
字が下手、汚い…それってディスグラフィア?書字障害の特徴と支援法
この記事を書いた人


狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「子どもの書く文字のバランスがおかしい」
「書くことを極端に嫌がる」
お子さんについてこのようなことを感じたことはありませんか?
もしかしたら単に「字が汚い」、「面倒くさがり」なのではなく、書字障害(ディスグラフィア)なのかもしれません。
今回は書字障害の特徴や原因、抱えやすい問題と書字障害かどうかの見極め方、そして支援方法について解説していきます。
書字障害は甘えているわけでも怠けているわけでもありません。様々な支援方法がありますので、お子さまがストレスなく文字と向き合える方法を探してあげてください。
目次
1.書字障害とは?特徴や原因
書字障害とは字のごとく「文字を書くことの障害」です。
筆者の私が支援する場面でも、書字障害について誤解している方が多くいらっしゃるので、具体的な支援方法を解説する前にまずは書字障害の特徴や原因について解説していきます。
1-1.書字障害の特徴
書字障害の子どもは知的発達には問題がないとされています。
言っていることや書いてあることは理解できるのに、書くことだけが苦手という特徴があります。
書字障害の子どもが書く文字は「バランスが悪い」、「書き順が不自然」、「枠からはみ出して書いてしまう」ことが多く、そのことを指摘されることが嫌でだんだんと文字を書くことを避けるようになる場合があります。
1-2.書字障害の原因
書字障害の原因については、実ははっきりとわかっていません。
有力な説としては、目や耳から得た情報を処理する脳機能に偏りがあると考えられています。
特に視覚認知力が弱いと文字の形を正しく認識することができず、バランスの崩れた字になったり、字そのものを覚えることができなくなり、正確な文字を書くことが難しくなります。
2.書字障害によって起こる問題ってなんだろう
書字障害について概要を確認できたところで、次に書字障害によって子どもたちが直面する問題について解説していきます。
2-1.授業についていけない
1つ目の問題として「授業についていけない」というものが挙げられます。
一般的に学校では板書されたものをノートに移して授業が進められます。デジタル化が進められたとはいえ、まだまだ文字を書く機会は多くあります。
書字障害で文字が上手く書けず、頑張って書こうとすると「文字を書くこと」に集中してしまうため授業内容の理解が遅れてしまいます。
理解が遅れると授業や学校が楽しくなくなり、いじめや不登校につながってしまう可能性もあります。
2-2.「やる気がない」と誤解される
書字障害の子どもは文字を書くことを嫌がりますが、素直に「文字が書けないから」「文字を書くのが苦手だから」と言うとは限りません。
「みんなができていることが自分にはできない」という現実を受け止めきれず、「めんどくさい」と言ってみたり、文字を書くように促すと「うるさい!」と怒り出してみたりするかもしれません。
書字障害への理解のない大人からすると「甘えている」「怠けている」という評価になってしまう場合があります。
2-3.文字を書くことがコンプレックスになる
文字が上手く書けない、書くのが遅いとクラスメイトからからかわれてしまうこともあるでしょう。
本人は一生懸命やっていても上手くいかず、大人からも「やる気がない」と思われてしまう。
そんな環境が続けば、次第に文字を書くことがコンプレックスになり、ますます文字を書くことを避けるようになります。
こうなってしまうと学習障害による困り感を改善しようと周囲が働きかけようとしても強い拒絶反応を示し、ズルズルと時間だけが過ぎてしまいます。
3.書字障害の子どもへの支援方法は?
