ABA療育は子どもの発達が不安なママへおすすめ!お家でできる方法や効果を紹介
この記事を書いた人
工藤りえ
- 幼稚園教諭
- 保育士
幼稚園・こども園にて12年勤務。主にクラス担任と障害児保育を経験してきました。
特に障害児保育に関心を持ち、子どもの自己肯定感を高める関わり方を勉強しています。
小1・2歳の兄弟がおり現在は、ママ向けWebマガジンや保育メディアなどで記事執筆を行っています。
得意なことは、ダンス、歌遊び、読み聞かせ、リトミックです。
お子さんの様子に不安を感じるママは非常に多く、中でも「育てにくさを感じる」「周りの子どもと我が子を比べると発達が遅れている気がする」そんなお悩みを抱えるママもいらっしゃるかと思います。
そんなお悩みや不安を感じる方へ、児童発達支援の経験を持つ筆者が、お家でできる「ABA療育」の方法や効果についてお話いたします。
児童発達支援や障がい児保育の現場で実際に使われている療育方法や、ABA療育で子どもに関わりどのような変化があったかの事例も含めてわかりやすくお伝えしますので、ぜひご覧ください。
目次
1.ABA療育とは?
ABA(Applied Behavior Analysis=応用行動分析)は、主に発達障害を持つ子どもの療育で活用されている方法です。
「望ましい行動を促進し、問題行動を減少させる」ことが目的で、科学に基づく心理学的なアプローチをおこないます。
アメリカやカナダでは多くの子どもへの有効性が認められており、日本でも取り入れている施設が増加しています。
1-1.「行動の原理」を活かした療育法
ABA療育は、子どもの「行動の原理」を活かし、問題行動を減らしていきます。
そこで、まずは「行動の原理」について簡潔に説明していきますね。
「行動の原理」とは、子どもが行動を起こす理由や方法を説明するルールをいいます。
つまり、子どもが行動するときに、何かを得たり避けたりすることが、その行動を決定する基本的なルールなのです。
子どもが起こす望ましくない行動を減らせるよう、ルールを一貫して伝えていくのがABA療育になります。
1-2.自閉スペクトラム症の傾向がある子に効果的
ABA療育は、自閉スペクトラム症の子どもに非常に効果があると言われています。
記憶力が良くイレギュラーなことが苦手な子が多い自閉スペクトラム症の子にとって、行動をパターン化して学べるところが適しています。
また、自閉スペクトラム症でなくとも、こだわりが強すぎる子や癇癪(かんしゃく)がある子にも効果的です。
「できた」をコツコツ増やしていくのがABA療育の良いところであり、ABA療育は他者とのコミュニケーションを経て効果を発揮するので、コミュニケーションを取るのが苦手な子にもおすすめの方法ですよ。
2.ABA療育で期待できる効果
ABA療育では子どもやママにとってどのような効果が期待出来るのか?
詳しくお伝えしていきますね。
2-1.自己肯定感が高まる
ABA療育は、「良いことをすると嬉しいことがある」という行動パターンを繰り返し実践して学びます。
子どもの「できた」が増えて喜びに繋がるため、自己肯定感が高まりますよ。
自己肯定感が高まると、自信がつき挑戦心や積極性が身についていきます。
ABA療育を通して、子どもが自分自身を好きになるきっかけになることも多いですよ。
2-2.強すぎるこだわりや困る行動が減る
「望ましい行動が増える」ことで、「望ましくない行動」が減っていきます。
ママはもちろん、望ましくない(困る)行動が減ると、周りの人や本人も過ごしやすくなります。
強すぎるこだわりや困る行動は、一見すると周りの人が困ると思いがちですが、子ども本人も過ごしにくさを感じていることがあります。
望ましい行動が増えると、子どもが楽しい・過ごしやすいと思える時間が増えるのも、大きな効果につながります。
2-3.他者とのコミュニケーションがスムーズになる
ABA療育は、子ども本人だけでなく周りとのコミュニケーションあってこそ実践できる方法です。
そのため、他者に興味が薄く、コミュニケーションを苦手としている子どもに効果的ですよ。
子どもは、自分の気持ちを理解してもらえた!とわかったとき、相手への信頼を築けます。
はじめは「先生とタッチをする」「ママにシールをもらって貼る」など、小さな行動のみのやり取りでも良いでしょう。
少しずつ他者とのやり取りの楽しさを知り、コミュニケーションがスムーズになる効果が期待できるのがABA療育の良いところですよ。
3.ABA療育の方法
ABA療育については保護者向けの講習も増えており、専門的な資格がなくても正しい方法を知ることでお家でも実践することができます。
ここでは、ABA療育の方法をわかりやすく説明しますね。
3-1.子どもの行動を分析する
子どもがいつも同じようなタイミングで、ママが困る行動をしてくるときはありませんか?
