順番を待てない・守れない子への対応は?待つことをどう教える?
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
おもちゃを使う順番を待てない、すべり台の順番待ちの列を抜かしてしまう…。
親は、「他の子は待てているのに、どうしてうちの子は待てないの?」という気持ちになるかもしれません。
3歳になって簡単なルールを守ることができるようになってきたにもかかわらず、順番を守れずぐいぐい進んでいく様子を見ると心配になることもありますよね。
この記事では、順番が待てない理由や心理、順番を待てないときの対応法をお伝えします。具体的に順番を待つことをどのようにして教えていけばよいのかも紹介しますので、参考にしてくださいね。
目次
1.子どもが順番を待てないのはなぜ!?
順番を待つことは、子ども同士が仲良く遊ぶために大切です。大人になってからも、社会の中で順番を待つ場面は数えきれないほどありますよね。
一見、当然のように思われる「順番を守る」「順番を待つ」ことが難しいのはなぜでしょうか。
3歳ごろの子どもにとって、順番を待つのが難しい理由を見ていきましょう。
1-1.「順番を待つ」ことの理解が難しいから
「次は○○ちゃんだよ」のような簡単な順番を守れるようになるのは、2歳~2歳半ごろと言われています。
交代でおもちゃを使う、名前が呼ばれる順番を待つなどルーティーンになっていることは、短時間であれば待つことができるようになります。 とは言え、常にどのような場面でも順番を待てるようになるには、もう少し時間がかかります。
はじめての場面や見通しが立たない場面では、「なぜ待たないといけないのか」が理解できず、順番を守ることが難しいこともあるでしょう。
1-2.自分がしたい気持ちが強いから
好奇心旺盛な3歳ごろ。自我が強くなる時期を経て、何でも興味を持ち「自分がやってみたい」という気持ちが強まる時期でもあります。
まだ他の子の状況や気持ちを理解するのは難しい部分も大きいため、「待たなくてはいけない」よりも「自分がやりたい」が勝ってしまい順番を待てないこともあるでしょう。
例えば、自分が使いたいおもちゃを見つけると「あれで遊びたい!」という気持ちが先行し、それを使っている他の子や順番を待っているまわりの状況は目に入らないことも多いです。
それが結果的に、順番を守れないことにつながるのです。
1-3.見通しが持てないから
順番を待つことが難しい理由の1つに「どれだけ待てばよいのか分からない」と見通しが持てないことが挙げられます。
3歳ごろは時間の感覚もまだ獲得途上で、「時間の経過」と「自分の番がくること」が結びつかないことも少なくありません。
「本当に自分の番がくる?」と不安になったり、「いつまで待てばいいの?」とイライラしたりすることもあるのです。そのことが、順番を守れず抜かしてしまうことにつながることもあります。
2.子どもが順番を守れないときの対応法
順番が守れない理由は、発達段階による部分も大きいことが分かりました。
見通しが持てないことも子どもにとっては大きなストレスです。 では、実際に順番が待てない状況になったとき、親はどのような対応をするのが望ましいのでしょうか。
ここでは、順番が待てないときの対応法をご紹介します。
2-1.順番を待つ必要性、理由を伝える
まず、順番を待つ必要があることをその子に合った言葉で伝えます。
「お友達が使ってるから」「おもちゃが1つしかないから」など、3歳ごろの言語理解力に合わせて簡潔に説明するのがよいでしょう。1度にたくさんの情報を伝えるとかえって混乱してしまいます。
そして「終わるまで待つよ」と明確に伝えます。
状況に応じて「お友達が悲しいよ」「抜かされたら嫌な気持ちになるよ」など、周囲の状況の理解を促す説明を加えるのもよいでしょう。
2-2.「したい」気持ちを受け止めて代弁する
「自分がしたい」という気持ちがあること自体はいいことです。
「やってみたいね」「はやくかわってほしいんだね」などと共感的な言葉をかけ、まずその気持ちを受け止めましょう。
自分の気持ちを代弁してもらえたことで子どもの気持ちも落ち着き、大人の話に耳を傾けたりまわりの状況に目を向けたりできるようになるでしょう。
2-3.自分の番がくる目安を伝える
したい気持ちを受け止めて代弁することに加えて、どうなれば自分の番がまわってくるのかを伝えましょう。
その際、「あとちょっと」などと曖昧な伝え方をすると結局どれだけ待てばよいのか具体的に分からず、グズグズしてしまうことにつながります。
「あと3人終わったら、◯◯ちゃんの番だよ」「時計の針がここに来たら、できるよ」など、子ども本人が見て確認できるような目安を提示するのがよいですね。
2-4.叱ることは逆効果
順番が待てないとき、「だめでしょ!」「どうして待てないの!」などときつく叱るのは避けましょう。
子どもにとっては、自分の気持ちを受け入れてもらえず、怒られたという感情だけが残ってしまいます。
待たなければならない状況や理由が理解できないままになり、何度も同じことを繰り返してしまうこともあるでしょう。ひいては自己肯定感が下がることにもつながります。
叱責だけでなく、そのときの子どもの気持ちに寄り添い、順番を待つ必要性などを伝えるようにしましょう。
3.子どもが順番を守れるようにするためには?
