
子どもを「叱る」のは悪いこと?~叱るメリットや「叱っても聞かない…」お悩みの解決法をご紹介~【前編】
この記事を書いた人


多村美穂
- 保育士
元保育士のWEBライターです。
保育園勤務時は、主に0~2歳児を担当していました。
現在は、大きくなってきた子どもを見守りながら、育児・教育を中心に様々なジャンルの記事を執筆しています。
保育園にて勤務した経験や、自らの子育てを通して得た知識を、分かりやすくお伝えしていきたいです!
子育てをしていると、子どもを叱らなければならない場面に出会うことは多いですよね。
子どもを叱った後に「叱り過ぎてしまった」と罪悪感を抱えたり、「この叱り方で合っているのか分からない」と不安になったりしたことはありませんか?
そこで前編となるこの記事では、子どもを叱るメリットや、子どもを叱っている時に感じる様々な疑問に対する解決法を紹介していきます。
子どもにとってNGな叱り方も紹介するので、セルフチェックに使ってみてくださいね。
また後編では上手な𠮟り方の具体的方法や、年齢ごとに分けた叱り方のポイントもご紹介しますので、あわせてご覧ください!
目次
1.感情的に怒っていませんか?子どもを叱ることの目的やメリットとは?
そもそも子どもを叱る「目的」とはどのようなことなのでしょう?まずは子どもを叱る目的やメリット、「怒る」こととの違いについて解説します。
1-1. 適切な「叱り方」は成長のプラスに!
「叱らない子育て」が流行っている中、叱ることそのものに罪悪感を抱えてしまうこともあるのではないでしょうか。
そもそも「叱る」とは間違っていることを正したり、ルールを伝えたりすることを指します。
目的を持って正しく「叱る」ことは、子どもの成長にメリットがあるため、叱るたびに自己嫌悪する必要はありません。
さらに、適切に「叱る」ことは、科学的にも正しいと考えられています。
人がどのように学習するかを研究した「学習理論」のオペラント条件付けで、叱ることの効果が解説されています。
オペラント条件付けとは、ある行動の結果によって、その行動をするかしないかなど頻度が変わっていく過程のことです。
行動により望ましい結果が得られると、行動が強化(増加)され、嫌な結果(心理学用語で「罰」)を得ると、反対に行動が減少します。
つまり適切に叱ることは、子どもの望ましくない行動や危険な行動を減らすことにつながるのです。
1-2. 「叱る」と「怒る」の違い
「叱る」ことを理解するために、「怒る」と比べてみましょう。
・叱る…相手のために、正しい行動を伝える行為
・怒る…自分のために、感情を発散させる行為
子どもを叱る時、余裕がなければ叱った後に、「自分の感情を発散させるために子どもに怒りをぶつけていないか」「伝えたいことは何なのか」をチェックしてみましょう。
自分の行動を見直すことで、意味もなく怒ってしまうことを防げるようになりますよ。
子どもが悪さをした時、感情的になり「ダメ」と怒鳴ることで恐怖心から一時的に悪さをしなくなることもありますが、「なぜいけないのか」が伝わっていないといずれ繰り返してしまう可能性もあります。
大切なことは「なぜダメなのか」「なにが正しいのか」を伝えること。「怒られるからやめる」のではなく、自分で良い・悪いを考えながら行動できるようになります。
2.子どもを叱る必要があるのはこんな時
「叱る」とは間違っていることを正したり、ルールを伝えたりすることです。必要なタイミングで正しく叱ることは、事故やトラブルを防いだり、規範を学んだりすることにつながります。
では、子どもを叱る必要があるのはどのような時でしょうか。順番に確認していきましょう。
なお、子どもが叱られたことを受け入れるためには信頼関係が必要です。特に言葉の意味が分からない時期は、しつけの土台となる信頼関係を育むことを優先しましょう。
2-1. 身の危険がある時
身の危険がある時は、迷わずはっきりと叱る必要があります。