子どもの行動には、必ず理由や譲れないルーティンがあります。
「どういったタイミングで、どのような行動をとるのか」を、しっかり観察してみましょう。
できればママ1人だけではなく、ご家族や先生など周りの人にも一緒に行動分析をしてもらい、意見や情報交換をするとより精度が上がりますよ。
行動分析をしていくと、子どもの「行動の目的」がわかってきます。
ママにとっては困る行動が、子どもにとっては気持ちを伝える手段であることが多く、子どもはどんな気持ちなのか?どうしたいのか?を理解しましょう。
3-2.「望ましい行動」を強化し「望ましくない行動」を弱化する
【望ましい行動を強化する】
人は、行動したあとに良いことがあると、また同じことをしてみたくなります。
例えば「洗濯物をたたむの手伝って」と言われ、たたんだあとに「きれいにたためたね」と褒められると、次もきれいにたたもう!という気持ちになりますよね。
このように、「きっかけ」→「行動」のあとに「良いこと(結果)」があって、また「同じ行動が起きやすくなる」ことを、ABA療育では「強化(きょうか)」といいます。
【望ましくない行動を弱化する】
反対に、人は行動をしたあとに自分にとって悪いことが起きると、同じことを避ける傾向にあります。
例えばスーパーに行く前に、「お菓子は買わないよ」と言われ、スーパーの中で「お菓子がほしくて泣く」と、子どもは「お菓子を買ってもらえなかった」という経験をします。
「きっかけ」→「行動」のあとに「良くないこと(結果)」があったためにそのあと「同じ行動は避ける」ことを、ABA療法では「弱化(じゃっか)」といいます。
療育施設では弱化を用いることは少ないですが、日常生活では弱化を用いて子どもの困りごとを減らすことで、ママの負担が減る傾向にあります。
3-3.ABA療育の具体例
例えば、棚の上にあるお菓子を食べたい子どもがいるとします。
「ママ、お菓子食べたいから取って」と言える子もいれば、言葉で伝えず何らかの行動で気持ちを表す子、伝えられないもどかしさから癇癪を起こす子、子どもによってさまざまな反応をするでしょう。
今回は、上手く伝えられず癇癪が起こるといった「望ましくない行動」があるお子さんを例に説明します。
【お菓子を取って欲しい】→【泣く】=【ママがお菓子を取ってくれる】
ママにとっては、お菓子を欲しがる度に泣かれるのは困りますよね。
しかし、子どもにとっては「お菓子を取ってもらえる手段」なのです。
そこで、子どもが思うこの方程式を変え、
【ママが困る行動を減らす】または【代わりの良い行動を増やす】必要があります。
上記の場合にABA療育をするなら
- 棚の上にお菓子を置かない(=環境を整える)
- お菓子の時間を目に見えるかたちで決める(=環境を整える)
- 「お菓子の絵カード」をママに渡すとお菓子をもらえる(=強化)
というやり方になります。
ABA療育を繰り返し行うことで、子どもは「泣いてもお菓子は取ってもらえない」ことを学びます。
やがてママの困りごとが1つ減る、となるでしょう。
3-4.関わる大人の対応に一貫性を持たせる
ABA療育で大切なのは、関わる大人が同じ対応をするように心掛けることです。
例えば、ママは「良い」とすることをパパは「だめ」とすると、子どもは混乱します。
対応に一貫性がないと、子どもはもどかしくどうして良いかわからなくなるでしょう。
どのような行動のときにどう対応すべきか、ご家族や園の先生など子どもに関わるなるべく多くの大人で情報交換をしながら良い方法を探していくのがおすすめですよ。
対応が変化し続けてしまうと子どもが困ってしまうので、決めた対応はなるべくずっとやり通すのをおすすめします。
4.ABA療育を取り入れた保育の実例
現在、多くの療育施設でABA療育が取り入れられています。
保育園・幼稚園・こども園でも、障がい児を受け入れている園で取り組んでいるところがありますよ。