では、どのようにすれば順番を待てるようになるのか?気になりますよね。
ここでは、具体的に順番を待つ練習になる取り組みをお伝えします。日常生活の中や遊びの中で実践できるものもあるので、試してみてくださいね。
3-1.小さな“待つ経験”をする
日常の中で、小さな待つ経験をするのもよいでしょう。
「今はママの番」「次が自分」と順番を意識できる機会をつくりましょう。
例えば、2人分のジュースをコップにいれるとき。「ママの分を先にいれるね、ママの次が○○くんね」などと短い時間待ってもらうようにします。
そして、その間待てたら「順番を待ってくれてありがとう」と伝えます。子どもはママに感謝してもらい「いいことができたんだ」と、待つことに対してよい印象を抱くことができるのです。 小さなことですが、その小さな積み重ねが順番を守ることの意識づけにつながっていくのです。
3-2.ルールや順番のある遊びをする
簡単なルールのある遊びを取り入れるのも、順番を待つことに意識を向けるきっかけになるかもしれません。
3歳の子どもにとって、複雑なルールは負担になるのでシンプルなルールで楽しめるものがよいでしょう。
すごろく、トランプなど順番に行うゲームはおすすめす。かけっこする、なぞなぞに答える際にも「○○ちゃんの次は△△くん」などと順番をつけて行ってみるのもよいですね。
家庭でも、身近なことから順番を待つ練習をすることができます。
積み木をママと交代で高く積み上げる、パパと交代でゲームをするなど「今はママやパパの番」「次は自分」ということを意識できることに取り組むとよいでしょう。
順番を守ることが、楽しく遊ぶことにつながっていると気づくきっかけになります。
3-3.「待つ」方法を具体的に伝える
「待つ」状態は説明しても伝わりにくいこともあるので、実際に待つことを一緒に経験しながら説明すると効果的です。
例えば、スーパーのレジなどで「お会計をしてもらうために、ここに1列に並ぶよ。前から順番で、1人終わったら前に進むよ」などと順番待ちの列の構造を説明しましょう。
また、公園のブランコなどを待つ際も、地面に枝などで丸を書きその中に立ち「ここで待とうね。空いたら行っていいよ」など、どのように待てばよいか、どうなれば自分の番がくるかを視覚的に伝えるとよいでしょう。
加えて、「今、うまく待てているよ」と待つ姿勢がとれていることをほめてあげると、安心して待つことができます。
4.発達障がいの可能性も視野に入れる
ここまで、順番が待てないときの対応や順番を待てるようになるコツを見てきましたが「順番を待つことになると、かんしゃくがひどい」「じっと待っていられない」「何度説明しても変わらない…」という場合は、発達障がいの可能性を考えても良いかもしれません。
もちろん、「順番が待てない=発達障がい」ではありません。
しかし、発達障がいの子が特に苦手なことやその対処法を知ることで、よりスムーズに対応することができるでしょう。
4-1.発達障がい児にとって「順番を待つ」には難しい要素が多い
「順番を待つ」ことには、発達障がいの子にとって難しい要素がたくさん詰まっています。
衝動性や多動傾向を特性とする発達障がいの子は、注意機能の低下により行動抑制が難しかったり、欲求を抑制することがうまくいかず衝動的に動いてしまったりすることがあります。
保育所や幼稚園で勤務する保育者277名を対象にした調査では、90%以上の保育者が多動や衝動性のある「順番を待てない」子どもに対応した経験があると回答しています。
さらに、「順番が待てない」ことに困り感を示す保育者が多いことも分かりました。
また、「友達に手を出す」「自分の思い通りにならないと激しく怒る」など順番を守れないことに付随して生じる状況については、さらに困り感が増すという結果も出ています。
順番を待つときには、
● 「待つ必要がある」という状況を判断すること
● 「いつ自分の番になるのか」見通しを持つこと
● 何もせずじっと時間の経過を待ち、行動を抑制すること
● 目に見えている目的のものに向かう欲求を抑えること
● 順番を抜かすことでまわりに与える影響を考えること
などの要素が必要ですが、これらは発達障がいの子どもたちが苦手と言われていることでもあります。
順番を待たなければならないときには、より丁寧で具体的な説明が重要です。
発達障がいの子どもたちは視覚優位の子が多く、視覚的な情報を提示することが効果的なことが多いです。
前段落3-3に挙げたように、具体的にどのように待てばよいか順番を待つ構造を伝えましょう。そして、前段落2-3でも述べたように、待つ時間の目安を具体的に伝えることも重要です。
5.順番を待てない子には共感と具体的な説明がカギ
今回は、子どもが順番を待てない理由と対応のヒントをお伝えしてきました。
子どもが順番を待てないときには、子どもの気持ちを受け止め代弁すること、状況を具体的に説明することが大切です。
生活の中や遊びを通してできる小さな待つ練習も、日常の中にぜひ取り入れてみてくださいね。
順番を待つことができた達成感や感謝された喜びから「待つこと」に意識が向くようになり、順番を守ることにつながっていくでしょう。
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参考文献
・和田 美香「衝動・多動傾向のある子どもに対する保育者の 困り感と対応の現状」保育学研究第59巻第2号
・一般社団法人 日本保育者未来通信_2歳児の育ち_社会性