幼いうちは経験が乏しく、どんなことが危険か分かりません。また、幼児期の子どもは好奇心が旺盛で、目の前のことに夢中になるあまり危険な行動をしてしまう場合もあります。
「道路に飛び出したら車にひかれちゃうよ」
「お料理してるお鍋に触ったら火傷しちゃうんだよ」
など、身に危険が迫っている時は何が危険なのかを示しながら、子どもの安全と命を守ってあげましょう。
2-2. 人を傷つける恐れがある時
人を傷つける恐れがある時も同様に叱る必要があります。
「人を傷つける」とは、“噛む”・“叩く”など肉体的に傷つける場合はもちろん、心無い暴言や無視など精神的に傷つけることも含みます。
人を噛んだり叩いたりと肉体的に攻撃する場合は、「おもちゃを取られて悔しかった」「無視されて悲しかった」などのメッセージが隠されていることもあります。
「悔しかったんだね」「悲しいから叩いちゃったんだね」など、まずは子どもの気持ちに寄り添ってから叱ると伝わりやすいでしょう。
また、精神的に傷つける場合は、どんな言葉や態度が人を傷つけるのかが分かっていない場合もあります。その際は「馬鹿って言われると悲しい気持ちになるよね。○○君も同じだよ」など、人を傷つける行為であることを教えてあげてください。
2-3. 家や社会のルールに反する時
「ご飯を食べる時はいただきますと言う」「病院では騒がない」などの家や社会のルールに反する時も、ときには子どもを叱る必要があります。
子どもは、日頃の生活の中で家や社会の決まりをひとつずつ学び、理解することでルールを守れるようになっていきます。
ルールに反した場合は「どうするべきだったか」「なぜ人に迷惑をかけてはいけないか」など、しっかりと教えてあげましょう。
「小さいから仕方ない」と目をつぶり続けているとルールを知ることなく大人になり、結局は本人が困ってしまいます。
場所や状況に合わせた行動ができる人になるためにも、場合によってはしっかりと叱ってあげることも必要です。
ポイントまとめ
「身の危険がある時」「人を傷つける恐れがある時」「家や社会のルールに反する時」に叱る必要があるということは、それ以外の時に叱る必要はないということでもあります。
叱るべきポイントを押さえておくことで、叱る回数もぐっと減らせますよ!
3.「叱っても聞かない…」子どもの叱り方に関するQ&A
子どもを叱るうえで、「叱っても聞いてくれない」というお悩みがある方も多いのではないでしょうか。
ここでは子どもの叱り方に関して、悩みがちな内容をまとめて紹介します。
3-1. 叱っても子どもが笑っている場合は?
叱っている時に子どもが笑う理由として、主に以下のことが考えられます。
・叱られたショックを緩和している
・ごまかそうとしている
・叱られたことに反抗している
・叱っている人の反応を楽しんでいる
どの理由で笑っていたとしても、子どもは「叱られている」と分かっているので、さらに厳しく叱る必要はありません。また、「叱っても意味がない」とは思わず、𠮟るべき場合には注意したいことをしっかり教えてあげましょう。
3-2. 叱っても聞かない時は?
子どもを叱ったとしても、一度で聞いてくれることはほとんどありません。「叱っても聞かないもの」といい意味で諦めて、何度でもするべきこと・してはいけないことを伝えましょう。
また、伝える方法は
・1~2歳であれば、短い言葉で伝える
・3歳以降であれば、理由を伝える
のように、年齢によってポイントが異なります。年齢ごとの詳しい叱り方については、後編の記事をご覧ください。
3-3. 叱っている時に子どもが泣いてしまったら?
叱っている時に子どもが泣いてしまったら、なだめてあげても構いません。そのうえで「これで遊びたかったんだよね。でも危ないからやめようね」と優しく注意してあげましょう。
反対に、「泣かないの!」「泣けば許されると思ってるの?」と泣くことを否定したり、追い詰めたりすると、感情表現が苦手になってしまう恐れがあります。
3-4. 子どもが癇癪を起した時に叱っても大丈夫?
