできるようになるよ」といった単なる励ましとは違った形で自分を認めていくことができるようになります。
3.不器用な子への適切な関わり方・親の心構え

不器用さの改善には「環境づくり」と「適切な関わり方」の両方が大切です。
先ほど「環境づくり」について解説しましたが、それと同じくらい「どう関わるか」も重要です。 なぜなら、大人の関わり方次第で、お子さんのやる気を引き出すことも、逆に損ねてしまうこともあるからです。
それでは次に、「適切な関わり方」のポイントを具体的にお伝えします。
3-1.先回りして手助けはNG
多くの保護者がやってしまいがちなのが、「あれをやっちゃおう」「これをしてあげたら楽だな」と子どもの行動を先読みして手助けしてしまうことです。
もちろん愛ゆえの行動ですし、「親として子どもためになることをしてあげたい」という気持ちは痛いほどわかります。特に不器用な子は見ているこっちが辛くなり、ついつい手や口を出してしまいたくなるでしょう。
しかしここで手伝っても一時の楽さしか得られず、いつまでたっても不器用さは改善されません。この子のことを本当に案じ、将来的にできるようになってほしいと願うのであれば、あえて手を出さない、本人に任せるという判断も必要なのです。
3-2.「できた」「できない」で評価しない
不器用な子どもが一番嫌がるのが「評価されること」です。
「上手じゃないね」「なんか変だね」「○○さんの方が上手だね」そんな言葉をかけられるほど、自信は失われ、ますます苦手意識が強くなります。
学校でそのような声掛けをなくすということはなかなか難しいですが、家庭なら0を目指せます。
日常生活の中で用意した指先使いの道具やおもちゃに取り組んでいる際には「できた」「できない」で考えるのではなく、「頑張ってるね」「挑戦してくれて嬉しいな」などと声をかけ、挑戦することの大切さ、地道に積み上げていくことの重要性に気付かせてあげてください。
4.その不器用さはもしかしたら発達の問題かも?

ここまで、ご家庭でできる不器用さの改善方法や、親御さんの心構えについて紹介してきました。
しかし、成長のペースには個人差があるとはいえ、紹介したような工夫を試しても改善が難しかったり、日常生活や園・学校生活で著しい困難を抱えていたりするケースもあります。
もちろん、不器用だからといって、すぐに「障がい」と結びつくわけではありません。ですが、もしお子様の困難さが目立つ場合は、その背景に医学的な要因が隠れている可能性も考えられます。
そこで次に、不器用さを引き起こす要因の一つとして知られる「発達性協調運動障害(DCD)」について解説します。
4-1.発達性協調運動症(DCD)とは?
発達性協調運動障害(DCD)は発達障がいの一つです。脳や神経に特定の病気がないにもかかわらず、年齢に見合った協調運動(※)が著しく苦手で、その結果、日常生活や学業に支障をきたしている状態を指します。
(※協調運動:複数の体の部位を同時に、または順序立ててスムーズに動かすこと)
私たちは普段、目で見た情報(視覚)と、手足の動き(運動)を連動させることで、様々な作業を行っています。
例えば折り紙を折るには、目で「角と角」「辺と辺」が合う場所を正確に捉え、脳が「適切な力加減」を判断し、「指先」をイメージ通りに滑らせる必要があります。このように「目(感覚)」と「脳(指令)」と「筋肉(実行)」が精密に連携することで、初めてまっすぐ折ることができます。
しかし、発達性協調運動障害(DCD)のある人は、これらの機能(感覚・脳・筋肉)の連携がうまくいかないのだと考えられています。それぞれがバラバラに働いてしまうために、一つひとつの動きはできても、一連の動作になるとぎこちなくなったり、新しい運動を習得するのに極端に時間がかかったりするのです。
4-2.もしも発達性協調運動症(DCD)だったらどうすればいい?
お子さんの不器用さがあまりにも強いと感じる場合は、小児科や発達障がい外来で一度相談してみることをお勧めします。
そこで「発達性協調運動症(DCD)」と診断された場合、作業療法士や理学療法士による専門的なリハビリ(療育)を受けることで、症状を和らげていくことができます。
この症状を薬で改善することはできません。ですが、専門家によるプログラムや指導を受けたり、その子に合った道具を活用したりすることで、日常生活での「困った」を減らしていくことを目指します。
5.不器用な子で終わらせない!環境を整え、少しずつ自信を育てましょう

今回は、子どもの「不器用さ」について、その概要から具体的な改善方法、ご家庭での関わり方の注意点、そして障がいの可能性までご紹介しました。
不器用であるために、周りから心無い言葉をかけられたり、自信を失うような経験をしたりすると、お子さんの自尊心が低下し、何事にも意欲を持ちにくくなる恐れがあります。
大切なのは、不器用さは練習次第で改善できる可能性があると伝え、周りと比べるのではなく「以前の自分」と比べてどれだけ成長できたかを認めてあげることです。
ご家庭では「練習」ではなく「遊び感覚」で取り組める環境を整え、親御さんから「できたね!」と認められる経験を積み重ねていくことで、不器用さは次第に改善されていくでしょう。
もし、不器用さが著しかったり、練習してもなかなか改善しなかったりする場合は、医療機関の受診も検討してください。もしかしたら、不器用さの背景に障がいが隠れているかもしれません。仮にそうであったとしても、早期から専門家の指導を受けることで症状の緩和が期待できます。
お子さんの不器用さで悩んでいる方、あるいは、からかわれないか心配している方は、ぜひ今回の記事を参考に、お子さんが自発的に学び、練習できる環境を整えてあげてくださいね。
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