書字障害によって子どもが直面する問題は様々であり、家庭環境や子どもの性格によっても変わってきます。
そんな問題に対して私たちにはどのような支援ができるのでしょうか。
次に書字障害の子どもへの支援方法について解説していきます。
3-1.書けないことを責めない
一番大切なことは「書けないことを責めない」ことです。
他の子どもと比較し、「どうしてうちの子だけできないの」と悲しくなり、「たくさん練習すればできるようになるからやりなさい!」と強い口調で責めたくなる気持ちはわかります。
しかしすでに紹介した通り、書字障害の原因は脳にあります。やみくもに書けば書くほど改善するというものではありません。
たくさん練習しているのに上達しない我が子を見てさらに悲しい気持ちになったり、子どもに更なる努力を求めたりしてしまうことになるでしょう。
また、つらい気持ちになるのは親御さんだけではありません。子どもの1番の理解者である親から強制的に苦手なことをさせられるというのは、子どもにとってかなりきついことです。
できない自分、親の期待に応えられない自分を責め、自信をなくし、ますます文字に対して苦手意識をもってしまいかねません。
そのため文字が書けない、書くのに時間がかかるとしても、「大丈夫だよ」と受け入れてあげてください。
「合理的配慮」の考え方が広まった現代では「文字を書く」以外の方法で社会生活を送ることができます。
文字を書くことに固執せずに、まずは子どもが楽しく毎日を送ることを第一に考え、「自分はこれでいいんだ」「パパとママは自分のことを認めてくれているんだ」と感じてもらえるような関係性を作り上げてください。
3-2.書く以外のアプローチを一緒に考える
令和の小学生はタブレットを1台ずつ支給されており、昭和・平成と比べるとかなりデジタル化が進んでいます。
そのため板書が苦手なら黒板の写真を撮って記録を残しておく、友達のノートを撮らせてもらうなどの工夫の幅が広がっています。
テストについてもキーボード入力が認められたり、代筆ができたりと、たとえ書字障害があっても周囲のこと同じように学習に参加できるようになりました。
しかし、親御さんや学校の先生が支援方法を提供し、子どもがただそれを受け身的に享受することを私はあまりよしとはしません。
子どもが何に困っているのか、どんなことを難しいと感じているのか、どうすれば困り感を解消することができるのか子ども自身にも考えてもらい、それを周囲に伝えていく力は今後必ず必要になってきます。
小学校低学年では自分の思っていることを完全に言葉にして伝えることは難しいかもしれません。
それでも自分なりに考え、伝え、生活に反映されていく経験を積んでいくことで、書字障害と上手く付き合いながら暮らすことのできる子どもへと育っていくのです。
3-3.援助要求の仕方を親子で学ぶ
アプローチを一緒に考えていくのと同時に、援助要求の仕方も学んでいく必要があります。
援助要求とは「自力で解決できないときに、他者に助けを求める行動」を指します。
子どもは成長するにつれて親の手から少しずつ離れていきます。どんなに我が子がかわいくとも、いずれ親の手が届かないところで、子どもの力だけで暮らしていかなければならなくなります。そのときにお子さんが困らないように、周囲に助けを求める、適切な配慮を求める力を育てていく必要があります。
文字を書けないとき、書くのに時間が掛かってしまうときに、親御さんが手や口を出し続けると子どもは育ちません。
子どもから「教えてほしい」「手伝ってほしい」という発信を待ち、その後解決することで初めて子どもは援助要求の仕方を学んでいくのです。
もちろん初めから完璧を目指すのではなく、お子さんの段階に合わせて少しずつゴールを設定していくことが大切です。
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★コラム:書字障害かも?と思ったらどこへ相談する?
書字障害の可能性がある場合は、まず医療機関を受診することをおすすめします。かかりつけの小児科医でも大丈夫です。
もし小児科医では判断が難しい、もう少し詳しく見てもらいたいという場合は、「発達障がい外来」のある病院に紹介状を書いてもらいましょう。
書字障害と診断されると、学校生活や試験において合理的配慮を求める際にスムーズに手続きが進みます。その後は、療育機関を活用するのも良い選択です。
ただし、施設によっては遊びや預かりをメインにしているところもあるため、できるだけ心理士や作業療法士などの専門職が在籍し、個別支援を行っている施設を選ぶことが大切です。
しっかりとしたサポートを受けながら、子どもの成長を見守っていきましょう。
4.「書けない」=「ダメ」ではありません
今回は書字障害について解説してきました。
書字障害は甘えでもやる気がないわけでもなく、脳機能のバランスのズレによって文字を正しく認識することが難しくなるため生じていると考えられています。
デジタル化が推進されているとはいえ、学校場面ではまだまだ「書く」ことを求められます。
書字障害の子どもは書くことに精一杯になり、授業についていけなくなったり、周囲から誤解され自信をなくし、書く行為自体がコンプレックスになったりしてしまう可能性があります。
そのため、書字障害のお子さんに対しては文字を書くことを強要するのではなく、書く以外のアプローチの仕方を一緒に考える、援助要求の仕方を学ぶことで、困り感を低減させ、「文字を書かなくてもみんなと一緒に暮らせるんだ」ということに気付いてもらう必要があります。
そのあとで無理のない範囲で専門的なトレーニングを受けていくことでさらに困り感を少なくしていくことで子どもの生活の質はグンと向上します。
「書けない」=「ダメ」ということでは決してありません。お子さんに合った方法で長い目線で関わってあげてください。
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