幼い時期は「お腹が空いた」「疲れた」「構って欲しい」など、何かを訴えたくて癇癪を起すことが多い傾向にあります。
上手に言葉で伝えたり、感情をコントロールすることが難しいため、癇癪を起すことで気持ちを伝えようとしているのです。
そのため、癇癪を起している時に子どもを叱ってしまうと子どもは「分かってもらえない」と感じ、ますます感情を爆発させてしまうことも。
子どもが癇癪を起している時は、叱るのではなく、子どもの気持ちを受け止めて落ち着かせてあげましょう。
4.「叩く」「無視」子どもにとってNGな叱り方
叱ることは子どもにとってメリットがある一方、叱り方によっては将来に渡って悪影響を及ぼすおそれもあります。
ここでは、子どもにとってNGな叱り方を5つ紹介します。悪い見本のチェックリストとして参考にしてください。
4-1. 暴力に訴える
叱る際に暴力を使うのは許されることではありません。
体罰がしつけに必要だとの意見もありますが、そもそも暴力は犯罪です。
また、幼児期に体罰を受けた子どもは鬱や多動などの精神的な問題を持ったり、攻撃性が高くなったりするリスクがあると指摘されています。
(出典:厚生労働省「愛の鞭ゼロ作戦」)
このように暴力を使って叱ることは、デメリットしかないのです。
もちろん、日々の生活の中でついカッとなってしまうこともあるでしょう。
その際に暴力をふるってしまわないように、「深呼吸などをして気持ちを落ち着かせてから対応をする」など、あらかじめ対策を考えておくことをおすすめします。
4-2. 無視をする
子どもが叱られるようなことをした後、無視をする方法も問題があります。
親に無視をされた子どもは、自分自身も親や友達を無視したり、他人の顔色をうかがったりするようになる可能性があるからです。
ただし、自分がイライラして子どもに怒りをぶつけてしまいそうな場合など、お互いに心を落ち着かせるため一時的に距離を取るのは有効な方法です。
その際は、子どもの安全をしっかりと確保したうえで、「戻ってくるからちょっと待っててね」と伝えてから離れるようにしましょう。
4-3. 怒鳴る
感情的になって怒鳴るのは、そもそも「叱る」行為ではありません。
「叱る」とは子どもにするべきこと・してはいけないことを伝えることが目的です。一方、怒鳴ることは恐怖で子どもを従わせる手段でしかありません。
そして、怒鳴られた子どもは「怖いから」という理由で指示に従うようになるため、なぜ叱られているのか分からないままやり過ごすようになってしまいます。
また、子ども自身が「言うことを聞かせるためには怒鳴れば良い」と誤った認識を持ってしまう恐れもあります。叱る時は怒鳴らず、冷静に伝えることを心がけましょう。
4-4. 人格を否定する
人格を否定する叱り方とは、
「あなたはいつも失敗するわね」
「ばかじゃないの」
など、子ども自身の人間性を否定する叱り方のことです。このような叱り方は子どもの自己肯定感を下げる原因となり、自信ややる気を奪う原因となってしまいます。
叱る対象は子どもの行動に限定し、子ども自身を叱らないようにしましょう。
4-5. 脅す
「いい子にしてないとおやつあげないよ」と言ったり、鬼や怖い人から電話がかかってくるアプリを利用したりするなど、脅して子どもを従わせる叱り方もおすすめできません。
怒鳴る方法と同じく「怖いから」という理由で指示に従ってやり過ごしているだけで、叱られている理由は分からないままになってしまいます。
また、恐怖心で押さえつけることで「自分自身を受け入れてもらう」という経験が乏しくなり、子どもの健全な成長や自律の機会を奪うことにもつながります。
叱る時は脅すのではなく、叱っている理由を伝えてあげましょう。
5.大切なのは親子の信頼関係!まずは叱る目的やメリットを押さえよう
子どもを叱る場面では親も感情的になってしまうことが多く、正しい対応をすることが難しいこともあるでしょう。
しかし、まずは叱る目的やメリットを知り、「叱ることは悪いことだ」という罪悪感を減らして、子どもの成長に前向きに向き合えるとよいですね。
また、「どんな時に叱るべきか」をあらかじめ考えておくことで、叱る回数を減らすことができます。
子どもとルールを作るのもよいでしょう。
後編では正しい叱り方のコツや、年齢ごとに分けた叱り方のポイントを紹介しています。
正しく叱ることで、子どもは事故やトラブルを回避する能力を身に付け、ルールを学んでいくことができます。
ぜひ参考にしてくださいね。
▼後編はこちら!
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