ここでは、私が実践したABA療育を取り入れた保育の実例をご紹介します。
4-1.自閉スペクトラム症のAちゃん(年少クラス)
年少のAちゃんは食べ物のシールが大好きな女の子。
2歳で自閉スペクトラム症と診断がつきました。
発語がなくこだわりが強いことから、毎日決まったルーティンを非常に大切にしていました。
イレギュラーな日程の日は、泣く・噛みつく・自傷行為をする、といった行動を取ることも多くあり、保育室の戸を開けて廊下に飛び出していくこともありました。
そこで、どんなときに保育室を飛び出すのか?保育者一同でAちゃんの行動パターンをよく観察し、情報交換して分析をしたのです。
よく行動観察をしたところ、Aちゃんはクラスで歌の時間が始まると保育室を出て行くことが多いことがわかりました。
【歌が始まる】→【保育室を出る】=【歌の時間を回避できる】
という行動パターンが、Aちゃんの中でできあがっていたようです。
そこでABA療育を実践します。
- 歌の時間をあらかじめ絵カードで予告する
- 歌の時間が始まるときに、担任とタッチをしてから加配の先生と保育室から出て戸の近くで過ごす
- 歌の時間が終わったら保育室に戻り、専用ボードに食べ物のシールを1枚貼る(=強化)
Aちゃんは慣れるまで戸惑っていたものの、慣れると保育室を飛び出すことがなくなりました。
先生とのやり取りを通してお友だちとのコミュニケーションも少しずつ取れるようになり、卒園する頃にはお友だちの歌を隣で聴いて過ごせるようになりました。
4-2.癇癪が多いBくん(年中クラス)
年中のBくんは、絵本を音読するのが得意な男の子です。
こだわりが強く些細なことで癇癪を起こし、大泣きしながら仰向けになることが多い子でした。
診断はつかないグレーゾーンでしたが、あらゆる場面で癇癪を起こすため、園での過ごしにくさが少しでも減るような関わりを目標としていました。
お片付けの時間になると、切り替えが苦手でよく癇癪を起こしていたBくん。
そこで、行動分析をし、職員間で情報交換をしながらBくんに適したABA療法を実践しました。
【お片付けが始まる】→【癇癪を起こす】=【お片付けを回避できる】
という行動パターンが、Bくんの中でできあがっていました。
そんな問題行動を改善するために、以下のように対応を徹底しました。
- お片付けが始まる前に、視覚で理解できるよう予告する
- 泣かずに過ごすと、お片付け後に大好きな絵本を1冊読める約束をする
- お片付けが始まるときに泣かずに過ごしたら、Bくんが大好きな絵本を読める時間を設ける(=強化)
Bくんは初めは戸惑い泣いていたものの、繰り返し実践することで絵本を読めることが楽しみになりました。
お片付けの時間も泣かずに過ごし、年長になると自分からお片付けをするようになりました。
5.ABA療育は発達に心配があるお子さんに効果的
ABA療育は、自閉スペクトラム症だけでなく困る行動がある子には試してみると効果が得られることがあります。
子育てをしていて、育てにくさを感じたら試してみるのも良いですね。
その際には、通園先の先生に相談したり、ABA療法を教える講座を受講したりして知識をつけてから行うと、よりスムーズに実践できますよ。
子育てをしていて、ママが大変だと感じたら少しでも過ごしやすくなる方法を試してみてください。
親子で過ごしやすい時間が増えて、ママの負担も減ることを願っています。
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主な参考文献
・『わが国の自閉症スペクトラム障害における応用行動分析学をベースにした実践研究の展望 ー2012年から2017年ー』須藤邦彦(山口大学)
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